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ほぼ毎日更新の雑感「ウエイ」
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高田郁
kaoru takada

金と銀:大海篇

(あきない世傳13

ただいま読書準備中(2022.8.10) ハルキ文庫68020228

金と銀:出帆篇

(あきない世傳12

江戸に店を構えて10年の年月が経った。五十屋江戸本店。店主の幸は年明けに浅草太物仲間の寄り合いで、お上に浅草呉服太物仲間の許可を求める願いを出した。太物だけを扱ってきた仲間に桑や蚕の産地を育てるところから説いた。仲間の同意を得てお上に出した願いは長い期間放置されて、莫大な冥加金と引き換えに認められた。五十屋はかつてお上に多額の貸付を行っていた。未だにその返済は叶えられていなかった。幸は返済を放棄することで冥加金の支払いと相殺した。7年ぶりに五十屋に呉服が戻ってきた。華美で高価な呉服に憧れの眼差しを向けながら手にすることができない太物を求める長屋のおかみさんたちの気持ちが、幸の胸に疼きとなって広がっていく。そんな時、吉原の衣装比べの話が持ち込まれた

(2022.5.14)ハルキ文庫64020222

金と銀:風待ち篇

(あきない世傳11

浴衣に藍の両面型抜き染めを施し庶民が手頃な値段で売る。幸が店主の五鈴屋は試行錯誤を繰り返していよいよ商品化の目処を立てた。その企ては多くの人々の支持を得て、浴衣で過ごす暮らしが定着した。歌舞伎の公演に合わせて五鈴屋の藍染と菊栄の簪が披露目を見るはずだった。幸は浅草太物仲間に両面染めのやり方を隠さずに教えて、両替商の音羽屋が目論む五鈴屋乗っ取りに対抗した。音羽屋は歌舞伎の演目を強引に変更させて、五鈴屋の両面染めのやり方を盗み浴衣を作った。太物仲間は悔しがったが、幸はまともな商いをする者だけが生き残るとくじけない。勧進相撲の興行主から力士が着る浴衣の藍染を頼まれた幸は力士の四股名を模様にして型を作り藍の両面染めにする。それも太物仲間に広め、勧進相撲の初日から一斉に売り出す算段を決めた。目論見は大いに当たり、四股名入りの浴衣は蔵の在庫が無くなるほどに売り尽くした。五鈴屋に感謝する太物仲間。古手の主人が、お上に浅草太物仲間を浅草呉服太物仲間として認めてもらえるように働きかけようではないかと発案された。今度は自分たちが五鈴屋の役に立ちたいと。幸とともに寄り合いに出た支配人の佐助はすすり泣きを止められなかった

(2021.9.15)ハルキ文庫20218640

金と銀:合流篇

(あきない世傳10

江戸での呉服商いから仲間外れにされた五鈴屋。木綿を使った太物商いでの復活を目指していた。仲間外れにされた時の裏切りを繰り返さないために七代目店主の幸は奉公人一同と常に気持ちを一つにする心がけを忘れなかった。そんな中、大阪から鉄助、菊栄、お梅が江戸に到着した。大阪五鈴屋店主の鉄助には太物商いの目指す道を伝える必要があった。菊栄は大阪での暮らしに別れを告げ、江戸での暮らしを始める覚悟で何もかも整理をしていた。鉄助とともに帰るはずだったお梅は力造夫婦のもとで型抜きの仕事をしている梅松が気がかりで滞在を延長した。構想から二年を経て、ついに五鈴屋の藍染め浴衣が川開きの日に江戸の人々にお披露目された

(2021.4.7) ハルキ文庫 20212 620

金と銀:淵泉篇

(あきない世傳9

幸の妹の結が嫁いだ本両替商の音羽屋による五鈴屋への妨害が本格化した。その罠にはまり、五鈴屋はついに呉服仲間から外され呉服商いができなくなってしまう。木綿を中心とした太物扱いに販路を探る日々が始まった。型彫師の梅松と型付師の力造の手によって、ついに木綿の白生地の表裏に糊をつけて漬け染めする技が確立した(2020.12.24) ハルキ文庫 20209 620

