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7899.3/4/2019

ここから…29

店内環境の考え方

小さな店でも、いや小さな店だからこそ、店内環境は重視しないと従業員もお客さんも居心地のよい店にはならないだろう。
狭さが圧迫感をうみ、落ち着いて食事ができないようではリピーターはつかない。

店内環境は2つの立場から考える。

従業員の立場からの店内環境とお客さんの立場からの店内環境だ。

従業員の立場から考えた店内環境は、効率的で働きやすいかどうかが決め手になる。
レイアウトが作業効率を考えたものか。
作業の流れをスムーズにするカウンターになっているか。
厨房機器などのレイアウトを工夫しているか。
汚れにくく清掃しやすいように工夫しているか。壁面と床面が垂直に交わる部分にR加工という加工をすると隅にごみがたまりにくくなる。
備品の収納とオペレーション性は考慮されているか。
機会損失を少なくするための効率的な席が配置されているか。2人掛けのテーブルにいつも1人しか座っていない店は、もう1人座れる空間を無駄にしている。

お客さんの立場から考えた店内環境は、雰囲気が居心地がよい店になっていることが決め手だ。
内装や外装に圧迫感や不潔感はないか。
店内のレイアウトは季節感やぬくもりを演出しているか。
テーブルやいすの高さや幅に無理はないか。これは意外と考慮されないことが多く、臨席ととても近い設定のカウンター席の店に入ると、早く食べて出たくなる。
皿やグラスなどの備品は手触りのよいものか。
空気は清浄か。
照明はまぶしくなく、穏やかなものか。
BGMは店の特徴を表しているか。

この両者がうまくマッチされたとき、満席率は向上するという。

デザイナーがこるような見栄えのいい店内環境は、芸術性や話題性は高いが従業員とお客さんにとっては必ずしもプラスになるとは限らない。

この他に「にぎわい感」を出す工夫がある。

にぎわい感とは、お客さんが店にマッチして十分に楽しんでいる状況のこと。
ざわざわ感がある状態ともいえる。
にぎわい感の創出には「レイアウト」「照明」「音」の3大要素が関係する。
レイアウトでは、お客さんどうしの目線が合わないようにする工夫が必要だ。見知らぬお客さんの視線を感じてしまうとしらけてしまう。佐々木食堂(仮名)ではカウンターにするので目線はあいにくい。
また、座った席によって店内の見え方が違って見えるようにメニュー表示やディスプレイ、花きなどの配置に変化をつける。これによって、お客さんはいつ来ても新鮮さを感じられる。
照明はスポットライトをでレイアウトを際立たせる。できれば間接照明にする。
BGMはフォークや演歌やジャズなどのジャンルはあまり問題ではなく、音質が重要。小さい店なので、スピーカーやアンプには少しお金をかけよう。

具体例として教わったこと。
ある居酒屋ではわざとテーブル幅を狭くして、向かいに座った客に腕が届く距離にした。これによりコミュニケーションがとりやすくなり、にぎわい感が生まれた。
あるバーでは靴をぬいで座るスペースを作った。これによってお客さんは家に帰ったような安心感を得て友人同士が集まってのわいわいがやがやが可能になった。
あるレストランではワイングラスにあえてロックグラスを使用。脚付きグラスはワインを注ぎあうときに腕を高く上げるのでにぎわい感が出てきにくい。
ある焼き鳥店ではBGMは有線でポップスのみにした。演歌を流すと中高年しか集まらない。ターゲットが若者層だったのでお客さんのすみわけに役立った。

===2019年3月4日===



12月あたりから卒業料理作品を考えた。一年間の集大成であり、今の自分の気持ちを今の自分の出しうる技術でかたちにしたかった。タイトルは2つ浮かんだ。「臥薪嘗胆」と「勇往邁進」。どちらも目指す目標へ向かう姿勢を示す。火傷や切り傷という苦痛に耐え乗り越えたこともあった。しかしどれ一つとっても自分から飛び込んで得たものばかりだった。だから、勇往邁進を選んだ。 2019年3月2日。

7898.2/27/2019

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メニュー構成の考え方

お店で用意する飲食物は、個々にメニューというかたちで商品化される。
それぞれに元手(原価)が必ずかかっている。
そこに利益を上乗せして売価を決める。

元手がかかっているものを、利益なしで販売すると経営は破綻する。
また、元手がかかっているものを、無料で提供すると商品ではなくなる。

日本の飲食店には「お冷や」という風習がある。
衛生的に管理され、軟水という特徴のある日本の水道水は「ただで飲んで当たり前のもの」という感覚がある。
「お冷や、ちょうだい」
「お冷や、ないの」
偉そうにロハモノ(無料飲食物)を欲しがる客が時々いるが、品性を疑う。

また、あまりにも安価なメニューがあるお店では「いったい原価はいくらなんだろう」と不思議に思ってしまう。
とくに唐揚げやてんぷらなど、小麦を使う料理が極端に安い店に入ると、使っている小麦はいわくつきの輸入品ではないかと疑ってしまう。真偽ないまぜで、チェルノブイリ原発周辺の小麦は世界中にとても安価で出回っているという話もあるほどだ。

私は飲食の世界はまったくの素人だが、専門学校で学ぶうちに教育の世界に共通するものが多いことに気づいた。
その一つがメニューだ。
自分が子どもたちに何を教えるか、どうやって教えるかという使命。それはそのままコックがお客さんに何を作るか、どうやって作るかと同じなのだ。
「何を」「どうやって」という二つの使命は、そのまま教員もしくはコック本人のプロとしての立ち位置を示すことになる。

