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7919.4/16/2019

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===メニュー開発[油烹法]===

炒・ちゃおに続いてよく使われる料理法が「揚げる=炸ぢゃあ」だ。
脆香酥爛(つぉえい・しゃん・すぅ・らん)と言えば、「歯触りはサクッと、中は香りよくジューシー」という意味で炸のおいしさを表す。

鶏のから揚げを思い出すといい。

たっぷり熱した油に下処理をした素材を入れて、芯まで火を通す。
中高温の油によって素材の表面が先に固まる。そのため素材の水分や旨味が流出しない。材料は生のものばかりでなく、炒めたり煮たり蒸したりしたものを使うこともある。
揚げる温度によって食感が異なるので、バリエーションに富んだ料理ができる。

温度の目安は衣を油に落として計る。

150℃以下:衣が鍋底についてしばらくしてから浮いてくる
160℃前後:衣が鍋底についてすぐ浮いてくる
170℃前後:衣が途中まで沈んで浮いてくる
180℃以上:衣が油の表面で広がる

中をジューシーにして表面をカリッとさせるには、仕上げ直前に油の温度を上げたり、二度揚げをしたりする。
私は二度揚げをよく使う。一回目は170℃ぐらいで1分半火を通す。パットに上げて余計な油を落とす。この時、中心に向かって余熱で火が通っていく。二回目は190℃ぐらいで一気に表面に色をつけて出来上がり。

はじめから一口サイズにカットした素材を使うと火の通りが均一で調理しやすい。
油淋鶏のように丸ごと一羽を揚げる場合はどうしても中まで火が通る前に表面が焦げてしまう。専門学校の実習では大きな鉤がついた道具で鶏を吊り、油を表面に鉄杓でかけながら炸した。それでも中まで火を通すのは難しかった。

炸には10個のバリエーションがある。

1..清炸ちんぢゃあ:素揚げ
2..浸炸ぢんぢゃあ:中温の油に入れて余熱で火を通す。また加熱して火から下ろすことを繰り返す。
3..油淋炸ゆうりんぢゃあ:大きな材料に上から油をかけて揚げる
4..乾炸がんぢゃあ:下味をつけた材料にでんぷんなどの粉をはたいて揚げる
5..軟炸ろあんぢゃあ:小麦粉や片栗粉に卵・水を加えた衣をつけて揚げる
6..酥炸すぅぢゃあ:小麦粉にベーキングパウダーと水・油を加えた衣をつけて揚げる。サクサクした歯触りになる
7..脆皮炸つぉえいぴぃぢゃあ:鶏やアヒル、魚などの皮をパリッと香ばしく揚げる
8..巻包炸じゅあんぱおぢゃあ:巻き揚げ。薄焼き卵や湯葉、春巻きの皮などを使った包み揚げ。
9..紙包炸ぢぃぱおぢゃあ:パラフィン紙に包んで揚げる
10..香炸しゃんぢゃあ:パン粉やナッツ類を衣にして揚げる

炒・ちゃおと炸が油烹法の特徴的な調理法だ。
炒め物と揚げ物。
これを定食としてどうメニュー化していくかを考えていく。

===2019年4月16日===



2019年4月8日。大根と人参の糠漬け。糠漬けは和食の王道だが、定食の箸休めに使う。畑の師匠から糠床を分けていただき、試行錯誤している。

7918.4/15/2019

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=メニュー開発[油烹法]=

油烹法。ゆうぽんふぉあ。
油で加熱する様々な調理法のこと。
中華料理は油烹法が多用され、とても発達している。
かなりの高温での調理が可能で、短時間で材料に火を通すことができる。
中華料理のことを炎の料理と呼ぶゆえんだ。

日本料理の茹でたり、煮たりという調理法に比べて素材のもつ旨味が逃げにくいという特徴がある。

私が佐々木食堂を中華料理にした大きな理由が油烹法だ。
ワンオペの食堂で、短時間で料理をお客さんに提供するには、準備も大事だが、調理に時間をかけないことが優先される。短時間でしっかり食材に熱を加えるには油烹法が発達した中華料理がもっともふさわしかった。