金と銀:瀑布篇

(あきない世傳8

歌舞伎役者の衣装に使われた五鈴屋の模様が江戸の女性に好まれ、大いに売れた。これを機にしてほかの呉服屋も江戸小紋を布に染め込む反物を売り出した。幸の妹の結は本両替商の音羽屋の後添えにならないかと目をつけられた。初対面の印象が悪かった幸は明確に断った。奉行所から五鈴屋に千五百両もの上納金申し付けの話が届く。音羽屋が裏で仕組んだものかもしれなかった。手代の賢輔が好きな結は気持ちを伝えるが、手代の身で所帯を持つわけにはいかないと断られた。干支を模様にした新しい小紋柄。いよいよ完成したその型紙が結とともに消えてしまった(2020.12.19) ハルキ文庫 20202 600

金と銀:碧流篇

(あきない世傳7

女名前が許される期限が迫っていた。五十屋江戸店では、月に一度の無料の帯締め指南が好評だった。当初、通っていたお才から型染めについて教わった七代目の幸は、武士にしか許されなかった小紋柄を庶民のものにしようと考えた。そんな時、お才の夫が元は父親とともに江戸小紋の型染めをしていたことを知る。五十屋の新しいあきないに江戸小紋柄を染めた反物をと考えた。しかし、お才の夫の力造は、昔の型染めは二度としないと引き受けなかった (2020.5.14) ハルキ文庫 20198 600

金と銀:本流篇

(あきない世傳6

大坂天満の呉服店、五鈴屋。六代目の智蔵が急逝して葬式を終えた。忌が明けるまでに店の後を誰が継ぐかを妻の幸は考えなければならなかった。大坂には女名前禁止と言って、店の主人に女人がなることを禁止する触れがあった。幸は寄り合いで次の店主が決まるまでの2年間に限って、自らを中継ぎとして七代目に就任することを願い出て了解を得た。その間に江戸に出店を作り、自分は江戸で商いを続けることを決めた。その時のために江戸に奉公に出していた手代から、都合の良い空き店舗が見つかったと知らせが届いた (2020.5.14) ハルキ文庫 20192 580


金と銀:転流篇

(あきない世傳5

真澄屋による桔梗屋の乗っ取りを防いだ五鈴屋。奉公人も屋敷もそのままにして五鈴屋が買い取った。本店と高島店として、順調な商いを展開した。そんな時、幸は子どもを身ごもった。少しずつ産み月が近づくがある日破水して流産してしまう。幸の悲しみを救おうと智蔵は人形浄瑠璃で新しく始まる忠臣蔵に五鈴屋の呉服を提供した。帯に着目した幸の狙いは大きく当たった。江戸への視察に出かけた賢吉の報せを受けて智蔵は幸と二人で江戸に向かうと宣言した。 (2018.8.23) ハルキ文庫 20182 580


金と銀:貫流篇

(あきない世傳4

五十鈴屋五代目の惣次が大きな負債を長浜の養蚕家たちに追わせて出奔した。幸たちに知らせることなく、天満呉服組合に隠居願を出し、幸との関係も離縁とした。五十鈴屋の富久は、幸の商才を認め、離縁の後も五十鈴屋に幸が残れる道を模索した。そんな時、番頭たちのはからいによって、三男坊の智蔵が店に戻り六代目を襲名することになった。その条件として、幸を自分の女房にすることを掲げた。商才に長けた幸の手足となって表舞台で人形を演じようと決意してのことだった。 (2018.7.20) ハルキ文庫 20178 580


