関連するリンクページ
・書籍紹介トップページ ・サイトのトップページ
・ほぼ毎日更新の雑感「ウエイ」 ・作家別目次ページ
藤 水名子 minako Fuji
古来稀なる大目付 1まむしの末裔
将軍吉宗の急な下知によって鷹狩が行われた。それはいつものこと。70歳を過ぎた筑後守こと、三郎兵衛は吉宗の近くで同行していた。狭い炭小屋で小休止した時に吉宗は三郎兵衛と二人きりになり呟いた。「尾張を隠居させようぞ」。町奉行を最後に隠居暮らしを考えていた三郎兵衛に吉宗が命じた。大目付けになって幕府の目が届かない所で悪事を働く姑息な大名をあぶり出せというのだ。吉宗が設けた目安箱に投書があった。それによると常陸の国、志筑藩8000石の小藩を誹謗中傷する投書が相次いだという。大目付けになって詳しく調べることになった。松波三郎兵衛正春は、用人の斎藤黒兵衛からの言葉に辟易としていた。大目付けになったとたん、見ず知らずの各藩の使者がお祝い言上に列をなし、賂を渡そうとし始めたからだ。袖の下を全く受け取ろうとしない三郎兵衛に、年上の黒兵衛はやきもきしていた。急に殺気が膨らみ、三郎兵衛が槍を構えた。縁先に踏み出した足元に黒装束をまとった者の体が転がった。虚空から現れた桐野が仕留めていた。驚く黒兵衛。桐野は吉宗が遣わした三郎兵衛警護のための御庭番だった(2024.7.24)二見時代小説文庫658円2020年