学習指導要領に則った教科書通りの内容を指導書(出版社が発行する授業指導の手引き)を見ながら教える教員。管理職や教育委員会が大喜びするタイプだが、子どもたちにとってどう受け止められるかは別問題になる。

レシピ本やネット情報、テレビ番組で紹介された各種料理を、そのままのレシピで原価抜きで作るコックの店はメディアや業界では評判になるかもしれない。しかし、お客さんにとって毎日行きたい、しょっちゅう行きたいと思われる店かどうかはわからない。
私はメニューを通して佐々木食堂(仮名)が、心と体の健康と地域コミュニティの創造に貢献できればいいと願っているので、おのずから高級食材を使ったドレスコードが必要なメニューとはなりにくい。

メニューは6つの要素で構成されている。

1.価格設定(周辺競合店の価格との対比・お客さんにとっての値ごろ感)
2.アイテム数(ジャンルとお客さんのニーズとのマッチ)
3.レイアウト(注文しやすいメニュー・売りたいメニューの強い訴求)
4.味(飲食店としての最重視ポイント・メリハリがあるかどうか)
5.ネーミング(どんな料理かわかる名前・インパクトや興味)
6.盛りつけ(見た目の美しさ・手ごろな量かどうか)

日本語は従来縦書きが基本だったので、人の目線は上から下が先にあり、行の移動で右から左へと動く。それがもっとも眼球を自然に動かす流れだった。かつて横書きが導入された時も、横書き文章は右から左へ書いていた。

メニューレイアウトには横書きと縦書きがある。
昨今のメニューは圧倒的に横書きが多い。

ランチタイムは年齢層が高いと予測するので、左開きの縦書きメニューにする。
ディナータイムは中高年や若年層が来店すると予測するので、右開きの横書きメニューにする。

縦書きメニューは、右上→左上→右下→左下と目線が動くので、右上がゴールデンゾーンになる。
横書きメニューは、左上→右上→左下→右下と目線が動くので、左上がゴールデンゾーンになる。

ゴールデンゾーンには、全メニューの中で高粗利率のエリートたちを配列する。
原価を引いた利益の高い商品だ。
目線が最後に到着するゾーンには、ある程度の出数がつねに予測できるレギュラーを配列する。お客さんが目線で探さなくても心の中であらかじめ決めているような商品だ。ドリンクだったら生ビールやお茶類、定食だったら定番のもの、単品だったら季節のサラダなどだ。

===2019年2月27日===



西洋料理実習では多くの肉を使った。豚のひれ肉をたたいて伸ばし、生ハムを貼ってこんがり焼いた「サリティンボッカ・アラ・ロマーナ」。とても作りやすく、肉たたきを早速購入し、自宅で再現した。 2018年12月5日。

7897.2/26/2019

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メニュー開発のフローチャート

お店のコンセプトがだいたい決まったら、開店へのスケジュールを作成する。
そしてお客さんに出すメニューのコンセプトを作成する。

メニューコンセプトは大きく2つの流れ(フローチャート)をもつ。
仮に左の流れと右の流れとする。

左の流れはラフメニューから実施メニューへと進展する。
右の流れはキッチンオペレーションを検討する。

つまり「何を作るのか」と「どうやって作るのか」を同時に検討する。
どんなに作りたいメニューがあっても、実際に作るのが困難であれば提供できない。
あるいは作ることはできても、歩留まりが低かったり、食品ロスが多すぎたりすれば、収益を圧迫するだけだ。

ラフメニューの作成

カテゴリーを検討する。
ランチタイムはお客さんに「ごはん」を中心に提供する。
そのため主食・主菜・主汁をセットにした定食を用意する。
定食のカテゴリーは、魚介類を主菜にしたものと肉を主菜にしたもの。
作り方としては、揚げる・煮る・焼く・生のままの4つで調理する。
主食は白米。追加オプションとして季節の混ぜご飯や炊き込みご飯、玉子チャーハンを作る。
主汁は味噌汁と中華スープを選んでいただく。
アイテム数は魚介定食が揚げ魚定食・煮魚定食・焼き魚定食・刺身定食の4つ。肉定食が豚の角煮定食・豚の生姜焼き定食・トンカツ定食・鶏の唐揚げ定食・鶏と卵の親子定食・牛の焼肉定食の6つ。
それぞれのつけあわせに季節の野菜を添える。追加オプションとして季節のサラダ、ポテトサラダ、オムレツ、玉子焼き、蒸し餃子、焼売を作る。
単品として麺類を用意する。鶏ガラ醤油ベースのラーメンとパスタ類を作る。

ドリンクはセットにはせず、不要なお客さんには水を出す。
ノンアルコールが基本で日本茶、紅茶、コーヒーを用意する。
別途オプションとしてアルコールも用意するが、中心的な存在としては期待しない。

ディナータイムはお客さんに「酒肴」を中心に提供する。
白米の割合は減少させるが、〆に焼きおにぎりとかお茶漬けの用意はしておく。
おつまみなので、ポーションは減らすが、種類は用意しておきたい。
ランチで残った主菜を使って調理する。揚げ魚・煮魚・焼き魚・刺身・角煮・生姜焼き・トンカツ・唐揚げ・焼肉・茶碗蒸し・海鮮サラダ・蒸し鶏・青椒肉絲・雲白肉・麻婆豆腐・牛豚のオイスターソース炒め。
箸休めとして、季節の野菜のお漬物・自家製梅干し・キムチ・辛子明太子・枝豆・ミニ冷ややっこ・ポテトフライを提供する。

