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ほぼ毎日更新の雑感「ウエイ」
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今野敏
bin konno

とせい
日村が代貸しを務める阿岐本組は暴力団ではない任侠やくざ。親分は決して縄張りの素人に迷惑をかけることを好まない。親分がある日、弟分の組長から倒産寸前の出版社を買い取った。債権を安く叩いて、多少でも取り戻すと思われていたが、親分は本物の社長として乗り込み、代貸しの日村とともに出版社を立て直してしまう。 (2016.4.8) 中公文庫 2007年11月 800円

ボディーガード3
バトル・ダーク
フリーのボディーガード。工藤兵悟。彼のもとに傭兵時代の戦友であるジェイコブから仕事の依頼があった。しかし、相手がイスラム過激派だと知った工藤は依頼を断る。イスラム過激派との戦いに自信がなかったからだ。ジェイコブはあきらめるが、やがて依頼人をイスラム過激派に誘拐されてしまう。その後に身代金の要求があった。その段階で工藤は、これはイスラム過激派を偽った別の人間の犯行だと直感する。イスラム過激派は死刑宣告した者に躊躇はしないことを知っていたからだ。「アラブの熱い血」を書いたジャーナリストを救い出すために、工藤は水木と黒崎とチームを組んで新しい戦いに乗り出していく。 (2014.10.13) ハルキ文庫 1999年4月 629円

ボディーガード2
チェイス・ゲーム
ミスティーにイタリア人が訪ねてきた。彼は工藤の戦友のアル・ソラッツォだった。アルは自分といっしょにマフィアと戦ってほしいと工藤に頼むが、工藤は生きることに意味を感じるようになっていたので、依頼を断る。その代わり、アルを北八ヶ岳麓へ逃がす。その後、ミスティーにイタリアマフィアのヴィート・カルデローネが仲間と訪ねてきた。アルを出せと言う。ここにはいないと対応すると、店主の黒崎と従業員の水木を人質にして、アルを連れ戻せと命令をした。工藤は拒むことができずに、カルデローネの仲間2人と自分が逃がしたアルを探す旅に出る。ただし期限は3日後に設定されていた。それはアルがカルデローネから盗んだ品物をアメリカのマフィアに渡す約束の日だったのだ。 (2014.10.2) ハルキ文庫 1999年3月 629円

ボディーガード1
ナイトラン
工藤兵悟はフランスの第四部隊で実戦の経験があった。第四部隊は外国人ばかりによる傭兵部隊だ。そこで多くの実践的な戦いの技術を習得した工藤は、日本に戻ってからはフリーランスの要人警護を請け負っていた。日常的に仕事があるわけではないが、たまの仕事で大きな金が入った。カウンターバーの店内居住スペースに住みながら、客からの仕事を請け負った。マスターは多くを語らない黒崎。黒崎はかつて暴力団に所属していたが、いまは組を離れてバーを経営している。工藤への客の取り次ぎも行う。そこへアメリカ帰りの水木亜紀子という女性が3日間のボディーガードを依頼してきた。依頼の理由を聞かない工藤は彼女を3日間守りきる仕事を引き受けた。するとそこに格闘の訓練を積んだ外国人が乗り込んできていきなり亜紀子をさらおうとした。工藤は3人の外国人にダメージを負わせて逃亡する。経験から3人はCIAだと感じた工藤に、亜紀子は襲われた理由を説明する。環境保護団体とCIAが密かに結託して増えすぎた人類の粛正を実施するという計画を知った亜紀子は、その資料を持ち出して、謀略を阻止できる立場の人間へ資料を渡そうとしていたのだ。人類の粛正のために立てられた計画によると、北朝鮮が東京に核攻撃を仕掛けて多くの市民を殺すという。これに対してアメリカ軍が核攻撃で応戦し、北朝鮮のひとびとを抹殺する。どちらにもCIAが関わった痕跡を残さない綿密な計画だったのだ。CIAは工藤が亜紀子を誘拐しているという物語を作り出し、公開捜査を警視庁に要請する。ニュースや新聞で報じられた物語によって、工藤と亜紀子は次第に追い詰められていく。 (2014.9.24) ハルキ文庫 1999年2月 629円

