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ほぼ毎日更新の雑感「ウエイ」
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鳴神響一
kyoichi narukami

警視庁ノマド調査官

朝倉真冬

5)丹後半島舟屋殺人事件

ただ今読書準備中(2024.4.24)徳間書店80020243

SIS丹沢湖駐在

武田晴虎3創生

西丹沢登山センターの主任、秋山康男は周囲が真っ白な世界を歩いていた。檜洞丸へ続くツツジ新道。神奈川県警の依頼で遭難者救助に山岳救助隊とともに駆り出された。28日にヤビツ峠から入山。下山予定日を過ぎても連絡がなかったので知人から警察に連絡が入った。晴虎は8月に入って横浜山手の丘に建つレトロカフェで諏訪勝行と向かい合っていた。顔つきからは想像できないほど諏訪は大の甘党だった。捜査一課特命係長の諏訪は事件発生から時間が経過してコールドケースになってしまった事件を追跡調査している。晴虎が捜査一課強行五係にいた時の同僚だ。6月、7月と2回ほど晴虎は諏訪から重要な情報を得ることができ事件解決へと繋げた。そのお礼としてアフタヌーンティーセットを諏訪に奢ることにしたのだ。甘いものを食べない晴虎を知っている諏訪は、晴虎の本当の狙いを聞いた。すると「妻のことだ」と晴虎はいう。自宅を出た妻の沙也香は車を運転したまま電柱に衝突して即死だった。警察は交通事故として扱った。晴虎もそれを信じていた。しかし、駐在所に差出人不明の手紙が届いた。「沙也香さんの死は事故なんかじゃない」と書かれていたのだ(2024.4.16)ハルキ文庫68020225

SIS丹沢湖駐在

武田晴虎2聖域

西丹沢に夕暮れが近づいていた。武田晴虎は巡回を終えて駐在所に戻るところだった。バス停近くにSUVが停まっていた。駐車禁止場所なので晴虎はスクーターを停めて近づいた。男がクロスレンチを手にしてスペアタイヤの樹脂カバーが外されていた。事情を聞くとパンクをしていた。ジャッキが必要だったので晴虎はタイヤ交換を手伝うと申し出た。男は車内の若い男に向かって車から降りるように頼んだ。出てきた若い男は「社長」と呼ばれていた。外に出ると「なんだよ、安西、暑いじゃん」と子どものようなことをいう。どこかに涼しいところはないのかと晴虎に質問する始末だ。他人がタイヤ交換を手伝っているのに、この男は自分が被害者のようなそぶりをする。パンクしたタイヤには金属片が埋まっていた。「人為的なものとは考えにくいですね」晴虎の言葉に安西は声を尖らせて「イタズラなどあるわけがない」という意味の言葉を返した。その強い調子に晴虎は驚いた。無事にタイヤ交換が済み車は発進していった。駐在所に戻ると北川温泉の子どもたち3人が晴虎を待っていた。「事件なんだよ」と息石切って訴えた。幽霊が出たという(2024.4.14)ハルキ文庫84020218

SIS丹沢湖駐在

武田晴虎

神奈川県警捜査一課特殊捜査第一係長第四班長の武田晴虎は誘拐と立て籠りの現場で指揮をとっていた。県警特殊捜査係、SISのメンバーは刑事部の中で精鋭がそろっていた。興奮した犯人を確保することを目的とするSISは、時に射殺をも辞さない警視庁のSATとは異質だった。興奮した犯人を確保する命令を出したが、突入したメンバーが下半身を撃たれて負傷した。強い責任を感じた晴虎は異動希望を出して、丹沢湖の駐在として地域防犯の世界に赴任した。犯罪などほとんど発生しない松田警察署丹沢湖駐在所。妻は若くして先立っていた。単身で居住区混在の駐在所で新しい暮らしが始まった。すると甘利泰文という少年が児童虐待されていると晴虎を訪ねてきた。近くの北川温泉に住んでいた。お客さんの夕飯が忙しいときに母親の女将と衝突したらしい。互いの話を聞いて駐在所に戻ると無線が入った。北川温泉の宿泊客が何者かに誘拐されたという。刑事時代の習性ですぐに動き出そうとしたが、捜査指揮本部から駐在所に出動命令は来なかった。すでに機動捜査隊が現場に行っているはずだし、松田署には県警からも管理間が到着していると思われた。それでも現場だけでも確認しておこうと晴虎は再び北川温泉に赴き、誘拐の顛末を確かめた(2024.4.4)角川文庫74020215

脳科学捜査官

真田夏希

20)ノスタルジック・サンフラワー

神奈川県警に復職した夏希。いきなり織田慶事部長の依頼で箱根の立て籠り事件に呼ばれた。湖尻のホテルで造園担当の男が支配人を刺して籠城した。小田原署に設置された指揮本部で事情を聞いた夏希は捜査員、織田とともに現場に急行した。そこには県警刑事部の特殊捜査班が待機していた。夏希の知っている冴美が指揮をとっていた。ファイバースコープで監禁されているホテルロビーの映像を見て夏希は驚いた。そこには函館で独り暮らしをする母がいたのだ。父が亡くなり、自由な暮らしを送る母が一人で箱根に旅行していてもおかしくはない。織田と冴美らと犯人への接触を検討した夏希はホテルロビーから見える湖畔にボートを浮かべ、そこから大型モニターでテキストメッセージを送ることにした。そこで人質に母がいることを犯人に伝え、自らと交換するように要求した。織田は止めたが夏希は聞かなかった。母と入れ替わりに人質になった夏希は犯人の動機に迫る対話を始めた。次第に犯人の気持ちが落ち着き、これ以上の罪を重ねることを防ぐことに成功した。警察に犯人が連行される。その時、プシュッという発射音がして犯人が悲鳴をあげて倒れた。医師の夏希はすぐに状態を確かめたが、額をライフルで撃ち抜かれた犯人は即死状態だった(2024.3.28)角川文庫74020242

警視庁ノマド調査官

朝倉真冬

3)米沢ベニバナ殺人事件

明智光興審議官から命じられたのは山形県米沢市で5月に発生した殺人事件の調査だった。すでに事件発生から半年が過ぎているのに未解決事件として捜査が進展していなかった。山形県警と米沢丸の内署内に何らかの不正があると思われていた。米沢駅に降り立った真冬はタクシーで殺害現場へ向かった。米沢と言えば米沢牛程度の認識だった真冬。タクシーの運転士から昔は織物の町だったことを教えられた。米沢織は伝統工芸として伝わっていたが、以前は織物の町として栄えていたという。化学メーカーの帝人はもともと米沢が発祥だった。殺害現場の伝国の森に着いた真冬は敷地内の松が岬公園に向かう。被害者は野々村吉春。65歳。舞鶴橋近くの掘りに浮かんでいるのが見つかった。水に入る前に強く頭部を殴打されていたことが判明している。殺害現場と思われるあずまやは防犯カメラの視覚になっていた。ライターとして現地を訪れている真冬は聞き込みのために近くの観光案内所へ向かった。そこでは米沢藩の家老だった直江兼続の話を聞かされた。兼続が現在の米沢に続く経済の振興を盛んにしたことを知る。案内所で真冬は作務衣を着た若い男性と出会った。案内所の職員に57日の事件について話を出した時にその男が話題に気づき真冬に声をかけてきた。米沢織をしている職人の篠原正之だった。篠原は野々村吉春の娘、雪子のことを知っていた。とても世話になっているという。雪子は郊外の李山で春雁荘を経営していた。温泉旅館と聞いて真冬の気持ちが動く。篠原が連絡を入れてくれて真冬はその旅館に滞在することが決まった