金と銀:奔流篇

(あきない世傳3

五代目徳兵衛の妻になり、五十鈴やを奥から支え始めた幸。徳兵衛の意図を組みながら、いつか商いの戦国武将になると誓っていた。徳兵衛は次々と斬新な手法を取り入れて、四代目で傾いた五十鈴やを立て直していった。いつしか徳兵衛は幸の存在に嫉妬を抱くようになる。商いに情をはさまない徳兵衛のやり方は数字を押し上げても手代や番頭の心をつかまなかった。幸の発案で生糸の産地だった近江の波村に機織の投資を成功させた徳兵衛は、波村への投資に左前の両替商の手形を使っていた。その両替商が破産すると更に追い銭を投資して、波村が五十鈴やから離れられないように画策した。真相を知った幸は徳兵衛を強く罵り、すぐに波村に行き、詫びるように諭した。しかし、徳兵衛は幸の左ほほが腫れるほど殴り倒した。翌日、波村の庄屋らが五十鈴やを訪ねた。開き直る徳兵衛を無視して不義を詫びる幸に庄屋らは耳を傾けた。新しくちりめんを織ってはどうかと幸は提案した。幸を店主にするなら波村は五十鈴やとの取り引きを継続すると宣言した。徳兵衛は、癇癪を起こして店を飛び出した。 (2017.10.7) ハルキ文庫 20172 580


金と銀:早瀬篇

(あきない世傳2

大阪の呉服問屋五十鈴屋に奉公に上がった幸は、女衆として熱心に働いていた。3代目の徳兵衛が若くして他界したので、徳兵衛の母である富久が孫の4代目徳兵衛を育てていた。しかし、4代目徳兵衛には商いの才能がなく、店をほったらかして女遊びばかりを繰り返していた。次男の惣次は反対に商いの才能が有り、主なき店を支え続けていた。富久と徳兵衛と惣次はいつも口論をする。そんな折に兄弟が殴り合い、それを仲裁した番頭の治兵衛が卒中風で倒れてしまった。からだにまひが残り、富久は治兵衛を別家扱いにした。長年五十鈴の暖簾を守り抜いてきたのは治兵衛あってこそだったのだ。いよいよ呉服仲間からも疎まれ始めた五十鈴は、これ以上徳兵衛の放蕩を仲間が許さないことを知る。仲間は、徳兵衛が遊びまわらないようにのち添えをもらうことを確約させた。しかし、遊びまわっているぼんぼんに娘を嫁がせようという商家は見つからない。治兵衛の提言を受けて富久は幸を徳兵衛の嫁にすることを決めた。あほぼんぼんの妻になることは望まなかったが、一生女衆として終わることは避けたかった幸は、商売に携われると判断し、徳兵衛の妻になる決意をする。17歳になり、女の体になった幸を、ある夜徳兵衛が抱こうとしたとき、思わず幸は逃げまどい、行燈を倒して畳を焦がす。亭主をあほ扱いして、身の汚れを洗おうと井戸端に立つ。それを惣次は目撃していた。嫁にコケにされ、祖母からもなじられ、徳兵衛が帰らない日が続いた。ある朝、戸板に乗せられた徳兵衛が運ばれてきた。酔って女遊びの帰りに河原に転び、そのまま意識を失ったという。徳兵衛は意識が戻らないままあっけなく亡くなった。惣次は5代目を継ぐにあたって富久に条件を出した。幸を嫁にするという条件だった。 (2017.4.4) ハルキ文庫 20168 580


金と銀:源流篇

(あきない世傳1

兵庫県に近い大阪。昔の津門で育った幸は、幼いときに父と兄に死なれて、大阪へ奉公に出された。奉公といっても男衆のような出世するものではない女衆としての奉公だった。学者だった父の影響で文字やよのなかの営みに興味が強かった幸は、呉服問屋「五鈴」になかなかなじむことができなかった。炊事と掃除、給仕ばかりの日々は女に生まれたことを悔やませた。しかし、番頭の治兵衛にその特別な才覚を見出されてからは、ひそかに商いの勉強を許されて、みるみる知識や知恵を身につけていく。五鈴は3代目が早くして亡くなり、男子3人が残っていた。3代目の母が3人を育てて長男の徳兵衛を4代目に据えた。次男の惣吉は兄と折り合いが悪かった。仕事熱心な惣吉は、女遊びばかりしている兄を許せなかったのだ。また末っ子の智蔵は本ばかり読んでいて商いに協力しない。ついに3兄弟は衝突し、智蔵が家を出てしまう。徳兵衛は嫁を迎えるが、女遊びが止むこともなく離縁。惣吉は3年後には大店を出て分家して、いつの日か本家をしのぐ商いをすると宣言した。呉服が売れなくなり、店が傾き始める中、番頭の治兵衛は徳兵衛にぴったりの地味で商いに才覚のある女性を捜していた。ある日、その目に幸の姿が舞い込んだ。 (2016.6.22) ハルキ文庫 20162 580