中華鍋は鉄でできているので、食材が熱で鍋にくっついてしまう。
それを防ぐためにきれいな鍋を火にかけて薄く煙が出るまで熱する。さらに油を注いで鍋全体に行きわたらせ、鍋壺に油を戻す。鍋のコンディションを整える大事な作業。鍋を使うたびにやらなければならないと教わったが、実際の飲食店ではそれだけの時間的余裕があるかどうかは不明。
この作業を「油ならし=滑鍋・ほわぐぉ」という。
滑鍋・ほわぐぉでは鍋だけでなく、鉄杓もよく油をくぐらせて食材がつかないように整える。

油烹法でもっとも使われる調理法が「炒める=炒・ちゃお」だ。
切り揃えた食材を油を使ってよくかきまぜながら短時間で加熱する。
食材の大きさをそろえることによって、火の通り方を均一にすることができる。

炒・ちゃおには6つのバリエーションがある。

1..生炒しょんちゃお:素材に下味もとろみもつけずに炒める。味付けはあっさり。
2..乾炒がんちゃお:素材に下味もとろみもつけずに少量の油で炒め、水分を蒸発させてカリッと仕上げる。
3..滑炒ほあちゃお:素材に下味をつけ油通しをして炒め、水溶き片栗粉でとろみをつける。
4..清炒ちんちゃお:一種類の材料だけを使う。下味もとろみもつけずに塩味中心の味付けで炒める。
5..軟炒ろあんちゃお:液状やすり身にした材料に卵やでんぷんを加えてかき混ぜながら炒める。柔らかい仕上がりになる。
6..炸炒ぢゃあちゃお:素材をカリッと揚げてから炒め、調味料を加えて仕上げる。

炒・ちゃおよりも高温の油で短時間で仕上げる油烹法を「爆・ばお」という。
羊肉や内臓など臭みの強い素材にネギや生姜などの香辛料を加えて爆すると、臭みをやわらげる。主に北方系の料理(北京料理)に多く用いられる。

爆・ばおには4つのバリエーションがある。

1..葱爆つぉんばお:たっぷりの葱を加えて下味をつけた肉を高温の油で炒める。卵やでんぷんは使わない。
2..油爆ゆうばお:素材を揚げてから混合調味料を加えて強火で炒める。
3..塩爆いぇんばお:揚げた素材をでんぷんではなく塩で炒める。
4..姜爆ぢぁんばお:たっぷりの生姜を加えて炒める。
5..醤爆じゃんばお:甜?醤などの味噌を使って炒める。

少量の油で炒める油烹法を「煽・ぴぇん」という。
炒・ちゃおよりも加熱時間が長くなる。水分を飛ばすように仕上げるのが特徴。

煽・ぴぇんには2つのバリエーションがある。

1..生煽しょんぴぇん:野菜や肉を強火で炒りつけるように炒める。
2..乾煽がんぴぇん:味をつけた材料をじっくり炒めて調味料を加え、材料に味を含ませてカリッと仕上げる。

一口に「炒める」と言っても、これだけのバリエーションがある。
中国大陸は広い。台湾や東南アジアのチャイナタウンなども含めれば、中華の料理人たちが駆使する炒め料理は、もっともっとたくさんあるだろう。