(2024.3.9)徳間文庫71020233

脳科学捜査官

真田夏希

19)インテンス・ウルトラマリン

夏希は休暇を使って沙羅をクルージングに誘った。県警広報部からの要請で沙羅の撮影がラ・プリンセスの後部デッキで行われていた。警察でも働き方を改革し、警察官に余暇を楽しむように演出している掲示物作りに協力させられていた。沙羅から相談を受けた夏希は、ラ・プリンセスでのクルージングと引き換えにお互いに休暇を楽しむことにした。横浜港をゆっくりと離れたラ・プリンセス。二人は部屋に戻り冷蔵庫から冷えたドリンクを出して乾杯しようとした。同じ頃、横浜市内であった強盗致傷事件で銃器販売店の店主が何者かに襲われ怪我をしていた。捜査本部から沙羅に連絡が入り、船が神戸に到着次第横浜に戻るように指示された。夏希はがっかりしたが、途中で下船できないのだから、神戸までの一泊クルージングを楽しもうと沙羅を元気づける。その2日前に江ノ島署管内で傷害事件が発生した。江ノ島署の加藤と北原が容疑者を追いかけてラ・プリンセスに乗車していた。山下公園近くで狭間という被疑者を見かけたという加賀町署地域課の連絡を受けてパトロールをしていた加藤がラ・プリンセスのデッキに狭間を見つけて乗り込んだのだ。何も知らない沙羅と夏希は優雅なランチタイムを楽しんでいた。料理に合わせてステージでは優雅な歌が披露されていた。ジャズシンガーの牧村真亜也がボサノヴァやアップテンポな曲を歌っていたとき、突如、ステージに猟銃を持った男が袖から入り、乗客と乗員を人質に取ってしまった(2024.2.5) 角川文庫74020241

神奈川県警「ヲタク」担当

6)万年筆の悪魔

97日、箱根の仙石原にある別荘で男性の遺体が発見された。凶器は額に打ち込まれた万年筆だった。近所の飲食店主が不審に思って地元警察に連絡。警察官が第一発見者だった。被害者は布施公一郎73歳。大手の物産会社を退職して無職。横浜にある高級マンションを賃貸にしてその賃料で暮らしていた。事件現場で今は暮らしていた。浅野は春菜に捜査協力を依頼。捜査協力員の中から万年筆に詳しい者を紹介してほしいという。捜査支援センターの赤松課長は春菜に浅野に協力するように命じた。布施は別荘に300本以上の万年筆をコレクトしていた。捜査協力員に会うと、布施が万年筆マニアの世界では有名なコレクターだったことが判明した。布施の遺体の近くに「カゼルタ」に×が書かれたメモが置いてあった。春菜も浅野もそれが何を意味するのかわからなかった。協力員の情報でそれが万年筆愛好団体の名前であることを知った。カゼルタの事務局は横浜の伊勢佐木町の「ステーショナリー・サクヤマ」という文具店だった。二人はサクヤマを訪れて布施のことを聞いた。入会していたことは知っていたがすぐに退会したという。あまり会合に顔を出すことはなかったが、万年筆の修理を依頼されることがあり、佐久山は布施と個人的に面識はあった。カゼルタは大磯の沼田顕朗が2001年に立ち上げていた。その沼田が不慮の事故で死亡したので解散してしまった。イタリア文学の専門家だった沼田は大学で教鞭を取っていた。人柄も万年筆への造詣も深く多くの会員から慕われていた(2024.2.3)幻冬舎文庫630202312

神奈川県警「ヲタク」担当

5)鎮魂のランナバウト

729日、モータージャーナリストの天童頼人が秦野市と中井町にまたがる堰止湖の震生湖で死体となって発見された。肺に水が入ってなかったので、殺されてから湖に遺棄されたと捜査本部は考えた。捜査は新たな発展を見せず、強行班の浅野が春菜に協力を求めてきた。殺された天童は別荘に旧車を残して殺されていた。浅野は春菜に旧車を対抗する者との接触を求めてきたのだ。春菜と浅野はヲタク太刀との面談を通じて、犯人への仮説を立てた。それは2年前に天童が助手席に乗っていて起こった交通事故が引き金になっていた(2024.2.1)幻冬舎文庫67020237

神奈川県警「ヲタク」担当

4)テディベアの花園

細川春菜は班長の赤松から捜査一課強行七係主任の浅野康長の捜査に協力するように命令された。浅野が追っている殺人事件が暗礁に乗り上げていて専門捜査支援班に協力を要請してきたのだ。ヲタク担当の面々と顔を突き合わせているよりも、捜査の現場に出向くことを春菜は好んでいた。これまでも浅野とはいくつかの事件でともに行動してきた。浅野によると三浦半島の諸磯にある別荘で死体が発見された。被害者は神保真也、27歳。事業家だった。真也はテディベアの蒐集家だった。別荘には多くのテディベアが残されていた。事件とテディベアとの間に何らかの繋がりがあるのではないかと浅野は考え、春菜に登録しているテディベア愛好家との接点を求めてきたのだ。早速、春菜は登録者を検索した。3人の愛好家が登録していた。一人ずつ面接を実施した。どの愛好家も深くテディベアを愛し、その価値を多くの人に知ってもらいたいと願っていた。アメリカの警察では被害者の心のケアのためにテディベアが用意されていると知った。面接を進めていくうちに、真也の父親の国雄が国内ではとても有名な蒐集家だということが判明した。真也の兄の慶一に会うと自分はテディベアには興味がないが、弟が父の残したテディベアを相続したと教えてくれた。しかし、捜査を進めていくうちに、慶一は亡き母親の形見としてPB55という歴史的にとても貴重なテディベアを肌身離さず大切にしていたことが判明した(2024.1.30)幻冬舎文庫710202212