蓮花の契り(出世花2

青泉寺で三昧聖として、死者の湯灌を行う正縁。そこにかつて自分を捨てた母であるお香が訪ねてきた。住職の正真にしばらくの間、正縁をお店で預からせてもらえないかという申し出だった。自分を捨てた母への複雑な心境を捨てきれない正縁は即座に断るが、正真にしばしの時間をかけて考えるようにすすめられる。正真は、お寺しか知らない正縁にとって、同世代のひととの交わりや社会生活一般を知ることの必要を説く。正真の言葉に従った正縁は、桜花堂で期間を決めた生活を送ることにした。お香の息子の仙太郎には、お染という妻がいたが、お香との間がうまくいっていない。そこに三昧聖の正縁が加わって、お染はますます意固地になっていく。やがて、仙太郎との仲は壊れ、お染は実家に戻ってしまう。寺に戻る約束の日が近づくにつれて、お香は正縁にこのまま店に残って、仙太郎と夫婦になってくれないかと願う。正縁は、みな自分の気持ちのままに生きて、それを自分に押しつけようとする考え方に苦しむ。それでも自分の気持ちを真っ直ぐに正縁は約束の日に寺に戻った。そして、副住職の正念に環俗の願いが届く。実家の跡取りが不在になり、このままではお家が取りつぶしになってしまうと言う。しかし、正念は仏に仕える生き方を守る決意を新たにした。そのとき、正縁と正念のつながりを多くの周囲の者があたたかく見守る。正念に僧籍を離れて、正縁と夫婦になるべきではないかと。ふたりは、悩み、苦しみ、弱ってしまう。 (2015.11.24) ハルキ文庫 20156 600


出世花

妻敵討ちのため、父とともに各地を行脚したお艶は、江戸の町中で父の死と対面する。道端の毒草を口にした父を下落合の青泉寺の住職が見つけ看病したが、そのまま死んでしまった。娘のお艶は、行く先がない世界に放り込まれたが、寺のひとたちの生活を助けて、少女時代を過ごしていく。そこでお艶は、同じ読み方の「縁」という名前を正覚住職からいただき、死んだひとを洗い清める仕事を覚える。当時、死体は土葬にされるのが一般的だったが、火屋をもつ墓寺で火葬にするひとも増えてきていた。やがて年頃になった縁に縁談の話がいくつも舞い込むが、縁は死体を洗い清める湯灌という仕事に興味をもち、正縁となって寺で生きていくことを決心する。寺に拾われたときから、ずっと兄のように慈恵の眼差しで導く修行僧の正念とともに、正縁はひとの生き様と死を湯灌を通じて学んでいく。著者が小説家としてデビューした記念作。 (2015.11.12) ハルキ文庫 20115 600


あい

江戸時代末期から明治時代初期にかけて、医療と開拓に従事した関寛斎の妻、あいの物語。房総の貧しい農村に産まれたあいは、遠縁の家に機織りを習いに行く。そこで、息子の関寛斎と結婚することになる。互いに好き合ったわけではなく、親同士が決めたことだ。当時はそれが当然のことだった。関寛斎は、佐倉まで医療を学びに行く。その間、あいは前之内村で機織りをしながら、家計を助ける。やがて、関寛斎が銚子に開業することに合わせて、夫婦で移り住む。そこでふたりは、ヤマサ醤油の主人と出会う。貧しい者からは代金を取らず、富める者からは多めの代金を取る。関寛斎のやり方に共鳴した主人の濱口は、その後、長いこと、資金面でを支援することになった。徳島藩で侍医を探していたとき、関寛斎に声がかかり、一家は徳島へと渡った。そこで、漢方医学全盛の藩において、蘭学を主とした医学で、藩主の信頼を勝ち得ていく。しかし、関寛斎は屋敷が広くなり、名声を得ても、貧しい者からは代金を取らないやり方を変えなかった。12人の子どもを産んだあいは、そのうち半数を病でなくしてしまう。生きながらえた子どもたちが、北海道での開拓に人生をかける。関寛斎は、70才を越えてからあいとともに札幌に渡り、開拓作業に従事することにした。 (2015.11.2) ハルキ文庫 20152 640


