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西加奈子 kanako nishi |
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サラバ下 |
姉の貴子は亡くなった矢田のおばちゃんの残した「すくいぬし」を手にして世界へ旅に出た。歩は不安定な暮らしを続けながら、ある日頭髪がどんどん抜けていく事態に直面した。ひとに会うことが怖くなり、父の残した財産を使いながら仕事を削り図書館に行く毎日を送っていた。そんな中、2011年3月、東日本大震災が起こった。 (2019.5.17) 小学館文庫 2017年10月 610円 |
サラバ中 |
日本に戻った歩は高校に進学しサッカー部に入った。そこで目立たず、それでいて人気のある須玖という級友と親しくなった。お互いの家を訪問しあうほどの仲になるが、阪神淡路大震災を境にして須玖は登校しなくなった。心を深く傷つけ、自分が生きていることの意味が見えなくなってしまったのだ。姉は矢田のおばちゃんが教祖のように祭り上げられた「サトラコヲモンサマ」に入信し、通い続けるようになった。歩は東京の大学に合格し、関西の家から逃げるように一人暮らしを満喫する。在学中からライターのアルバイトをしていた歩は、取材対象として狂い始めた姉と向き合うことになった。 (2019.5.9) 小学館文庫 2017年10月 620円 |
サラバ上 |
イランで生まれた圷歩は、承認不足で自己愛の強い姉と、それに輪をかけて自己愛の強烈な母、無口で実直な父と暮らしていた。そんな暮らしの中で、自分は決して主張せず、かといって流れを壊さず生きていく術を身につけていく。父の仕事の都合で急に日本に戻ることになっても、さらにまた仕事の都合でエジプトに行くことになっても、取り乱すことはなかった。エジプトの暮らしの中で、歩は現地の日本人学校に入学する。同じ日本人の子どもたちとそれなりに関わりながら、歩はヤコブという現地の少年と友人になり、やがてさらに強い精神的つながりを深めていく。父に母以外の女性からの手紙が来たことがきっかけで夫婦の関係が悪くなり、母は歩と姉を連れて日本に帰国することになった。 (2019.4.26) 小学館文庫 2017年10月 630円 |
漁港の肉子ちゃん |
キクりんの母は肉子ちゃん。本名は違うけど、太っているので肉子ちゃんと周囲に言われている。相手の気持ちや表情から物事を読もうとしないで、言葉を額面どおりに受け取ってしまう。泣くべきときや笑うべきときは決まっていて、例外なく大げさにその行動を取る。これまでに何度も男にだまされては、その男の残した借金を返済するために夜の仕事を惜しまなかった。最後の男が漁港に逃げたという情報を得て、肉子ちゃんと娘のキクりんはあてどなく漁港にやってきた。ここでは「うをがし」という焼肉屋で働くことになった。天然の明るさと素直さで、肉子ちゃんを目当てのお客さんが増えた。店主のサッサンはとても喜び、肉子ちゃんとキクりんを店の裏にあった空き家に住まわせてくれた。生まれて初めて庭のある家に住んだふたりは、港町で小さな生活を始めていく。キクりんは転校した小学校で、周囲の友だちに恵まれながらも、対立関係のなかで苦しんだり、盲腸になって入院したりと、忙しい生活を送る。そのなかで、集中しないと顔をぐしゃっと動かす二宮と出会い、彼が通う施設にいっしょに行く。自分の出生の秘密を、キクりんは肉子ちゃんに聞かないで過ごしてきた。しかし、夜な夜なこっそり電話をする肉子ちゃんに相手はだれだと問い詰めたとき、自分の母親だと知らされて、望まれないで産まれてきたと思ってきた自分を、心配して慕う存在がいたことに気づいていく。 (2015.8.18) 幻冬社文庫 2014年4月 600円 |