警視庁ノマド調査官

朝倉真冬

4)能登波の花殺人事件

真冬は、能登にいた。陶芸家の祖母に会った。5歳で警察官の父が殉職。心臓が弱かった母が翌年に病死。真冬は陶芸家の祖母に預けられて育った。ずっと祖母の愛に包まれて育った真冬。警察庁官僚になってからは忙しくて能登に帰られない日々が続いていた。今回、明智審議官から石川県警の殺人事件についての再調査を任じられて帰郷できた。事件から10ヶ月経ったのに捜査は滞っていた。事件現場を訪れた真冬は、遊佐という刑事と出会う。彼は捜査本部の方針に疑問を抱き、単独で事件を追っていた。そのことに気づいた真冬は、身分を明かして協力を仰いだ。二人は女子大生殺人事件の裏に隠された県警の捜査妨害工作へと戦いを挑み始めた。同時にふだんは感情を表に見せない明智審議官が今回ばかりは前のめりになっていることを不思議に感じた。遊佐はかつて石川県警の管理官だった明智の部下で夏希の父とともに輪島市役所を揺るがした詐欺事件を追っていたことを知る。何者かに射殺された時に夏希の父がかばったのは明智だったのだ。同じ現場に遊佐もいた。現在の県警刑事部長の戸次もいた。戸次は今回の事件で捜査員が上げてくる有力な情報を恥から否定した。真冬と遊佐は一つずつ証拠を集めて殺害現場や殺害方法を明らかにしていく(2024.1.26)徳間文庫78020239

脳科学捜査官

真田夏希

18)アナザーサイドストーリー

上杉は北アルプスを縦走していた。槍ヶ岳を過ぎて雲の平に着いても目指す女性は見当たらない。県警で初めて彼女を見かけた時には驚いた。五条香里奈の妹の紗理奈が鑑識として採用されていたのだ。姉よりも18歳年下のため、紗理奈はかつて上杉のことをテル兄と呼んでいた。その紗理奈が突然辞表を鑑識課長に提出、上杉に北アルプスの奥にこもるとメッセージを残して消えたのだ。何があったのかは知らないが鑑識課長からは課内で陰湿ないじめがあったことを知らされていた。とても優秀な鑑識課員だったので、彼女を守れなくて申し訳なかったと深謝された。休暇を取り、北アルプスに入った上杉は、ようやく紗理奈を見つけた。そこには真剣に業務を続けてきたのに、同輩や上司から疎んじられ傷ついた女性がいた。もう鑑識には戻らないという強い意思を感じた上杉は、根岸分室で自分の部下になるように諭した。心を開いた紗理奈は住まいが見つかるまで分室で寝泊まりさせてもらうことにした。分室に出勤した上杉はすっかり部屋の中が片付いた様子に驚いた。すべて紗理奈がやった。二人は近くのホテルで男女が死んでいる現場に急行した。刑事の仕事を紗理奈に教える役目を上杉は担うことにしたのだ。周囲には教育係を自認した。現場では紗理奈に冷たくあたった若い鑑識課員たちと遭遇。そこでも非難めいた言葉を紗理奈に浴びせた。上杉が怒りを表した。紗理奈は独特の感で事件現場を確かめ、後日上杉に捜査本部に重要な調査内容を依頼した。紗理奈の助言によって、事件の筋書きが明確になり、心中と見られた事件は殺人事件だったことが判明した(2024.1.24) 角川文庫72020238

脳科学捜査官

真田夏希

17)エキセントリック・ヴァーミリオン

7月中旬の鎌倉で夏希は久しぶりに織田とランチを楽しんでいた。鎌倉駅西口から線路沿いに歩いた寿福寺近くにある「茶歩」という店だった。庭もランチも堪能した二人は話し足りなくて、明月院で紫陽花を見た後も北鎌倉でお茶をしようと約束した。会計を済ませて店を出た。寿福寺の門を出た。そこにはスーツ姿の男が待っていた。「織田警視正、あなたに逮捕状が出ています」。信じられない言葉とともに織田は男たちに連行されてしまった。後に残った夏希は呆然とした。誰かに事実を確かめたくて県警の佐竹管理官に電話をした。佐竹も織田の逮捕を知っていたが、自分は担当ではないという。芳賀管理官が担当だった。夏希は佐竹に織田の逮捕理由について質問した。福原という高校時代の同級生を殺害して遺棄したというのだ。誰よりも織田がそのようなことをする人間ではないことを夏希は知っている。何かの間違いだと主張したが、犯行を記録した監視カメラの映像が決め手だった。夏希はそれでも織田を信じた。江ノ島署の加藤に電話を入れた。加藤は夏希の話を聞いただけで「俺は真田を信じる」と言ってくれた。それから二人で織田が福原と会っていたという現場へ行くことにした(2024.1.23)角川文庫72020237

脳科学捜査官

真田夏希

16)シリアス・グレー

神奈川県警刑事部長の黒田警視長は根岸分室の上杉警視とコスモワールドの大観覧車に乗っていた。運転手も含めない二人だけの相談が必要だったからだ。前日の夜に刑事部にタレコミがあった。一週間以内に県警にとって拭いがたい恥辱となる大きな事件があるというものだった。このネタを買って欲しいという。どこまで本当のことを言っているのかは不明だ。しかし、タレコミした本人が自分はミスターZと名乗ったことから緊急性が増した。日本中の警察が追いかけている犯罪者がミスターZだった。各種の銃器を密輸して売りさばいていた。取引方法が巧妙で全く尻尾を掴ませない相手だったのだ。上杉は黒田の依頼に応じてミスターZが指定した時刻に指定した場所へ赴いた。本牧山頂の駐車場に行った上杉はミスターZと思われる男と対面した。上杉が警察手帳を掲げて見せようとした時、空気を切り裂く音が聞こえ目の前の男が倒れた。銃声は二発。慌てて上杉は近くの車の影に隠れた。ミスターZは眉間と心臓を撃ち抜かれて即死だった。上杉から事情を知らされた黒田はミスターZの自宅を突き止め、そこからわかる情報を元に上杉に人選を任せた臨時黒田組を発足させた。上杉は、真田、小早川、堀に声をかけ黒田に引き合わせた(2024.1.21) 角川文庫68020232

脳科学捜査官

真田夏希

15)サイレント・ターコイズ

夏希は函館の高校での同級生、石川希美から「歌いーぬ」をプレゼントされた。横浜市役所に勤める希美の引っ越し祝いを贈ったお返しだった。犬型ロボットの「歌いーぬ」。話しかけると要求に応じてくれる機能をもつ。暮らしに溶け込むIoT技術を使った端末だった。月曜日の朝、仕事が始まる一週間の初日のもやもやした気持ちを吹っ切るために夏希は歌いーぬへ明るくて軽いフレンチポップを聴かせてくれるようにリクエストした。「おまかせだワン」と応じた歌いーぬは夏希のリクエストに応じた曲を流し始めた。軽快な曲を聴きながら夏希は朝食の準備をした。すると突然、歌いーぬは暗い歌を流し始めた。それに続いて「あなたの明日は暗い雲に覆われる」と不吉な声でしゃべり始めたのだ。停止するように要求しても歌いーぬに無視された。仕方なく電源を切った。重い気持ちで警察庁サイバー特別捜査隊に出勤すると五島から織田が緊急ミーティングを開くと言われた。そこには副隊長の横井、刑事上がりの山中、隊長の織田がいた。織田は今朝、全国の歌いーぬが何者かにハッキングされ、利用者の要求を無視して暗い曲とメッセージを流し始めたと報告した。まさに自分の身に起こったことなので夏希はとても驚いた