潜入捜査6
終極
産業廃棄物の違法投棄を請け負っていた業者が投棄に反対する人々に暴力をふるった。退職金のすべてを投げ出して別荘地に家を買った岩井老人は、反対運動の先頭に立った。その結果、家が火事になり、反対運動のひとたちが用意した仮設住宅で暮らすことになった。火事は明らかに暴力団による放火だった。環境犯罪研究所の内村所長は、佐伯に出張を命じた。佐伯は、廃棄物処理業者に潜入し、指定暴力団の企業舎弟であることを突き止めた。さらに、この会社が全国の地下にもぐった暴力団組員たちをネットワークでつなぐ組織の中心役であることをつかんだ。暴力団との関係を切ろうとする一般企業の役員がテロの標的になり始めていた。 (2014.4.2) 実業之日本社文庫 2013年2月 600円

潜入捜査5
臨界
名古屋へ出張に行くように所長の内村から言われた佐伯は三重県の原子力発電所建設現場にいた。そこでは現場労働者を暴力団が口入して集めていた。町も議員も原子力行政に群がり、そこから流れてくる潤沢な資金の一部を暴力団に渡して人集めをしていた。放射能汚染で労働者が死んでも、事故死として扱われた。佐伯は、反対運動のひとたちを暴力で排除する暴力団と戦い、町から暴力団を追い出そうと考えた。 (2014.3.29) 実業之日本社文庫 2012年10月 600円

潜入捜査4
罪責
産業廃棄物のうち医療現場のごみを扱っていた運送業者は、克東会の舎弟企業だった。使い古した注射器を小学校のゴミ捨て場に違法投棄していた。それを見つけた教師の中島は、暴力団に惨殺された。長男は交通事故に見せかけてけがさせられた。長女は誘拐された後に強姦されて覚せい剤を打たれた。内村からそのことを知らされた佐伯は、実行犯の牛崎と対決をする。 (2014.3.28) 実業之日本社文庫 2012年4月 600円

潜入捜査3
処断
千葉の漁港で漁師が惨殺された。岐阜の山中で環境保護団体のメンバーが暴行を受けた。ともにうしとら組の乾が主犯だった。うしとら組はワシントン条約で取引が禁止されている生物を密漁し、高額で売り抜けていた。それを邪魔するひとたちを排除しようとしていた。環境犯罪研究所の内村所長はうしとら組のねらいは、密漁のみではないと読んだ。その読みを警視庁の奥村刑事に伝え、捜査情報を引き出そうとした。佐伯は内村の指示を受けて岐阜へ赴く。そこではカスミ網猟によって希少生物たちが次々と罠にかかっていた。乾は佐伯を排除しようとするが、逆に佐伯の攻撃に敗れてしまう。乾は本家に応援を頼む。うしとら組の鬼門組長は古い体質の乾を嫌い、片腕の岩淵に乾に拳銃を渡し、同時に佐伯にも拳銃を渡すように指示を出した。鬼門から拳銃を得た佐伯は、鬼門のねらいを探る。 (2014.3.28) 実業之日本社文庫 2011年12月 600円

潜入捜査2
排除
東南アジアで大規模なレアメタル採掘が始まった。それはインドネシア政府がすすめる政策だったが、現地では採掘に伴って放射性物質が廃棄され、村民に白血病が広まっていた。集団訴訟によって採掘の差し止めが求められた。採掘を行っていた事業者は日本の暴力団を使って、村民らの訴訟取り下げを計画した。泊屋組の新市は、泣き叫ぶ子どもを刺し殺し、老婆の首を切り裂いた。環境犯罪研究所の内村は、東南アジアで起こっていることの裏で暴力団が動いている事実をつかみ、佐伯と白石を現地に派遣した。佐伯は、新市による犯罪の事実と証拠を集めるまで慎重に行動していた。しかし、その慎重さが裏目に出て、さらなる被害者が出てしまった。怒りと恐れを増幅させた佐伯は、村民らの協力を得て、新市らへの反撃を開始する。 (2014.3.27) 実業之日本社文庫 2011年8月 600円

潜入捜査
警視庁捜査四課の佐伯刑事は、暴力団事務所に単身で乗り込み、拳銃を用意していた組員を射殺した。業務上は正当防衛だが、佐伯は最初から組員を射殺するつもりで拳銃を使用していた。上層部は佐伯のやり方をよしとせず、彼から警察官の権限をすべて剥奪し「環境犯罪研究所」へ出向させる。そこにはなぞの内村所長と秘書役の白石景子が勤務していた。内村の説明では、研究所は環境を汚し将来のひとびとに害悪を及ぼすような犯罪者を警察の権限を越えたところで始末する役目を担っているという。佐伯につぶされた組の兄弟分は、佐伯を許さず、唯一の親戚たちが住んでいた家に車を突っ込ませ爆破した。一瞬にして家族が爆死した。そこには幼いこどもも含まれていた。なおもやくざたちは佐伯と関係のあるホステルの井上美津子をとらえ、犯しているところをビデオ撮影した。内村と白石の追跡で、奈津美がとらわれたマンションにたどり着いた佐伯は、先祖から伝わる佐伯流活法という拳法でその場にいた組員たち全員を病院送りにした。そんなとき、環境犯罪研究所に環境破壊を犯しかねない廃油の処理を頼まれた泊屋組が弱小の運送会社に脅しをかけて違法投棄させようとしている計画が知らされた。佐伯は内村の指示で運送会社に社員として潜入し事件の全貌を掴もうとした。本著は1991年に「聖王獣拳伝」として出版された作品を2011年に新装版として改題し、出版された。 (2014.3.25) 実業之日本社文庫 2011年2月 600円

