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7909.3/27/2019

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店舗分析

_/_/_人時生産性_/_/_

人時生産性とは飲食店で1人の従業員が1時間当たりいくら売ったかを示す。
これを算出するために必要なデータは、当日の売り上げ・当日の総労働時間・店舗が目標とする想定原価率の3つだ。

ある日の佐々木食堂(仮名)。
一日の売り上げが5万円。ワンオペなので私個人の総労働時間は12時間。原価率の目標はフードとドリンク合算で20%とする。

計算式
当日の売り上げ÷当日の総労働時間×(100%-想定原価率)
50000÷12×0.8=3333.33....

目安
3500円から4000円は最良な店
3000円から3500円は良好な店
3000円以下は悪い店

忙しくなったからといって安易にアルバイトを雇えば、売り上げが伸びない限り総労働時間ばかり増加して、人時生産性は3000円を割ってしまうだろう。
アルバイトへの給与をいくらにするかという問題よりも、従業員の生産性に着目しないと飲食店は伸びない。
店舗面積や座席数が決まっているので、従業員を1人増やしたからといって、それだけ売り上げが伸びるとは限らないのだ。
ベイエリアのやや高級な飲食店に行くと、とても多くの従業員が働いている。ホールにもキッチンにも多くの従業員がいる。いったいこの人たちの人時生産性はどれぐらいなのかと考えてしまう。

_/_/_売上月報から見る_/_/_

売上月報には、月間の売上高・F/D別売上高・月間の総来客数・時間帯別売上高を記載する。

月間の売上高からは一日平均の売上高が算出できる。
これをもとに日々の仕入れ価格の目安が決められる。
季節によってどんなに「良い品物」が出ても、値段が高ければ仕入れ価格が高くなることを意識できる。

F/D別売上高からはフード(食べ物)とドリンク(飲み物)の比率が算出できる。
調理作業を伴うフードと違い、すでに人の口に入る状態になっているドリンクは作業負担が少ない。それでいてフード並みの値段をつけることができる。
この比率がどちらに傾いているかによって、お客さんのニーズや動向を分析する。

月間の総来客数からは一日平均の客単価が算出できる。
客単価は飲食店の生命線だ。一人の客が一回の利用でいくら使うかが客単価だ。
店側が1500円と設定しても、実際には900円かもしれない。
日報段階では見えてこない大きなまとまりとしての一ヶ月分の動きが見えてくる。

時間帯別売上高からは時間帯別の客単価が見えてくる。
佐々木食堂(仮名)の立地周辺ではどんな集客の特徴があるかがわかる。
11時からオープンしても、もっとも売り上げが伸びるのが12時半以降ならば開店時間を遅らせた方がいい。
一人の大金持ちが毎日、カウンターの決まった席に長時間座って飲食をするということは考えにくい。一人の客が長時間、席を独占し、大した飲み食いをしないでいると、時間帯別売り上げは全体的にブレーキがかかってしまう。

===2019年3月27日===



2019年3月9日。藤沢の俣野というところで借りている畑に「シンシア」と「インカのめざめ」というジャガイモの種芋を植えた。収穫したら年間を通じてお店で使うジャガイモの主力にする。

7908.3/25/2019

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計数管理(月次業務)

_/_/_売り上げ月報の作成_/_/_

売り上げ日報を合算したものが売り上げ月報。
一ヶ月分の詳細な蓄積データとして有効な情報になる。
一年後には「前年同月情報」として活用できる。

_/_/_棚卸の実施_/_/_

33年間の小学校教員生活で「棚卸」はやったことがない。
せいぜい学期ごとに備品の照合という作業があったが、何年か前からか学校の備品は一つにつき10万円以上という基準が設けられた。それ以降、全体予算の少ない学校で一つ10万円以上もする教具を購入することはほとんどないので、照合する備品自体がなくなり、照合作業はとても昔に購入したぼろぼろ教具の確認になった。

飲食店では正確な棚卸が必要になるので、毎月末に行う。
店舗内に存在する食材・飲料の総量を計算する。
専門学校では、計算上の総量と実際に調べた総量を比較することも教わった。
ホテルではレストランとカフェで相互に食材の交換や調達もする。別々に仕入れているので、そういった食材の移動もすべて帳簿につけると教わった。計算実習があったが、頭がぐちゃぐちゃになったことを思い出す。

飲食店では、なるべく在庫量が少ない方がいい。
扱うものが人の口に入るものなので、在庫量が多いと古い食材がたくさんあることになる。
お客さんに提供する食材量を正確に予想して必要な量だけを仕入れるために、棚卸を通して、その月に仕入れた食材・飲料から残っている食材・飲料を差し引いて、原材料費を算出する。

例えばざっくり100キロの魚介類・100キロの肉類・50キロの野菜・100?の飲料を仕入れたとする。棚卸をしたら魚介類が10キロ、肉類が5キロ、野菜類が10キロ、飲料が20?在庫としてあった。食材は250キロ仕入れたのに、25キロが在庫になった。飲料は100?仕入れたのに、20?が在庫になった。その月、お客さんに提供した原材料は食材で75キロ、飲料で80?だったことがわかる。
これは翌月の仕入れ量の算定に影響する。食材在庫の25キロと飲料在庫の20?は、翌月への繰り越し材料として、早めに使わなければならない。
月初めの食材は前月の残りが使われるのは常識だ。棚卸の時期が月末ではないところもある。
これを値段に換算すれば、仕入れた材料費をどれだけ有効に使ったかがわかる。20万円で仕入れた食材が15万円しか使われていなかった場合、残りの5万円分の食材は残ったままなので利益を生じていない。もしも長期保存できないものだったら、廃棄するしかない。