(2024.1.21) 角川文庫66020231

脳科学捜査官

真田夏希

14)イリーガル・マゼンタ

エージェント・スミスを名乗るハッカーが次々とインフラへの攻撃を始めた。すべては警察庁が初めて捜査権を手にした織田が率いるサイバー特別捜査隊への挑戦と思われた。優秀なサイバー知識を誇る特捜隊はスミスが送ってきたメールから発信者を突き止めることに成功した。長野県にあるアジトには公安がマークしていた中国人大学生が住んでいることが分かった。織田は夏希とともに東京から新幹線に乗った。安中榛名駅に停車した新幹線は運転システムがハッキングされ動けなくなった。織田は夏希とともに群馬県警に依頼してパトカーで現場へ向かった。しかし高速道路や一般道路が工事や土砂崩れなどで通行止めの表示に阻まれ狭い山間部へと入っていく。林道にバイクが倒れ近くに男がうずくまっていた。パトカーの運転手、佐野巡査長が駆けよるといきなり置換撃退用のスプレーを浴びせられた。あっという間にホルダーから拳銃を奪われた。織田と夏希は男に誘拐され山奥の無人小屋に監禁された

(2024.1.18) 角川文庫66020228

脳科学捜査官

真田夏希

13)ナスティ・パープル

夏希はいつもの科捜研に出勤した。するとすぐに所長に呼ばれた。科長の中村に呼ばれることは多いが所長に呼ばれることはめったにない。おそるおそる所長室に行くと、新しくできた警察庁のサイバー対策室へ行くように命じられた。内定も打診もない異動に納得できないまま夏希は、霞が関の警察庁庁舎に出向いた。そこで出会った五島によって汐留にある秘密の対策室へ入った。するとそこには夏希の直属の上司として警察庁警備局から織田が着任していた。国家警察の人民制圧の過去を受けて、これまで警察庁には捜査権限がなかった。しかし昨今急増するサイバーテロに対して自治体横断的な捜査権のある組織が求められ、織田が初代の所長になったのだ。サイバー空間の知識や技術がまったくない夏希は自分がなぜここに必要なのか不思議だった。それはすぐに明らかになった。すでにサイバー対策室を嘲笑う攻撃が始まっていたのだ。エージェントスミスを名乗る犯人との交渉に夏希の能力が求められたのだ。スミスは銀行、鉄道会社のシステムをハッキングしてインフラを麻痺させた。航空システムをハッキングする予告との引き換えに金を要求してきた。サイバー対策室の調べでメールの発信元が突き止められた。織田と夏希は容疑者を逮捕するために新幹線に乗車した(2024.1.19) 角川文庫66020227

脳科学捜査官

真田夏希

12)クリミナル・ブラウン

夏希が舞岡の家に帰ると福島捜査一課長から着せ替え人形が届いた。住所も電話番号も福島課長のものとは違った。当人に確認するとまったくのでたらめだという。ただし、犯罪の要件を満たしていないので捜査は難しいとのこと。同じことが三日間繰り返された。同じ時期に夏希は横須賀で発生した殺人事件に投入されていた。エクスカリバーを名乗る番人から次の反抗予告が出されていたので、心理分析官の夏希が呼ばれた。しかし、捜査本部を仕切る女性管理官の芳賀は夏希の存在を無視した。意見も採用せず、夏希は孤立していく。上杉に頼んで単独捜査を開始した。芳賀管理官が容疑者と踏んでいた男が他殺された。結果的に夏希の指摘が正しかったのだが、芳賀は夏希に頭は下げなかった。最初に殺された宍戸は夏希がかつて関わったアイドルグループの事件に関与した元国会議員だった。いくつもの恨みを買う立場だった。夏希はその中でもアイドルグループの解散に関わる者たちの犯行だと確信していた。ひそかに上杉に接触して捜査の協力を仰いだ。上杉は快諾して、単独捜査を始めた。そんなとき夏希は何者かに誘拐され、生命の危機に直面する(2024.1.11) 角川文庫66020222

脳科学捜査官

真田夏希

11)ヘリテージ・グリーン

2021年の元日、夏希は小川とともに鶴岡八幡宮で初詣をしていた。参拝をして人で賑わう境内を抜けた。夏希がお気に入りの小町通の店で食事をしようと向かっていた時、小川の携帯が鳴った。市内で爆破事件が発生。アリシアの出動を要請するものだった。二人は食事を中止した。小川と夏希は別れた。翌日、鎌倉警察署の捜査本部に夏希は向かった。科捜研の中村科長から、いつも通り、理由を聞かされることなく、鎌倉署に行くように指示されたからだ。そこにはいつもの幹部たちが顔を揃えていた。警察庁からも織田が参加していた。それは今回の爆破事件がテロの要素を含んでいることを示していた。犯人からのメッセージが県警のメッセージフォームに届いた。松が明けるまでに北条氏ゆかりの寺で爆破事件を起こすというものだった。夏希は犯人にメールを送って接触を試みた。すると犯人とのやり取りから、夏希が八幡宮の舞殿でテレビ生中継の歌を歌う要求が出された。音痴を自覚する夏希は断るが、県警上層部は犯人が要求に応じなければ人が死ぬほどの爆破事件を起こすと脅したので、夏希に要求に応じるように下命した。困り果てた夏希。すると県警から応援に来ていた石田が夏希に歌を指導すると声をあげた。石田は学生時代にバンドを組んでいてボーカルを担当していたとのことだった。早速、夏希は石田と大船のカラオケボックスに行って何度も何度も発声の練習を繰り返した(2024.1.9) 角川文庫66020221

脳科学捜査官

真田夏希

10)エピソード・ブラック

10年前、五条香里奈管理官は神奈川県警刑事部捜査二課に所属していた。上杉は警察庁刑事局捜査一課の課長補佐。織田は警察庁警備局警備企画課総合情報分室の課長補佐。3人は同時期に警察庁に入庁したキャリアだった。階級は3人とも警視だった。香里奈の30歳の誕生日に2人が祝いの宴を開いた。現場の仕事が忙しい香里奈は寝不足のようだった。遅い時間まで飲んで語った。織田がトイレに立った時に香里奈が上杉に「相談したいことがある」と告げた。終電まで時間がなかったので翌日に会う約束をした。ほっとした表情で香里奈は2人を店に残して先に帰った。2人は遅くまで飲んで帰ろうとした。その時、上杉の携帯電話が鳴った。赤十字病院から香里奈が交通事故で搬送されたという知らせだった。上杉と織田は急いで病院に行った。しかし、すでに香里奈は息絶えていた。10年後、根岸分室で一人捜査にあたる上杉の元を織田が訪ねた。県警に仕事があったついでに立ち寄ったという。香里奈の事故を調べていた織田が報告に来たのだ。香里奈をひき逃げした荒木という男はその後、津久井郡の山奥で自殺していた。そのため、香里奈の事故は被疑者死亡のまま単なる交通事故として捜査が終結していたのだ。織田は荒木について詳しく調べた。すると交通事故を起こして自殺するような男ではないことが判明した。もしかすると本物の荒木は何者かによって殺され、まったく別の人間が荒木という名前をつけられて犯行に及んだのかもしれないと2人は考えた(2024.1.5) 角川文庫66020218

