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近衛龍春
tatsuharu konoei

脇坂安治

七本槍と水軍大将

さっきまで鳴いていたフクロウが人の気配で鳴りを潜めた。近江の箕作城。暗くてよく見えない。昼間のうちに一度攻めて造りは把握していた。箕作城は清水山から南の箕作山にかけて築かれた山城で、重要箇所を石塁で固め、切岸、堀切を設けて山全体を要塞としていた。「木下殿が夜討ち致すと告げてきた。早急に支度せよ」組頭の大野木茂俊が告げる。多勢の自分たちがまさかの夜討ちをかけるとは思わなかったと脇坂安治が言った。麓の樹木に寄りかかり城を見上げた。「昼間、押し返されたのじゃ、致し方なかろう」義父の安明、当然という顔をする。永禄111568)年912日、織田と浅井の連合軍は箕作城を攻めた。建部秀明ら数百の兵がこもり、攻略できなかった。「多勢で露見するのではありませんか」安治が心配した。脇坂親子は浅井長政の家臣で大野木茂俊らとともに秀吉と行動を共にするように命じられていた。「わからん」安明は首を横に振りながら腰を上げた(2024.11.15)実業之日本社80020248