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ほぼ毎日更新の雑感「ウエイ」
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佐伯泰英
yasuhide saeki

助太刀稼業

1さらば古里よ

豊後国海部郡に佐伯藩毛利家がある。徒士並、神石嘉一郎23歳は浦方をめぐり漁獲高を浦奉行に報告することだった。小さな浦々を支配する大庄屋からなにがしかの心付けを手にすることで貧しいながらも暮らしてこられた。嘉一郎はその代わりに報告する漁獲高を15分少なく報告してきた。この習わしは浦奉行も承知のことだった。ところがある日、庄屋の主人、小兵衛が「お前さまを目付が待ち受けている」と教えてくれた。城下の目付が少しでも不正を働くことを許さずという方針を徹底させるために嘉一郎に目をつけたのだ。嘉一郎の父親は三年前に死んでいた。長屋に住む母親が気がかりだった。しかし、このまま城下に戻れば確実に嘉一郎は目付たちに捕縛されると小兵衛は心配した。このまま大坂に出て一年か二年辛抱したら、母親を大坂に送り出すと小兵衛は約束してくれた。文政三年1012日。摂津大坂行きの荷船庄屋丸に密かに乗り込んだ嘉一郎は遠ざかる故里を無言で眺めていた。「嘉一郎」後ろから急に声がした。振り向くとそこには町道場の門弟仲間、毛利助八郎がいた。毛利家九代当主が町屋の娘に産ませた子どもが助八郎だった。嫡男も次男もいたので助八郎はワの字、ヒカエ様などと馬鹿にされていた。嘉一郎よりも4歳年下の19歳。兄たちにいじめられ、重臣たちに馬鹿にされる暮らしに嫌気がさし、何もかも投げ捨てて、この船に乗ったというのだ(2024.11.3)文春文庫80020247

芋洗河岸

3未だ謎

小此木善次郎が妻の佳世、息子の芳之助と江戸で暮らし始めた一口長屋に難題が降りかかっていた。屋根葺き職人の八五郎が差配の義助に黙って畳の間の上に中二階を造り上げた。植木職人の登が手伝ってのことだ。夜は八五郎と娘の寝床になり、昼は子どもたちの遊び場になった。それを見た登は自分の長屋にも中二階を造作したいと考えた。八五郎は差配の義助に黙って中二階を造作したことを見抜かれていた。大家の越後屋に知らせたら出ていくしかないかもしれないと脅されていた。八五郎、登、義助は越後屋に向かった。すると店先で善次郎が茶を喫していた。大番頭の孫六は無断で造作したことに激怒した。そこへ主の嘉兵衛が訪れた。たまたま居合わせた善次郎も知っていたかと問う。何となく知っていたが見たわけではないと正直に答えた。孫六は元に戻すように憤った。嘉兵衛はまず造作を見てから考えようと告げた。実際に中二階を見た嘉兵衛は造作の出来に満足した。壊すのはもったいないと子どもが登り降りしても安全な階段に変えようと前向きな言葉を発した。そして、この際、一口長屋の守護人、善次郎一家に敷地内に新たな一軒家を建てようと言い出した。中二階の作り直しと一軒家の建て増しが決まった(2024.4.24)光文社文庫78020243

芋洗河岸

2用心棒稼業

小此木善次郎は美濃苗木藩遠山家に使えていたが藩の財政窮状にこれ以上の義理はなしと藩を離れた。妻の佳世とともに諸国を放浪しながら一子、芳之助をもうけて江戸にたどり着いた。たまたま出会った長屋の差配の義助の導きで神田明神近くの一口長屋に住まうことができた。藩士だった時の剣術の腕が見込まれて長屋、大家の越後屋、神田明神、中村座の守護人を勤めることになった。自分でも驚く日常の変化に気持ちがついてゆけなかった。そんなとき、北町奉行所の矢部同心と十手を預かる親仁橋の三郎次親分から、4年前に主一家が皆殺しに遭った四條屋の押し込みについて相談を受けた。引き込みの松五郎がなぜか殺されていた事件の謎を善次郎に託した矢部は何者かに殺された。矢部の無念をはらすために善次郎は事件のあった四條屋に探索に入り、驚くべき発見をした(2024.4.4)光文社文庫78020242

芋洗河岸

1 陰流苗木

文政9年の夏、江戸市中には強盗が横行していた。大荷物を背負った小此木善次郎は、赤子を負った妻の佳世と初めての土地を訪ねていた。美濃の国苗木藩で剣術指南をしていた善次郎は国許の貧困財政に見切りをつけ妻とともに故郷を離れたのだ。途中、佳世が産気付き、芳之助を産んだ。赤子を連れての無宿旅で善次郎は一度だけ道場破りをして金子を得ていた。神田川沿いの淡路坂で御用帰りの義助が声をかけられた。それをきっかけに善次郎は義助が差配を勤める一口長屋を紹介された。家賃を滞納し夜逃げした男の部屋がたまたま空いていたので、手元に残るわずかな金子で善次郎たちは長屋に住まわせてもらうことができた。長屋の大家は米問屋の越後屋だった。主の嘉兵衛は善次郎の剣の腕を見込んで越後屋に降りかかっていた難題の解決を頼んだ。善次郎は命をかけて悪事を葬り嘉兵衛を助けた。これにより嘉兵衛は善次郎を大いに信頼し一口長屋の守護人として雇うと宣言。善次郎は今のままのささやかな幸せで十分だったので、守護人として依頼に応じながらも特別な待遇は断った。義助も長屋の面々も、これまで通り善次郎たちに接しながら大晦日を迎えようとしていた(2024.2.24)光文社文庫78020241