ST警視庁科学特捜班
沖ノ島伝説殺人ファイル
福岡県警から警視庁科学特捜班に捜査の依頼が来た。他県の捜査に協力することに慣れていないキャップの百合根は上司に理由を尋ねる。「それだけSTが信頼されてきたということだ」で片付けられてしまう。現地に赴いた一行は、伝説の島で起きたダイバーの死亡事故をめぐって、事故なのか事件なのかがわからないという状況になっていることを知る。沖ノ島は神社の許可がなければ部外者が上陸できない島だったのだ。現場検証ができない状況では、事故なのか、事件なのかはわからない。法医学者の赤城は被害者を解剖した。その結果、後頭部を強く打撃されたことが死因だと断言し、事故ではなく、殺人事件だと宣言した。 (2014.7.13) 講談社文庫 2013年6月 581円

ST警視庁科学特捜班
桃太郎伝説殺人ファイル
岡山県警から警視庁の科学特捜班に捜査の協力依頼があった。一課の菊川とともにSTのメンバーは岡山に向かう。それまでに3件の連続誘拐殺人事件が発生していた。それらがすべて岡山と言うキーワードでつながる可能性があったのだ。岡山に到着した面々のうち、桃太郎伝説に強い興味を示したのは青山だった。それまでの定説と違い、地元では桃太郎が侵略者で、鬼が島の鬼が地元の英雄だと語り継がれていたからだ。連続殺人の遺体には「モモタロウ」というメッセージと陰陽五行説の星型が刻まれていた。そんなとき地元の岡山で4件目の誘拐事件が発生した。STのキャプテンである百合根は、メンバーとともに郷土史に詳しい湯原という元警察官に話を聞きに行く。 (2014.4.29) 講談社文庫 2010年11月 552円

ST警視庁科学特捜班
為朝伝説殺人ファイル
伊豆大島と奄美大島で連続してベテランのダイバーが事故死する。警視庁は、伊豆大島の事故について、不審な点がないことを証明するために科学捜査班に出動を命ずる。それはテレビが昼のワイドシューで「為朝伝説」と関連づけ、世論が関心を寄せたからだ。そのワイドショーの取材班が沖縄で取材をしていた。番組の看板女性キャスターが水死体で見つかった。沖縄県警は事故死と判断した。科学捜査班は伊豆大島、奄美大島の捜査の一環として、沖縄へも足を伸ばす。そこで、法医学の赤城は必ずしも事故死とは判断できない感触をもつ。(2014.4.27) 講談社文庫 2009年7月 581円

ST警視庁科学特捜班
黒の調査ファイル
歌舞伎町で小火が発生した。その直前には周辺で怪奇現象が起こっていた。テレビやラジオが受像・受信できないなどの症状だ。警視庁科学特捜班は、小火の解明にかり出された。そんななか、ついに火事による死亡者が発生する小火があった。検証した法医学者の赤城は、火事が起こる前にすでに意識を失っていた可能性を示唆した。所轄署は殺人事件として捜査を開始する。するとそこには中国から進出してきたマフィア同士の抗争が背景にあることがわかった。ガスや薬品の臭いをかぎ分ける黒崎の活躍で、難事件が解決していく。(2014.3.15) 講談社文庫 2007年5月 571円

ST警視庁科学特捜班
緑の調査ファイル
世界的に有名な指揮者の辛島が帰国した。新東京フィルとバイオリニストの柚木とのコンサートのためだった。柚木はそのコンサートで自慢のストラリバリを弾くことになっていた。しかし、リハーサルのときに名器は盗難に遭う。盗難事件の捜査に借り出された百合根たちSTは、事件が手品のようで悩む。これまで接点の少なかった警視庁の菊川とSTの青山がともにクラシックファンだったことが判明した。二人はほかのSTたちがまったく気乗りしない捜査にもかかわらず、辛島と柚木に会えるという嬉しさで舞い上がってしまう。そんななか新東京フィルのコンサートマスターが絞殺された。(2014.3.11) 講談社文庫 2007年2月 571円