これらは実際の営業を通じた結果、求められる値だ。
これに対して、一つ一つのメニューに設定する原価は仕入れ原価の合計なので、仕入れた材料が完全に使われたとした時の値になる。
1キロ100円の塩。チンジャオロースには合計で3gの塩を使ったとする。塩原価は0.3円だ。同じように筍やピーマン、片栗粉を仕入れ、チンジャオロース一つに使用するそれぞれのポーションを決め、原価計算をする。それらの合計がメニューに設定する原価になる。
他のメニューも含めた一ヶ月分の売り上げと棚卸の在庫量から、使用した材料量と材料費、材料費率が求められる。
これが当初予想していたそれぞれのメニューに設定した原価率に近ければ近いほど、予想通りの利益が上がっていることになる。

===2019年3月25日===



明治神宮会館で卒業式を終え、夕方の納会まで仲間と歌舞伎町で食事をした。一年間、大船から新宿まで毎日通ったのに、こちら側にはほとんど来たことがなかった。 2019年3月20日。

7907.3/24/2019

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調理師免許申請

私はこの一年、この資格を申請するために新宿まで毎日湘南新宿ラインで通った。

料理人を養成する専門学校は、卒業時に調理師の資格を与える学校とそうでない学校に分かれる。
調理師の資格は厚生労働省が決めた学科と実習を受講し、単位を取得しないと得られない。
だから日本料理とか、製菓製パンに特化した専門学校では厚生労働省が決めた学科や実習が不足するので調理師の資格は得られない。

私は最初、卒業するときに学校から調理師免許が渡されるのかと思っていた。
しかし、調理師免許は各都道府県が発行するので、専門学校は発行を代行しない。

3月22日。鎌倉は春の陽気になった。
私は、待ちに待った調理師免許の申請に向かった。
卒業するときに配られた卒業証明書と履修証明書(服部栄養専門学校では調理師養成課程理由証明書)、健康診断書をバックに詰めた。

調理師免許申請に必要な履修科目(1授業時間は100分)
公衆衛生学3単位(90授業時間)
栄養学1単位(30授業時間)
食品学4単位(120授業時間)
食品衛生学4単位(120授業時間)
食品衛生学実験1単位(30授業時間)
調理理論6単位(180授業時間)
調理実習9単位(270授業時間)
校外実習2単位(60授業時間)
集団調理実習1単位(30授業時間)
接客サービス2単位(60授業時間)
レストラン論1単位(30授業時間)
合計34単位(1020授業時間)

厚生労働省が決めた規定は合計960授業時間なので、服部はそれよりもやや多かった。

履修証明書を見ながら、思えばずいぶんたくさん履修したなぁと感慨に浸った。

このほかに申請に必要なのは、調理師免許申請書、戸籍謄本、5600円だ。
調理師免許申請書は保健所で記入できるが、ネットでダウンロードできるので、私は前夜に自宅で作成しておいた。窓口での時間をなるべく短くしたかった。
戸籍謄本は春分の日に大船駅のルミネに入っている行政サービスコーナーで取得。ここは役所が休みの祝祭日でもやっているので、とても便利だ。いっそのこと、役所を無くして、みんなこの方式にすればいいのにとさえ思う。
卒業時の説明書には申請には6000円かかると書いてあったので、都道府県によって値段は違うらしい。神奈川県は5600円。ちなみに東京都も5600円だそうだ。

渋滞の鎌倉街道を避けて、車を藤沢・鎌倉線へ向ける。校外学習でお世話になったちんや食堂を右に見るあたりでやや渋滞。長谷の大仏周辺ではとても渋滞。観光バスが駐車場を出入りするので一般車の通行が妨げられていた。江ノ電の長谷駅を左に海岸の国道に出る。由比ガ浜には、サーファーがたくさんいた。滑川の交差点を左折して、鎌倉中心部へ。一の鳥居の手前に「鎌倉保健福祉センター入り口」の看板があった。車が通り抜けできない狭さの道に入る。駐車場も狭かった。

神奈川県鎌倉保健福祉センターは、鎌倉市の施設ではなく、完全に神奈川県の出先機関だった。
受付で来庁を告げる。室内へ案内された。他にもたくさん来庁者がいてテーブルを挟んで担当者とやりとりをしていた。
「ちょっとお待ちください」
そう言われて折りたたみいすに座って必要な用紙を出して用意した。

臨席の男性。髪は茶髪で、根本は黒い。手入れをしていない。あごひげが長い。耳には大きなピアス。胸のポケットにはたばこが見える。
「この棚ではだめですかねぇ」
何やら設計図面を広げて、担当者に確認している。
「だめです」
即座に否定されていた。興味がわき、耳を澄ます。
「じゃぁ、期間限定みたいにするので、それでもだめですか」
「そういう問題ではないので、だめです」
おそらく担当者は食品衛生監視員の資格があるのだろう。飲食店の開店の許可を求めに来た男性に、ダメ出しをしていた。

