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ほぼ毎日更新の雑感「ウエイ」
佐伯泰英ページ
佐伯泰英
yasuhide saeki

島抜けの女
鎌倉河岸捕物控31
宗五郎一行は船で京都を目指していた。金座裏に宗五郎が不在の間、十手を守るのは若い政次親分だった。そんなとき飼い猫の菊五郎がいなくなった。亮吉はつとめを忘れて菊五郎探索をして、政次から強く叱責をくらった。そんなとき、北町奉行の小田切直年の内与力である嘉門興八郎に呼び出されて極秘の任務を与えられた。それは小田切が大坂奉行だった時に捕まえて隠岐の島へ遠島にした女が密かに島抜けをしたというものだった。その女、夜桜お寅は江戸に出て仲間を殺された恨みを晴らすために小田切を貶めると脅してきたのだ。 (2018.4.12) ハルキ文庫 2017年11月 690円

嫁入り
鎌倉河岸捕物控30
豊島屋の十右衛門が、京都から春香を迎えて江戸で仮祝言を営むことになった。江戸からの一行がいつ江戸に届くのか、豊島屋先代の清蔵は気になって仕方がない。一方金座裏には、長塚小夜が相談事を持ち込んできた。江戸城の勘定方で不正が行われているかもしれないということだった。その中心にいる人物の息子が、小夜を嫁にと迫っている。ほかに思い人のいる小夜は断り続けてきたが、相手がしつこかった。 (2017.8.7) ハルキ文庫 2017年4月 690円

お断り
鎌倉河岸捕物控29
豊島屋十右衛門の祝言が近づいていた。京都から許嫁一行が江戸を目指し、江戸で仮の祝言が行われることになった。本祝言は十右衛門が京都に赴き行われることになった。江戸からは先代の豊島屋夫婦のほかに、松坂屋夫婦、金座裏の宗五郎とおみつも行くことになった。そんな時、金座裏近くで辻斬りが行われた。懐のものをまってく奪っていないので、政次たちは、無差別な辻斬りに見せかけた殺しではないかと推測する。高級な小物扱いの店では、万引きが横行し、金座裏は同時にいくつもの事件を探索することになった。 (2017.7.24) ハルキ文庫 2016年11月 690円

吉原詣で
鎌倉河岸捕物控28
宗五郎一行は念願だった吉原へ出かける。おとなの遊びなので、太夫と飲食を楽しみながら、のんびりとした時間を過ごして帰ってきた。そのとき、近くに居合わせた客が宗五郎を見て、恨みがかった視線を飛ばしていたと、八百亀が聞き出してきた。若い時分の宗五郎を知る者がいた可能性が大きかった。 (2017.7.17) ハルキ文庫 2016年4月 690円

店仕舞い
鎌倉河岸捕物控27
金座裏の縄張りにある箔屋、岩倉屋が突然、店仕舞いをした。乗り込んだ宗兵衛と政次に主は口を閉ざす。番頭はまったく事情を知らなかった。子ども3人が女将の実家にいるという。政次は実家に向かった。すると子どもらの姿はなく、実家の老婆と老爺が首を括っていた。政次は首括りは偽装と見抜く。そんなとき岩倉屋の主が行方不明になった。数日後に主は拷問され大きな石とともに海に捨てられていた。金座裏は事件の背景に金沢前田家がからんでいると考えた。 (2017.6.19) ハルキ文庫 2015年11月 690円

閉門謹慎
鎌倉河岸捕物控26
1802年・享保2年の暮れが近づいていた。八丁堀では、同心の寺坂が与力に出世するといううわさが流れていた。宗五郎は北町奉行の小田切から密かに寺坂の与力就任を打診されていたが、外部に漏れていたとなると話は違った。だれが何のために情報を漏らしたのか。また寺坂には大店から多額の金子をゆすりとったという嫌疑がかけられた。日ごろから清廉潔白を自他ともに認める寺坂は驚愕する。 (2017.5.28) ハルキ文庫 2015年4月 690円