夜のドリンクは重要なアイテムになる。
ノンアルコールは焼酎の割剤になるものをストレートで出す。ウーロン茶、緑茶、炭酸飲料、ジュース。
アルコールは生ビール、日本酒、焼酎、ウイスキーを中心にする。焼酎はストレート、ロック、サワー、お湯割り、水割り、お茶割り。日本酒は常温、冷や、お燗。ウイスキーはストレート、ロック、ハイボール。
ボトルキープは棚の都合から4合瓶を中心にする。キープのお客さんにのみ、氷かお湯を希望した時は別途扱いにする。

ラフメニュー検討の段階で、これらのメニューについての特徴設定が必要になる。
たとえば揚げ魚定食ならば、ご飯は70グラム、みそ汁は80t、揚げ魚は半身を3つに切って揚げ、皿には青葉を敷いてその上に並べ、自家製レモンの1/8房切りを添え、カラフルなピーマン炒めを奥山にする、のようにそれぞれの料理の完成形を特徴づけていく。
これは本稿とは別にエクセルで一括作成していくのでここには掲載しない。
試作、試食の段階で、知人から改善点を意見集約しようと思っている。

フローチャート右の流れである「キッチンオペレーション」では、これらのラフメニューを作るにはどんな厨房計画が必要かを考える。
すでに大工さんと調理機器メーカーの方に私の考えは伝えてあるので、物理的にどこまで実現性があるかどうかによって、調理方法が見えてくる。

ここまで決まると、メニュー開発のラフ部分はほとんど完成する。

メニューは異なっても、共通して使える食材が多ければ多いほど食品ロス(食べられるのに捨ててしまう部分、あるいはその量)は減る。
魚介類は、その特徴から本来的に食品ロスが多く発生する。えらや骨など食べられない部分は食品ロスには加えない。魚を卸すときに可能な限り骨から身を切り取っても、どうしても肉は残る。提供した料理をお客さんが全部食べ切るとも限らない。
肉類は、最初から食べきりサイズに加工できるので食品ロスが少ない。骨のついた手羽先料理は、まだ食べられる部分を残して捨ててしまうもったいない料理だ。

2月25日に築地場外に行ってアジの相場を観察した。型の大きな真アジは1500円/1kgが相場だった。一尾が700g程度なので、一尾単位にすると700円ぐらいになる。これを包丁でさばく。ぜいごを削いで、頭を落とす。ぜいごも頭も700円に入っている。半身を骨から削いで三枚にする。中骨と尾も700円に入っている。頭と中骨で出汁をとって無駄にならないようにする。
それでもお客さんに出す半身二枚は重さ単位では650gぐらいになっているだろう。すると半身で325g。仕入れ値は325円。刺身で出せば原価は325円。揚げたり焼いたりすれば油や熱を使うので固定費がプラスされる。
魚介料理は、どうしても原価率が高くなってしまう宿命を負っている。

魚介類は生ものなので、寄生虫を含んでいる。
新鮮な魚介類は内臓や皮周辺に寄生虫がいるので包丁さばきができていれば食中毒は起こりにくい。しかし、いつ港に揚がったかわからず、冷凍期間がどれだけだったかも不明な小売り魚介をさばくと、寄生虫が肉に移っていて商品にならなくなるだろう。また、酢にも塩にも強い寄生虫もいるので〆てあっても安心はできない。

また栄螺の肝はとても美味で栄養も豊富なのだが、苦手なお客さんも少なくない。
そうなると提供はできない。そうすると原価率が上がるので、お客さんに出さない肝の再調理メニューを開発しておきたい。

このようにラフメニューから発展する実際のメニューへと発想を転換していく。
すると仕入れ食材の置き場や器の設定が決まってくる。
メニューそれぞれの商品名もつけていく。
原価と味付け、売価を確定してメニューブックデザインを決める。

メニューブックは専門で扱う業者がいるので、そこに頼もうと思っている。
版を作っていただけば、変更があった時にはその修正で済む。
手作りメニューのお店も少なくないが、メニューブックはお店の商品である料理をお客さんの視覚に訴える重要な役割りを担っているので、素人で補えるものではないだろう。
何よりも「どれがいいかな」「これはどうかな」「今回はこれだけど、次はこっち」など、お客さんの気持ちをメニューブック一つで豊かにする効果を期待するには専門家に頼むのがいい。

===2019年2月26日===



服部栄養専門学校の52番教室。私のホームルーム。ここで一年間、学科の講義を受けた。だいたい毎朝一番に入室していた。ホワイトボードを使う教員と、パソコンやタブレットを持参してプロジェクターからファイルを投影する教員に分かれた。1つの講義が100分なので、樹脂製のイスが腰に痛かった。 2019年1月15日。

7896.2/25/2019

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飲食店をオーナーとして開業するには4つの大きな柱があり、それぞれに3つのフェーズ(局面)がある。

4つの柱
1.プロモーション
2.企画・調査
3.デザイン・内容
4.建築

3つのフェーズ
1.構想計画フェーズ
2.基本計画フェーズ
3.実施計画・実施作業フェーズ

当然だが、4つの柱はそれぞれ同時に3つのフェーズとともに開店へ向かっていく。
とくに2つ目の柱の企画・調査はすべてのフェーズで段階的な作業があり、小さなことから組み立てて、少しずつ目標の姿を明らかにしていく。

私はこの発信を通じて、開業する店のイメージを徐々に形にしているのも、企画・調査の柱を明らかにする作業の一つだ。

プロモーションは主に3つ目のフェーズから具体的に取り組む。
ネーミング、プロモーション全体設計、開業販促計画、経常販促計画、プレ販促、開業販促へと続く。4月になったら青色申告会で開業届の書き方を教わる。その時に店の名前は決定する。鎌倉市内に「佐々木食堂」という名前の店がなければ、正式な店名となり、(仮名)ではなくなる。