脳科学捜査官

真田夏希

9)ストレンジ・ピンク

函館の坂道を上った前でタクシーから織田信和が下りた。花束を手にして日本人墓地の中に入る。秋の彼岸が過ぎて墓地には人影が少ない。見覚えのある墓石近くから線香の香りが漂ってきた。先客は織田と同期のキャリア、今は神奈川県警察根岸分室の上杉輝久だった。二人は過去にともに思いを寄せた女性、五条香里奈の墓石に手を合わせた。翌日、夏希は茅ヶ崎警察署にいた。爆弾事件の犯人に迫るためにネットからのアプローチを依頼されて捜査本部にいた。爆発現場を調べたが、犯人に迫る背景はつかめなかった。そんなとき、県警の本部から福島刑事部長の推薦で別所美夕巡査部長が夏希の補佐として配属された。かゆいところに手が届く美夕の配慮に夏希はとても助けられてゆく。しかし、更なる爆弾事件が繰り返された(2024.1.4) 角川文庫64020217

鎌倉署小笠原亜澄の事件簿

3)極楽寺逍遥

長谷の配水地で鎌倉美術館の学芸員が殺された。地元に住む被害者は近所の人に発見されたので身元がすぐに判明した。鰐淵貴遥は著名な洋画家を父に持つ。鎌倉署の小笠原亜澄は県警の吉川元哉とともに鑑取り捜査を始めた。息子に話を聞いたが誰からも恨まれるような人ではなかったという。父の一遙は末期の癌に侵されていた。息子が自分よりも先に亡くなったことを嘆き、遊んでばかりの孫に財産を相続させたくないと考えていた。一遙の屋敷を訪ねた亜澄は書斎に飾ってあって一枚の絵に興味をひかれた。一遙の友人だった湯原宗二郎の「極楽寺逍遙」という作品だった。殺された息子はやがてこの作品を詳しく調べようとしていた。   亜澄は元哉とともに一遙から作品のいわれを聞いた。一遙と宗二郎は無二の親友だった。若い頃に気持ちをひかれた茉莉子が描かれた「極楽寺逍遙」の中に、亜澄は色合いの異なる部分を発見した(2023.12.8)文春文庫670202310

神奈川県警「ヲタク」担当

3)夕映えの殺意

神奈川県警刑事部総務課捜査指揮・支援センターの専門捜査支援班の細川春菜。捜査で必要な専門知識を有している研究者や教授に意見を求める部署面々に冷やかされながら新しい仕事に慣れ始めてきた。春菜は各分野の専門知識を持つ者として登録している一般人、いわゆるヲタクたちとのつなぎ役を任されていた。刑事部捜査一課強行七係主任の浅野康長が春菜に捜査の協力を求めてきた。小田原署から移動したての美貌の刑事、喜多尚美を伴っていた。小田原市の根府川にあるレンタルコテージで薄田兼人という男性が死んでいた。現場の様子から事件性が薄く自殺として処理された。小型の七輪が置かれ密閉された室内。スマホの画面には遺書らしき文言が記されていた。「あの海岸で犯した罪を償います」という内容をもとに調べると国府津海岸で一年前に堀内久司という男性が何者かに殺されていた。未解決の事件で捜査は継続されていた。根府川と国府津海岸の接点が不明だったが、支援班の葛西はすぐにそれが「ラブライブ!」というアニメの聖地だったことを告げた。両方ともファンにとってはとても重要な場所だったのだ

(2023.12.12)幻冬舎文庫67020237

脳科学捜査官

真田夏希

8)エキサイティング・シルバー

織田と上杉の大学時代の友人だった北条が5月以降連絡を絶った。何らかの特別捜査の一環で危険な状況に陥っているのではないかと心配した織田は上杉に北条探索の協力を仰いだ。北条の部屋を調べると壁にフェルメールの有名な絵が飾ってあった。しかし、それらはフェルメールの画風をまねた贋作だと織田は知っていた。この贋作を扱うレジェという画商を訪ねて二人はフランスへ飛んだ。レジェは二人の訪問を受けて北条がディスマスという世界規模の危険な組織の動きを追っていたと知る。ディスマスが何者なのか、なぜ北条がディスマスを追っているのかを知るためにレジェからイタリアマフィアのシモネッティを紹介された。シモネッティはかつて自分たちの縄張りをディスマスに荒らされたことがあった。部下が急に姿を消して、その部下の得意としていたやり方でディスマスが活動を広げたのだ。シモネッティはディスマスが第三世界に自分たちが得た利益を還元する正義の組織と名乗っていることを教えた。そのため結束力がとても強く、各国の有能な頭脳、技量を次々と仲間に加えていた。シモネッティはかつてディスマスのメンバーで、逃亡したエストニア人、ムラノフを紹介してくれた。モロッコのマラケシュ郊外に潜伏していたムラノフを訪ねた二人は、そこまで北条が訪ねてきたことを知る

(2023.11.11)角川文庫64020211

脳科学捜査官

真田夏希

7)デンジャラス・ゴールド

事件解決のために県警が作った夏希のアカウント、かもめ百合は多くの者たちからリプライされていた。その中に波龍を名乗る攻撃的型のアカウントがあった。毎月、月末になるとこれまでの事件を批判的に総括した動画をYouTubeにアップしていた。夏希はその度にげんなりしたが、波龍を突き止めることが叶わずにいた。そんなとき、葉山の女子中学生のニーナが誘拐された。父親が日本人、母親がエストニア人のニーナは逗子の私立学校に通っていた。しかし、友だちができず、不登校になっていた。母親の命日に墓参のためにお墓を訪ねた時に誘拐された。ニーナは小学生の時に国際的なハッキングコンテストで中学生を破り優勝していた。先天的に優れたハッキング能力を持ち、神奈川県のダムを自動的に放流させるプログラムを開発させていた。そのことに目をつけた国際的な組織がニーナの能力とフロウの仕組みを入手するために彼女をさらったのだ。夏希はニーナを知っている友人に会うために接触した。その場でアメリカの情報組織CIAに拉致され、軟禁された。ニーナの救出に協力してほしいと命令されたのだ。ニーナの能力とフロウが悪の手にわたることを防ぐためにCIAが動き出していたのだ。ニーナの潜伏先に到達した夏希はアリシアの協力によって犯行グループに迫ったが、ニーナの救出直前で反撃され逃げられてしまった。夏希とアリシア、小川のもとになぜか上杉と織田が現れた(2023.11.10)角川文庫64020211

