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柴田よしき
yoshiki shibata

聖なる黒夜・麻生シリーズ2
2月14日が過ぎた。翌日の明け方、練は小田急線の線路に横たわっていた。始発電車が来るのを待っていた。そして、自分の人生を終わりにしようと思っていた。そこに韮崎が通りかかった。韮崎は自分の車で愛人の皐月のところに向かう途中だった。しかしブレーキの調子が悪いので、舎弟に車を修理工場に出すように言い含めて、徒歩で皐月のマンションに向かっていた。その途中で、練を見つけた。練は、そのときから韮崎のものになった。バレンタインデーの夜、何が練の身にあったのか。それをだれも問い詰めなかった。その後、春日組の幹部になった韮崎は、都内のホテルで首を手術用のメスで切られて殺された。人一倍、用心深い韮崎が、ホテルの浴槽で全裸のときになぜ護衛もつけずに首を切られたのか。捜査本部は暴力団同士の抗争と素人による殺人の両面から調べていく。暴力団担当の及川と殺人担当の麻生。ふたりは大学時代の先輩と後輩にあたる。剣道で世界選手権準優勝まで上り詰めた及川の身辺の世話をしていたのが後輩の麻生だった。体育会系の剣道部では先輩と後輩の関係は主人と奴隷だった。及川は麻生に男同士の性的な関係を強要した。やがてふたりは警察官になり、韮崎の事件でたまたま同じ仕事をすることになった。結婚を境に及川と別れた麻生は、その後、妻の玲子に逃げられた。完璧な夫を演じたはずなのに、玲子は別の男を作って逃げていった。及川は、捜査のなかで練が登場することを知り、麻生と練を引き合わせた。練はもともと世田谷で婦女暴行事件を起こして懲役をくらっていた。そのときの担当が麻生だったのだ。警察の取り調べでは自白した練だったが、裁判では反対に無実を訴えた。麻生は自分の捜査に自信を持っていたが、冤罪の可能性におびえた。自分自身でふたたび世田谷の事件を調べ直そうとするが、多くの妨害が待ち受けていた。村上緑子シリーズに連なる練と麻生の関係が、本作で明らかになっている。文庫化にあたって、上巻と下巻の終わりに二つの短編が収録されている。ひとつは、練の学生時代を描く。理工系の研究を続け、アメリカへの留学を志していたころの話。もう一つは、韮崎事件の後、警察を辞めることにした麻生と練、麻生と練の姉との話だ。(2011.7.12) 柴田よしき 角川文庫 2002年10月 819円

所轄刑事・麻生龍太郎
RIKOシリーズでもおなじみの麻生龍太郎の若き頃の短編集。
「大根の花」「赤い鉛筆」「割れる爪」「雪うさぎ」「大きい靴」「エピローグ」を収録している。
高橋署で刑事をしている麻生は、小さな事件に見えるなかから、だれもが気づかない見落としを見抜いていく。私生活では、大学時代に同性愛に目覚めた経緯が明らかになる。白バイ乗りになりたかった麻生の夢は、刑事としての能力によってくだけていった。本庁に上がる以前の麻生の姿が若々しい。 (2011.5.7) 柴田よしき 新潮文庫 2007年8月 514円

RIKO女神の永遠(1)
新宿署の村上緑子刑事。相棒の鮎川刑事と追っていた事件を警視庁の捜査一課に持って行かれそうになる。リコの元にやってきたのは、かつて妻子ある身でリコと愛し合った上司の安藤明彦だった。さらに高須刑事を引き連れていた。高須はリコの先輩として、捜査のノウハウを教えた。ふたりは次第に先輩と後輩の関係を超えた。同じ時期に上司の安藤を受け入れたリコを高須は許さず、同僚とともにリコを犯した。安藤の妻に殺されかけたリコは、逆に警察内部で淫売と後ろ指をさされ、新宿署に異動になったのだ。男たちの卑屈な考えに真っ向から立ち向かうリコを新宿署の若手たちは支えた。その中にバイセクシャルの交通課の陶山麻里がいた。ふたりは女性どうし、自然に近づいていく。男性の輪姦シーンばかりのビデオが押収された。リコと鮎川は、ビデオは犯罪場面の撮影記録と読んだ。本庁は別件で、輪姦シーンばかりのビデオのマスターテープを押収していた。その後の捜査で、ビデオで犯されていた男性が死体で発見されていたことがわかる。口を閉ざす被害者の遺族。そこに は身の代金誘拐事件が潜んでいた。さらに身元不明の死体が見つかる。犯行グループは無作為に誘拐相手を見つけていたように思えた。しかし、被害者の共通項に鮎川は気づいた。そのなかみをリコに伝える前日に自室で薬物中毒死した。容疑者扱いされるリコは失神する。意識が戻ったとき、医務官は妊娠を告げた。鮎川の仇をとるためにリコは内部通報者からの謎めいたメッセージを解析する。見えてきたのは、認めたくない真実だった。辞表を提出し、拳銃を持ち出した。リコはひとりですべてを終わらせようとした。(2011.4.23) 柴田よしき 角川文庫 1995年10月 629円

聖母の深き淵(2)
磯島豊はトランスジェンダー。男性の体だが気持ちは女性。リコに人捜しを依頼する。リコは言われなければ豊を男性とは気づかなかった。親友の牧村由香が失踪した。高校時代から親友どうしだったふたりは豊に男性の恋人ができたことから疎遠になる。リコはかつての上司、麻生龍太郎を訪ねる。麻生はリコが尊敬する刑事だったが、いまは探偵をやっていた。刑事を辞めた理由をリコは尋ねた。ヤクザの女に惚れてしまい、関係が深まったからだと教えた。しかし、麻生を知るリコは信じない。麻生は豊の依頼を受け、由香を探し出す。由香は覚せい剤中毒で、ヤクザの組織で売春をしていた。豊は売春を辞めるように説得するが、気持ちは届かない。リコは由香が豊の女性に恋をしていたのではないかと読む。新宿署から辰巳署に異動したリコは達也を産んで、妹の菜々子に助けられながら働いていた。安藤は子煩悩ぶりを発揮し、達也の育児を担当する。しかし、ふたりは入籍していない。同じ辰巳署に異動になった城本ははじめからリコに冷たい。城本は本庁にいたときに、乳児誘拐事 件で、犯人を取り逃がし、左遷されていたのだ。全編に漂う柴田ワールドはジェンダーフリー。腐った男たちの一方的な女の見方へのパンチ。性差をこえた愛。(2011.4.29) 柴田よしき 角川文庫 1996年10月 819円

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