食品衛生学の講義で、最新の食品衛生法が認める飲食店の許可基準は頭に入っている。
棚が問題になっているということは食器などの収納施設が十分ではないのだろう。
調理器具メーカーの方に相談すれば、ここまで来てダメ出しをくらうこともないのにと同情した。
それにしても、この男性の「かっこ」は料理人としていかがなものかと感じた。私が客だったら絶対に行かない。長髪にピアスにあごひげだと、服部栄養専門学校の実習室にすら入れない。

なんだか、自分が小さな一歩だけ調理師に近づいている実感がわいた。

「お待たせしました」
若い担当者が、私の用意してきた書類を確認する。
「全部そろってますね。問題ありません。これからこの書類を県庁に送って申請します。だいたい一か月後に県庁から免許が当保健所に届きます。その時に免許が届いたことをお知らせするので、この葉書にお名前と住所をご記入ください」
宛名と住所を書くだけになっている葉書を渡された。

会計は受付で済ませ、申請はものの数分で終了した。
帰りがけにさっきの臨席を見ると、まだ男性が担当者に許可を願っていた。

保健センターの駐車場で施設を撮影した。
これからこの施設が私にとっての担当官庁になるのだ。

===2019年3月24日===



2019年3月22日。

7906.3/22/2019

ここから…35

2019年3月20日、水曜日。
私は明治神宮会館で服部栄養専門学校の卒業式に参列した。
調理ハイテクニカル経営学科1年と栄養士科1年が在校生として参加していた。
卒業生の保護者も多く出席していたので、会場はとても多くの人であふれていた。

桜の開花には少し早い時期だったが、陽気はぽかぽかで、過ぎた日々を季節が後押ししてくれるような気持になった。

優秀賞や各協会長賞などの表彰がたくさんあった。
受賞した人たちは緊張した面持ちで台上で受賞していた。
私の頭のなかには一年前の入学式の思い出が浮かんでいた。
だれも知人のいない環境で始める学校生活に対して、そういえば緊張していたなぁと思った。あれからの日々、そんな緊張を吹っ切るかのような素敵な仲間と出会い、学科も実習も楽しい毎日だった。
放課後のオプションコースを受講し、午後9時過ぎまで学校にいたこともあった。
イベントごとに仲間と新宿の飲み屋を飲み歩き、これまでまったく異なる人生を生きてきた過去を比べっこした。
明治記念会館での食事マナー。フルコースなのに、グラスには水が注がれ、ぶったまげた。築地、治作での食事作法。箸の上げ下げの難しかったこと。
高校や大学に戻ったかのような秋の文化イベント。体育祭、学園祭。

地元の中華食堂でお世話になった校外実習。実際のお客さんとの応対を通じて、お金をとれるサービスと料理を提供する奥深さを感じた。
年末の研修旅行では、スカイツリーや屋形船というおのぼりさんコースで盛り上がった。

前期と後期の二回、学科と実習は大きな試験があった。
どちらも不合格になると補講があって再試験が待ち受けていた。
実習試験のために、週末の休みごとに家で復習をした。前期はアジを何尾開いたことだろう。後期は卵を何個使ったことだろう。
学科については、記憶力の衰えとの戦いだった。これまでの教育技術や専門知識を押し出して、新しい知識や技術を詰め込まねばならなかった。
必須アミノ酸9個や、特定表示食品7つ、日本人の平均寿命の変遷や個々の食品の栄養価など、覚えることは次々と山ほどあった。

年が明けてからは、あっという間の三か月間だった。
専門調理師免許取得のための学科試験先行受験「技術考査」、後期試験、卒業料理作品展と予定は目白押しだった。

明治神宮会館の座り心地のいい席で、卒業式に参列しながら、そんなことを想っていた。

卒業式を終えて、午後は飲み仲間に連れられて歌舞伎町ど真ん中の四川料理店へ行った。真っ赤なスープの鍋で毛穴が開いた。夕方からは都庁近くのチェーン店でクラスのメンバーと納会をした。
「食事マナーや研修旅行に行くと、必ず現地のスタッフがまず佐々木さんを見つけて担任の先生と間違えていたのが記憶に残ってます」
ビールを注いだ若者の言葉。33年間しみついた学校臭は抜けきらなかった。

この日の山羊座の運勢は「大事なものを失う」。
帰宅するまで、この日受け取った重要書類を無くさないように気をつけた。

卒業証書。
卒業証明書。
単位履修証明書。
健康診断書。
日本中国料理協会からの賞状。
卒業アルバム。
その他もろもろ。

無事にそれらを自宅まで持ち帰り、大事なものは失わなかったと一安心。
また明日も明後日も、昨日までの仲間といつものように会える。
いや、あー、もう会えないんだと気づいたら、とても寂しくなった。

21日は春分の日。22日、私は卒業証明書、単位履修証明書、健康診断書をもって鎌倉保健所へ調理師免許の申請に行く。申請から発行まで一ヶ月ぐらいかかるそうだ。
帰りに北鎌倉の円覚寺に行き、佐々木の墓に卒業を報告してこよう。
===2019年3月22日===