ST警視庁科学特捜班
黄の調査ファイル
マンションの一室で4人の若者が亡くなった。部屋にはガムテープで目張りがされ、七輪が用意されていた。4人は一酸化炭素中毒だった。司法解剖の結果、4人からは睡眠薬とアルコールが検出された。臨場した検死官は自殺と断定するが、STたちは目張りが雑だったことや、コップやガムテープの芯、睡眠薬の袋などが部屋になかったことを不審に感じた。綾瀬署の塚原は警視庁の菊川と百合根たちと他殺の線を含めて捜査を開始した。4人には共通点があった。それは宗教法人の苦楽苑の信徒だったのだ。当主の阿久津は、仏法を個人の悟りへと高めれば、一切の悩みから解放されると説く。当主の片腕の篠崎は、集団による説法を尊重し、必要なときには安定剤や睡眠剤の服用もすすめた。対立するふたりの考えは、信徒たちに動揺を与えていた。STのなかで僧籍をもつ山吹が、4人とともに行動していた町田という青年の申し出を受け、寺に座禅させることを了承した。百合根は重要参考人の監視という名目で、町田とともに座禅修行を経験する。(2014.3.8) 講談社文庫 2006年11月 571円

ST警視庁科学特捜班
赤の調査ファイル
京和大学病院で研修医をしていた赤城は、医局を中心とした患者無視の医療体制に嫌気がさして病院を離れた。赤城に期待をしていた主任教授の大越は赤城がどこの病院にも就職できないように圧力をかけた。結局赤城は警視庁の科学捜査研究所に就職し法医学の専門家になった。その京和大学病院でインフルエンザと診断された男性患者が、医師の判断ミスで投薬によってTENという難病を発症し死亡する事故が発生した。民事裁判では病院に過失は認められなかった。遺族は警察に業務上過失致死の刑事告発をした。菊川と百合根はSTたちとともに事件の捜査を始める。するとそこには大越を頂点とした先端医療研究の大きな壁と、警察による捜査を妨害する企てが待っていた。(2014.3.8) 講談社文庫 2006年8月 619円

ST警視庁科学特捜班
青の調査ファイル
警視庁科学捜査班のキャップ、百合根は刑事の菊川とともに目黒署に赴く。テレビの心霊番組のディレクターが死んだ。事故なのか事件なのかは不明だった。所轄の刑事とともに臨場すると、検死官がいて事故と断定する。この検死官は、科学捜査は班の設立に反対していた人物だった。捜査班の医師である赤城は、事故とは言い切れないと主張するが相手にされない。番組が心霊番組だったことを知った心理分析担当の青山が興味を抱く。霊媒師としてメディアから注目されている人物が登場する番組だった。青山は霊媒師と会えるかもしれないので、刑事と行動を伴にした。ディレクターは番組の撮影が終わり、打ち上げをした帰り道に、なぜか撮影現場だった無人マンションの一室で死んでいた。なぜ打ち上げの後、そこまで来たのか。またどうやって死んだのか。いくつもの疑問を菊川ら刑事が聞き込みを通じて洗っていく。また結城は部屋に入ったときに感じた違和感の原因を探っていく。それがこの部屋を心霊スポットと呼ばせている理由ではないかと考えたからだ。(2014.7.12) 講談社文庫 2006年5月 590円

ST警視庁科学特捜班
黒いモスクワ
警視庁科学特捜班の黒崎は美作竹上流の中伝免許の持ち主だった。それは武術としての域を超え、実践でも十分に通用するほど、現実的なものだった。モスクワで竹上流の支部を作ろうという動きがあり、黒崎は師範とともに実技指導役として呼ばれた。同じ頃、百合根は赤城とともに警視庁とロシアの相互扶助の目的で研修を命じられていた。たまたま黒崎とは同じモスクワでかち合うことになる。そこに曹洞宗の宗派に呼ばれるかたちで山吹が加わった。モスクワではFSBのアレクに付き添いながら教会の爆破事故を調べることになった。古い教会の地下で爆発事故があり所有者が死んだ。アレクは事故説を主張した。たまたま百合根たちと同じ飛行機に乗ったフリージャーナリストが到着した夜に密かに教会に忍び込み、翌日死体となって発見された。その検屍をした赤城は、事故ではなく、事件であると断定する。アレクはSTの面々が次々と事故から事件への証拠を集めていく力量を評価する。上司のオレグに報告すると、オレグは事故として2件とも片付けるように強く迫った。さらに警視庁から菊川と青山、結城が百合根の応援として派遣された。STメンバーが全員揃った。教会の地下で起こった心霊現象の謎を解いた面々は、実際には粉塵爆発で最初の事件が起こされたことを突き止めた。STの捜査能力を信頼し始めたアレクは、上司であり、かつての教官だったオレグが何かを隠しているのではないかと疑い始めた。(2014.7.5) 講談社文庫 2004年1月 571円