新友禅の謎
鎌倉河岸捕物控25
鎌倉河岸界隈の呉服屋に謎の二人連れが現れた。京友禅ものばかりを出させて、結局は買わずに帰っていく。とくに悪いことしたわけでもないが、何かを確かめるために呉服屋巡りをしていると思われた。政次ら一行は、二人連れを探索し、京都で廃業した若狭屋の娘と手代ということがわかった。若狭屋は京都で廃業したのち、上州へ移り、そこで上州の絹を使った新しい友禅を作ろうと考えていた。上州の絹問屋と組んでの話だったが、そこには若狭屋で友禅染を手掛けてきた職人の力が必要だった。職人たちは地元の職人と組んで新しい友禅染の研究を行った。しかし、歴史ある京都や加賀の友禅には程遠いものしかできない。若狭屋の娘と手代は、本当はすでに職人たちが新しい友禅染を完成させているのではないかと疑い、職人たちを監禁し詰問した。 (2017.5.13) ハルキ文庫 2014年11月 690円

後見の月
鎌倉河岸捕物控24
宗五郎の名代として吉原を訪れた政次は、御室高尾と目を合わせた。その時、政次へ向けて高尾が微笑した。高尾とは面識がないはずの政次だったが、いつかどこかで会ったような勘が働いた。そんなとき、金座裏の縄張り内で無銭飲食が続いた。高尾の記憶は脇において、政次は無銭飲食らの行方を追う。そのうちに、賊徒はついに人を殺してしまう。金座裏の探索で賊徒は上州から江戸へ流れ込み、近いうちに金貸しへ押し込みを実行しようとしていることが分かった。それを事前に防ぐべく政次たちが鎌倉河岸を走る。その最中、実家の鉄炮町へ立ち寄った政次は、路地裏で遊ぶ子どもたちを見て、自分が幼い時に父親に連れられて旗本屋敷を訪れたことを思い出した。そこにいた娘の面影が、高尾とぴったり重なった。しかし、旗本の娘がなぜいま遊女となてしまったのか、政次には見当がつかなかった。 (2017.5.3) ハルキ文庫 2014年4月 690円

うぶすな参り
鎌倉河岸捕物控23
政次としほに男児が誕生した。名前は夏吉。おみつは孫にべったりになった。孫の誕生を家族や知人らで祝ううぶすな参りの準備に余念がない。夏吉に蛍を贈ろうと出かけた手先の亮吉が、龍閑川にかかる橋のたもとで若い女性が殺されているのを発見した。女性は商家の娘だった。政次たちの調べで娘が身ごもっていることが判明した。政次たちの探索で、殺された娘には坊主頭の男が近くにいたことがわかった。男の所在をつかむために江戸の町を金座裏の面々が走る。うぶすな参りまでに何とか目途をつけようと、だれもが必死の探索をした。 (2017.4.16) ハルキ文庫 2013年11月 686円

よっ、十代目
鎌倉河岸捕物控22
本町の薬種問屋「いわし屋」では、高値の薬ばかりが盗まれる騒ぎが発生していた。番頭から相談を受けた金座裏では、いわし屋に手先を住みこませて様子を探る。すると、甘やかされて育てられた世間知らずの儀右衛門当主のわがままぶりが発覚した。当主は千葉から薬の買い付けに来る親戚の朝次を無下に扱い、その扱いぶりに業を煮やした朝次が高価な薬を盗んでいたことを突き止める。そんな矢先、いわし屋では薬ばかりではなく、200両を越える金も盗まれた。船頭の彦四郎は、お駒と所帯を持つことを親方夫婦に伝え、お駒の両親からも許しを得た。綱定では、彦四郎夫婦のために長屋の改築を行い、夫婦に差配としての仕事まであっせんした。いよいよ産み月を迎えたしほは、元気な男子を出産する。 (2017.3.29) ハルキ文庫 2013年4月 686円

春の珍事
鎌倉河岸捕物控21
金座裏の飼い猫、菊五郎がふらっといなくなった。春の盛りの季節だったので数日後には戻った。しかし、菊五郎が不在の間、女将のおみつの動揺はとても大きかった。ふたたび菊五郎がいなくなった。今度は何日待っても戻ってこない。ついにおみつは寝込んでしまう。そんなとき、金座裏に寺坂毅一郎から相談事が迷い込んだ。従兄弟にあたる早乙女芳次郎が行方不明になったというのだ。結婚を間近に控えての失踪に、実家が困っているという。相談を受けた政次は、金座裏に大きな御用がなかったので、芳次郎の探索のために亮吉とともに江ノ島から平塚、そして鎌倉を旅することになった。夜の長谷界隈で、武芸者の一団に囲まれた政次と亮吉は、芳次郎の安否を心配し始めた。 (2017.3.14) ハルキ文庫 2012年11月 686円