柳橋の桜

4夢よ、夢

長崎から船に乗り、上海を経由して天竺のカルカッタまで到達した小龍太と桜子。そのままコウエルの母国、オランダまで行かないかと誘われたが、二人は長崎会所の船とともに日本に戻ることにした。長崎に戻ると魚河岸の鯛問屋、江の浦屋彦左衛門から文が届いていた。江戸での懸念事項は全て解消したので、いつでも江戸に戻って良いという報せだった。小龍太と桜子は長崎でオランダ人医師から2枚の絵を見せられていた。その絵とかつてコウエルが江戸まで参府した時に素描した道中の絵を土産に持ち帰った。1年半も江戸の町を離れていた二人は、船宿屋、棒術道場、長屋の面々に温かく迎えられた。そして念願の祝言をあげた。仲人は彦左衛門夫妻が務めた。彦左衛門は少し前に隠居し、楽翁と名前を変えた。三浦に近い場所を隠し港として整備し、将来、長崎を通さない異国との貿易を直接行おうとしていた。異国を旅してこれまでの守りの棒術がこれからは通用しないと自覚した小龍太は道場を継承する道を選ばなかった。楽翁を助けながら異国貿易に身を置く未来を願った。大川の女船頭に戻った桜子は小龍太と共に貿易仕事に携わるのではなく、女船頭として生きていく道を選んだ。たとえ会えない時間が多くなっても二人の夫婦の絆は強く、永遠のものだと二人とも信じ合っていた(2023.11.4) 文春文庫80020239

柳橋の桜

3二枚の絵

桜子と小龍太は夫婦の約束をした。そんなある日、桜子は香取流棒術の大河内師匠の作品です呼ばれた。理由を聞かないでしばらく江戸を離れた方が良いというものだった。いきなりの言葉に呆然としたが、桜子の父親の広吉船頭が殺された事件と関係し、黒幕が幕府の中枢とつながっていると諭され、江戸を離れる決意を示した。一人では不安だろうと、小龍太も同行することにした。築地の海鮮問屋の主の手はずで二人は江戸の沖合いに浮かぶ上海丸に乗船、密かに長崎を目指した。上海丸の大きさに驚いた二人は長崎で町年寄りのせわになりながら、棒術の修練を積んだ。そんな二人に刺客が現れた。示現流を使う者たちは薩摩藩の人間だった。広吉が死に際に漏らした薩摩の紋章。桜子の命を狙う島津ゆかりの刺客。二人は長崎も離れなければならなくなった。ちょうど長崎会所とオランダ商館との間で進められていた異国との大商い船団に乗船し、船員として棒術の指導をすることになった(2023.10.27) 文春文庫80020238

柳橋の桜

2あだ討ち

柳橋近くの船宿さがみ。船頭頭、広吉の娘、桜子は幼い時から父親の猪牙舟に乗せられて江戸中の水路を覚え、櫓の使い方を習得していた。船頭で初めての女船頭として猪之助親方に許しを得られた桜子は魚河岸の老舗、江ノ浦屋彦左衛門を最初の客に迎え、堂々の仕事始めを迎えていた。同じ頃、江戸では次々と猪牙舟の船頭ばかりを狙った猪牙強盗が繰り返されていた。金品を盗らずに命だけを狙う残忍な連中だった。犯行現場には必ず千社札が残されていた。棒術の稽古に通いながら船頭を続ける桜子は稽古をつけてくれる若先生の小龍太から、自分の嫁にならないかと打ち明けられた。戸惑いながらも告白を受け入れて幸せな未来が訪れるはずだった。そんな時、品川まで客を送った広吉の猪牙舟がなかなか船宿に戻らないことがわかった。地元の親分が桜子を呼びにきた。なんと浜に打ち捨てられていた猪牙舟に桜子の父親、広吉が殺されていたのだ(2023.8.30) 文春文庫80020237

竃稲荷の猫

日本橋に近い浜町堀に面した片側町は住吉町裏河岸と難波町裏河岸と呼ばれていた。しかし地元の人々は2つの河岸を竃河岸と呼びならわした。竃河岸の中ほどに小さな稲荷社があり住吉稲荷と呼ばれた。これも地元の人々は竃稲荷とか猫稲荷と親しんだ。寛政71795)年の夏、もうすぐ15歳になる娘が稲荷に住み着く黒猫に食い物を届けて仲良くなっていた。娘の名前は小夏。竃河岸の裏長屋、三味線長屋で棹師として働く伊那造の娘だった。母親は小夏が3歳の時に流行り病で亡くなっていた。三味線長屋は三味線を作る玄治店の持ち物だった。五代目小三郎親方のもとで13歳から修行に入った善次郎は三味線を作る60の工程をほぼ覚えた。三味線に使われる皮にはオスの猫が使われた。竃稲荷に住み着き、小夏がクロと名付けた猫はオスだった。父親や親方もそのことは知っていたが、芸事を祀る稲荷社に住み着いた猫に手出しすることはなかった

