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福澤徹三
tetsuzo fukuzawa

侠飯(4)
国会議員秘書の藤堂旬一郎は、永田町近くの酒屋に忙しい体を運ぶ。父母に死に別れた小梅という娘が一人で切り盛りをしている。彼女は、立ち飲みサービスも提供していた。常連が集まる酒屋に、ある日、酒販会社から二人の男が料理人として訪れた。立ち飲みチェーンを展開する実験だという。目つきが鋭い柳刃と助手の火野。明らかに気質とは思えない風貌なのだが料理の腕はめっぽう高かった。 (2018.2.3) 文春文庫 2017年7月 680円

侠飯(3)
渋川卓磨は27歳。闇金業者の店長。半グレ集団の串刺し連合の傘下だ。あるとき、グループのリーダーに呼び出された。リーダーの鮫塚は卓磨に、浅草で地上げをしてビルを建てるので、居座っているヤクザを立ち退かせるように命令された。そのヤクザは渋川組。卓磨の祖父が組長の伊之吉だった。渋川組に向かった卓磨は伊之吉にコケにされながらも、見習いとして住み込むことを命令された。同じ時期に桜田一家の柳刃組長が部下の火野とともに渋川組を訪ねた。探している外国人がいるので、しばらく滞在させてくれないかということだった。昔ながらの仁義が切れる柳刃に感心した伊之吉は客分としての滞在を許す。柳刃は客人としての扱いを受け入れる代わりに、賄を任せてほしいと願い出た。こうして、年老いた代貸と組員しかいなかった渋川組は、柳刃の三度の食事によって、どんどん元気になっていく。いつまでも地上げの話を切り出せない卓磨に業を煮やした鮫塚は、伊之吉もろとも殺害し、屋敷を放火させようと乗り込んできた。 (2017.3.5) 文春文庫 2016年8月 640円

侠飯(2)
真鍋順平は28歳で独身だ。ウエブサイトのシステムエンジニアとして働いていた。ある日、いきなり人事課に呼ばれ異動を命令される。自分が必要とされていなかったことをなかなか受け入れられないまま、順平はリストラの対象として、屈辱の日々を送り始めた。ほかの部署からも同じように強制的に異動させられたひとたちが「人財支援課」に送られてきた。自分から辞めるというまで、大した仕事を与えないという会社の姿勢だった。ランチを食べに行くと、会社裏にキッチンワゴンが停まっていた。「スパイシーギャング」という名の店だった。日替わり弁当を売っていたが、ベンチとテーブルで食べることもできた。店員の二人は見るからに凶暴そうな風貌だった。ひとりは火野、店長は柳刃と言った。順平とその仲間たちはおどおどと通う。店員はあやしくても、食事がとても旨かったのだ。いつしか順平たちは、会社を辞めて自分たちでキッチンワゴンを始めようという夢を抱き始めた。 (2017.2.22) 文春文庫 2015年12月 670円

侠飯(1)
良太は偏差値の低い大学に通う。文学部4年。卒業を前に就職が決まっていない。信也と洋介、それに春菜という友人たちと怠惰な生活を送りながら、不採用通知を受け取り続けている。ある日、自宅マンション前でやくざ同士の抗争があり、それに巻き込まれそうになった。拳銃を撃ち合うヤクザの一方に、命を救われた。しかし、そのヤクザは警察や相手からの追手を逃れるために、良太の部屋に上がり込む。そこでヤクザとの不思議な共同生活が始まった。柳刃と火野という二人のヤクザは、窓から外を覗きながら、良太に自分たちのことをだれにも告げてはいけないと脅す。そして、良太が驚く速度で部屋の大掃除をした。また冷蔵庫やテレビがいつの間にか一新されていた。柳刃は、朝と夜にキッチンで食事を作った。どの食事も手軽な食材で天下一品の味だった。良太は理不尽なヤクザの占拠に抵抗しながらも、あまりにもうまい飯についつい二人との生活を受け入れてしまう。 (2017.2.11) 文春文庫 2014年12月 590円