ST警視庁科学特捜班
警視庁管内で連続して不審な殺人事件が発生した。2人は中国人、1人は南米人だった。3人とも新宿を根城にする外国マフィアの息がかかっていた。特捜部は、マフィアどうしの権力争いと言う絵図を描く。しかし、科学捜査研究所から派遣された科学特捜班たちは、殺された現場や遺留品などから犯人は同一人物ではないかと言う推論をする。特捜部の刑事たちとたびたび意見を衝突させながら、個性的な科学特捜班のメンバーが事件を解決していくシリーズ第一作。 (2014.3.2) 講談社文庫 2001年6月 648円

トランプ・フォース1
佐竹竜は、大学を卒業して証券会社に就職した。青森県の北部、三厩という小さな集落の出身だったので、ことばになまりが強かった。そのため大学時代は、なまりで差別の出ない英語とフランス語を徹底的に習得した。日本語での会話を避けていた。それが証券会社に就職して役立った。上司に認められてニューヨークへの異動がかなった。そこでは彼のネイティブな英語は重宝がられた。しかし、ニューヨークでの日々が重なるにつれ、佐竹は自分の生き方についての疑問がわいてきた。町を歩くと、貧しいながらも、自分の人生を楽しんでいるひとたちがたくさんいた。大金持ちではないが、こころはとても豊かなひとたちに見えた。このまま証券マンとして人生を全うすることが、本当の夢だったのだろうかと。そんなある日、佐竹は幼いときから父に教えられてきた古武道を試しに、空手道場を訪ねた。白人ばかりの道場で、佐竹は自分よりも体格もパワーもある相手を、からだのしなりと反動を利用した「打ち」で倒した。そのときを境に、佐竹は自分のなかに眠っていた闘争心が芽生えていくことを自覚した。次々と道場を訪ねては、道場破りのようなことを繰り返した。そんなある日、マディソン・スクェアー・ガーデンで異種格闘技世界大会が開かれることを知った。会社を辞めて、格闘家としての人生を選択した佐竹は故郷に戻り、父とともに古武道の修練に励んだ。そのとき、父から初めて佐竹の家に伝わる武道のいわれを耳にした。そして、大会に挑んだ佐竹は、準決勝でワイズマンという元傭兵に敗れた。失意の佐竹に謎の男性、ホワイトが声をかけた。格闘家としての技量を磨いて、自分に協力してもらえないかと。それは、世界中で頻発するテロ攻撃に対して、主要国家が垣根を越えて、専門的な破壊部隊を造るというものだった。佐竹にはそのエージェントになってほしいというのだ。古武道を少しかじっただけの佐竹は、軍隊の経験もなく、自分には無理だと最初は断るのだが。(2014.1.10) 中公文庫 2010年8月 686円

凍土の密約
(倉島警部補3)
東京で右翼団体の構成員が殺害された。数日後、暴力団の構成員が殺害された。二つの事件の背後にロシアがからむ。警視外事課の倉島警部補は、上からの指令で殺人事件の特別捜査本部へ派遣される。公安の警察官が殺人事件の捜査に加わることは異例だった。なぜ自分が指名されたのか。その意味を考えながら、倉島の捜査が始まる。今度は、ロシア人のジャーナリストが殺された。ペルメーノフ。彼はジャーナリストを装っていたが、実際は日本国内で収集した情報をロシアへ送る情報員だった。その彼が殺された。何者かの大きな意思が、日本国内で連続殺人を犯すことを許している。やがて、倉島は「釧路・留萌」というキーワードにたどりついた。それは、戦後の北海道をアメリカとソビエトが分割統治する境界線を意味していた。スターリンとトルーマンの密約だったのだ。その密約文書がいまもどこかにあるという噂を信じて、ロシア極東軍からプロの殺し屋が訪れていたのだ。 (2013.12.3) 文春文庫 2012年3月 600円