宝引きさわぎ
鎌倉河岸捕物控20
正月が明けて、それぞれのお店では奉公人が実家へ戻ることが許される藪入りになった。江戸の治安を守る金座裏には藪入りはない。そこで宗五郎夫婦は、日ごろ探索の礼にと届けられた品物を、手下の者や女中たちに配ってきた。ことしは亮吉が趣向をかえて、それらを各人の運でつかみとる宝引きを考案した。同じころ、百川という料亭で火消したちが集まって大掛かりな宝引きを始めていた。そこに景気づけに訪れた小夏という若い芸者が、自分も宝引きの品物になるといってほかの景品とともにふすまの向こうに隠れた。火消したちの興味が集まる。そして見事小夏を引き当てた若者が、襖を開けると、そこには悶絶顔の小夏の死体が転がっていた。 (2017.3.4) ハルキ文庫 2012年5月 686円

針いっぽん
鎌倉河岸捕物控19
箱根と熱海の湯治から帰った宗五郎一行。同行したしほが描いた図絵が豊島屋に貼りだされた。多くの見物客でにぎわうなか、亮吉はこれからの自分を見つめなおそうとしていた。川の流れに小石を投げたら、不浄船のへりにぶつかった。乗っていた頭巾をかぶった武士がいきり立つが、亮吉のかわりに政次が名乗って頭を下げて、その場は収まった。翌日、政次が神谷道場で汗を流していると、客分として訪れていた加納という城中の御家人から手合わせを願われた。加納には企みがあると読んだ政次は受けて立つ。同じころ、城中、大奥へ上がったお初という女性が亡骸となって実家に戻されていた。城中で不始末をしたので成敗をしたとのことだった。何をしたのかも伝えず、遺書もなく、実家は落ち込むばかり。相談を受けた宗五郎が政次たちと探索に乗り出していく。 (2017.2.18) ハルキ文庫 2011年11月 686円

熱海湯けむり
鎌倉河岸捕物控18
熱海では温泉を守る湯戸27軒が地元で収穫できる繊維を使って新しい和紙を生産することにした。試作を重ねてやっと江戸の大店との取引が始まった。代金を受け取った湯戸組合の手代が帰り道で襲われて、代金を奪われた。箱根からの湯治を終えて熱海へ下った宗五郎一行は、湯戸組合の今井半次郎から事件への探索を依頼された。湯戸のなかに経営が苦しい店があり、そこの旦那と若旦那が組んだ犯罪の線が濃厚になっていた。江戸では宗五郎がいない金座裏で若旦那の政次が大きな2つの御用を抱えていた。宗五郎らが熱海で事件を解決し、六郷の渡しをこえても迎えに行けないほど御用専一の状態だった。ゆったりとした湯治を終えて、しほは身ごもった。 (2017.2.5) ハルキ文庫 2011年5月 686円

紫房の十手
鎌倉河岸捕物控17
宗五郎夫婦、松坂屋の松六夫婦、豊島屋の清蔵夫婦にしほらの一行は、箱根と熱海の湯治旅に出かけた。小者として同行できなかった亮吉は主のいない金座裏でくすぶっていた。そんなとき、上方から江戸に疾風組という強盗団が大阪を離れて江戸へ向かったという知らせが届く。たまたま鴫立庵で絵筆を握っていたしほは眼光が鋭い浪人を見かけた。小田原へ向かう途中で、その男が疾風組の頭だということを知った。しほは宗五郎の協力を得て、人相書きをしたため、早飛脚で江戸の政次へ人相書きを送った。政次らはそれを大量に印刷して、江戸市中の高札場へ貼りだして、疾風組の江戸入りを防ごうとした。そんなとき、同じ地回りの常磐町の宣太郎が政次を目の敵にしているという情報が入ってきた。 (2017.1.5) ハルキ文庫 2010年7月 667円

八丁堀の火事
鎌倉河岸捕物控16
八丁堀で火事があった。火元は南町奉行所の役宅だった。長く酒乱で奉公を休んでいた当主が狂って家族を刺殺し、自宅に火を放った。現場から逃げた奉公人らの言動を怪しんだ宗五郎らは、政次と亮吉を中心にして、逃げた奉公人らの探索を行った。その結果、用人が金蔵から財産を持ち逃げし、それに気づいたほかの奉公人が見つけ出し、折半をする算段の現場にたどり着いた。 (2016.12.30) ハルキ文庫 2010年4月 667円