デザイン・内容は、基本計画フェーズの後半から取り組む。
店のコンセプトができていなければ、具体的なデザインや内容は芯を持たない。
3月5日に大工さんと調理機器メーカーの方が来られて、設置ラフ図面を見せてくださる。
これでよしとなれば、3つ目のフェーズへ移行していく。

建築は、すべての条件がそろった時点から始める。
目標は5月の連休明けあたりからを考えている。

佐々木食堂(仮名)の進展状況は、企画・調整がそろそろ2つ目のフェーズから3つ目の実施フェーズへ移行してきた。
これにともなって、プロモーションを具体化していく。
デザイン・内容もイメージを具体的な図面へと落としていく実施フェーズへ移行する。
お店で使う野菜のうち、ジャガイモの畑は耕運が終わった。
すでにたい肥が混ざり、化成肥料と鶏糞と牛糞も入れた。
今はそれらが雨風と日光で土になじませている。
これから3ヶ月から4ヶ月かけて、「シンシア」と「インカのめざめ」という2つの品種を大事に大事に育てていくふかふかの土のベッドを作っている。

トマトやキュウリなどの果菜は、家から近いところで育てるため、知人の畑を借りる。その手はずをお願いしてある。

魚介類は地元の漁師さんが浜に漁を終えて上がってくるときに、直接仕入れる。そのための車も購入した。

肉と卵はまだめどをつけていない。
ドリンクの仕入れは問屋を通すか、安売り店に直買いをするか、まだ決めていない。生ビールを出したいので、問屋を決めた方が仕事はやりやすいだろう。

===2019年2月25日===



2月に入って実習はそれぞれ最後を迎えた。製菓製パン実習の最終回はチョコレートお菓子だった。まさか、自分がバレンタインの季節にチョコのお菓子を作るとは思ってもみなかった。ブラウニーと2種類のチョコ。どちらも自宅持ち帰りOKだったので家族とともに食べた。チョコを入れた箱も、展開図のような厚紙を折って箱にした。 2019年2月2日。

7895.2/23/2019

ここから…25

固定費のダウンへ向けて

売り上げに関係なくかかる費用が固定費だ。
一般的な固定費は3つに分かれる。

1人件費
2家賃
3一般管理費

1人件費

よく「家族といっしょにお店をやるんでしょ」と言われる。
そういうお店は実際あるし、人手は多い方がやりやすい。
しかし、私はあくまでも一人でやる。

理由はいくつかあるが、その一つが固定費の圧縮、つまり人件費の抑制だ。
たとえ家族であろうとも、お店で働けば従業員なので無給というわけにはいかない。
出納帳を書くときに従業員がいれば、当然給与項目に支払金額を書く。
どの業種もそうだが、固定費の多くを占めるのは人件費だ。
商品にお金がかかるのではなく、人にお金がかかる。

だから、あくまでも佐々木食堂(仮名)は人を雇わない。
将来、大繁盛店になった場合は、税金対策で人件費項目を設けることにするが、そんな日が来るかどうかはわからない。

2家賃

人件費に並んで固定費を占めるのが家賃だ。
大船のような商業地は、商店街のあるメイン通りは一カ月の家賃が100万円という店が少なくない。
人件費と家賃を払うために商売するようになってしまう。

自宅を改装するので、お客様にはアクセスに不便をかけてしまう。
そこは自宅周辺の地域の方々への食堂というコンセプトを前面に出して理解浸透をはかる。

3一般管理費

水道光熱費は無駄を抑制していく。
中華料理は火の調理と言われるほど、ガスを使う。光熱費は抑制しにくいが、不要な着火は避けるなど、小さな節約が大切だ。
シンクに洗い物を入れたまま水道を出しっぱなしにしないようにしたい。

販売促進費も効果を考えて投入する。
チラシや有料イベントなどはある程度の効果はあるかもしれないが、私が求めるお客様へ情報が正しく届くかどうかを考えて発信するようにしよう。

F/D比率を考慮する

フード(食べ物)とドリンク(飲み物)の比率を一カ月単位で検討していく。
F/D比は立地に関係なく一定しているという。

ホテルのバーは10:90(食べ物:飲み物)
焼き鳥は50:50
居酒屋は65:35
中華料理は85:15
レストランは90:10

この比率は仕入れに関係してくるので、たえず頭に入れておきたい。
佐々木食堂(仮名)は60:40ぐらいで推移すればいい。

===2019年2月23日===



専門学校を卒業して就職するなかに、集団調理の現場もある。病院や学校など、管理栄養士のもとで定められたポーションと決められた調理法の料理を作る。学校ではそういう場合に備えた集団調理実習もあった。食材のポーションがグラム単位で固定され、野菜の切り方も統一されていた。 2018年7月10日。

7894.2/22/2019

ここから…24

メニューマトリックス

実際にお店が動き出し、数カ月経過してABC分析などでお客様の傾向が分かるようになったとき、個々のメニューについて碁盤の上に情報を整理して分析する。
それがメニューマトリックス。

まだお店の工事も始まっていないのに、そんな推量は必要ないだろうと思う。
しかし、店が動き出すと実働が増え、今のように想像に費やす時間は減る。
とても分析などしている気持ちの余裕がなくなるかもしれない。
だから、時間的に余裕のある段階で、開店後に必要な検討内容を整理しておく。

