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長岡弘樹
hiroki nagaoka

傍聞き
女性刑事の羽角啓子は、娘の菜月と二人暮しだ。窃盗犯を追う仕事から殺人などの強行犯を追う仕事へと変わっていた。そのため以前にも増して、家にいる時間が短くなっていた。まだ小学校高学年の菜月は、母があまり家にいないことに不満を抱いている。寂しいからではなく、家事の一切を自分に任せることがいやだったのだ。そういうとき、菜月は母と口をきかなくなる。そして、必要なことを手紙に書いて自宅に郵送するという抵抗手段を見せた。ときどき自宅の住所を書き損じて、近所の叔母の家に葉書が届く。それを叔母がわざわざ啓子に手渡ししてくれた。そのたびに、娘から自分に手紙が届くという奇妙な母子関係を覗かれるようでいやだった。そんな叔母の家に空き巣が入る。容疑者は以前、啓子が逮捕したストーカー男だった。男は拘留されているときに啓子に面会を求めた。自分が逮捕した男が、そのことを逆恨みして警察官やその家族を襲う。その危機感を抱いた啓子は、菜月に自宅から離れるように命令する。しかし、窃盗事件の真犯人はその男ではなかった。表題の「傍聞き」のほかに「迷走」「899」「迷い箱」の3篇を含む短編集だ。 (2013.8.26) 双葉文庫 2011年9月 524円