夢の夢
鎌倉河岸捕物控15
船宿「綱定」の船頭である彦四郎が行方をくらました。その直前に幼馴染の秋乃に会ったことまでを調べ上げた政次と亮吉は宗五郎の許しを得て彦四郎探索の旅に出た。秋乃は彦四郎が幼いときに親父同士が同じ職人だった関係で左官現場で面倒をみた間柄だった。美しく成長した秋乃を前にして、彦四郎はすっかり幻惑されてしまう。秋乃は備後福山藩の用人である古村の妾として暮らしていた。その古村から藩にとっては表に出せない秘密を打ち明けられていた。藩に身柄を拘束された古村を救う片棒を担がされた彦四郎は、何も知らないまま秋乃との逃避行を続けていた。それを追う政次と亮吉の探索が物語の中心となる。 (2016.12.14) ハルキ文庫 2009年11月 667円

隠居宗五郎
鎌倉河岸捕物控14
十代目を政次としほが継ぐことが決まった九代目宗五郎は、猫の菊小僧を膝に乗せて日中をぼーっと過ごすことが多くなった。早くも隠居の気分に浸る宗五郎を周囲は許してくれない。まだまだ働いてもらう必要があるのに、本人は探索の前面に出ようとしない。そんなとき市中に大規模な詐欺集団が犯罪を繰り返し始めていた。大きな店の主を名乗って孫の婚礼道具を買い求め、代金と品物をごっそり奪い取る大胆なものだった。政次は八百亀らとともに探索に乗り出す。同じ長屋で育った亮吉は、住まい近くに越してきた大工一家が危難に直面していることを知り、長屋に戻ったきり、姿を見せない。探索から金座裏に政次が戻ると、宗五郎の姿が消えていた。 (2016.11.26) ハルキ文庫 2009年5月 667円

独り祝言
鎌倉河岸捕物控13
享和元年3月3日が迫っていた。金座裏の若親分政次としほの祝言の日だった。準備に追われるとき、会津藩の江戸家老がお忍びで金座裏の宗五郎を訪ねた。内蔵にある金子が数回にわたり何者かに盗まれ、ついに内蔵を守る家臣が二人惨殺されたというのだ。公にすれば、会津藩の存続にかかわる大問題になる。宗五郎は政次を会津藩江戸上屋敷に忍び入れさせた。会津から内蔵警護の目的で連れてこられた若者という設定で、周囲の情報を集めていた。南町奉行の記録係である眠り猫に会津藩にかかわるもめごとの探索を政次は頼んであった。祝言の日が近づく。宗五郎はしほに、金座裏に嫁に入るということは、いつ何時何があるかわからない。ひとり祝言を確保してほしいと申し伝える。もとよりその覚悟ができていたしほはいよいよ気持ちを強く抱く。3月3日の未明に、内蔵に江戸屋敷幹部が地下道を使って忍び込み、政次を捕縛し金子を奪おうとした。その試みを事前に察知した政次は、忍び込んだ3人をその場で討ち果たした。朝もやのなか金座裏に戻った政次は、義母のおみつに湯屋で垢と汗を流すように諭され、開店前の湯屋に向かう。ひとり祝言を覚悟したしほの花嫁支度が始まった。 (2016.11.6) ハルキ文庫 2008年11月 667円

冬の蜉蝣
鎌倉河岸捕物控12
大晦日。宗五郎親分の兄弟分の銀蔵親分の弔いが行われた。そこに火付けの一報が入る。宗五郎とともに弔いに行った亮吉や政次が銀蔵親分の配下の者たちと火付け一味を捕まえた。正月が明け、いよいよ政治としほの祝言の段取りが始まった。 (2016.10.22) ハルキ文庫 2008年5月 667円