脳科学捜査官

真田夏希

6)パッショネイト・オレンジ

声優たちが結成したガールズバンド。彼女たちが似たキャラクターが登場するアニメーションの放映が始まった。彼女たちがライブで披露するマディスト的な表現をアニメでは柔らかい表現に変更した。そのことに抗議する者が番組の関係者を殺害した。現場に立った夏希は素人の犯行だと直感した。階段の途中から背中を押して殺害するという方法が行き当たりばったりのような気がした。県警に送られてきたメールには、アニメの内容をもっとガールズバンドのキャラクターに近づけないと次の被害者が出ると予告していた。そしてついに二人目の被害者が出た。アニメーションで声優を点灯した男性だった。バイクで自宅に向かう途中、ボーガンで背中を狙われ転倒し死亡した。夏希は最初の殺害に比べて計画性を感じた。しかし、捜査本部は同一犯として捜査を進めていく。違和感を根岸分室の上杉に告げると、彼はまったく別方向からこの事件を捜査していた。(2023.11.9)角川文庫68020207

脳科学捜査官

真田夏希

5)ドラスティック・イエロー

夏希はセレブしか参加できない婚活パーティーに参加していた。横浜を海から眺めながら、豪華クルージングを楽しむものだった。自己顕示欲の強い男ばかりのパーティーに辟易してテラスに出て夜風と夜景を楽しんでいた。脇坂と名乗る男が夏希に近づいた。彼もパーティーに飽きて会場から逃げてきたようだった。夏希は話しかけられたので相手に合わせる会話をした。その時、山下埠頭で爆発物の火柱が上がった。下船した夏希は現場に臨場した。パーティーに参加した格好で臨場したので現場の制服警官から疑われた。事情を話して現場観察をした。科捜研の中村科長から電話があり、横浜水上署に爆発事件の捜査本部ができるので翌日からそこに行くように命令が下った。水上署の捜査本部に入った夏希は自分がなぜここに呼ばれたのかを佐竹管理官に尋ねた。今回の爆破事件に関して横浜市に対してネットを通じてカジノ誘致の計画を撤回しろという脅迫メールが届いているからだという。容疑者と接触して動機や目的を掴むことが求められた。その後も初音で小さな爆発があった。これはドローンを使ったものだった。次に逗子でホテルのエントランスで爆発があり負傷者が出た。エスカレートしていく事件を政治的テロと判断して、警察庁警備部から織田指導官が捜査本部に指導役として入った。オフの日に何度か友人として食事をする間柄になっていた夏希は仕事を織田と共にすることに抵抗感を抱いた。そんな時、江ノ島署に掠取誘拐の知らせが入った。カジノ計画を進めるディベロップ会社の役員が何者かに誘拐されたのだ(2023.11.7)角川文庫68020201

脳科学捜査官

真田夏希

4)クライシス・レッド

夏希は警視庁の織田からしばらく極秘の任務に就くことを打診された。命令ではなく要請だったので、断ってもいいのか迷ったが、警察組織の仕事に上司からの依頼を断るという選択肢はなかった。言われたままに根岸にある県警の分室に行った。そこは見るからに廃屋に近いボロ工場という建物だった。内部も乱雑としていた。上杉という警視が一人で勤務していた。元は優秀な刑事だったが、警察上層部の不祥事を告発して警察庁内部で反発を買い神奈川県警に異動させられた男だった。上杉は三浦半島での射殺事件を追っていた。夏希はその犯人と接触しながら、上杉の捜査を支援する立場になった。無骨で違法スレスレの捜査を行う上杉に反感を抱きながらも、正義の体現のために悪を容赦なく追い詰める姿を次第に受け入れていく。ネット上で夏希に接触してきた相手と殺害現場の状態から想像する容姿者のイメージがあまりにもかけ離れていることに気づいた夏希は複数犯ではないかと考え始めた。その考えに上杉も理解を示したとき、二番目の犯行が発生した。今度は池に落として射殺するという恐ろしい犯行だった。被害者の弟に会いに行った帰りに上杉と夏希の乗る覆面パトカーが何者かに狙撃され、さらに追跡された(2023.11.6)角川文庫60020197

脳科学捜査官

真田夏希

3)イミテーション・ホワイト

真田夏希は友人の希美とともに伊豆高原へグルメと温泉の旅行に行った。料理も温泉も堪能した翌朝、早く、県警科捜研の中村科長から殺人事件の捜査本部へ合流するように指示が入った。急遽、荷物をまとめて東海道線で横浜へ急いだ。通路を挟んだ反対側の席で胸を押さえる女子高生がいた。医師の夏希はすぐに容態を確認。過呼吸だと判断した。大学受験のため辻堂へ向かう途中だと分かった。リラックスする方法を教えて別れた。横浜の本牧署に入ると本部捜査一課課長の福島がいた。前夜に本牧埠頭で殺人事件があった。その事件に関してSNSで犯行を窺わせるメッセージがあるので、コンタクトをとってほしいという要請だった。容疑者の心理に入り込むことによって、犯行の動機に迫り、これ以上の犯行を繰り返さないように説得することが夏希の仕事だった。しかし、容疑者は第二の犯行を実行した。鎌倉の極楽寺近くの山頂で大学の若い教授が撲殺されていた。二つの事件とも容疑者からの犯行声明が出ていたので同一犯で間違いがなかった。警視庁警備部から織田管理官が指導的立場で捜査に加わった。彼は最初の被害者が元公安庁職員だったので、テロ事件として扱うことを前提とした。容疑者とチャットでコンタクトした夏希には組織的な犯行という織田の考えには大きな違和感があった(2023.11.4)角川文庫600201812

神奈川県警「ヲタク」担当

2)湯煙の蹉跌

箱根の個人経営の温泉旅館でトラベルライターが凍死して発見された。屋外の露天風呂に入り、脱衣場で全裸の状態で発見された。衣服、スマホ、車のキー、財布などの私物は被害者の周辺に散乱していた。ポンプアップしている露天風呂の電源は切られ湯温は2度だった。小田原署の捜査では容疑者がまったく浮かんでこなかった。県警本部の細川春菜に刑事の浅川から協力依頼が入った。捜査協力者の中から温泉ヲタクと接触したいとのことだった。事件の起こった現場を調べたところ、被害者が密室にされた脱衣場でなぜ殺されたかが見えてきた。周辺の捜査を続けた結果、12年前に安達太良山の温泉地で若い女子大生が硫化水素中毒で死亡した事故にたどり着いた。詳しく調べると、それは秘湯サークルの合宿で、被害者も同じメンバーだったことが判明した。さらに箱根で会った町役場の職員も、安達太良山の事故で同じサークルに所属していたことが判明した。動機の裏付けを春菜は進めていく。すると被害者と事故の犠牲者が交際していたことが判明した。また事故のあった日の説明を箱根町役場の男が一部省いていたことに気づいた。事件当日のアリバイを主張する男に浅川刑事は違和感を覚えた。あまりにも理路整然としたアリバイが用意されていたからだ。春菜はアリバイを隅々まで点検し、ある抜け道に気がついた(2023.10.18)幻冬舎文庫670202112