===2019年4月15日===



2019年4月8日。豚肉のオイスターソース炒め。これは野菜は乾炒にして、豚肉は滑炒にしたものを最終的に混合調味料を加えて炒めた。

7917.4/14/2019

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===メニュー開発===

お店で出す飲食物について実際に作ってみて改良を加える段階に入った。
これは、ラフメニュー段階の終了を意味する。

ラフメニューでは机上であれこれと用意するメニュー候補を並べるので、たくさんのメニューが並んだ。
その中から、実際にお店で作ることができるメニューを絞り込んだ。

ラフメニューからレギュラーメニューへ絞り込む段階で、有力候補のラーメンを除外した。
「中華なのに、ラーメンがないのはおかしい」という声を頂いた。

じつはラーメンという食べ物は、日本独自のものだ。
中国料理にも麺料理はあるが、ラーメンという名前の料理はない。かつて北海道大学近くで中華食堂を営んでいた方が命名したと聞いたことがある。
また「中華そば」という名前の醤油ラーメンがあるが、明治時代に日本(横浜が最初だった)に伝わった当時は南京そばと呼ばれ、続いて志那そば、そして中華そばへと呼び方が変わった。
日本に伝わった当時の麺料理は中華料理の伝統を守り塩味が中心だった。しかし、日本人の口には塩よりも醤油があうので、スープのベースが醤油に変わっていった。
鶏ガラよりも豚骨が多いスープに、臭み消しで醤油を混ぜ、中華料理特有の香辛料を使わない東京ラーメンの原型が出来上がっていった。
刻みネギ、メンマ、チャーシューは、日本特有のトッピングだ。

小麦に水を加えて生地にする。それを削いだり、伸ばしたり、折って畳んで切ったりする。中華料理では職人が手作業で麺を作った。
日本では製麺機が普及して、多くの食堂で使う麺は製麺所が作った機械作りの麺だった。

日本国内で独自の発展を遂げたラーメンは、それだけで成り立つ専門店になった。
スープも醤油、味噌、塩などバラエティーに富み、旨味も豚骨、鶏ガラ、魚介類など多岐にわたる。

和食の定食屋が日本食の「寿司」を出さないように、中華定食の食堂ではラーメンはハードルが高すぎるのだ。
逆に中華麺を出す専門店は多い。中華街のお店では、ほとんどの店で中華麺を置いている。そのためにはベースになる中華麺の具がきちんと作られなければならない。

ワンオペ(一人で全部の作業をする)の佐々木食堂では、行き詰まることが考えられたので、ラーメンをメニューから外した。

同じ麺料理でも蒸し麺が安定的に仕入れられれば、焼きそばは作ることができる。
そのあたりはメニュー決定後に、仕入れとの関係で最終的に判断しよう。

===2019年4月14日===



2019年4月13日。若どりを使った唐揚げ。鶏の旨味と栄養を閉じ込めて、さらに表面をからっと揚げる。よぶんな油を落として食べやすい大きさにそろえる。甘酢餡といっしょに口にすると酸味がさわやかに広がる。

7916.4/13/2019

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===感謝をかたちに===

自分の考えを整理するために、文字にする。
だから振り返って修正することも多い。
若い時に料理屋で下働きをした経験がないまま、自分で飲食店を持とうとするのは大きな冒険だ。苦労して盛業されている方には、甘く見るなと叱られることだ。

自分の考えや、開店へ向けた準備を文字にしてきた。
それをインターネットという手段で発信してきた。

ありがたいことに、多くの方々からアドバイスが届く。

名刺を作ったことを受けて...

・ヨコ印も作った方がいい
最初、この意味が分からなかった。あれこれ調べたら、封筒や領収証などに押印する横書きのゴム印のことだった。それなら確かに学校でもたくさん使ってきた。
住所・電話番号・責任者などを明記したほうがいいとも教えてくださった。
早速、ネットで業者を探して発注した。

・鎌倉の魚介と湘南の野菜というが、鎌倉は地名なのに湘南という地名はない
なるほどその通り。
これも長い間地元で教員をしてきたツケだ。教育行政上は「湘南」というエリアがあるのだ。公立学校関係で湘南地区といえば、鎌倉市・藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町をさすので、湘南の野菜と文字にしたときはこのエリアを念頭に置いていた。
次のキャッチコピーから「鎌倉の魚介と野菜」に改めることにした。

屋号が決まったことを受けて...

・看板の文字を書いたよ
私が20代後半から30代前半にかけて、レクリエーションリーダーの研修でとてもお世話になったプロの方から連絡がきた。写真が添付してあって、見たら、墨で「佐々木食堂」と大書してあった。
看板にするお店のロゴデザインはどうしようかと迷っていた。まるでその悩みを見抜いたかのような話だった。
先日、その方の近くへ旅することがあって、帰りに寄らせていただき現物をいただいてきた。

調理小物について...