代がわり
鎌倉河岸捕物控11
松坂屋の隠居が暗い顔をして金座裏を訪ねた。掛け金が滞っている上州の大店へ集金に出た手代の卯吉が消息を絶っているという。かつてともに働いた金座裏の若親分、政次は自分が卯吉探索に赴くと願い出た。亮吉を伴っての探索を宗五郎は許可した。あわせて、しほとの祝言をいつにするかと松六や豊島屋の清蔵と考え、まずはしほを実家の川越に使わして、親戚筋の許可を得ようということになった。卯吉探索の最後に川越に寄る政次は、川越でしほと合流した。しほを迎えた母方の親戚たち、国家老たちは、もう政治としほの祝言話で盛り上がった。しかし、政次が川越に御用で立ち寄ったことを知ると、藩内でも問題になっていた油問屋の三丁屋事件について協力して探索をすることになった。三丁屋は現在の主が賭け将棋に狂い、ついには店の権利やふたりの娘まで賭けで失ってしまう。店を乗っ取った地元のやくざを、政次と亮吉、川越藩が協力をして捕縛した。いよいよ政治としほの祝言へ向けて鎌倉河岸が動き出す。 (2016.10.10) ハルキ文庫 2007年6月 667円

埋みの棘
鎌倉河岸捕物控10
政次と亮吉と彦四郎が10歳のとき、夕方になっても長屋に戻らないことがあった。おとなたちが探したが、結局は自力で暗くなってから戻った。親に事情を聴かれても、3人は実際に目にしたことを口にすることはなかった。水戸藩の幹部から奉行所に政次についての問い合わせがあった。奉行所を通じて寺坂が金座裏の宗五郎にそのことを伝えてくれた。政次は10年前のことと関係しているとひらめき、真実を宗五郎に伝えた。10年前、藩の財政がひっ迫していた水戸藩では、多くの年貢を払った者を家来に取り上げるという制度を作ろうとしていた。それ江戸から国元に帰らないひとたちが力で阻止した。水戸藩の殿様の密書を国元に送り届ける役目をつかさどった2人の若い武士は、裏切った上司によって一人が殺された。もう一人が斬りつけられそうになったとき、政次たちが機転を利かせて危機を救ったのだ。 (2016.9.24) ハルキ文庫 2006年9月 686円

道場破り
鎌倉河岸捕物控09
寛政12年(1800年)2月。赤坂田町の神谷丈右衛門道場にひとりの女武芸者が現れた。応対した政次に女武芸者は神谷に一手指南をと申し込んだ。女の名前は長塚小夜。赤子を背負っての道場破りだった。神谷は政次に相手を命じる。町人が指名されたことで小夜はいきり立つが勝負したら、政次に歯が立たなかった小夜だった。潔く負けを認め、小夜は道場を後にする。そののち、他の道場で10両を賭けた男の道場破りが登場した。金座裏では二人の武芸者は互いに目立つ方法で道場破りをしているのではないかと推測した。そしてある日、男の武芸者である八重樫七郎太と思える侍が淫乱小物を商いにする商家の隠居を差しおろして懐から金を盗んだ。八重樫と小夜が同じ宿にいることを突き止めた政次たちは八重樫だけを呼び出した。素直にお縄になるように説得するが、八重樫は認めず政次と対決し絶命した。小夜と赤子を引き取った金座裏は、ふたりの経緯を聞き、政次を憎む小夜の気持ちを落ち着けようと試みた。宗五郎親分は小夜の住み家と仕事を紹介する。 (2016.9.11) ハルキ文庫 2005年12月 686円

銀のなえし
鎌倉河岸捕物控08
寛政11年(1799年)の12月。大晦日が迫っていた。江戸では荷物を運ぶ船ごと盗まれる事件が続いた。そして荷物を運んだ船頭が責任をとって自殺する騒ぎになっていた。どこの船も初売りの荷を積んでいた。金座裏の政次は山科屋の初売りの荷が奪われた事件を探索し、すぐに盗人を見つけ出し、荷を取り戻すことに成功した。山科屋では、政次の活躍に喜び、家伝来の銀のなえしを宗五郎親分を通じて政次に贈った。金座裏の宗五郎は将軍お墨付きの金の十手をもち、若親分の政次は銀のなえしを手にすることになった。正月を迎えた鎌倉河岸。しほは豊島屋の主の許しを得て、故郷川越まで両親の墓参りに行く計画を立てた。それを知った宗五郎とおみつの夫婦は、政次にともに川越まで行かないかと声をかける。ふたりの気持ちを察してのことだが、政次もしほも改まって気持ちを口にしたことはなかった。川越まで行ってしほの親戚筋に将来のことを伝えてくるように言ったのだ。しほは自分ばかりがこんなに幸せになっていいものかと喜びを表した。政次はしほさえよければ、自分も川越に許しを請いに行きたいと願っていたと応じた。 (2016.8.28) ハルキ文庫 2005年3月 686円

