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佐伯泰英
yasuhide saeki

帰還
古着屋総兵衛11
総兵衛ら一行を乗せた大黒丸は三浦半島浦郷の深浦湾に停泊した。そこで江戸での商いに必要な荷物を下ろし、富沢町へ運び、ふたたびの古着商いを始めたかに見えた。しかし、総兵衛は一同を地下に集めて、大黒屋の閉店を告げる。これからは鳶沢村の一同と江戸の一同を総入れ替えして、外国との取り引きに鳶沢一門は活路を開く決心を伝えた。琉球はそのための大事な足がかりとなった。城内では5代綱吉が最期の時を迎え、側用人として全盛を誇った柳沢吉保の凋落が決定的となった。吉保は邸宅に引きこもり、静かに息を引き取っていく。その前に、今後100年の後に鳶沢一門を破壊すべく恨みを込めた祈祷をした。総兵衛は大黒丸が南の海へ商売に漕ぎ出すのを見送りながらも、自らは鳶沢の地に残った。遠くベトナムの地でソヒとの間に子どもが生まれた予感はしていたが、それを表には出さず、鳶沢村で往生する。シリーズ最終巻。 (2015.12.13) 新潮文庫 2011年9月 705円

交趾
古着屋総兵衛10
琉球沖での海戦で帆柱と舵を傷めた大黒丸は、潮に流されるままに南海の孤島にたどり着いていた。総兵衛はそこで、船の修理を行った。無人島だった場所に数ヶ月住み続け、大黒丸の乗員は、あらゆる操作に長けるようになった。やがて本修理を終えた大黒丸は、琉球へ戻らずに、さらに南下する。せっかくここまで来たのだから、さらに南方で交易を試みようと考えたのだった。船は、交趾と呼ばれる都市に到着した。徳川幕府が鎖国政策を始める前に、多くの日本人が渡って交易をした町だった。いまでは土地の高官となり、強い権力を蓄えていた。総兵衛はその頭領と会い、今後の取引について契約を交わす。江戸から運んできた多くの積荷を、土地の貿易商に託して、大黒丸は代わりに世界中から集まる日常品からぜいたく品までの船倉に詰め込んだ。 (2015.12.1) 新潮文庫 2011年8月 590円

難破
古着屋総兵衛9
一回目の航海を終えた大黒丸は江戸で船積みを終えてふたたびの商業航海へ出帆していた。それを快く思わない柳沢吉保は、影の力を利用して、ふたたび大黒屋に戦いを挑んできた。それは、大黒丸の秘密を探り当て、これを攻撃し、沈めてしまおうという計画だった。大黒丸はだれもが予想しない北回りの航路を使って津軽海峡から日本海へ抜けた。しかし、そのとき、大黒丸の危険を知った大工の箕之吉は、一路、大黒丸を追って旅に出た。総兵衛は、統五郎親方が推挙した與助を二回目の航海に乗せていた。総兵衛はなぜ主船頭以下数名しか知らない航路を箕之吉が知りえたかが心配になっていた。考えられることは、船員のなかから情報が外へ漏れているという可能性だった。総兵衛の心配は箕之吉と総兵衛が小浜湊に着いたときに的中する。大工の與助が消えたのだ。自ら情報を柳沢吉保側へ流すことによって、身売りされた妹を救い出そうと決めていたのだ。大黒丸は船底に秘密の空間が作られていた。與助はその空間を利用して、船内のあちこちに移動して、航海の秘密を入手していた。総兵衛と箕之吉を追跡していた駒吉と箕之吉に発見された與助は、暗がりの中で自らの命を絶つ。琉球へ向けて出航した大黒丸は、隆元寺が待つ異国の海賊船と最後の船戦をして、梶を破壊されてしまう。 (2015.11.17) 新潮文庫 2011年7月 590円

知略
古着屋総兵衛8
祝言を挙げた総兵衛と美雪は熱海でくつろいだ日々を送っていた。そこへ江戸から急使が届き、ふたりだけの日々は幕を閉じる。総兵衛は京都へ向かい、美雪は江戸へ戻る。柳沢吉保が甲賀衆を使って、将軍綱吉に若い女性を差し出す謀略が進行していた。甲賀衆はその女性を京都から江戸まで安全に護送する役目と、大黒屋の殲滅を任務としていた。江戸湾の隠し入江では鉄で防御した戦船がこっそりと造られていた。やがて異国からの航海を終えて、帰ってくる大黒丸を襲うための船だった。総兵衛は、京都へ向かい、吉保が綱吉に差し出そうとする女性の身辺を調査した。その結果、すでにその女性は亡くなっていることが判明し、現在、生きているように振る舞っていたのは、偽物だったことまでわかった。吉保は甲賀衆の妖術を使う偽物を将軍へ送り込もうと画策していたのだ。大黒屋では、美雪懐妊の知らせを受けて、跡継ぎ誕生の気運が高まる。 (2015.11.8) 新潮文庫 2011年6月 629円