白夜街道
(倉島警部補2)
かつてKGB時代に兄弟のように仲が良かったマレンコフの警備会社に雇われたヴィクトルは、ペデルスキーの警護という仕事を帯びて来日していた。若いペデルスキーは、ロシアにあって日本にないものを輸出するための商談で、多くの輸入業者と会合を重ねていた。最後の夜に、理論右翼の中心的な存在である大木天声から仕事の依頼があった。関西から勢力を伸ばしているやくざを叩きのめす仕事だった。ヴィクトルにはかんたんな仕事だった。無事に仕事を済ませて、ヴィクトルはロシアに戻った。その後、外務省の現役キャリア官僚が不審死した。警視庁の公安警察官である倉島警部補は、不審死の理由が、かつてKGBなどの外国諜報部が使用したリシンを使った方法であることを見抜く。特捜本部から、牛島刑事とともに、ヴィクトルとペデルスキーの身柄を確保するために、ロシアに飛んだ。ヴィクトルと共同生活をしていたエレーナが消えた。勤務先を訪ねたが、無断欠勤していた。やがてマレンコフのもとに脅迫状が届いた。モスクワから北に離れた町に来るようにとの文面だった。何かの罠にはめられていると感じながら、エレーナを救出するためにヴィクトルはペデルスキーとともに白夜街道をひた走る。(2013.11.30) 文春文庫 2008年11月 543円

曙光の街
(倉島警部補1)
警視庁公安課の倉島は、自分の仕事にあまり興味を抱いていなかった。刑事課と違い、犯人を検挙するような派手な仕事がしたいと願っていた。そんなとき課長に呼ばれ、ロシアから入国する殺し屋を調べるように命令された。殺し屋の名前は、ヴィクトル。簡単な仕事だとたかをくくった倉島は、知らない間にヴィクトルが入国していたことに驚く。ヴィクトルはかつてソビエトの諜報機関KGBの優秀なスパイだった。KGBが解散し、失職した。そしてあしたの食事にも困窮する生活を送っていた。そこにKGB時代の上司であるオギエンコが訪ね、日本でやくざを殺すように依頼した。前金で200万円もの大金を得たヴィクトルは、暗殺を実行するために日本へ渡った。新宿でしのぎを削る津久茂組の組長、津久茂は連夜、自分の息のかかった店に出かけ、お気に入りのロシア娘のエレーナに入れ込んでいた。直属の部下である兵藤は、弱いチンピラを相手に力を誇示するタイプの自分に満足していた。そこへ津久茂の命を狙うヴィクトルが現れ、本物の強さを思い知らされ唖然とする。倉島とヴィクトル、互いに立場が違っても、今回のミッションはどこかで自分たちが罠にはめられていると気づいていく。 (2013.11.26) 文春文庫 2005年9月 629円

天網
警視庁管内で同時に3台のバスジャックが発生した。警視庁特殊強行班は高部係長以下、偵察と説得専門のメンバーで捜査本部に終結した。偵察を主とするバイク班をトカゲと呼ぶ。3台のバスはそれぞれに異なる方角に散っていたので、トカゲは3班に分かれて追跡することになった。説得を主とする東海林や和美らはバス会社に前線基地を築いて犯人からの要求を待つ。東日新聞の湯浅は遊軍の身でバスジャック事件の捜査本部がある新宿警察署に乗り込む。大阪から異動してきた木下を連れている。かつてともに仕事をしながら、記者としてのセンスに欠ける木下とコンビを組むことに反発するが、デスクの命令で断ることができなかった。スマホや携帯を駆使した木下の調査方法が気に食わない湯浅は、記者は自分の目で見て耳で聞いたものを大切にしろと説教する。しかし、木下はインターネットから、3台のバスジャックを報じるサイトがあることを突き止めた。それによると、バスジャック犯人がどこまで逃げ切れるかを棒グラフにして表示し、互いに競わせているようだった。これはインターネットを使った課金犯罪だとにらんだ湯浅は、特殊強行班に事件の核心を伝え、他社が知らない特ダネをつかもうとする。和美らは湯浅の発想にヒントを得て、それぞれのバスジャック犯人がネットライターへ逃げている様子を送信していると確信する。高部はトカゲを呼び出し、ネットライターを見つけ出して、行動を観察するように命じた。すると、1台のバスで人質が犠牲になってしまった。(2013.3.29) 朝日新聞出版 2012年9月 700円