神奈川県警「ヲタク」担当

1)細川春菜

神奈川県警刑事部捜査指揮支援センターの細川春菜は鉄道マニアが殺された事件を異動して初めて任された。新しい部署は警察の捜査に協力してくれる各方面の専門家を依頼したり、意見を求めたりするところだった。春菜は刑事の浅川とともに、鉄道ヲタクとして捜査協力者に登録してあるメンバーに意見を求めることになった。事件は3月下旬に東海道線の清水谷戸トンネル付近で発生。早朝に通過するサンライズ出雲の撮影をしていた片桐という男性だった。カメラに残っていた写真はボケていた。しかし同時に走行音を録音していたので、殺害時刻が割り出された。春菜と浅川は協力者に会いながら捜査を続けたが、容疑者につながる情報は出てこなかった。そんなとき、撮影者たちの無謀な振る舞いで、娘を病院に連れていく車が傷つけられ、病院への時間がかかり、娘が死亡した男の話を得ることができた。深い悲しみから抜け出そうと必死に生きていたが、浅川はその男が犯人である可能性に気づいた(2023.10.18)幻冬舎文庫67020216

警視庁ノマド調査官

朝倉真冬

2)男鹿ナマハゲ殺人事件

真冬は男鹿の船川地区に入った。半年前に発生した経営コンサルタント殺人事件の捜査にからむ秋田県警の不正を暴く任務だった。ナマハゲの面をかぶった容疑者によって清水という経営コンサルタントが射殺されていた。フリーライターとして潜入した真冬は何も知らない現地の刑事に非人道的な妨害を受けた。たまたま上司の進藤警部補がその場にいたので大きな問題にならなかった。真冬は進藤にシンパシーを感じ、その後の調査について真実を告げた。県警本部から現場に交替要員として入ったばかりの進藤も、捜査本部の倦怠ぶりに疑問を感じていた。二人で事件の真相を追ううちに、大宝寺一族が進めていた男鹿の観光プロジェクトの存在にたどり着いた。地主から財を築き、現在は不動産を手がける大宝寺一族は多くの店舗を担保にして金をばらまき、周辺支配を進めていた。地元出身の警察上がりの衆議院議員に賄賂を贈り観光プロジェクトを実現させようとしていた。殺されたコンサルタントはその計画に絡み、大宝寺一族から多くの金を引き出していたのだ。総務省官僚だった現当主は先代の負債を一掃するためにプロジェクトを白紙に戻し、担保にしていたホテルや飲食店から金を吸い上げ新しい地盤を築こうと躍起になっていた(2023.10.13)徳間文庫75020229

警視庁ノマド調査官

朝倉真冬

1)網走サンカヨウ殺人事件

朝倉真冬は警察庁の警視正というキャリアだった。事務的な仕事を行う部署で庁内の広報誌の作成に携わっていた。ある日、警察庁長官官房審議官室に呼ばれ、明智光興警視監から網走中央署に開設された捜査本部に不正疑惑があるという情報が入ったので女満別空港へ飛べと下命された。審議官は監察官とは違った立場から全国都道府県警の問題点を調査する地方特別調査官の職を設けた。朝倉はその第一号になった。身分を隠して地方に赴き、警察内部の不正を調査する。移民を意味するノマドだと思った。自分は警察庁のノマド調査官なのだ。網走ではサンカヨウの花が咲く池で南条というカメラマンが殺された事件が起こっていた。捜査本部が置かれたが、なぜか捜査に積極性が見られず、容疑者の確保に至っていなかった。仙石という管理官が捜査に消極的と言われていた。雑誌のライターという立場で朝倉は大学時代から世話になっていた遠山が経営するロッジに宿泊しながら事件の捜査を始めた。取材名目で関係者に会っていくうちに、和久という国際的に有名なカメラマンが何らかの関わりを持っていることを掴んだ。北海道警察から派遣され、自分の意見が全く採用されないことに不満を抱いていた松永警部補とともに事件の真相へ切り込んでいく(2023.10.10)徳間文庫75020223

脳科学捜査官

真田夏希

2)イノセント・ブルー

神奈川県警科学捜査研究所の心理職特別捜査官、真田夏希は休暇を利用して婚活をしていた。減少していくオキシトシンを補うためには、結婚が何よりも有益だからだ。レストランをいくつも経営している小西というキザな男と江ノ島でデートをしていた。その時、江ノ島に向かう弁天大橋に捜査車両が集まっていた。そこには江ノ島署に異動になった加藤巡査部長や県警に異動になった石田巡査長、なぜか鑑識課の爆発物捜査官の小川がいた。橋脚に殺害された死体があるという。デートを中断して臨場した夏希は首まで砂に埋まり、潮が満ちたことで溺死した男の死体を見た。苦悶の表情を浮かべた死体の姿が脳裏に焼き付いて仕事にならず帰宅したが朝方まで眠れないほどだった。県警の科捜研の所長から江ノ島署の特別捜査本部に行くように命じられた。犯人と思われる人物から県警にメッセージが届いているという。ネット上の辞書へ犯人と思われる書き込みがされ、被害者へ天誅を加えたと記されていた。さらに辻堂海浜公園に爆発物を仕掛けたというメッセージが届き、真田は小川とアリシアと共に出動した。しかしアリシアが見つけたのは絞殺された別の男の死体だった。加藤らの捜査によって二人の男は大学時代からの知り合いだったことが判明した。そんな中、自宅へ戻る夏希が何者かに拉致誘拐された。夏希が気づいた時には茅ヶ崎の海上、プレジャーボートの船内だった(2023.10.3)角川文庫68020187

