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氷月 葵 |
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神田のっぴき横丁 |
ただ今読書準備中(2024.8.28)二見時代小説文庫800円2024年6月 |
神田のっぴき横丁 |
12月の冷気を感じながら、登一郎はふと目を覚ました。外で声や足音が聞こえる。捕物かと思った。階下から物音がした。階段へ登一郎は近づく。耳を澄ませると「静かにしろ」。覗きこむと佐平が何者かに馬乗りにされていた。「金を出せ」「金なんぞ」「やめろ」。登一郎は階段を飛び降り、刀掛けから脇差しを手にした。賊は「なんだ、爺か」と油断する。「見くびるな」登一郎は刀を振り上げ男の腕を斬りつけた。男の手から短刀が落ちた。佐平は男の膝裏を蹴る。崩れる男の首を登一郎の柄頭が打つ。膝をついた男の足を佐平が縛った。表から声がかける。永尾清兵衛が入る。次いで黒羽織の役人が入る。捕らえた男を登一郎は役人に渡した。男はさる商家に押し入った一味の者だった。未然に盗みを防ぎ、散り散りに逃げた中で、その男だけ逃げ遅れたという。同心は男を連れていった。前をはだけたままの佐平と登一郎、互いに慌てて前を重ねて苦笑した(2024.9.5)二見時代小説文庫800円2024年2月 |
神田のっぴき横丁 |
10月の風が横丁に吹く。朝の空を見上げながら登一郎は竹箒を手にしていた。その時、横丁に女が2人駆け込んできた。若い女は赤子を抱え、母親らしい女は娘の背中を押している。目が合った登一郎に年配の女が問う。「こちらはのっぴき横丁でしょうか」。子どもを預かってほしいという。登一郎はすぐに2人をお縁の家に連れて行く。お縁は子どもの預かりを生業にしていたが、赤子は預かっていないという。逼迫した事情があるらしい。お縁は登一郎にも家に入ってもらい事情を聞くことにした。娘の名前は喜代、母親は富美、赤子は幸丸。乳のあてがないので赤子は預からないと告げるお縁に、娘の喜代ともども預けたいというのだ。登一郎が事情を聞いた。さる大名家に奥女中として奉公に上がった喜代は、当主の次男に無理矢理手を付けられ懐妊させられた。健やかに育った後に屋敷に戻すという勝手な言い分で放り出されたのだ。それがこのままでは幸丸が屋敷の者に殺されるかもしれないと知らされた。どこかに身を隠すために選んだのがのっぴき横丁だった(2024.7.26)二見時代小説文庫800円2023年10月 |
神田のっぴき横丁 |
湯屋を出た真木登一郎は、額の汗を拭った。もっと朝早く来れば良かった。7月初旬の中天の日差しが注ぐ。登一郎は前から来る男に目を留めた。総髪に短く切った茶筅髷の男はキョロキョロと辺りを見渡している。背中に荷物を背負って胸で風呂敷を結んでいた。よれた袴が旅人の長さを思わせた。男と登一郎はすれ違った。背後で大声が起こった。振り向くと男が倒れて二人の男に押さえ込まれていた。破落戸の二人は旅人を懐から財布を盗み、脇差しを鞘ごと奪った。登一郎は慌てて近づき、破落戸と対峙した。脇差しの峰で男たちを打ち付けたが砂で目潰しをくらい、ひるんだ。その隙に破落戸たちは走り去った。涙の溢れる目をしばたたせながら登一郎は旅人をのっぴき横丁へ連れて帰る。破落戸たちに脚を打たれて歩けなくなっていたのだ。長崎から来た旅人は、柴崎正二郎と名乗った。長崎で蘭方を学んだ医師の正二郎に横丁の漢方医、龍庵は弟子の信介に蘭方を教えてほしいと依頼した (2024.7.26)二見時代小説文庫800円2023年6月 |
神田のっぴき横丁 |
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神田のっぴき横丁 |
真木登一郎はのっぴき横丁で隠居生活を始めた。暮らしになじみはじめ、長屋の住民たちとも少しずつ打ち解け始める。朝と夜の湯屋は混むことがわかったので昼のうちに湯屋に行くことにした。細い横町から表通りに出ようとした。すると若い男が二人走りこんできた。先に走る男がもう一人の男の手首をつかんでいる。その男の袖は切られ、腕から血が流れていた。背後からは抜き身の刀を手にした侍が追いかけて来る。登一郎は脇差を抜いて切っ先を侍に向けた。「町人相手に刀を向けるとは何事か」と声を出す。周囲にはやじ馬が集まり、登一郎たちを応援し始めた。侍たちは背を向けて逃げた。腕を切られた男は米造、手を引っ張られた男は札差の若旦那だった。登一郎は横丁の医者、龍庵のもとに二人を連れて行く。金創医ではない龍庵はとりあえず止血だけした。龍庵の向かいに住む新吉が札差の深田屋を知っていたので知らせに走る。登一郎は襲ってきた侍について事情を聴いたが、若旦那はまったく知らない侍だったという。ただし、手代の米造は両国ですれ違ったときからつけてきたことに気づいていた(2024.5.29)二見時代小説文庫750円2022年10月 |
神田のっぴき横丁 |