同期
指定暴力団桂谷組の家宅捜索中に逃走した石田を追って、警視庁捜査一課の宇田川は発砲された。石田を確保する直前に、同期の蘇我が発砲から身を守ってくれた。蘇我が助けなければ、宇田川は殺されていた。警備部総務課に勤務していた蘇我は、偶然にその場にいたと説明する。しかし、その数日後に宇田川は蘇我が懲戒免職になったことを知る。警備部に理由を問い合わせても一切の説明なし。本人に確認を取るために連絡先を教えるように求めたが、警察の記録からも抹消されていた。暴力団の抗争事件の補佐に借り出された宇田川は先輩の植松と特捜本部で組織犯罪対策課の刑事たちと仕事をする。そこで月島署の土岐とペアになった。土岐は植松と同期の仲だった。蘇我の消息を探る宇田川に、次々と「ゼロ」と呼ばれる警視庁の公安部情報組織からの圧力がかかる。「蘇我を探す必要はない」。同期の蘇我の安否を心配する宇田川は、見えない圧力の前に屈しそうになる。そんなとき、宇田川に発砲した石田が殺害された。桂谷組と石波田組の抗争事件と思われた。しかし、組対の柚木刑事は独自のルートから、二つの組は近く手打ちをすることになっていたという情報をつかんでいた。手打ちをする組どうしが抗争をするわけがない。柚木の考えを聞きながら、宇田川は特捜本部が、今回の殺人を無理に抗争事件にでっち上げようとしているのではないかと考え始める。行方が分からなかった蘇我が、突然に宇田川の前に姿を現す。「俺を探さないでくれ」。宇田川は土岐や植松の考えを聞き、蘇我がとても高いレベルの潜入捜査をしていると確信する。自らの履歴を消さなければいけないほどの潜入捜査。右翼の重鎮、外務省の高級官僚、アメリカの情報機関が巧みに交錯し、安保マフィアという隠れた存在の陰謀が明らかになろうとしていた。(2012.8.14) 今野敏 講談社 2011年7月 900円

去就(隠蔽捜査6)
全国でストーカーによる事件が頻発していた。警視庁では各所轄署にストーカー対策の特別チームを編成するように通達した。大森署の竜崎署長はどうせ作るなら実りあるものを作ろうと考えた。そこへ方面本部から早く名簿を出せと文句が来る。そんな時、管内でストーカー相談に来ていた女性が行方不明になったと母親から連絡が入る。ストーカー加害者から呼び出され、そのまま音信が途絶えた。加害者は猟銃を所持しているという情報も入る。 (2020.1.22) 今野敏 新潮文庫 2018年12月 670円

自覚(隠蔽捜査5)
地域課に配属された警察学校を卒業した新人が、窃盗犯に職務質問をしながら見逃す失敗をおかした。刑事課長が地域課に乗り込んできて、怒りをぶちまけた。地域課長は、新人が潰されるのを阻止するために、刑事課長に面と向かって行く。地域課長が、新人の状況を聴くと、まだ緊急配備される前に職務質問をしていたことが判明した。それでも納得しない刑事課長は、副署長に報告した。副署長は地域課長を呼び出し、新人を呼び戻し、署長に報告するように命じた。事件現場から呼び出された新人は、竜崎署長の質問に応じて、犯人の様子や、なぜ職務質問をかけたかを答えていく。まずすべきことは、新人を責めることではなく、犯人を捕まえることだと、竜崎は刑事課長に説明した。 隠蔽捜査のスピンオフ作品。 (2018.9.5) 今野敏 新潮文庫 2017年5月 550円

宰領(隠蔽捜査5)
国会議員の牛丸が行方不明になった。警察に内密で探してほしいと秘書から依頼が入る。羽田空港から事務所に戻る途中で音信が途絶えていたので警視庁刑事部長の伊丹は管轄の大森署長竜崎へ内密捜査を依頼する。竜崎は国会議員の行方不明に内密はないと判断し、マスコミに漏れないように捜査体制を組んでいく。かつてクスリに手を出した息子の邦彦が二浪を経ていよいよ東大受験を迎えようとしていた。 (2020.1.20) 新潮文庫 2016年3月 670円

転迷(隠蔽捜査4)
大森署管内で悪質なひき逃げ事件があった。隣りの所轄で外務省職員が殺害された。さらに管内で放火事件が連続した。娘の恋人が赴任したカザフスタンで飛行機事故があった。それに恋人が登場していた可能性があった。複数の事件や問題が同時に起こり、やがてそれらが結びついていく。 (2020.1.18) 新潮文庫 2014年5月 670円

初陣(隠蔽捜査3.5)
竜崎と小学校の同級生だった伊丹は警察庁同期入庁だった。自分は幼馴染の印象があるが、竜崎にはない。伊丹にいじめられていた記憶が鮮明だからだ。福島県警で刑事部長をやっていた伊丹が警視庁刑事部長へ異動になってからの出来事を短編でつづる。 (2020.1.16) 新潮文庫 2013年2月 590円