・はじめからいいものをそろえた方がいい
・はじめは少なくしておいて、気に入ったものを増やした方がいい
お皿やコップなどをお店ではそろえなければならない。
そういう細かい準備に対して、すでに飲食店を開業されている先輩方がアドバイスをくださる。内容的には相反するものもあり、最終的には自分で決めるのだが、それぞれの方の考えを示してくださり、ありがたい。

===2019年4月13日===



2019年4月11日。静岡県三島市にある中華料理の「麒麟」。お昼に頂いた酢豚。生野菜を添えた酢豚は、私が食堂でやろうとしている定食の想像力を奮い立たせてくれた。

7915.4/8/2019

ここから…44

===名刺を作った===

「家のパソコンで今は自分で名刺が作れるよ」
知人に言われて専用の用紙を購入。自宅のパソコンで作って印刷したら、印刷機に紙がつまる。用紙の注意書きを読んだら「一部の機種では紙が詰まってご使用できません」とのこと。その一部の機種を使っていたので、自主製作は断念した。

インターネットで調べたら、アスクルというサイトが出てきたのでアクセスした。
後に聞いたら、アスクルはとても有名なサイトで多くの人が利用していた。
先に教えてくれー!

ここで佐々木食堂の名刺を入力した。
とりあえず100枚注文。両面印刷で送料込みで1300円。それもポストインなので、受取時に不在でも大丈夫だった。
翌々日に100枚の名刺が届いた。

私は1985年に教員として働き始めてから一回も名刺を作ったことがない。
なぜかといと、管理職にでもならない限り、教員は「相手が自分を知っていること」が圧倒的に多い仕事なのだ。だからいちいち名刺を用意する必要はなかった。
「あいにく、名刺をきらしていまして」という状況をずっと続けてきた。

今回、名刺を作ろうと思ったのは宣伝したかったからだ。
少なくとも地元の人たちに、今年の秋に中華食堂が地元でオープンするよという意思表示をしたかった。私が自力で知人に配るには限界がある。
そこで、地元の銭湯と酒屋に置かせていただいた。
「この人は!というお客さんに渡してください」とお願いした。
数日後には無くなっていて、追加で置かせていただくという嬉しい結果になった。

「鎌倉の魚介と湘南の野菜で健康寿命を伸ばす中華食堂」と銘打った。
「へぇー中華なんだ!」
「はい、でも本格的な専門店ではありません。中華鍋と中華包丁を使って作る定食屋なんですよ」
名刺一枚から会話が生まれ、情報を伝えられた。

アスクルのサイトでは手軽で安価にできることがわかったので、ある一定期間ごとに名刺を更新しようと思った。開店へ向けて進む工事の写真とか、プレオープンの情報などもそれとなく載せてみたくなった。
また名刺に合わせてミニニュースも用意しようと思った。「旬の食材」「骨粗しょう症予防」「認知症予防」「健康寿命」など、テーマを決めて発信する。そうして、将来のお客さんに開店前から佐々木食堂のイメージをふくらませていただこう。

===2019年4月8日===



2018年11月14日。日本料理実習で作ったみぞれ鍋。タラの白子を使い、仕上げに大根おろしをたくさん乗せていただいた。以前は早い段階から大根おろしを入れていたが、仕上げに入れることを教わった。

7914.4/7/2019

ここから…43

===店舗設計の相談(ダクト)===

「お宅の裏は一般の住宅ですね」
大工さんが設計図面を前に聞いてきた。
「そうなんです」
「さっき、メーカーの方といっしょに周辺を見たんですけど、ダクトは裏には出せませんね」

ダクトとは排気を送る管のことだ。
一般家庭では換気扇がキッチンにあって、調理の熱やにおい、煙を戸外に排出する。
飲食店の排気は、それだけで近所からの苦情の対象になる。
とくに中華料理は、油にニンニクや葱の香りを移す調理作業があるので、どうしても排気に臭いがつく。私はニンニクや葱の香りが好きだが、反対に感じる人もいるだろう。
設計図面では排気が出る中華コンロは裏口に近いところにある。
そこにダクトを設置して、もっとも効率がいいのは壁から外に排出する方法だ。
しかし、そこには一般住宅があるので、もろに排気が行ってしまう。