雄飛
古着屋総兵衛7
大黒丸の試走に総兵衛が乗った。それは、すでに大黒丸の乗員が操船の多くを学び、実質的な公開の準備が整ったことを表していた。大黒屋では作次郎とおきぬの婚礼の夜を迎えた。その日、大目付の本庄に呼ばれた総兵衛は、柳沢吉保が大黒丸を差し押さえようとしている情報を得た。総兵衛は、作次郎とおきぬの婚礼を深夜に済ませると、一族に明朝の大黒丸出港を命じた。行き先や旅の目的はすべて伏せられ、船長以下数名に書状が手渡された。作次郎とおきぬは船上にあり、海上で総兵衛からの書状を目にして驚く。自分たちに琉球で支店を開店し、その店長として海外からの荷運びを任せると書いてあったのだ。総兵衛は本庄の娘の絵津が金沢藩の前田家に嫁入りする行列を任された。本庄は大目付なので江戸を離れることができなかったからだ。絵津の代父として、祝言の席に参加することになった。本庄と前田家の婚姻を阻止しようとする柳沢の意向で刺客が差し向けられる。それらを総兵衛ら大黒屋一統がことごとく退け、絵津の祝言は無事に終わる。途中で鳶沢村から合流した深沢美雪に、総兵衛は自分の嫁になることを告げ、ふたりして祝言の席に望んでいた。 (2015.10.22) 新潮文庫 2011年5月 629円

朱印
古着屋総兵衛6
柳沢吉保は5代将軍徳川綱吉の寵愛を受けて大老各に昇格した。幕府中枢のだれもが、吉保のことを快く思っていなかった。しかし、綱吉の手前、だれも手を出すことはできなかった。その吉保がついに甲府城主として領地を拝領した。川越から多くの家臣団を引き連れて、甲府へと入城したのは吉保の息子の吉里だった。その家臣団の中に、かつて徳川と対峙した武田武士の流れを組む赤備えの甲冑を身につけた武川衆と呼ばれる一団がいた。そこには、病弱で先が短い綱吉亡き後、自身の立場が危うくなることを予見した吉保の策謀があった。綱吉から息子の吉里へ征夷大将軍を譲る遺書を書かせていたのだ。そして、江戸から甲府へ遷都して、謀反を企てようとしていたのだ。総兵衛は自ら甲府に入り、そこまでの企てを暴いたが、甲府を出て鳶沢村へ逃亡するときに、一族のおきぬと信之助とはぐれてしまう。おきぬは腿に深手を負い、信之助はおきぬを助けながら逃亡をしていた。ふたたびおきぬらを救うために総兵衛は甲府へ戻っていく。鳶沢村で、一族に迎えられた美雪を供にしていた。 (2015.9.26) 新潮文庫 2011年4月 667円

熱風
古着屋総兵衛5
江戸の町に子どもたちが大挙して伊勢へ参るのが流行っていた。大黒屋からも小僧の2人と手代風のが1人、あわせて3人が伊勢へ向かった。問題はそのなかのひとりである栄吉が、影から渡された鈴を持参してのお伊勢参りになったことだ。総兵衛は、影の品物を取り戻すべく、3人の後を追う。その結果、栄吉が実の父親を殺したかもしれないという事実をつかむ。日本中で同時に実施された子どもらによるお伊勢参りは、都市機能を麻痺させてしまいかねない状態になっていた。だれが、この策動を考案し、シナリオを書いたのか。総兵衛は、栄吉らを追っていく。 (2015.9.8) 新潮文庫 2011年4月 705円