田の字の碁盤を用意する。
縦軸はメニューの出数。横軸は粗利益額。
縦軸の中心線は出数平均の70%。横軸の中心線は平均粗利益額。

そうすると田の字の4つのエリアが意味をもつ。

右上ゾーンは「スター」。
出数も粗利益率も高いエリアになる。
ここのメニューはお客様の評価が高く、店への貢献利益も高いメニュー。
今後も確実に売れるような工夫を試みていいメニューになる。

右下ゾーンは「問題児」。
出数が少なく、粗利益率が高いエリアになる。
人気度はないが粗利益率が高いメニュー。
本当にお客様のニーズに合った商品かの見直しが必要なメニュー。なんだか評判の悪い公立学校のようだ。

左下ゾーンは「負け犬」。
出数も粗利益率も低いエリアになる。
人気度も貢献利益も低いメニュー。
メニューを改定するときに廃止すべき商品だ。
ただし、少しずつ育てていきたい場合や、他の商品を売るためのセットメニューの場合は別だ。

左上ゾーンは「農耕馬」。
人気は高いが粗利益率の低いメニュー。
こつこつと耕すべきメニューで、内容を研究し付加価値を高める努力が必要になる。
出数が多いからといって、このゾーンのメニューを放置すると、料理人の疲労が蓄積するタイプのメニューになる。

少し値段は張るが、そこそこ人気を集めるメニューをいかに産み出していけるかが料理人のセンスになるのだろう。

佐々木食堂(仮名)で想像する。

ある月のランチ販売実績予想(20日間営業日)
消費税10%として計算

定食は700円から900円の範囲で用意。主菜の原価によって料金設定がかわる。ご飯と汁物をセットにする。ご飯大盛りは100円増し。主食のチェンジ(ご飯をチャーハン、パスタへ)は200円増し。
サブメニューは300円から700円の範囲で用意。主菜の増量。玉子焼き。オムレツ。季節のサラダ。
ドリンクは300円から500円の範囲で用意。お茶、紅茶、コーヒーは300円。ジュースやスムージーは400円。生ビールは500円。

メニュー名(価格/税抜き/出数/原価率/税抜き原価/粗利益/月間粗利益合計)
鮮魚刺身定食(900/818/40/40%/327/491/19640)
鮮魚フライ定食(700/636/60/35%/222/414/24840)
鮮魚塩焼き定食(800/727/20/40%/290/437/8740)
鮮魚煮魚定食(700/636/40/30%/190/446/17840)
牛焼肉定食(900/818/40/45%/368/450/18000)
豚焼肉定食(800/727/60/20%/145/582/34920)
鶏唐揚げ定食(700/636/60/25%/159/477/28620)
炒飯(400/363/20/10%/36/327/6540)
五目チャーハン(600/545/20/15%/81/464/9280)
オムレツ(300/272/40/25%/68/204/8160)
玉子焼き(400/363/20/25%/90/273/5460)
季節のサラダ(500/454/60/10%/45/409/24540)
ポテトサラダ(300/272/40/20%/54/218/8720)
日本茶(400/363/80/5%/29/334/26720)
紅茶(500/454/50/10%/45/409/20450)
コーヒー(300/272/100/5%/13/259/25900)
果実ジュース(400/363/40/20%/72/291/11640)

ここから月間の出数合計を出すと690個。
これを営業日20日間で割ると34.5個が一日平均出数になる。
この70%がメニューの人気度分岐点になるので、34.5×0.7=24.15個。
一品あたりの平均粗利益は、300010円÷690個=434円。

24個が田の字の縦軸の中央になる。
434円が田の字の横軸の中央になる。

それらをもとにメニューマトリックスに配置していく。

スターメニュー(出数24個以上・粗利益434円以上)
・鮮魚刺身定食
・鮮魚煮魚定食
・牛焼肉定食
・豚焼肉定食
・鶏唐揚げ定食

問題児メニュー(出数24個未満・粗利益434円以上)
・鮮魚塩焼き定食
・五目チャーハン

負け犬メニュー(出数24個未満・粗利益434円未満)
・炒飯
・玉子焼き

農耕馬メニュー(出数24個以上・粗利益434円未満)
・鮮魚フライ定食
・オムレツ
・季節のサラダ
・ポテトサラダ
・日本茶
・紅茶
・コーヒー
・果実ジュース

定食はこの価格設定ならばスターを維持できる。
ドリンクは安定して出るので農耕馬だということがわかった。
どんなにチャーハンや玉子焼き作りに自信があっても、このまま出場を続けるとお店への利益面での貢献度は少ない。
同じチャーハンでも問題児の五目を充実させた方がいいことが見えてきた。

===2019年2月22日===



専門学校では前期末と後期末に実技と学科の試験があった。後期末西洋料理実習の実技試験課題はオムレツとジャガイモの面取り(シャトー)だった。何度やってもきれいな円錐形にならず、たくさんのジャガイモが自宅ではシャトーになった。調理もあれこれ工夫した。これはバターでソテーしてゆず釜を器にしたもの。 2019年1月19日。

7893.2/21/2019

ここから…23

佐々木食堂(仮名)のコンセプトシート

5サービス
6メニュー
7店内環境
8消費形態
9販促計画

サービス

店内も店外も完全禁煙。
住宅地という特性と、健康食堂をうたっているのに有害な喫煙を推奨するのはおかしい。
ランチのみご飯と汁物のおかわりは1杯無料。
汁物は中華スープをベースにして、オーダーによって味噌汁・中華スープを選べる。
ランチタイムは4時間。11時から15時。14時半ラストオーダー。
ディナータイムも4時間。17時から21時。20時半ラストオーダー。
電話での予約は受け入れる。ただし、予約の場合は一人2000円(3品)、3000円(5品)のコースメニューのみ。6席貸し切りの場合は、一人3000円のみでお客様の要望をうかがってメニューを組み立てる。それぞれ飲み物代は別途。飲み放題は健康面を考えて、実施しない。ランチタイムもディナータイムも予約の場合は営業時間内すべて利用可能。
ハレ用メニュー、季節メニューを用意する。
日本酒と焼酎の4合瓶のみキープあり。
糖尿病、高血圧、食物アレルギー対応メニューを用意して、家族単位での食事を可能にする。

