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田中慎弥
sinya tanaka

共喰い
昭和63年7月に17歳の誕生日を迎えた遠馬は、1歳年上で別の高校に通う千種とつきあっていた。会えば二人は必ずセックスをした。しかし、遠馬は気持ちよくても、千種は痛いだけだった。川辺という地域に住んでいた。遠馬の父は、セックスをするときに相手に暴力をふるう癖があった。自宅近くで魚屋を営む仁子は遠馬の母だったが、父の暴力がいやで離婚した。父のこどもである遠馬とともに暮らすことも拒んだ。しかし自宅近くに住んで、遠馬が魚屋を訪ねることを楽しみにしていた。父はバーのホステスをしている琴子と住んでいた。遠馬は琴子と父がセックスする様子をこっそり眺めた。父は琴子にも暴力をふるいながらセックスをしていた。自分にも父と同じ血が流れている。興奮した遠馬は千種とのセックスのときに父のまねをした。恍惚状態になった。千種は「二度と会わない」と遠馬から遠ざかった。祭の日、父は愛想をつかして出て行った琴子を探す。その途中で千種に出会う。社のなかで千種を殴りながらセックスをした。それを知った遠馬は、千種を助け出し、父への復讐を決心する。魚屋で事実を話した。仁子は「あんたがやる必要はない」と、自ら出刃包丁を持ち出して、父を刺し殺した。 (2013.2.16) 集英社文庫 2013年1月 420円