2019年3月20日。

7905.3/19/2019

3月18日。月曜日。
水天宮にあるローヤルパークホテルで、服部栄養専門学校の卒業記念パーティーがあった。
昨年の今頃は、教員として最後に送り出す卒業生との日々だった。

あれから1年が過ぎた。
専門学校には調理師本科(1年)・調理ハイテクニカル経営学科(2年)・栄養士科(2年)・パティシエブランジュクラス(1年)・調理師科夜間(1.5年)があった。

55歳で入学し、56歳で卒業する。
ローヤルパークホテルには、卒業を控えた全学の学生が参集した。
立食形式でのパーティーだった。
クラス対抗のゲームがあったり、参加者対象の抽選会があったり、内容も工夫されていた。
高校卒業後から入学できるので、年齢としては19歳の若者からいる。
未成年者がいるので、パーティーはノンアルコールだった。

いつもは白衣やコック服を着ている教授陣が正装していたので、見た目が異なり興味深かった。
終了後、同じクラスの仲間10人と人形町へ繰り出し、さらに新橋で飲みながら語った。

若者は就職が決まり、すでに現場に入って研修が始まっていた。
これから始まる社会人生活に緊張していた。
「なんでも、3の数字を意識して励むといいよ。3日、3週間、3ヶ月、3年。そんな区切りで自分がやっていることを見直してごらん」
同じクラスメートだが、こちらは社会人としては33年の先行経験があるので、アドバイスができる。
留学生はすでに本国への帰国準備が始まっていた。こちらの荷物の多くはすでに送ったという。
「帰国しても、またニッポンに来るよ。みんなのところを回っておいしいものを食べるよ」
私がいつも飲み歩いたクラスメートは、卒業後はそれぞれの故郷へ戻る。広島、秋田、新潟。地元が東京というメンバーも多い。私は神奈川。
この1年のように、何かのイベントごとに「飲みに行こう」というわけにはいかなくなるだろう。
しかし、ここでできた新しい人と人とのつながりは、きっとこれからさらに強くなっていくだろうと確信する。

「いやぁ、楽しい1年間だった」
私は盃を口に運び、感謝した。
「本当に楽しい1年間だった」
何度も何度も感謝した。

明日、卒業式だ。

7904.3/16/2019

ここから…34

計数管理

_/_/_パーティー集計表_/_/_

佐々木食堂(仮名)は、カウンターのみ6席の小さな店なので、お客さんが顔を寄せ合ってのパーティーは開催しにくい。
しかし、少人数での貸し切りならばイスを動かしてミニテーブルを置きミニパーティーを開催できるかもしれない。
また、イスを撤去して立食形式のパーティーも可能かもしれない。

店を特定のお客さん専用にオープンすると、経営的にはメリットが多い。
まずメニューがコースになるので、あらかじめ無駄のない仕入れと調理が計画できる。
お客さんの食べるタイミングを見ながら、ちょうどいい温度帯の食事を提供することもできる。
会計が一括なので、収支が計算しやすい。

小さな店で、わざわざ住宅地の中の隠れ家的な場所まで来たのに「貸し切り」で入れなかったら残念なので予約は取らないでほしいという声もある。

しかし、逆に考えればわざわざそんな場所で親しい人たちに声をかけあって、貸し切りパーティーを計画してくださるお客さんの気持ちも大切にしたい。

フェイスブックやラインなどのメディアを使って、予約貸し切りの日は早めに情報をアップするようにして、積極的なパーティー利用を打ち出してみるのもいい。

貸し切りとは異なり、予約に関してはすべてコースにするつもりだ。
席だけ抑えるやり方の予約はとらない。
多くの飲食店主が頭を悩ますのが、席だけを予約して当日来店しない客のことだ。これは本人たちの声を聴く機会があったので、決して少なくないことなのだろう。連絡先として登録した電話にかけても、まったくでたらめで通じないのだそうだ。
・本当に利用したかったが都合が悪くなって連絡を失念した
・予約といういたずらを仕掛けて愉快になりたかった
・営業を妨害するつもりだった
理由は様々だろう。
どんな理由であれ、本来は他のお客さんが使える空間を、来もしない予約客のために制限するのはお店にとって損失が大きい。

だから、予約申し込みの場合は3つぐらいのコースを用意しておいて、そのどれかを選んでいただく。コースメニューは完成したものなので、万が一、キャンセルが生じても他のメニューへの変更がききやすい。

_/_/_仕入れの管理_/_/_

各業者より仕入れた食材や飲料の仕入れ額を管理する。
これはそれぞれのメニューの原価率を算出する元データになるので必須の作業だ。
とくに季節によって値段が上下する生鮮食料品の仕入れ管理は、利益に直結する。
脂が乗ってキロ単価が上昇したからといって、アジフライ定食をいつもよりも高くすることはできない。

毎日どれだけの肉や野菜を仕入れたらいいのかは、実際に店を動かし始めて見えてくるのだろう。最初のうちは使い切れずに破棄したり、品切れになってお客さんに迷惑をかけたりするかもしれない。4つの季節を送って2年目に入ったあたりから、正確な仕入れができればいいと思う。