可能な限り店内のバリアフリー化を目指すが、お店までのアクセスに坂道や小さな階段がある。
テーブルでのチェックサービス。クレジットカードは手数料の関係でオープン当初は導入しない。

メニュー

鮮魚
季節の魚介類を使った料理。主に鎌倉の坂の下漁港で仕入れる。貸し切り予約が入った時は小坪漁港で高級魚を選ぶ。
出汁浸し。ソテー。ムニエル。刺身。焼き物。フライ。たたき。なめろう。天ぷら。煮物。酢〆。

野菜
季節の野菜を使った料理。主に鎌倉と藤沢の契約農家から直接仕入れる。不足分は地域の八百屋を通じて購入する。
季節のサラダ。ラタトゥイユ。炒め物。温野菜。ポテトサラダ。コーススロー。漬物。
肉類
県内の地元肉を使った料理。仕入れ先はこれから検討する。ステーキ。生姜焼き。唐揚げ。蒸し焼き。肉じゃが。豚汁。青椒肉絲。雲平肉。

ご飯もの
炒飯。白米。お茶漬け。

その他
出汁巻き玉子。厚焼き玉子。アクアパッツァ。ピザ。

ドリンク
日本酒。生ビール。焼酎。ノンアルコール。紅茶。コーヒー。日本茶。

単価計算
ランチタイム
定食などのメイン 800円×1皿=800円
ドリンク 400円×0.5杯=200円
サブメニュー 500円×1皿=500円
平均客単価は1500円

ディナータイム
フード 550円×2皿=1100円
ドリンク 450円×2杯=900円
平均客単価は2000円

店内環境

昼間は自然彩光、夜は暖色系の電灯。
音楽はフォークソング、ニューミュージック、ジャズを中心に。
壁は白を基調にしてカウンターや棚は温度や湿度の影響を受けにくい木材を使う。
カウンター6席。
床は明るい色のコンクリート流し。
トイレは自動扉温水洗浄機つき。
手すりを配置して歩行を補助し、バリアフリーを実現する。

消費形態

ランチタイム
定食は700円から900円の範囲で用意。主菜の原価によって料金設定がかわる。ご飯と汁物をセットにする。ご飯大盛りは100円増し。主食のチェンジ(ご飯をチャーハン、パスタへ)は200円増し。
サブメニューは300円から700円の範囲で用意。主菜の増量。玉子焼き。オムレツ。季節のサラダ。
ドリンクは300円から500円の範囲で用意。お茶、紅茶、コーヒーは300円。ジュースやスムージーは400円。生ビールは500円。

ディナータイム
基本的にフードは450円から650円の範囲で用意。お酒のおつまみになるメニュー。
ドリンクはランチタイムに準じ、日本酒は一合550円から。焼酎は一杯450円から。

販促計画

地元の知人に開店を口コミ。
かつての仕事仲間(湘南エリアの教職員と保護者)に情報提供。
近隣の酒屋、銭湯、八百屋にポスター掲示。
SNSを通じて開店を告知。
開店の一ヶ月前(8月)に関係者を招待してプレオープン。
開店の1週間前に生産者と仕入れ業者を招いてグランドオープン。
近隣の住宅地と工場にポストイン。
開店後はラインとフェイスブックに特化して情報発信。

===2019年2月21日===



節季を講義では多く学んだ。それだけ日本国内の飲食店では季節に合った食事が用意されているのだろう。7月7日の七夕では日本料理の実習でそうめんを作った。 2018年7月5日。

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開発のポイント

最寄りの大船は人ともので賑わう商業地だが、バスで2駅離れた山崎地区には本格的な魚料理を出す店はない。

数年前に、自宅改装で本格フレンチのお店が開業した。
定期的に地元の人が家族単位で利用して繁盛している。

さらに今年に入って、食堂跡地に居抜きで惣菜店が開業した。
こちらは大船駅周辺で長年居酒屋をやっていた方が業態変更で起業した。
もともと惣菜を扱いたかったそうだ。
確かに皿やコップを洗ったりそろえたりする手間が省けるので、惣菜は商売として手ごろな食べ物扱いだ。

八百屋が閉店して開業する定食屋は、どのような業態になるのかはまだわからない。

佐々木食堂(仮名)は、鎌倉の海の幸と山の幸をバランス良く取り入れた隠れ家食堂として浸透することを狙って行く。

開発の方向性

当初は席数を10席以下に抑えて、リピーターとメニューの安定を図る。
実際には大工さんの見立てで、6席がいいところだろう。

軌道に乗ってきたら、自宅の食堂エリアを拡大してホールスタッフを雇って20席を確保したい。
地元の農家や漁師によるワークショップを開催して、お客様が日常生活でも、これらを手にして頂けることを目指す。

民間企業が都市部で飲食業を展開する時の手法を、講義で教わった。
地方の住宅街で開業する小さな個人事業に、これらの手法はなじまないかもしれない。
しかし、講義では店の規模に関係なく、開発の方向性や店のコンセプトがしっかりしているかどうかが、3年後、5年後も継続できているかどうかの分岐点になると感じた。