「工事が始まったら、天井をはがして2階の床との間にどれだけ隙間があるかどうか調べますね」
「お願いします」
「十分な隙間があったら、天井と床の間にダクトを這わせて正面側に排気するようにします」
「あまり隙間がない場合は?」
「店内にダクトを吊ることになります」

住宅地の飲食店が被る近隣からの苦情の多くが排気問題だ。
洗濯ものに臭いがつく。
毎日、同じ臭いが漂っている。
窓を開けられない。
何でもかんでも清潔や衛生が重宝されて、無味無臭が当然のように思われるようになった。
私が子どもの頃、町は臭かった。田畑も臭かった。商店街にはいろんな調理の匂いが漂っていた。国鉄の便所は便器から線路が見えた。大便も小便も線路に垂れ流しだった。当然、線路際は肥溜めのような臭いが充満していた。
それが当然だと感じていたので、何も不安も不便もなかった。

匂いや香りは料理の一部なのに、それさえも消臭しなければならない社会は間違った方向に向かうだろう。

===2019年4月7日===



2019年2月1日。同じ調理師科B組の同級生、中嶋さんのご実家「江戸の海」はちゃんこ屋さん。クラスの仲間とお邪魔して後期試験前の景気づけをした。中板橋の駅から徒歩すぐ。

7913.4/6/2019

ここから…42

===店舗設計の相談(スチコン)===

「お店はだれか人をほかにも雇いますか?」
「いえ」
「ではご家族で営業しますか?」
「いえ、それもしません」
「では、おひとりで」
「はい、そうです」

一人で調理し、一人でテーブル周りを準備・片づけし、清算もする。
これをワンオペというらしい。
One Operationという英語があるかどうかは知らない。

「ワンオペなら、スチコンをおすすめします」
「専門学校でも使っていました」
「料理人がもう一人いるようなものですよ」
「でも、とても高価な調理機器ではないですか?」

専門学校のスチコンは数百万円すると先生が教えてくれた。

「最近開業する方のニーズが多くなって、今は小型で安価なものがたくさん出てきているんです」

カタログを見せていただくと、確かに専門学校のスチコンに比べてずっと安価なものだった。それに安価なのに、性能は逆ももっとよくなっている。これは導入しよう。
3月の打ち合わせですでにスチコンは導入を決めていた。

キッチンの展開図の検討に入った。
スチコンはキッチンの中央に位置していた。
お客さんから見るとカウンターごしの壁の中央に鎮座する。

スチコン。正しくはスチームコンベクションオーブンの略。調理関係者はみんなスチコンと呼ぶ。
私が機器の導入をお願いしているホシザキのカタログでは、クックエブリオという商品名になっている。
クックエブリオの最新モデル、2/3ホテルパンタイプのMIC-5TC3という型番の機器を選んだ。
電源は三相・200V・50/60Hzで容量は6.6kVA(19.1A)。
消費電力は5.9kW。
庫内容量は83L。
外形寸法は幅750mm/奥行き560mm/高さ685mm。
内径寸法は幅390mm/奥行き413mm/高さ418mm。
排水接続は直径38mm。
ホテルパンは5枚収納。ホテルパンとはオーブンに出し入れする「お盆」。
製品質量は85kg。

スチコンには3つのモードがある。
スチームモード:均等に庫内に水蒸気を送り込み調理する。30℃から130℃まで可能。「温める」「煮る」「茹でる」「蒸す」ことができる。
ホットエア―モード:庫内に送りこんだ熱風を対流させて調理する。30℃から300℃まで可能。「焼く」ことができる。
コンビモード:熱風と水蒸気を使って加熱する。調理時間が短縮できる。100℃から300℃まで可能。「焼く」「煮る」「炒める」「炊く」「揚げる」ことが可能。

メニューは登録できるので、食材をセットしたら登録メニューボタンを押せば自動的に調理してくれる。火加減の調整とホテルパンの位置交換が不要なので作業が省力化できる。

中華料理では蒸す料理が多くある。
鍋を使うとコンロに鍋をかけ湯を沸かし、そこに蒸籠を乗せて蒸す。それだけでコンロが一つふさがってしまう。
しかし、スチコンで蒸せば「鮮魚蒸(季節の魚介の蒸し料理)」も「点心(餃子や焼売)」などがムラなく完成する。和食になるが茶碗蒸しも同様にできる。

