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門田隆将
ryusho kadota

死の淵を見た男
2011年3月11日。東日本大震災のあった日、福島第一発電所を巨大津波が襲った。その瞬間から、懸命の冷却作業に努めたひとたちの実話を、多くのインタビューをもとに構成した。全電源が喪失した真っ暗闇で、発電所の司令室では吉田所長をはじめ、多くのひとたちが最悪の結末を避けるために決死の作業を繰り返していた。そんなとき、東京電力本社や政府がどんな対応をしたのか、原子力の専門家は何をしたのか、時系列に沿って克明に記されている。著者はあとがきで、大震災の前に二度のチャンスがあったと列記している。ひとつは9月11日の同時多発テロ。もしもテロによって原発の全電源が喪失したら、どのような対処と準備が必要かというレポートがアメリカから日本に寄せられていたにもかかわらず、日本政府も東電もなんら検討をしなかった。もう一つはスマトラ沖の大地震。そのときの津波によって多くの命が失われた。自然の驚異は、それまでの常識を覆すパワーを秘めていることを実感できたのに、このときも日本政府も東電も「10メートルをこえる津波はこない」「全電源の喪失などありえない」という態度を取り続けたのだ。その結果、3月11日の大津波による全電源喪失で、いまも多くの住民を避難生活に縛り続けることになった。 (2015.4.12) PHP 2012年12月 1700円