下駄貫の死
鎌倉河岸捕物控07
松坂屋の隠居夫婦の湯池旅。上州の伊香保温泉へ金座裏の宗五郎親分の妻や豊島屋の妻などが同行した。その世話役としてしほも同行した。しほは伊香保温泉までの道中に多くの絵を描いた。そのなかに祭りで芸を売る竿釣士一行の修業があった。江戸では品川の悪童たちが老人たちを遅い金を奪う事件が頻発していた。宗五郎たちは探索をするが、悪童たちの目途はたっても尻尾をつかむことができなかった。そんなとき悪童たちはついにひとを殺めてしまう事件を起こす。政次が次の親分に就任することを快く思ってこなかった下駄貫は、ここで手柄を立てて政次を見下してやろうとひとり探索をする。悪童たちが内藤新宿の宿で女郎遊びをしていることを突き止め、翌朝にお縄にするつもりで忍び込む。しかし、逆に悪童たちに見つかり、殺されてしまった。下駄貫の死を受けて、宗五郎たちは必死の探索で悪童たちを捕まえて弔いに添えた。伊香保から戻った湯池一行の絵のなかに、宗五郎はかつて江戸で盗みの掟を守り抜いた宇平を見つけた。その宇平一行と思える盗みが起こった。盗まれたほうが気づかないほどの手口だった。しかも商いに無理が生じない程度に盗む方法も同じだった。続いて起こった盗みではやり口が荒くなり、番太が殺された。政次は二つの事件の共通点とそうでない点を比較しながら探索を続け、ついに宇平が幽閉され弟子だった大蛇の豆蔵による犯行を突き止めた。下駄貫の葬儀で宗五郎は、各界の世話人に自分の後継人として政次を名指しした。政次もそれを受け、若親分が誕生する。 (2016.8.12) ハルキ文庫 2004年6月 686円

引札屋おもん
鎌倉河岸捕物控6
酒問屋「豊島屋」の主、清蔵。店が今後も長く繁栄するように新しい引札作りを考えた。注文の応じる店を探していたところ、新しく開店した「おもん」という小さな引札屋を見つけた。主は若い女性だった。早くに結婚したがすぐに亭主と死に別れ、相手の家から相応の金子を受け取って自活の道を選んだ。商売はまったくの素人だったおもんは、一生懸命に清蔵の注文に応じる。その姿勢にうたれた清蔵は、次第におもんへ恋心をふくらませていく。そんなとき鎌倉河岸では、子どもばかりをねらった誘拐殺人事件が再開していた。亮吉と政次は、がちゃがちゃ舟と呼ばれる商いの男があやしいと狙いを定める。がちゃがちゃ舟は、小さな舟に子どもが好きそうなおもちゃを乗せて売り歩く舟だった。豊島屋の面々は、清蔵がいつになく着飾って店を空けることが増え、金座裏の宗五郎へ相談を持ちかけた。別の用事で「おもん」を訪ねた宗五郎は、おもんが下心があって清蔵に近づいているわけではないことを知る。ふたりの仲はそっと見守るしかないと判断した。しばらく「おもん」に行けなかった清蔵が久しぶりに店を訪ねると、そこには「閉店」の紙が貼ってあった。 (2016.7.31) ハルキ文庫 2003年10月 667円

古町殺し
鎌倉河岸捕物控5
年に一度、古町(こまち)町人と呼ばれる人たちが江戸城に入り、能を楽しむ会が迫っていた。古町町人とは、家康の江戸入りとともに駿府などから江戸に入り、湿地だった江戸の創建を支えた人たちだ。幕府はその者たちへの感謝として年に一度無礼講の能見物を許していた。ことしもその催しが近づいていた。ところが鎌倉河岸界隈で、古町町人ばかりを狙った殺しが続いた。そこには、今回の催しを中止するようにとの警告文が残されていた。金座裏の親分である宗五郎は、殺人者たちの狙い通りにはさせじと犯人探しに躍起になるが、手がかりがまったくつかめない。そのうちにもまた殺しが発生する。宗五郎は、奉行所に協力を仰ぎ、これまでに不祥事などで古町町人の資格を剥奪された者のリストを依頼した。そのなかに恨みを抱いた者がいるのではないかと推測したのだ。 (2016.7.20) ハルキ文庫 2003年1月 648円