銀二貫

江戸時代中期。18世紀の寛政年間。大阪の寒天卸問屋「井川屋」の主人、和助は寒天製造元から銀二貫の返済を受け、帰路にあった。途中、壮年の武士と幼い子ども連れが、敵討ちに合う。その場面で和助は、息も絶え絶えの父を守る子どもを倒そうとする敵持ちから、銀二貫で敵討ちそのものを買ってしまう。武士の弔いをして、子どもを店に連れ帰った和助は、番頭の善次郎、丁稚の梅吉とともに、その子どもを丁稚として働かせることにした。名前は松吉。松吉は和助が天満宮に寄進しようと思って運んでいた銀二貫を、自分の敵討ちのために使ってしまったことをこころに留め、必死に丁稚奉公を続けた。店の寒天を料理に使う「真帆家」の主、嘉平にもっとこしの強い寒天があれば、料理の幅が広がると諭されて、冬の間に寒天場にこもって修行をする。嘉平には真帆という娘がいた。ある日、大阪に火事があり、真帆家は全焼し、嘉平らの行方はわからなくなってしまった。数年後、松吉は顔の半分に火傷を負った「おてつ」という娘と出会う。それはまぎれもなく真帆そのものだった。事情がわからない松吉は真帆との再会を喜ぶが、真帆はおてつとして生きていく自分の前に、二度と顔を見せないでほしいと頼み込む。 (2015.10.6) 幻冬舎文庫 20108 600


ふるさと銀河線

著者が川富士立夏というペンネームで原作していたマンガを小説化したもの。列車や駅が登場するシリーズ。北海道のローカル鉄道「ふるさと銀河線」を利用する3人の女子中学生。工場受験を控え、2人は陸別という故郷を離れた町の高校へ向かうという。ひとり陸別に残り、福祉の仕事をすべく高校を選んでいた主人公は、友人らから本当に自分がやりたいことは、演劇ではないのかと問われる。ひとり芝居が認められて、全国優勝をしたのだ。しかし、その思いを封印して、主人公は陸別に残ることを選ぶ。自分はこの町が好きだからだ。多くのひとが離れていってしまう。それでも自分はここに残り、鉄道の運転手をする兄とともにふたりで生きていくと心に誓う。両親は二人を残して交通事故で亡くなった。ふたりは幼い兄と妹で必死に生き抜いてきたのだ。 (2015.9.13) 双葉文庫 201311 600


みをつくし料理帖11
花だより

澪が大坂に戻ってからの日々を綴った特別編。つる家の主人、種市が偽の易者に悪い卦をかけられ臥せってしまう。せめて生きている間にもう一度澪に会いたい一心で大坂を目指す。かつての想い人である小野寺。その妻となった乙緒との物語。吉原から大坂の生家再興を果たした野江が命を張って自分を守った又次を忘れずに、新たな道を歩き出す。源斉の妻となった澪が夫の苦しみを料理で助けようとする。4つも物語が進行する。 (2020.1.4) 角川春樹事務所 20189 600


