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又吉直樹 naoki matayoshi |
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火花 |
芸人の徳永は熱海花火大会の余興として花火見物の客に漫才を披露していた。客は花火を見に来たので、多くは自分たちがいい見物位置を確保するために徳永のスパークスの漫才に興味がない。どんなネタを披露しても客は目の前を通り過ぎていくだけだった。主催者のミスで途中の出し物が時間をオーバーし、花火が始まってからも漫才の時間は続いた。スパークスが終わった後、次の出番は「あほんだら」だった。先輩漫才師だったが、あほんだらは表現が過激なので評価が低かった。出番を終えた「あほんだら」の神谷と徳永は熱海の居酒屋にいた。そこで、徳永は自分のなかにないものを神谷に感じて弟子入りを志願した。神谷は弟子になる条件として「俺の伝記を書け」という。それを了解した徳永は神谷の生き様を大学ノートに記しながら、なかなか日の目を見ない不遇な時間を送っていく。そのうちに少しずつ深夜帯のテレビ番組に出演する機会が増え、ファンを獲得していく。なかなか神谷との時間が取れなくなったある日、神谷の相方から連絡が入り「神谷がいなくなった」と知らされた。闇金に多くの借金を作って、出演機会も棒に振った。取立てから逃げる毎日だったのだろう。スパークスはある段階で波が引いていくように声がかからなくなった。徳永は相方と相談して解散を決めた。その後、神谷から呼び出しを受けた。久しぶりに会った神谷の胸にはFカップ並みのシリコンが詰められていた。 (2016.1.1) 文芸春秋 2015年3月 1200円 |