===2019年3月16日===



専門学校の男子更衣室。ホームルームが5階にあり、更衣室は8階だった。エレベーターは2基しかなく、満員で乗れないことも多かったので、5階と8階は何度も階段を往復した。また実習室は1階から4階にあるので、コック服に着替えるために8階の更衣室へ行き、実習室へ下がり、終了したら再び長い階段を登ることを繰り返しもした。私は学科の教科書はすべて家に持ち帰り毎日持参したが、多くの学生はこのロッカーに教科書を入れていたので、学科のたびに5階と8階を往復していた。 2019年2月25日。

7903.3/14/2019

ここから…33

3月13日。大工さんと調理機器メーカーの方との4回目の打ち合わせをした。
前回の打ち合わせで検討した調理器具をラフな設計図面にしてきてくださった。

ホールからテーブルを外して、全部カウンターにした。
カウンターはL字になっていて、キッチンを正面に見るカウンターが長く、横から見るカウンターがが短い。

テーブルを外したのでカウンターが伸びた。長辺が3450mmで短辺が1950mm。
縦長の店内。
戸外の小道に面した短辺の右側に右開きのドアを取り付ける。
店内に入ると、奥に長いホールが右側に見え、中央にカウンター、左側にキッチンが配置された。
厨房機器の関係で、ホール幅は1080mm。最も奥にトイレがある。
トイレを使うお客さんは1080mm幅のホールを抜けてトイレに行く。
1080mm幅のうち、400mmはカウンター。
カウンターの端から壁までは680mm。ここにはイスがあり、お客さんが座る。その後ろを通ってトイレに行くので、かなり狭い。
この狭さが声の掛け合いを導けば、お客さん同士のコミュニケーションのきっかけになる。

キッチンはカウンターの内側にある。
中央にオペレーション通路があり、カウンター側と反対の壁側に厨房機器が並ぶ。
カウンター側には、テーブル形冷蔵ショーケース、その上に一升炊きの炊飯器。製氷機。ドリンクテーブル。生ビールディスペンサー。ワークテーブルが並び、キッチンとカウンターを行き来できる扉の横に手洗い器がある。
テーブル形冷蔵ショーケースには冷やしたグラスや冷酒、ワイン、ソフトドリンクを収納する。
ホールはカウンターが切れた先にトイレがある。
キッチンはトイレの位置にテーブル形冷蔵庫、その上に吊戸棚がある。扉のある戸棚がないと保健所の検査は合格しない。食器を収納する場所だが、実際にはワークテーブルに皿を並べて料理の盛りつけをするので、いちいち棚から皿を出すことはない。

オペレーション通路を挟んで反対側の壁際には手前に二槽シンク。コールドテーブル。その上に業務用フードプロセッサー。中華鍋用シンク。五口コンロ。スチームコンベクションオーブン。そして、もっとも奥に納入用ドアを作り外部と接する。

コールドテーブルは冷凍冷蔵庫だった。
調理師専門学校での実習でも、ちんや食堂での実習でも、お客さんの来る開店時間帯に冷凍庫を使うことはほとんどない。
お客さんが注文して、かちこちの冷凍食品を出していたら、解凍に時間がかかり、品出しが遅くなってしまう。
飲食店での冷凍庫の役割は、さしあたって今日は使わない食材の保存だ。

「コールドテーブルは冷蔵のみにしましょうか」
メーカーの方が提案する。
「そうですね。ただし、そうするとこのキッチン面積では冷凍庫を置く場所がなくなりますね」
図面を見ていたメーカーの方と大工さん、私で思案する。
「二階がありますよね」
メーカーの方が口を開き、私はうなずく。
「ふだん使わないものを冷凍するだけですから、そこに冷凍庫を置くというのはいかがでしょうか」
「いいアイデアですね。でも納入の時、階段を上れますか」

階段の幅を調べて、納入可能なことがわかった。

このほかに、メーカーの方は専用の中華コンロカタログを見せてくださった。
「この図面の五口コンロは通常のコンロなので、鍋によっては直径が小さいかもしれません。こちらの中華専用のコンロはいかがでしょうか」
五徳が円形になっている中華コンロがあった。
また二口は中華鍋用で、真ん中の一口は寸胴用で高さが低くなっていた。これは作業しやすい。
「中華専用なので、コンロに排水溝がついています。これを使えば中華鍋用のシンクは不要です」
中華専用のコンロは、大きな中華鍋を使用した後にコンロに乗せたまま洗えるようになっている。壁に蛇口を設置して、調理した後に水を流す。それを竹でできたササラという掃除用具でよぶんな油や食材のカスを除去する。それをそのままコンロに流すと、汚水は排水溝に流れ、キッチン下の浄化槽に行く。私が使おうと思っている中華鍋は直径が36pある両手鍋なので、このやり方ならば調理のたびにシンクへ運んで洗う必要がない。
ちなみに中華鍋は鉄でできているので、錆びないようにつねに油が染みた状態を保つ。そのため洗剤で洗ってはいけない。水を流しながらササラで汚れを落としたら、強火で空焚きして水分を蒸発させれば、次の調理に使える。

私が食堂を始めたら、調理方法を中華にしようと思ったのは、この中華鍋の特性が理由だ。一つの鍋で焼く、炒める、蒸す、揚げる、煮るができ、使用後は洗剤を使用しない。鉄でできているのでテフロンなどのコーティングを気にしなくていい。食材に鉄分が流出するので、鉄不足を補う効果がある。混ぜたり、割ったりするときも、お玉だけですべてをこなせる。