飲食店の開発でもっとも大切な骨格が「コンセプトシート」。
ここがあいまいだったり、ぶれていたりするとお客様にとって「ここはどんな店なのか」が伝わらないという。

昨年の8月に調査や検討、資料調べを通じて、私は佐々木食堂(仮名)のコンセプトシートを作成した。9月の講義でそれを提出、添削を受けて、ほぼ現在完成形となっている。
このコンセプトシート作成のプロセスを踏んだので、私は大工さんや調理機器メーカーの方との打ち合わせで、自分の考えを伝えられたと信じている。

何となくの思いを、具体的にしていく。
矛盾があれば修正した。
無理があれば、優先順位を考えた。

コンセプトシートは9個の視点から作成する。

1基本コンセプト
2立地
3ターゲット
4モチベーション
5サービス
6メニュー
7店内環境
8消費形態
9販促計画

1基本コンセプト

湘南の鮮魚と鎌倉の野菜で作るこころとからだの健康食堂

近隣に多い孤立しがちな高齢者がランチを通じて、コミュケーションを図り、コミュニティを再構築できるようにする。
仕事帰りの会社員が、自宅への気持ちの切り替えに立ち寄れる店。
地元の青魚と栄螺をメインにした認知症や骨粗鬆症予防に効果のあるメニューを中心に、農家から鎌倉野菜、湘南野菜を直に仕入れ、魚介類とのセット料理を提供して、食を通した心身の健康作りを推進する。

2立地

自宅改装で6坪、6席を想定

最寄りの大船は人ともので賑わう商業地だが、バスで2駅離れた山崎地区には本格的な魚料理を出す店はない。
歩いて行ける範囲には、蕎麦屋、寿司屋、ラーメン屋、カフェ、惣菜店、定食屋が昼からオープンしている。
夜間は沖縄料理屋、スナック、アジアンバル、焼鳥屋が午前0時頃までオープンしている。
高齢者が多く住む古い分譲地と鋳物と特殊ペイントの大きな工場がある。

3ターゲット

昼のメインターゲットは、近隣に住む高齢者の男女と子育て世代の男女。
夜のメインターゲットは、近隣就業者30歳から50歳の男女。

4モチベーション

子ども世代が独立して、高齢者ばかりの住宅地に住んでいる。
年金主体の生活で自宅にこもりがちな生活から、昼の時間帯に運動とコミュニケーションを兼ねたランチを食べたいという動機を引き出す。

大きな二つの工場には営業や生産を担当するサラリーマンが勤務する。この人たちが仕事帰りにホッとできる空間が地元には少ないので、夜のお客様として来店を図る。

鎌倉野菜は高級レストランが求める人気野菜だが、それらを知り合いの農家から直接仕入れ安価で提供したい。
鎌倉の魚介類、栄螺や伊勢海老、マダコも割烹店で扱われ、一般の食堂に出ることは少ない。これらも知り合いの漁師を通じて直接仕入れ安価で提供したい。
体にも心にも安全で安心な食材を、自信を持って提供する店として地元の人たちに愛されるようになりたい。

===2019年2月20日===



西洋料理実習で作った子羊のワインソースとラタトゥイユ。子羊はグリルを使った低温加熱調理だった。弱い火でじっくり焼いてあるので、肉食は赤いが決して生肉ではない。 2018年10月12日。

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開発の姿

ランチタイムには近隣の高齢者が夫婦、もしくは単独で訪れ、魚介類の定食を食べて行く。時には知人を誘って来店し、昼からお酒が出ることも期待する。
遠く離れた子どもたちが親の誕生日祝いに利用するかもしれない。

また子育て世代の親たちが保育園や幼稚園、小学校の子どもを通わせている時間帯に訪れ、会話と食事を楽しんでいく。食後にコーヒーや紅茶、お菓子を用意すればコミュニティの場としても活用できる。

地元にある工場や会社で働くひとが時々、定食を食べに来るかもしれない。

ディナータイムは、仕事仲間の紹介で来店する客がSNSで情報を拡散し、青魚健康法や地産地消に興味を抱く30代から40代の客が予約して来店するようになる。
テレビ神奈川やFM横浜などの地元メディアの取材には応じるが、大手メディアの取材は断り、地元の常連客を最優先にする。

場所的に、わざわざ遠方から来店する可能性は低いので、仕事帰りの地元の人も地域に住む常連客とつながりができればいい。

野菜は2つの専用畑と、近くに自分でも小さな畑を確保する。専用畑で耕作してくださる方も不定期に来られるだろう。
魚介類は鎌倉の漁師さんに直仕入れを頼んである。網の手入れを終えた頃、その漁師さんも足を向けてくれるだろう。

友人や知人、教員時代に関わりのあった方々も、オープン当初は来店してくださると信じている。
しかし、そういった方々は私個人との関りがあっての来店なので、リピートを期待してはいけない。
知人を通じて、私の知らない第三者が来られて初めて門戸の開かれた飲食店になる。

開発の方向性では3つの分析を行った。

マーケット分析
競合分析
内部分析

マーケット分析

商業的賑わいのある大船からは歩いて30分の住宅地。
湘南モノレールの富士見町駅、もしくは京浜急行バスの天神下バス停から、歩いて5分程度。
周辺は山崎というエリアで、商店会は「山崎商店会」という。

観光名所はないので、観光客が訪れることはない。

自動車のエンジン部品を作る工場と特殊塗料を生産する工場があり、多くの工員や営業マンが働く。
公団住宅が10棟並び、子どもを持つ若い世代が住む。
江ノ電不動産が50年前に開発した分譲地が現存し、当時移り住んだ入居者が定年を迎え年金暮らししている。子ども世代は進学や就職で分譲地を出て行き、戻っては来ない。