みをつくし料理帖10
天の梯

つる家から独立して小さな店を開いた澪。吉原へ鼈甲珠を送り届け、店では安い惣菜を作る。午後から夜はつる家を手伝う。いつか吉原のあさひ太夫を自分の手で見受けしたいと願うが、目標の4000両は遠い。そんななか一柳の主が自身番に引き立てられた。公方様にしか認められていない酪を密かに作っていたのではないかという疑いがもたれたからだ。しかし、主の柳吾は客が忘れたものを届けただけだったのだ。狼狽してやせ衰えた芳は、息子の佐兵衛を頼る。あるとき、澪はやつれた佐兵衛と出会う。これから自訴して、過去の罪を告白するという。それはいまは隆盛の登龍楼の主に騙されて、ひそかに酪を製造した過去だった。佐兵衛の自訴により柳吾は返された。そして奉行所が登龍楼に入り、酪の製造を裏付ける。主は逃亡したが、かかわった者たちは引き立てられた。医師の源斉と御膳奉行の小野寺が奉行所に掛け合い、佐兵衛の罪を解く。澪は、札差の摂津屋からあさひ太夫の身請けについての覚悟を問われる。いつの日か必ずと思いながら、その目途が立たないことを告白するが、摂津屋のアドバイスで、澪は鼈甲珠の作り方から一切を翁屋へ4000両で売り渡す決意をする。これにより、あさひ太夫の身請けが決まった。しかし、女が女を身請けすると江戸の町では住めなくなる。悩む澪に医師の源斉は「あなたの悩みを分かち合わせてほしい」と願う。自分とともに大阪に行って、夫婦になってほしいとも。源斉の深い思いを知った澪は、摂津屋と源斉に相談して、太夫の新しい身請け先を考えた。それはふたりを襲った悲劇によって破壊された大阪屋の復興だった。 (2015.8.25) ハルキ文庫 20148 620


みをつくし料理帖9
美雪晴れ

芳は息子の佐兵衛から一柳の女将になる許しを得て、主人の求婚を受けた。澪は自分がつる家から独立して、どんな料理人になりたいかを悩んでいた。一柳の主人、柳吾は、自分の店に入って料理人としての技を磨くように言われる。鼈甲珠を吉原の翁屋で販売することによって、少しでも野江の身請け資金を作りたい澪は、つる家を辞める日にちを決めた。種市もおりょうも、りうも臼も、澪がつる家を辞めたら、一柳で修行をするものだと決め込んでいた。種市と医師の源斉が板場で夜遅くに酒を酌み交わす。酔いつぶれた種市を内所に寝かせて、澪は源斉に酒を注ぐ。自分の行く末で悩んでいることを相談する。源斉は「食は人の天なり」という言葉を大事にしている澪には、すでに未来は見えているのではないかと諭す。源斉の言葉に、澪は気持ちの底を覗くことができ、つる家の近所に空き店舗を借りた。吉原の翁屋には鼈甲珠を卸して、販売してもらう。自分は人のからだを健やかにする料理を、小さな店で作り始める決意をした。 (2015.8.21) ハルキ文庫 20142 620


みをつくし料理帖8
残月

吉原の火事で又次を亡くしたつる家の面々は、それから一ヶ月が過ぎても又次の面影を忘れらずにいた。とくに又次から料理の基本を教わっていたふきは、骨壷に入った又次を思っては瞼を濡らしていた。江戸では疫痢が流行っていた。次々とこどもたちが病気にかかり、死んでゆく。医師の源斉はただ「ご臨終です」としか言えない自分を責める。お盆の時期、澪はそんな又次を迎え、面影膳を作ってつる家の面々を又次を思う。送り火の盂蘭盆会が近づいた。送り火に使う素焼きの皿が鉢の後ろに隠されていた。それは又次を送りたくないふきの細工だった。吉原から身請けされたしのぶが亭主とともにつる家を訪れて、芳の息子、佐兵衛に関する話題を漏らした。しのぶは芳の過去を澪から聞いて、佐兵衛らしき男に真偽をただし、真実ならば芳に会うように説得すると約束してくれた。澪は登龍楼から、火事で焼けた吉原に再建する店を澪に任せたいと願い出られた。澪は4000両の身請け金が払えるならばと応じる。それはあさひ太夫を身請けする大金だった。登龍楼の主は、自分を満足させる料理を作る賭けに勝ったら、4000両を払おうと勝負に出た。料亭、一柳の主が大雨の後、芳を心配して店の周辺に現れるだろう佐兵衛を捕らえていた。芳は4年ぶりに佐兵衛と再会する。そこで佐兵衛は、二度と料理の世界には戻らないと芳に伝えた。こころがふっきれた芳は、澪に天満一兆庵の再建はあきらめると宣言した。一柳の主、柳吾は息子の坂村堂が一柳の再建を願う言葉を聞き、興奮から心臓を患い寝込んでしまう。坂村堂からの願いで、芳が看病に出る。芳の手厚い看護のおかげで、柳吾は復調した。看護の間、芳は一柳の奉公人たちに、大店であっても忘れてはいけない心遣いをていねいに教えていた。復調祝いの葛湯を出した柳吾は、芳に自分の残りの人生をともに歩いてくれと願い出た。 (2015.8.12) ハルキ文庫 20136 619