(2023.7.16)光文社文庫76020236

柳橋の桜

1猪牙の娘

神田川が大川へ注ぐ河口に柳橋はかかっていた。橋のたもとにある船宿さがみの裏には三本の桜があった。春になるときれいな花をつけ江戸の各地から多くの花見客が訪れた。船宿さがみのさくら長屋で暮らす桜子と父親の広吉。母親のお宗は桜子が3歳の時に若い男と家を出て行った。それ以来、桜子はさがみで猪牙舟の船頭として働く広吉の暮らしの面倒を見ながら育った。幼い頃は猪牙舟に乗って舟の扱いを体で覚えていった。背の高い桜子と背の低いお琴は幼い頃からの親友だった。米沢町の寺小屋の娘のお琴。寺小屋に通う桜子はお互いに何でも言い合える間柄だった。12歳になった桜子に広吉は習い事をすすめた。自分にもしものことがあった時に芸事の一つでも習得していれば暮らしの役に立つと考えた。桜子は以前からお琴ともに薬研堀にある棒術の大河内道場の稽古をこっそり見学していた。道場の隠居は二人が見学していたことに気づき、入門したければ父親に相談して来るように諭した

(2023.7.13)文春文庫80020236

浮世小路の姉妹

日本橋に近い浮世小路。加賀から出てきた祖先が立てた料理屋「うきよしょうじ」。何者かに火をつけられ店は全焼した。主夫妻も亡くなった。火事場に出動した火消のい組。見習いの昇吉は燃え盛る火の中に飛び込み、奉公人や主の娘たちを避難誘導した。その時の縁で昇吉は佳世と澄の姉妹を覚えていた。良心を火事で失った二人を気遣う。持ち場の店を調べるように若頭から言われた昇吉は界隈を探索するうちに、うきよしょうじがいつまで経っても再開されないことを訝った。そのことを若頭に報告した昇吉。若頭から火付けに隠された真実を探るように内命を受ける。い組を離れ、幼馴染たちと探索を続けるうちに昇吉は料理屋の主夫妻は火付けのさなかにすでに殺されていた事実をつかむ

2022.7.27)光文社74020226

出絞と花かんざし

京都に近い北山郷。磨丸太の産地として古くから重宝されていた。鴨川の源流で水守りをしていた父の岩男と二人暮らしのかえで。山稼ぎの頭の三男、萬吉。ふたりはいとこ同士だったが、幼い頃からお互いに助け合って生きていた。宮大工になるために都に修行に出た萬吉。その数年後、飾り職人になるためにかえでも村を離れた

2021.8.6)光文社 680円(2021.6

初詣

照降町四季シリーズ

新酒番船

新酒番船シリーズ


悲愁の剣

長崎絵師通吏辰次郎シリーズ


橘花の仇

鎌倉河岸捕物控シリーズ


血に非ず

新・古着屋総兵衛シリーズ


死闘

古着屋総兵衛シリーズ


変化

交代寄合伊那衆異聞シリーズ


御槍拝借

酔いどれ小籐次留書シリーズ


陽炎ノ辻

居眠り磐音 江戸双紙シリーズ


流離

吉原裏同心シリーズ


八州狩り

狩りシリーズ


見参!寒月霞斬り

密命シリーズ


雪割り

秘剣シリーズ


異風者

肥後人吉藩の彦根源二郎は、婿入りした数馬家で祝言の夜に家老から呼び出された。藩内を牛耳る門葉一派の不正をつかんだ実吉家老を安全に江戸まで送り届ける役目を命じられた。門葉一派の追手を次々と斃し、無事に家老を江戸まで送り届けた源二郎は、殿様から褒美をもらう。無事に国元に戻って、門葉らの粛清が行われた。祝言の夜に呼び出されたままの新居に戻ると、一家が惨殺されていた。源二郎は義父や妻の仇討ちを申し出て、全国を旅することになった。 (2016.11.27) 角川春樹事務所 20005 680


ダブルシティ

新宿で清掃車が爆破される事件が起こった。清掃員を含め、多くの死傷者が出た。その後も清掃車が爆破される事件が続いた。ごみ収集に携わる業者は安全が保障されるまで収集をしないことにした。日に日に、都内にはゴミがあふれていく。花島都知事が現状を憂う視察をしていた。都営バスに乗って都民感覚のパフォーマンスを演じた。その都営バスには花島都知事の誘拐犯が乗っていた。一般客を含め、誘拐犯は東京都の地下深くに造営されているトーキオという地下都市へと向かった。川端首相をはじめとする政府は、犯人からの100億円の要求を受け入れる。 (2015.7.4) 祥伝社文庫 20083 600


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