暴れ彦四郎
鎌倉河岸捕物控4
綱定の船頭、彦四郎が何者かに襲われた。まったく見に覚えのない彦四郎は金座裏の宗五郎親分に親方とともに訪れて事件を告げる。同じとき、しほは川越に旅に出た。親戚の結婚式に招かれたのだ。かつて父母が駆け落ちをして脱藩した川越だったが、その裏には藩の不正を暴く狙いがあったのだ。江戸の長屋で生まれ育ったしほは、父母の生まれや育ちを何も知らないで育った。それを鎌倉河岸のひとたちが調べてくれたのだ。その結果、いまも藩では不正が横行していることが判明し、宗五郎が直接殿様に面通しをして家老の不正を暴いたのだ。しほの父母たちの家は再興を果たすことができた。鎌倉河岸に感謝する意味で、しほを招いたのだ。しほのいない鎌倉河岸では、彦四郎を襲った者たちの狙いがさっぱりつかめないままいくつかの事件が勃発していた。それらと平行しながら、彦四郎襲撃の探索が続く。そのうちに三度も彦四郎は何者かに襲われてしまった。 (2016.7.12) ハルキ文庫 2002年6月 667円

御金座破り
鎌倉河岸捕物控3
御金座の手代が御用で京都へ出向いた帰りに行方を絶った。御金座裏で御用を務める十手持ちの宗五郎親分は手代が新しい小判の鋳造にかかわる情報を手にしていたことを突き止める。やがて戸田で手代の死体が発見された。宗五郎は戸田へ政次たちを向かわせて真相を確かめる。ほかの御用で市中を巡っていた亮吉は兄貴分の下駄貫から、松坂屋から政次が鞍替えしたのはやがて十代目の宗五郎に就任させるための手はずだと告げる。子どものときから長屋でともに過ごした政次が、自分の親分になってしまうかもしれない。自分の方が御用仕事は長いのに、それを政次が追い越していく。複雑な気持ちになった亮吉は、探索の途中から持ち場を放棄して逃げ出してしまった。殺された手代は、江戸へ戻ってきたとき、品川でおなじみの女郎部屋に泊まった。そこで一時部屋を抜けたきり、戻らなくなっていたことまでわかった。 (2016.7.3) 角川春樹事務所 2002年1月 686円

政次、奔る
鎌倉河岸捕物控2
松阪屋の手代の政次が隠居の伴をした。隠居の行動はふだんの行動と異なり、不自然に感じたが政次は口を挟まなかった。やがて廃墟に立ち寄った隠居はそこで浪人らと遭遇し襲われる。間一髪、政次の機転で難を逃れることができた。その時に頭を打って隠居は気を失った。やがて正気に戻ったが過去の記憶をすっかり忘れてしまっていた。なぜ当日不自然な行動をしたのかがまったくわからなくなった。金座裏の親分らが政次とともに当日の行動を追ううちに、過去の政との関係が見え隠れしてきた。それは権勢をふるった田沼親子が本家筋の佐野に老中で襲われ、やがて息子の意知はそれが原因で死んでしまう。3年後には意次も罷免された。その事件の背後にあった一橋家と田安家との対立が大きな原因であることを親分はつかむ。そのうちにぼけていた隠居の姿が消えた。政次は奉公先に無断で隠居の探索をした。やがて隠居が屋敷にいてぼけていたときに描いていた覚え書きを頼りに江戸から離れた田舎屋敷にたどり着いた。そこには切腹した佐野の遺児が乳母とともにほっそりと暮らしていたのだ。 (2016.6.3) 角川春樹事務所 2001年6月 686円

橘花の仇
鎌倉河岸捕物控1
鎌倉河岸で生まれ育った幼なじみの3人。捕り物の手下の亮吉、大店の小僧の政次、船頭の彦四郎。そこに酒問屋豊島屋の奉公人のしほが加わった4人は年齢が同じなので、いつも互いに集まっては日々の暮らしを楽しんでいた。そんなある日、しほの父親が碁敵に殺されてしまった。殺害した相手を突き止めた亮吉らは、なぜか相手にお上のお咎めがなかったことに立腹する。相手は大商人で、あちこちに顔が利き、金もばらまいていたのだ。父親の借金の証文まで持ち、しほに自分の妾になって借金を棒引きにと迫る仇を、3人を取り囲む大人たちの支えを得て追い詰めていく。 (2016.5.17) 角川春樹事務所 2001年3月 686円

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