みをつくし料理帖7
夏天の虹

想い人との結婚をあきらめた澪は料理に精進しようとする。そんなとき小松原の祝言の噂を聞いてつる家を飛び出した。夜の祝言を遠くから眺めた澪は、翌日から嗅覚を失ってしまう。医師の源齋は、こころから発している病なのでとき薬しか手立てがないという。つる家の種市は、吉原に頭を下げに行く。三方よしの日だけ料理を手伝う又次を2ヶ月間、つる家で借り受けることにした。いつもは澪が主で、又次が従だが、関係が逆転する。澪は坂村堂の父親の一柳から皿の目利きを諭される。匂いと味がわからないいまだからこそ、できることを増やせとの教えだった。又次がいた2ヶ月間はあっという間に過ぎていく。そして、最後の日、又次と種市は連れ立って吉原へ向かった。店に襷を忘れていたので、澪は二人を追いかけた。それはふくのために置いてきたものだと又次はいう。そのとき、吉原から鋭い半鐘が鳴り響いた。又次はあさひ太夫のいる廓へ飛び込んでいく。澪も種市も後を追う。火の勢いは強く、吉原のいくつもの楼は瞬く間に崩れていく。そのなかからあさひ太夫を抱いた又次が戻ってきた。駆け寄った澪は、焦げついたあさひ太夫の髪の匂いをかぐ。嗅覚が戻ったのだ。背中に大きな傷を負った又次は、澪に太夫を預けて倒れこんだ。 (2015.7.25) ハルキ文庫 20123 619


みをつくし料理帖6
心星ひとつ

吉原の店主から料理店をなかに開いてみないかと澪は誘われた。季節の膳を提供したときに、客からとても喜ばれたことが理由だった。大金を使って幼なじみの野江を吉原から引き出すことを夢見てきた澪にはありがたい提案だった。同じ時、これまで何度も嫌がらせをしてきた老舗の「登龍楼」から店を居抜きで安く買わないかという提案があった。ただしその店で澪が働くという条件がついた。両方とも夢のような話だったが、澪は迷った挙げ句、両方とも断ってしまう。自分は身の丈にあった店で料理の腕を磨き、その店を大きくしていくと決意した。そんなとき、片思いの小松原の妹がつる家を訪ねて、母親の元へと澪を連れて行く。病に伏せっていた母親は澪に息子の嫁になってくれないかと懇願する。武家奉公をして、養女になり、そこから小松原の家に嫁ぐという方法だった。自分の気持ちに素直になった澪は、小松原の妻になることを決めた。武家奉公の日が近づくに連れて、澪の不安は大きくなり、ついに悩みを医師の源齋に相談してしまう。源齋は、心星を見上げて、周囲に惑わされない自分の気持ちを見つめるようにと告げた。 (2015.7.14) ハルキ文庫 20118 590