揚げ物ができてしまうのも魅力だ。
しかし、鍋で揚げたものとスチコンで揚げたものを食べ比べて決めてみる。ホシザキの営業所には調理室があるそうで、そこで調理器具を実際に試しに使うことができる。導入前に調理方法を試せるのはありがたい。

===2019年4月6日===



2018年10月29日。中華料理実習で焼売を作った。蒸籠を使って蒸した焼売を食べた。焼売の餡は餃子の餡と違って、こねる段階でかなりねちねちの状態にした。

7912.4/3/2019

ここから…41

===店舗設計の相談(コンロ)===

お店を作るにあたって、大工さんとの相談を1月から始めた。
5回目の相談を4月2日に行って、お店に入れる調理器具と固定施設がほぼ決まった。
それらをもとに今後は展開図面と見積もりが届く。

4回目の相談で導入予定だった中華コンロはサイズ的に作業がしづらくなることがわかったので、変更になった。

私のように自宅を改装する場合、壁や柱が木でできている。
そこに高熱が持続するコンロを設置するには、消防法で壁から一定の距離だけ離すことが決められている。離隔(りかく)と呼ぶらしい。
中華コンロは火力が強いので、離隔距離が長く150ミリは必要だった。それだけコンロが手前に来ると、鍋を振る空間が狭くなり、私の肘や背中が背面の器材やテーブルにぶつかってしまうことがわかったのだ。

そこで火力としては4回目で考えたコンロよりも強い単体の卓上中華ガステーブルを二つ入れることにした。
これは本格的な中華料理店でも使っているものなので、一気にたくさんの油を高温までもっていける。野菜や肉を炒めるときにシャキシャキ感を残したまま火を通すことが可能だ。
これにほぼ同サイズでコンロが低いところにあるスープレンジをつける。
鶏ガラやもみじ(鶏の足先)、豚骨などで出汁をとる中華スープは大きな寸胴鍋でぐつぐつ煮込んでひく。このスープがあらゆる料理の基本的な味になる。

家庭で中華料理を作るときは、ウエイパーや創味シャンタンなどのような化学調味料で代替できる。また顆粒状の鶏がらスープも使うことができる。

スープの具材やひき方はそれぞれの店に独自のやり方とレシピがある。
これからの時間で、佐々木食堂なりのスープを作り上げていく。

二つの大きな火力のガステーブルには吸水排水設備がないので、調理後の鍋をその場で洗うことができない。そこでテーブルのすぐ横に鍋洗い用のシンクをつけた。
保健所の許可が必要な三つ目のシンクをどうするか悩んでいたので、このシンクによって堂々と胸を張れることになった。

二つのコンロ。
一つは主に油通し用の鍋を置く。
もう一つのコンロで料理別の調理をする。
油通しとは、中華料理独特の技法だ。野菜も肉も魚も、最終的に調理する前に一回高温の油をくぐらせる。食材がもつ水分と旨味を高温の油で蒸発させ、食材を急激に蒸された状態にする。素早くしないと食材のまわりに油がついてべとべとになるので慣れが必要だ。
専門学校の強い火力コンロでは油通しがうまくできたが、家庭の弱い火力コンロでは油通しではなくて素揚げになってしまうので、とても難しい。

高温の油に入れた野菜をさっとすくうのが穴あきの油こし。炸鏈という。ザーレンと読むが、中国人留学生は「ヂャア・リエン」と言っていた。
よくラーメン店で見かける麺を沸騰した湯からすくう竹の柄の先に丸い鉄網のついた網じゃくし。鉄絲漏勺という。ティエ・スウ・ロウ・シャオと読むらしい。もともとあれも油通しの道具だが、日本では油からではなく湯から麺をすくう道具として一般的だ。