今回提案のあった五口のコンロと中華鍋専用シンクの値段と、中華専用コンロの値段を比較していただいた。値段の違いはほとんどなかった。

ラフ図面のコンロ部分を修正していただくよう頼んだ。

ほぼこのコンロに決めたので、調味料置き場と捨て油置き場も設置を頼んだ。塩や砂糖などの調味料を調理で使う時、中華料理ではお玉一つですべて取り分ける。左手に鍋をつかんでいるので、調味料はコンロの右側にあった方が作業しやすい。

「だいぶ形が見えてきたので、次回は展開図と立面図を用意しましょう」

何をどこに設置するかというラフ設計から、いよいよ詳細設計に入っていく。
4月2日に次回の打ち合わせをすることになった。

===2019年3月14日===



卒業料理作品「勇往邁進」の肉料理。うずらの素揚げとうずら卵の水煮。当初は鶏の蒸し焼きを考えたが、これも担当教員のアドバイスで変更した。だれもが考えそうな食材ではなく、せっかくの作品展なので珍しい食材を使いなさいと言われ、うずらにした。冷凍のうずらを解凍し、除去しきれていない毛を毛抜きでとった。高温の油で焦げないようにゆっくり揚げた。パットの揚げて粗熱を取り、背骨を除去して縦半分にして開いて盛りつけた。 2019年3月2日。

7902.3/12/2019

ここから…32

飲食店の計数管理

他の業種と異なり飲食業は、原材料を仕入れても、すべてを有効に活用できるとは限らない。とくに、食べ物を扱うので、せっかく仕入れた食材でもお客さんの要求がなければ使われないまま破棄されてしまう。
とても無駄の多い業種だ。

具体的には1000円で1キロの牛肉を仕入れたとする。
よぶんな脂や筋を取り除いて950gになった。
この時点で50g分、つまり50円はまったくのロスになっている。
1000円で仕入れても、使えるのは950円分ということだ。

これを200gずつ4切れ、150g1切れに小分けして保存する。
牛ステーキの注文が5回続けば、950円で仕入れた牛肉は無駄なく使われる。
しかし、3回続いたが残り2切れになったらちっとも注文が入らなくなった。
やがて保存期間を過ぎて、残りの2切れは破棄した。
200gを3切れ提供できたので600g、600円分の牛肉は料理になった。
しかし200g1切れと150g1切れは破棄したので350g、350円は損をしたことになる。
不可食部分50円と合計して、1000円で仕入れた牛肉は600円分しか料理にならなかったので400円も無駄になった。
200g、200円の仕入れ原価に400円の利益を乗せて600円で販売しないと、無駄になる部分を補うことは難しい。

実際には保存期限が近づいた食材は煮たり、ソースにしたり、別の使い道を考えてなるべく有効に使うだろう。しかし、魚や野菜についても同様のことを考慮して計数を管理しなければならない。

また、技術を磨いて調理した料理よりも、ほとんど何もしていない飲み物の方が利益率は高い。これは利益計算では魅力的だが、調理への情熱を減退させる危険性をはらむ。

毎日の計数管理を日次業務という。
疲労困憊で本当にこんなことができるのかとも思う。
しかし地元、大船の飲食店の終業を見ていると照明を落とした店内でオーナーが眠たい目をこすりながら電卓をたたいたり、伝票をめくったりしている姿を多く見る。

_/_/_売り上げ実績表の記入_/_/_

売り上げ実績表は翌月一ヶ月分の予算と日割り予算を管理する。
日にちと曜日を考慮して1日から月末までの日割り予算を立てる。
項目は、日付・曜日・予算・実績・予算累計・実績累計・差異・予算比。
複数年の実績がある場合は前年同月の実績表を項目に追加する。

集客は月の前半か、五十日か、給料日か、週末か、祝祭日か、休前日かで異なる。
また天候によっても大きく左右される。
それらを考慮して毎日の売り上げ予算を立て、実績と比較して、売り上げの傾向を知る。自身の経営に対する勘を育てていく。

佐々木食堂はランチタイムとディナータイムの2営業なので、実績表は昼と夜の別項目を用意する。

_/_/_売り上げ日報の作成_/_/_

これはお店の数字版日記だ。
日々の売り上げ、来客数、客単価などを細かく記入する。
どんなメニューがどれだけ出ているのかもチェックすることで、一ヶ月ごとのABC分析に活用できる。メニューの修正や、ハレメニューの構築に役立てる。

_/_/_販促集計表_/_/_

何らかの販売促進計画を実行したことによって生じる利益と割引の詳細を記録する。
最近はインターネットを使ったクーポンやサイトそのものから誘導される割引が多い。
これはお店が広告企業に宣伝費を払うことで集客を促進し、さらに割引サービスによってリターンを期待する。
〇〇なび4000円プラン(2人以上)!などというネット上の広告をもとに来店したお客さんに、売価4000円のコースを3500円にする。お客さんは500円の割引を得られる。お店は〇〇なびに広告料を払って、さらに値引きをして、販売を促進する。
何も知らないお客さんは表示価格の4000円コースを選ぶしかない。