みをつくし料理帖5
小夜しぐれ

医師の源斎を思う伊勢屋の美緒は、父親から番頭との祝言を言い渡されて家を飛び出した。それを版元の坂本堂が引き取り、伊勢屋にかけあう。なぜ以前は源斎との婚礼を認めていた父親が番頭との祝言を強行しようとするのか、理由がわからない美緒は苦しむ。澪はひそかに伊勢屋を訪れ、番頭の姿を追う。そこにはかつて自分が大阪で世話になった店主のような心もちと言葉かけをする番頭の姿があった。番頭のよさに気づかない美緒は、それでも坂本堂から出ようとしない。澪は吉原で花見の料理を作った帰りに、なかで料理屋を営んではどうかという廓店主の申し出を思い出す。それにはけがで動かなくなっている指が元に戻ること。自分にそう言い聞かせていた。芳の体調をうかがいに訪ねてきた源斎に、自分の指が元通りになるかを尋ねた。源斎は苦しそうな顔をして、澪の手を握り「自分の技術が未熟でいまはまだ治せない」と頭を下げる。ふすまの向こうでそれを見てしまった美緒は、番頭との祝言をこころに決めた。 (2015.7.2) ハルキ文庫 20113 590


みをつくし料理帖4
今朝の春

年の暮れが近づいた。江戸の町で恒例の料理番付が出されようとしていた。しかし、今年は大店の登龍楼と澪が料理人のつる家の料理が拮抗しすぎて、番付が出されないことになった。そこで版元が両者に同じ食材での料理勝負を企画した。乗り気な店主の種市、その脇で消極的な澪。それでも逃げたと言われるのを恐れた種市の気持ちを察して、澪は勝負を受けた。食材は寒鰆。春の魚を冬に調理する方法を考える澪。試作品をいくつも作るが満足がいかない。そんなとき、公方様に食事を提供する御前奉行が不祥事をはたらいたという噂が広がった。澪の思い人である小松原のことではないかと気をもむ。その心のすきが出刃包丁での怪我につながる。「花嫁御寮」「友待つ雪」「寒紅」「今朝の春」を収録。 (2015.6.12) ハルキ文庫 20109 590


みをつくし料理帖3
想い雲

芳の長男、左兵衛の消息がわかった。上方の味を守り、頑なに変化を拒んだために奉公人から突き上げられ、吉原の花魁絞殺の嫌疑までおって、店を畳まざるを得なくなったとのことだった。いまもどこかで生きている。その望みが芳に生きる力を与えた。ふきの弟の健坊は奉公先で失敗して逃げてしまった。つる家は店を休みにして健坊を探すが見当もつかない。ふきは絶食し、澪は料理で味見を忘れた。「豊年星」「想い雲」「花一輪」「初雁」を収録。 (2015.6.2) ハルキ文庫 20103 571


みをつくし料理帖2
花散らしの雨

つる家が焼け出され、元飯田町で再建した。澪と芳の住む長屋では、おりょうの息子の太一が麻疹にかかった。当時の麻疹は命を奪うこわい病だった。特効薬がないので、本人の生きる力にすがるしかない。医師の源斉が懸命の治療を施す。澪と芳は子どもの頃に麻疹にかかっていたので、太一の治療をしても大丈夫だった。しかし、母親のおりょうはかかったかどうかの記憶が曖昧だった。太一の状態が良くなるにつれ、反対におりょうに麻疹の兆候が見え始めた。つる屋と長屋とを往復しながら、澪と芳の懸命の看病が続く。そのおかげでおりょうも一命を取り留めることができた。 (2015.5.18) ハルキ文庫 200910 571


みをつくし料理帖1
八朔の雪

大阪の淀川が大雨で氾濫した。そのとき漆職人だった父親と母親を澪は亡くした。腹を空かして盗みを働こうとしたとき、料理屋の女将である芳に救われた。その料理屋に雇われた澪は、火事によってふたたび住むところをなくした。江戸で上方の店を出すために店主と女将と移り住んだ澪は、そこで店主を亡くし、芳との二人住まいとなった。草が生い茂ったお化け稲荷の草を取り、稲荷神社を復元していた澪は、「つる家」の主人、種市に拾われた。蕎麦屋のつる家に奉公しながら、澪は上方の料理と江戸の料理の違いに驚いていく。昆布からとる出汁と鰹節からとる出汁。双方の違いが、決定的となって江戸の職人たちに澪の料理は受け付けてもらえない。どうすれば、澪独自の出汁が作れるのか。試行錯誤の果てに、澪はあわせ出汁を思いつく。 (2015.4.29) ハルキ文庫 20095 552


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