疑心(隠蔽捜査3)
アメリカ大統領が訪日することになった。羽田空港が管轄の大森署長である竜崎になぜか方面警備本部長の命令が下る。自分のミスを狙った上層部の意図を疑う竜崎だったが、与えられた任務に従う。かつて警視庁にいた時に研修に来たキャリアウーマンの畠山が派遣された。竜崎の秘書役として働く。久しぶりに会った畠山を見て、竜崎は恋に落ちていく。 (2020.1.9) 新潮文庫 2012年5月 670円

果断(隠蔽捜査2)
警察庁キャリアの竜崎は家族の不祥事で大森署の署長に降格人事になった。官僚的で現場経験の少ないキャリアを体質的に受け付けない所轄の署員たち。そのなかで、竜崎は変人扱いされながらも、原理原則に従い、合理主義を貫いていく。管内で発生した消費者金融強盗事件。逃走犯3人のうち2人が大森署管内を通過したにもかかわらず、捕捉できなかった。喝を入れるために乗り込んでくる方面本部の担当官に対して「そんなことをしている時間の無駄があるなら、ほかの仕事をしろ」と押し返す。やがて逃走犯が逮捕されるが、残り一人の行方がわからない。管内で通報のあった「言い争い」事案を気にかけた竜崎は、たびたびその解決を現場に促す。気乗りのしない現場担当者は、やがて室内から発砲があったことを突き止める。逃走犯が人質をとって立てこもっていたのだ。犯人確保を目的にするSITと、犯罪防止を目的にするSATが現場で対立する。竜崎は専門家の彼らに捜査の指揮権を任せ、全責任は自分が追うと断言する。その姿勢が、現場の対立を紐解いていく。やがて強行突入による犯人射殺で事件は解決した。しかし、戸高刑事が感じた「違和感」がその後に、事件の洗い直しという新しい展開へと道を開く。竜崎を嫌う戸高。戸高をほかの捜査員と区別しない竜崎。やがて、戸高の上司を見る目が変化していく。犯人は人質を盾にしていたのではなく、犯行計画の主犯格のもとに逃げ込んでいたのだ。竜崎の妻は胃潰瘍で倒れ、息子は東大受験を志望する。(2010.11.23) 今野敏 新潮文庫 2010年2月 590円

隠蔽捜査
警察庁のキャリアである竜崎は、正義を重んじ、自分の役割を熟知している。官僚のなかにあって、隠蔽や腐敗をだれよりも嫌う。「変人」周囲や家族にそう呼ばれながらも、国家のために命を真っ先に投げ出す覚悟で仕事をする。それが「官僚」だと言ってはばからない。だから、多くの敵を作る。過去に少年だった者たちが犠牲になる殺人事件が連続して三件も発生した。警視庁も警察庁も容疑者が、現職の警察官だとわかってから、犯行の隠蔽を画策する。竜崎は、その不正にたったひとりで立ち向かう。息子のヘロイン使用に対して、どう対処したらいいか、そのことに迷いながらも、警察という組織の隠蔽を許さない。 (2010.9.28) 今野敏 新潮文庫 2008年2月 590円

リオ
自分の目の前で3人の男が殺害された。いつもその現場にいた少女リオ。警察から殺人犯としてマークされる。しかし、自分の記憶をたどっても、ひとを殺した記憶が浮かばない。巧妙に仕掛けられた罠なのか、薬物中毒による記憶障害なのか。樋口刑事が粘りの捜査を開始する。 (2008.11.29) 今野敏 新潮文庫 2007年10月 552円

朱夏
樋口の妻が何者かに誘拐された。妻が誘拐されて初めて樋口は、自分が妻の日常を何も知らなかったことに気づき愕然とする。シリーズ第一作のコンビ樋口・氏家が事件の真相に迫る。第一作の「リオ」を読んでから、朱夏を読むことを推奨する。(2008.12.19) 今野敏 新潮文庫 2007年10月 552円

ビート
警視庁強行犯係の樋口顕シリーズの最終巻。警察官と長男を脅していた銀行員が何者かに殺された。脅されていた警察官は、ひそかに殺害したのは次男ではないかと疑いをもつ。脅されることはなくなったが、わが子への疑念がふくらむ。推理小説というよりも、親子のあり方をメインにすえた力作。(2008.12.19) 今野敏 新潮文庫 2008年5月 743円