ザーレンですくった食材をザーレンごと油切り壺に乗せ、油切りをする。
その間に次の食材の油通しをする。
料理に使う食材を全部油通ししたら、一気に調理して完成形へもっていく。

もう一つのコンロの鍋を油でならし、少しの油と刻んだニンニク、豆板醤などの調味料を入れて油に味を移す。
油通しの終わった食材を一気に鍋に入れて、まんべんなく火を通す。シャキシャキ感を消さないように食材の組織が熱で壊れないうちに仕上げる。味見をして塩や胡椒で調整する。最後に旨味と熱が逃げないように水溶き片栗粉をいれて(ゴウ・チェン)とろみをつける。皿にきれいに持ってできあがり。
こちらの鍋は料理の汚れが残る。ガステーブル横のシンクで水洗いをして、次の調理に備える。
油通し用の鍋は、何回か油通しをして油の劣化が始まったら交換する。ほとんど油が浸っている鍋なので水洗いする必要はない。

厨房の心臓部はコンロまわり。ガスの消費カロリー、調味料の配置場所、壁からの離隔措置、捨て油の方法など細かい打ち合わせを経て、心臓の鼓動が聞こえてきた。

===2019年4月3日===



2018年11月12日。服部栄養専門学校学園祭。中華料理「龍虎飯店」にて。同じ調理師科B組の愛しきクラスメートたち。若い二人は卒業後、それぞれに飲食店に勤めているだろう。新年度が始まった。どうしているのかなぁ

7911.4/2/2019

ここから…40

===青色申告会へ行く===

新年度になるのを待って、私は鎌倉市青色申告会へ行った。
知人のすすめで、確定申告の方法として青色申告を選んだ。
「大した利益もないのなら、白色が楽だよ」という声もあった。
おっしゃる通りだし、大した利益は上げないかもしれないが、よのなかの仕組みを少しでも実体験してみたかった。

大学を卒業してすぐに公立学校の教員になった。
そのまま結婚し、親になり、家を買い、自分の親を見送り、子どもの結婚式にたちあった。
一般社会をほとんど経験しないまま、家族生活のすべてをこなした。
そこにはきっと一般社会とはかけ離れた学校っぽいやり方がにじみ出ていただろう。

2019年3月31日をもって、教員時代からお世話になっていた公立学校共済組合の健康保険も終了した。資格喪失という表現の仕方は、ちょっときつい。退職後も2年間は任意で継続できた。しかし、私は1年間の任意継続で国民健康保険に切り替えた。
その方が保険料が安くなるというかんたんな理由だ。

個人事業主になったことがないので、納税の仕組みを知らない。
56歳にもなって、恥ずかしい限りだが、教員時代はそれらをすべて事務の方が代行してくださっていたのだ。
自分の税金を自分で払う。そんな当然のことを人任せにしてきたので、浮世離れした感覚がまとわりつく。

ことしの2月、初めて自分で確定申告をした。
といっても、3月まで働いていた教員時代の給与しか収入項目がないので、だれにでもできる申告だった。それでも、還付金の通知が来たときは嬉しかった。
これからは、多くの支出と、少しの収入で何とか生活していく。
その中から税金まで払うのだから、少しでも払いすぎないようにしたい。そのためには青色申告を知っていた方がいいだろうと考えた。

4月1日の鎌倉は、よく晴れていた。
六地蔵に近いコインパーキングに駐車して、鎌倉青色申告会の階段を上がった。
事務室のドアを開ける。
「パソコン教室ですか?」
いや、違います
「じゃぁ消費税の計算かな?」
それも、違います、入会に来ました。先に言えばよかった。

通された長机で担当の方が四枚の書類を出す。
「ここに必要なことを記入してください」

・青色申告会入会届出書
・口座振替依頼書
・個人事業開業届出書
・所得税の青色申告承認申請書

入会費がかかるとは思っていたが、口座振替には考えが及ばす銀行印を持参していなかった。口座振替依頼書は後日郵送することになった。

念のため持参したマイナンバーカードと認印は必要だったので安心した。

入会届出書。
業種と屋号の欄があった。個人事業主が入会するので、そりゃ必要な欄だろう。しかし、その二つの空欄を見て私はときめいてしまった。
(なんて書けばいいのだろう)
(自分で決めていいのかな)
(やっと、ここまで来たんだなぁ)
(屋号って言い方、古いなぁ)
ほぼ同じ内容の書面が税務署に出す開業届出書だった。
なるほど、ここに来れば税務署に提出する書類が作成できるのだ。書き方も教えてくれるので、役所みたいに緊張しなくて済む。