停止
古着屋総兵衛4
江戸での古着扱いについて総代の地位を奉行所から取り上げられた大黒屋は、実質的には富沢町の中心的な役割を担っていた。そんな折、歌舞伎を見に行った総兵衛は役者の市川団十郎が芝居の途中で殺される事件に遭遇した。総兵衛は事前に団十郎から内々の相談があると持ちかけられていた。団十郎の話を聞く前に刺客が団十郎を襲った。何を総兵衛に相談しようとしていたのか。その疑問を解く前に、総兵衛と大番頭の笠蔵が奉行所から呼び出された。そこでは正式な取調べではなく、いきなり商いの停止が命じられ、古着に新品を混ぜた罪を押しつけられた。古着に時季を過ぎた新品が混ざることはこれまでも認められてきたことなのに、なぜ奉行所は大黒屋のみ商いの停止へと強行したのか。残された者たちの戦いが始まる。赤穂浪士が江戸へ討ち入りに来たときに、これを阻止する役目を負わされた深沢美雪は、大黒屋たちの防衛を破ることができなかった。以来、総兵衛を倒すことのみに修行を重ねていた。かんじんの総兵衛が奉行所にいわれなき罪で囚われていたことを知った美雪は、ひとりで総兵衛を奪還する。人知れず行徳に近い浜で時間をかけて、美雪は総兵衛の看護を続けた。 (2015.8.17) 新潮文庫 2011年3月 705円

抹殺
古着屋総兵衛3
大石ら一派の江戸入りを阻止せよという「影」の命令を無視した総兵衛は、影との戦いを覚悟した。配下の者に、影はだれなのかの探索を進めさせていた。そんな最中、総兵衛の子どもを宿した、船宿「幾とせ」の千鶴が惨殺された。それはあきらかに影からの攻撃だった。狂い落ちそうな気持ちを抑えて、総兵衛は実行者を特定し、仇討ちを始める。その背後にいた老中、土屋相模守を追い詰め、長男の昭直が父親に代わって影を実行していたことを突き止めた。影は家康の代から、唯一家長が受け継いでいくと決められていた約定を、土屋は反故にしていた。総兵衛は、影が掟を破った以上、影の命を鳶沢一族が受けるいわれはなくなったと、昭直を抹殺する。父親の土屋相模守の屋敷に忍び込んだ総兵衛は、影と鳶沢一族との絶縁を宣言し、側用人柳沢の指図から脱して、将軍のために仕えるように引導を渡す。 (2015.7.31) 新潮文庫 2011年3月 705円

異心
古着屋総兵衛2
総兵衛は影から赤穂浪士が江戸に入るときはこれを討ち果たせという命を受ける。これまでは影の命は絶対だったが、幕府がとった不公平な措置に多くの江戸のひとびとが不満を募らせていた。その不公平な措置をさらに徹底するかのような影の命に対して総兵衛は疑問を抱く。市中では、古着屋から一定の鑑札両を幕府が集めることになった。柳沢吉保が大黒屋の威勢を削ぐことが狙いだった。しかし、大黒屋は卸商を集めて対応策を協議した。そのなかの一つ井筒屋が裏切ってしまう。総代になった江川屋は柳沢とその妾のお歌の庇護を受けて、次々と大黒屋を追い詰めていく。やがて北町奉行の手先が独断で大黒屋の奉公人を拉致し、殺してしまう事件が発生する。ここにいたり、総兵衛は一族に声をかけて、総反撃を開始する。同じ時期、旧浅野家、赤穂浪士が川崎から江戸に入っていく。影の命を拒んだ総兵衛に今後どのような処分が下るのか。 (2015.7.20) 新潮文庫 2011年2月 705円

死闘
古着屋総兵衛1
徳川家康が江戸に幕府を開いたとき、荒くれ者が多く流入した。家康は公的な治安機関が整う前に、これら荒くれ者を取り締まる必要を感じた。そこで浪人たちのなかから、鳶沢一族に目をつけ、影の治安を任せた。そのため、鳶沢一族は武士でありながら、商人として生きる運命を背負わされた。富沢町に古着屋「大黒屋」として開業した鳶沢一族は、代々に渡って、幕府の影の仕事を請け負ってきた。5代将軍、綱吉の時代は大黒屋は6代目になっていた。幕府幹部のなかから、商人でありながら、絶大な利益と権力を掌握している大黒屋に訝しさを感じた者が現れる。将軍の側用人として、その後絶大な権力をふるう柳沢吉保である。大黒屋の秘密を暴き、その権益を独占しようと、多くの策を使って、鳶沢一族への戦いを挑む。 (2015.6.24) 新潮文庫 2011年2月 667円

光圀
古着屋総兵衛0
五代目総兵衛は息子を連れて水戸へ赴いた。函館から蝦夷への探索に向かう船を見送るためだった。大黒屋の真のお勤めである徳川幕府を陰から守ること。その誕生秘話へと近づく。 (2015.7.7) 新潮文庫 2015年4月 670円

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