こういう販促計画は、多くの飲食店が取り組んでいる。
また帰り際のチェックで、次回から使える50円割引券や大盛無料券などを配る店もある。

しかし、これができるのは原則的にはチェーン化した大企業が多い。
単体のお店が、自らの利益を圧縮して薄利商売を始めたら、削れるのは人件費と材料費なので、店の品質は低下してしまう。

4000円のコースを500円割り引いても、店として影響の少ない売り上げをあげるには、よほど原材料が安いか、人件費を抑えるかしか方法はない。それができるのは原材料を大量に毎日仕入れられる大企業だけだ。

佐々木食堂(仮名)のように、毎日、鎌倉は坂の下の海岸に行き、漁師さんから
「今日のアジは太ってるね!」
「おぅ、キロ2000円でどうだ」
みたいなやりとりで、その日の消費分しか仕入れない店では太刀打ちできない。

だから販促については、宣伝という方法は検討するが、料理を割り引くという方法はとらない。
ただし、ランチのご飯と汁物は二杯ぐらいまではサービスにしようかとも考えている。おなかいっぱいになってほしいし、主食と主汁はどの定食にもつける顔なので気前よくしたいからだ。サービスにした減収分は、夜の飲み物で補えればいい。

===2019年3月12日===



卒業料理作品「勇往邁進」の魚料理。太刀魚の姿揚げ。当初は季節の魚であるクロムツをメインにした蒸し物を考えていた。しかし、担当教師との相談で、もっと見栄えのいいものをということで1.5mぐらいある太刀魚を学校を通じて仕入れていただいた。半身は切り落とし5センチぐらいに切って中央でパプリカとともに上げて盛りつけた。頭と中骨のついた半身は包丁でひれを作り、片栗粉をたっぷり塗って大鍋で揚げた。油のなかで動かないようにとぐろを巻いた状態をキープさせながら揚げるのが大変だった。 2019年3月2日。

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佐々木食堂(仮名)は父が暮らしていた敷地内別棟の一階を改装して開業する。
坪面積にして6坪弱の狭い店だ。

知人を介して大工さんがこれまでに3回来られて店内のラフ設計を検討した。
毎回、ラフプランを示してくださり、そのたびに私の意向で修正が加わり、次回につなげるというやり方だ。

まだ正式な契約はしていない。
特に他の業者さんと同時並行で話は進めていないので、このままいけばこの大工さんに頼むことになるだろう。
そんなことを周囲の人に話すと
「そこで示してくれたラフプランを他の業者に見せて、お宅ならどうする?って、競わせなきゃだめだ」
と指摘された。

なるほど商売の世界というのは、そういうドライな面が重要なのかもしれないが、長期間小学校という社会から隔絶された世界で働いてきたので、そういうドライさは持ち合わせていない。
これまでの対応にまったく不安も不信も抱かないので、私は少しずつ現在の大工さんと調理機器メーカーの方を信用し始めている。
細かい私の指示や、素人っぽい質問にも丁寧に応じてくださる。

「それが仕事なんだから、当然だよ」
周囲の人は言う。

そんな当然の仕事ができない大人が増えていることは、多くの保護者と接してきて私は痛感している。
自分の都合ばかりを優先して約束を守らない大人。
自分の権利ばかりを主張して責任を果たさない大人。
納得のいかないことにはとことん説明を求めるのに、自分の不都合なことは徹底的に隠蔽する大人。

今後示される見積もりが、あまりにも高額ならばほかの業者を頼むかもしれないが、妥当な線を示してくれたら、正式に頼もうと思っている。

1月26日に、初めて私は大工さんと会った。
場所を見ていただき、大まかなお店のコンセプトを伝えた。
2月15日に、大工さんは調理機器メーカーの方といっしょに来られた。
お店に必要な調理機器や大まかなレイアウトを伝えた。
3月5日に、再び相談をした。
調理機器メーカーの方がラフプランを作成してきてくださった。
それをもとに、いくつかの修正をした。
ここで完全に店からテーブルを削除し、すべてカウンターにすることにした。
現在のポーチを壁にして、別の場所にエントランスを設置することにした。これによってカウンターが伸びてキッチン面積が増えた。通常の2槽シンクとは別に大きな中華鍋専用のシンクを設置することにした。

5日の相談で、ほぼ導入する調理機器についてはめどがついた。
大型冷凍冷蔵庫、コールドテーブル、5口(大3小2)の中華コンロ、スチームコンベクションオーブン、ドリンク用冷蔵ショーケース、吊戸棚、業務用フードプロセッサー、業務用炊飯器、製氷機、生ビールディスペンサー。

次回は、3月13日に再び相談をする。その時にはそれぞれの機器の配置を私のオペレーションをイメージしながら決めていく。
カウンターの奥行きをあまり広くとるとお客さんの背中が壁に近くなり、その後方を通ってトイレに行きにくくなる。カウンターの奥行きを狭くして、提供する料理のレイアウトイメージを考える。カウンターから皿がはみ出すわけにはいかない。

===2019年3月8日===



卒業料理作品「勇往邁進」の飲茶。茶菓はとても高額なので、専門学校の私の担任(中華担当)が貸してくださった。茶色の茶器も、専門学校の中華支援員の先生が貸してくださった。他の茶器は、私の父が台湾に赴任していた当時に購入したものを使った。茶は中国茶をイメージしているが、実際は湯にゼラチンを入れて着色料で色付けしたもの。南天は作品展当日の朝、庭に咲いていたものを摘んで持参した。 2019年3月2日。