飲食店って、同じ市町村内に同じ店名が認められていないと思っていたので、佐々木食堂と書いてはみたものの、大丈夫か不安だった。
担当の方は私の記入に合わせて、手元のパソコンに何かを打ち込み確認していた。
「あのぅ、佐々木食堂って名刺を作っても大丈夫ですか」
「はい、大丈夫です」
やけに早い返事だった。何らかのチェックをしたのかわからない。
「ただし、全部経費になるので支払いの記録と領収証を受け取ってくださいね」
売上から経費を引いて利益が減れば税金が安くなる。

青色申告承認申請書。
簿記方式というのがあって、申告会の「見本」には複式簿記に〇がつけてあった。まねをして〇をした。
「あのぅ、複式簿記って」
「初めてですね。やよいというソフトを使えばかんたんです。パソコン教室を開いているので参加してください」
そういうレベルでなく、はじめの一歩から知らないのだが大丈夫だろうか。

税務署に開業の届けを出した。
これで私は無職学生から、飲食店主になった。
4月から8月までの5か月間は収入がまったくない。
それどころか、工事や厨房機器の購入、プレオープンなどで支払いが続く。
さぁ、マイナスから始まる開店準備の幕開けだ。

===2019年4月2日===



今年の桜は3月末から咲きだしたが気温が下がったので、4月になっても長く花をつけた。 2019年3月27日。

7910.3/30/2019
ここから…39

店舗分析

_/_/_ゴールを決める_/_/_

2019年9月1日オープン予定の佐々木食堂(仮名)は、丸々9年後の2028年8月31日に閉店を予定している。
開店前から閉店を想定するのは縁起でもないかもしれない。
しかし、もともと教員を退職した動機が年金生活までのつなぎになるような仕事を継続することだったので、年金受給が始まる2028年(私が65歳になる)がゴールなのだ。

神奈川県の教員は60歳で定年を迎え、その後は1年更新で65歳まで雇用延長できる。
しかし、65歳になったら非常勤講師を除いて完全退職になる。
現在は定年自体が延長の方向で検討されているようだが、いずれにしても65歳を過ぎたら持続的な仕事はやりにくくなっているだろう。

私は65歳になった時に、教員しかやってこなかった人生を選択したくなかった。
その後の人生の幅がとても狭くなると考えた。
だからまだ60歳まで定年を残した55歳で勧奨退職に応じ、早めの退職をした。
そして一年間、調理師養成専門学校に通って、飲食業のノウハウと経営の基本を学んだ。この学びを使って56歳から65歳までの9年間を個人事業主として起業することにした。
ここから60歳までの4年間は苦労の連続だろう。
しかし黙っていたら教員として定年を迎えた60歳の自分と、飲食店主として4年間を経験した60歳の自分は、持続可能性という意味で大きな差があると想像している。

60歳を過ぎての5年間の飲食店経営は、それまでの反省を生かして軌道を修正する。
そして65歳の8月31日に庖丁を置く。
終わりを決めたから、今を大切に過ごせる。
終わりへ向けて、スタートを創造していく。

若い人ならば二号店や三号店、のれん分けなど小さな店を大きくしていく未来を想像するだろう。
野心的な経営者は、飲食ばかりでなく、他の業種も取り込みながら、店を大きくしていくかもしれない。

しかし、私は地元の人たち、とりわけ高齢者の健康寿命を少しでも伸ばすことに貢献できればいい。そんな店が10年近く開業できれば、それで十分なのだ。

===2019年3月30日===



前期、日本料理実習で作った親子丼。緊張しながら毎日を送っていた時期だったので、記憶のかなたに消えていた。こうやって写真を振り返るととてもうまそうで、おなかがなった。 2018年6月25日。