脳科学捜査官

1)真田夏希

臨床心理士だった夏希は患者の心に深く立ち入りすぎて自分が傷ついてしまう危険性を回避するために病院を去った。そして神奈川県警に脳科学捜査官として初めて採用された。科学捜査研究所での心理分析が主な仕事だった。知人の紹介で織田というセンスの良い男性と港の夜景が見えるバーでくつろいでいた。その時、眼下に広がるみなとみらいの空き地で爆発事件が発生した。翌日、出勤すると夏希は爆発事件の捜査本部に行くように命令された。自分は捜査とは関わりがないはずなのになぜ捜査本部に行くのか不明だった。そこには本部長、刑事部長、管理官などの幹部が顔を揃え所轄の刑事たちが集まっていた。みな、一様に夏希を好奇の目で見た。するとそこに警察庁から派遣されてきた織田が登場した。彼は理事官というエリート官僚だった。真田はびっくりしたが内面を隠して彼の管理下で爆発事件の捜査にあたった。これまでの犯人と違い、目的が不明で、次々と爆破予告が実行される最悪の展開を見せていた。負傷者が出たが幸いにも命は助かった。夏希は県警のアカウントからかもめ百合というハンドルネームで広く犯人に接触を試みた。するとゲーム感覚で次の犯行予告が届いた。警察犬で爆発物の探知を行うアリシアというドーベルマンとタッグを組んで夏希は犯行現場を予想して急行した。アリシアはかつてカンボジアで地雷探査犬として活躍していた。いくつかの過程を経て今は県警で小川という担当者とともに爆発物捜査の任務にあたっていた(2023.9.30)角川文庫680201712

鎌倉署小笠原亜澄の事件簿

2)由比ガ浜協奏曲

由比ヶ浜の海岸に近いコンサートホールでの公演中に天井から鉄球が落下してコンサートマスターの三浦が死亡した。たまたまコンサートを鑑賞していた鎌倉警察署長によって事件はすぐに殺人事件として特別捜査本部が設置された。鎌倉署の小笠原と神奈川県警の吉川はまたもペアを組んで捜査にあたることになった。コンマスの三浦は誰にも慕われる存在だった。恨みの犯行という筋書きがなかなか成立しない。指揮をしていたのは世界的に有名な里見だった。高齢のため最後は自分がヴァイオリニストとして世話になった鎌倉の管弦楽団の常任指揮者として終焉を迎えようとしていた。その里見が我が子のように育てていたのがコンマスの三浦だった。捜査を続けるうちに亜澄たちは里見がかつてヨーロッパで管弦楽団に所属していた時にコンマスだった三浦の父親が指揮者からダメ出しをされ退団し失意のうちに亡くなったことを掴む。コンマスの三浦はその息子だった。里見は長く母子に経済的な援助を続け、三浦の芸大進学やその後の活動も支えた。自分の後継者として三浦を育てていた里見は大きなショックを受けた

(2023.6.26)文春文庫76020235

鎌倉署小笠原亜澄の事件簿

1)稲村ケ崎の落日

神奈川県警捜査一課の刑事、吉川元哉は26歳。同じ平塚の商店街で生まれ育った2歳年上の幼馴染、鎌倉警察署刑事課の小笠原亜澄とともに鎌倉山の邸宅で亡くなった文豪、葦名の事件でペアを組んだ。二人はこれまでもともに事件を解決してきた相棒だが、年下なのに階級が上で小生意気な亜澄にいつも翻弄されながら事件を追っていく。葦名は自室で青酸カリを服用しての自殺と検視官からの報告があり、事件性は否定された。亜澄は最後に葦名が書いた小説「稲村ケ崎の落日」の原稿は紛失していることを疑問に思う。数日後に邸宅近くの夫婦ケ池で上原というフリーライターの他殺体が発見された。上原は葦名が最後に新聞の取材に応じた時のインタビュアーだった。その記事のなかで葦名は「稲村ケ崎の落日」を近々発表することに触れていた。原稿が何者かによって盗まれた可能性があると考えた亜澄と元哉は自殺と他殺との間に何らかのつながりがあると推察した

(2023.6.24)文春文庫750202210

おいらん若君

徳川竜之進

5)昇龍

篝火として吉原で花魁の頂点に立つ徳川竜之進宗光。尾張藩の御落胤として常に命を狙われてきた。名古屋城の御土居下衆の頭、広田左近は妖術を使い竜之進を築地本願寺から奪い去った。竜之進を尾張から連れ出し、吉原で守り続けてきた甲賀者たちは奪還計画を立てる。きっと尾張へ竜之進を連れて行くと考え、海路を追跡した。平塚の相模川河口で竜之進を奪還した一味は左近たちとの最後の戦いに備えて古寺を改造した

2022.8.15)双葉文庫600201910

おいらん若君

徳川竜之進

4)凶嵐

吉原の総籬、初音楼の花魁、篝火は尾張徳川家の血を引く徳川竜之進だった。世継ぎ争いで母親を殺された竜之進は甲賀衆に守られて吉原に逃げ延びていた。時々、吉原を抜け出して旗本の三男坊、外岡竜之進として市井の暮らしを楽しんでいた。読売の記事を書く楓がむごい事件を調べ上げ瓦版に仕上げた。赤坂の溜池で若い娘が殺され、はらわたと肝を抉り取られた。すでに3人が犠牲になっていた。初音楼の家人に収まっている者たちは甲賀衆だ。竜之進は彼らに命じて事件の真相に迫る。やがて自らが町娘になって悪人を引き寄せた

(2022.7.5)双葉文庫 602円 20196


猿島六人殺し

浦賀沖の猿島にある茶寮で、一度に六人もの殺人事件が発生した。日常、人が立ち入ることのない島で起こった不可解な密室殺人に、長屋住まいの浪人、多田文次郎が挑む。 (2019.10.17) 幻冬舎文庫 201712 690

影の火盗犯科帳(2)忍びの覚悟

刀商いの男が神社の境内で殺された。死体は鳥居に吊るされていた。五郎作は、男の店を訪ねた。鈍ら刀を売りつけていた男は多くの恨みを買っていた。店は閉ざされいたが、近所の者たちが石を投げつけ、恨みを代行していた。五郎作は店内に入り、若いサヨという後家を励ます。周囲には恨みを買う男だったが、サヨにだけは優しかった。夫を追って身投げをしようと思ったサヨは、五郎作を思い出し、邸宅を訪ねた。誤解した妻の美里はふくれてしまう。伊達家下屋敷に火矢がうたれて、塩釜社が爆破された。伊達家にゆかりのある寺の東司が爆破されて町民が殺された。同じく伊達家に近い寺で爆破騒ぎがあった。一連の事件で、伊達家とは無縁の町民らが何人も犠牲になった。五郎作は影の手先を頼んで探索を進める。手先頭の光之進は、爆破事件の現場に赴くが、そのたびに全身を襲う不安と恐怖に悩まされる。光之進は、忍びの訓練をしていた時に火薬訓練の事故で妹を亡くしていた。 (2017.3.31) 角川文庫 201610 680

影の火盗犯科帳(1)七つの送り火

直参旗本の山本五郎作は、将軍から新しい火付盗賊改めを任じられることになった。山本家は代々徳川家を守り抜いた甲賀忍者の系譜だった。いまでも五郎作の家臣たちは、忍術の稽古を続けている。着任まで数日を残したある日、茶屋娘ばかりを狙った誘拐殺人事件が連続する。娘を柱に結び付け、周囲の薪を燃やすという呪術のような殺し方に五郎作の怒りが燃え盛る。 (2017.3.18) 角川文庫 20164 680