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調理師専門学校で学んだこと

3月2日に卒業式料理作品展を終え、いよいよ専門学校で学ぶことはなくなった。
20日の卒業式までに事務的な連絡で数日登校する以外、たっぷりの休みがある。

すでに新年度の入学者向けの準備が学校では進んでいる。
週末ごとに試験を実施して、入学者を確定している。
授業料が大きな収入源の専門学校にとって、入学者の増減が大きな関心事だろう。

去年の今頃、私は33年間の教員人生で最後の年度末を迎えていた。
卒業していく6年生に入学する中学の準備をして、卒業式の練習をした。5年生以下の在校生には、それぞれ進級する学年への準備と、年間の学習計画通りに学べたかどうかの評価を検討した。
特別支援学級なので、すべての学年の子どもたちが在籍していた。
同僚や保護者のなかには
「本当に退職されるんですか」「今からでも取り消せませんか」
こんな私でも求められることがあるのだと感じながら、感謝の気持ちでいっぱいになった。
そういった方々のためにも、4月から入学する専門学校では若者に混ざって必死に知識と技術を習得しようと自分に言い聞かせた。

それから一年がたった。
具体的に何をどれだけ学んだかを振り返る。

大きくわけて教室で講義を聴く学科と、実習室で調理をする実習とに分かれた。
学科は、食品衛生学(56時限)・公衆衛生学(42時限)・調理理論(46時限)・集団調理(15時限、実習を含む)・レストラン論(15時限)・食品学(58時限)・栄養学(14時限)・接客マナー(28時限、実習を含む)の合計291時限あった。

食品衛生学:おもに食中毒、厨房設備の衛生、食品表示など
公衆衛生学:食品性公害、拒食症など食に関する精神的症状、食育など
調理理論:調味料の特性、季節ごとの料理、アレルギー食品など
集団調理:厨房機器、大量調理の方法、集団調理実習など
レストラン論:繁盛店の工夫、原価計算など
食品学:栄養素の役割、うまみ成分、個々の食品の特徴など
栄養学:カロリー計算、必須アミノ酸、分子構造など
接客マナー:お辞儀の仕方、電話の応対、食事作法、テーブルマナーなど

実習は、全般(44時限)・西洋料理(44時限)・日本料理(47時限)・中華料理(36時限)・製菓製パン(38時限)の合計205時限だった。

全般:包丁の使い方や研ぎ方、校外実習、卒業料理作品など

専門学校の1時限は100分だ。
学科は原則的に1時限単位だったが、実習は原則的に2時限、つまり400分を一つの単位として行われた。

このほかに学校教育法で定められた避難訓練や健康診断もあって、なかなか刺激的だった。
さらに運動会(体育祭と呼ぶ)や文化祭(学園祭と呼ぶ)、研修旅行もあった。

前期と後期に分かれていて、それぞれに試験があった。
学科は60点以上で合格、実習は70点以上で合格だった。
合否発表では、だいたいクラスの30%前後が全合格だったが、70%前後は何らかの学科や実習で不合格があり、追試・再試験を経験していた。

実習課題は、ほかの調理師専門学校と同じ内容だったようだ。
前期は、日本料理が胡瓜の小口切りと鯵の大名卸、西洋料理が人参の千切りと玉ねぎのみじん切り、中華料理が長葱のみじん切りと胡瓜の千切り、製菓製パンがクリーム絞り。
後期は、日本料理が大根の桂剥き、西洋料理がオムレツとジャガイモのシャトー(面取り)、中華料理が炒飯、製菓製パンがクリーム絞りハイレベル。

このほかに追加オプションが複数あり、私は「中華マスターコース」と「オーナーマスターコース」を受講した。

こうやって振り返るととても密度の濃い1年間だったと思う。
学校の勉強はどれだけ将来に役立つのかと思ってきたが、ここでも学びはどれもすぐに私の将来に直結するものばかりだった。

まさに「ここから」得られたものを、どれだけかたちにできるかが問われる。

ちなみに飲食店で働いたり、飲食店を開業するには「調理師」の資格は必要ない。
食品衛生責任者の資格があれば大丈夫だ。
必要のない資格なのに、調理師という免許があるのは名称独占といって、飲食店で働くときに免許がある人だけ調理師を名乗ることができる意味がある。
理容師とか教師のように免許がないとその仕事ができないのは業務独占といって、区別される。

若い時から専門店で下積みを長く経験した料理人の多くは調理師免許をもっていない。その道のプロとして自立しているので、わざわざ調理師と名乗る必要はない。
しかし、幅広く調理の世界を知っていて、栄養や衛生についての基礎的な知識をもっているという意味でお客さんの安心を導く役目が調理師免許にはある。

===2019年3月7日===



卒業料理作品「勇往邁進」の前菜7品。3人分を基本としている。台湾の故宮博物館で購入した青いカップには、梅干し・パプリカ・ブロッコリー。皿に見立てた木片には、干しシイタケとアスパラガス・大根の菊花切り・煮豚と絹さや。とりわけ用に蒸しエビ。 2019年3月2日。