かつては谷戸と呼ばれる陰湿なエリアだったがマンション、戸建てが増えて、新しい転入者が増加しつつある。
小学校は児童数が増えて、学習教室が足りなくなっている。

2018年8月時点でマーケット分析をした。
ところがあれからの半年でやや状況は変化した。

モノレールの富士見町やバス停「天神下」近くに、惣菜店と定食屋がオープンした。
かつて総合病院があった場所に、看護学校ができることが発表された。それに伴い、周辺には学生寮が建設されるかもしれない。

競合分析

というわけで、半年前の競合分析では、競合店は歩いて行ける距離にはない。
としていたが、急速にライバルが登場した。

しかし、狭いエリアの同じ商店会仲間になるので、それぞれに特色をいかして支えあいたい。そうすれば、結果として地域の底上げにつながるだろう。

飲食店は、寿司屋、焼き鳥屋、中華食堂、蕎麦屋、ファミレス(華屋与兵衛)、沖縄料理屋、スナック、フランス料理店に、惣菜店と定食屋が加わった。
工場で働く人たちの昼食は、主に弁当店とコンビニが担っている。
地元の魚介類と野菜を専門に扱っている飲食店がなかったことは、ブルーオーシャン(マトリックス分析で他店が手を出していないエリア)として伸びて行く可能性を感じた。

内部分析

自宅を改装するので家賃が発生しない。
そのため、毎月の家賃支払いに追われることはない。
固定費を圧迫する人件費と家賃のうち、家賃の縛りがないのは価格を安く抑えることにつながる。

生まれた時からずっと暮らしている場所なので、古くからの知人が多く、住民のニーズや年中行事を周知している。
季節感のあるメニューや、ハレの日のコースメニューを考案していける。

33年間勤務した公立学校の教員職を辞して開業するので、新卒と違い、社会人としての最低限のイロハは身につけている。
調理師の養成学校で学んだ経験を実践のベースにしているので、どのような展開になろうと基礎ができていると感じる。

開発の方向性設定は、これらのことを受けて「開発のポイント」と「開発の方向性」でしめくくる。

===2019年2月19日===



12月に入って専門学校は冬休みになった。冬休み期間には「研修旅行」があった。長期間のヨーロッパ研修もあったし、北海道への宿泊研修もあった。各自が希望して参加する。私は浅草、スカイツリー、合羽橋、中華街、みなとみらい、屋形船という日帰りコースを選んだ。生まれて初めての舟遊びを体験した。 2018年12月19日。

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開発の方向性

昨年の今頃、私は教員生活最後の数カ月を送っていた。
退職後に自宅を改装してすぐに飲食店をオープンするつもりで家族や知人に相談すると、猛反対にあった。

「ど素人が飲食店をしても長続きするわけがない」
「せめて調理師専門学校で基本だけでも習得しなさい」

はいはい。
というわけで4月から通った専門学校で、多くのことを学んだ。
その中に卒業後にオーナーを目指す学生のためのオプション講座があった。
この講座は調理実習も栄養学の講義もない。
経営に特化した講座だった。

8月に宿題が出た。
「開発の方向性設定」と「コンセプトシート」の作成だ。

自分が実際にどんなお店を作りたいのかを具体的にイメージの世界で組み立てていく作業だった。
やはりその道には、それなりのルールとルートがあるもんだと痛感した。

開発の方向性には大きく「開発の目的」と「開発の姿」に焦点が置かれる。
中華がやりたいとか、寿司がいいという具体的な形ではなく、その店を通じてどんな社会貢献をしたいのかが開発の目的だ。

食品学の講義で日本が直面している超高齢者社会の現実を知った。
65歳以上の人口が1970年に7%に到達した。人口の7%を超えた社会を世界的に高齢化社会と定義している。14人に1人が65歳以上。

フランスでは高齢化社会から人口の14%が65歳以上になる高齢社会に到達するのに115年かかった。ゆっくりゆっくり高齢化が進行した。
日本は1994年に人口の14%が65歳以上に到達した。わずか24年で高齢化社会から高齢社会になった。当然、社会基盤が整備されないまま65歳以上があふれ出す社会に変容した。7人に1人が65歳以上。

そして、人口の21%が65歳以上という超高齢社会。
日本は2007年に到達してしまう。高齢社会からわずかに13年しか経っていない。
5人に1人が65歳以上。

総務省が公表している最新の人口統計(信じていいかどうかは不安だが)によると、2017年には人口の27.7%が65歳を超えている。
4人に1人が65歳以上。
超高齢化社会は世界のどの地域も経験しない勢いで進行し続けている。

経済の世界では15歳から65歳までを生産年齢と呼ぶ。
社会的な存在として仕事を通じて富を生産する年齢層という意味なのだろう。
ところが人口全体の25%以上が生産年齢を終えてしまっている現在、生産しない高齢者があふれ、医療費ばかりが高騰している。

高齢者が悪いのではなく、子どもを産まない女性が悪いと公言して撤回した財務大臣の知識の低さがよくわかる。

だれがいいとか悪いという問題ではなく、現在の日本社会は年齢別人口という切り口で見れば景気がよくなるわけがない状態なのだ。
にもかかわらず、平均寿命は伸び、総人口は減少に転じた。

現在の65歳以上の高齢者は60歳から年金が支給されている。
1963年生まれの人は完全に年金開始が65歳になったので、60歳で定年を迎えると5年間も無給生活を覚悟しなけれなならない。その間に病魔や事故に倒れたら、払い続けた年金を一円も取り返せないまま三途の川を渡る。もしや政府の狙いはそこか!と疑いたくなる。

さらに恐ろしいことに、年金支給開始年齢を70歳にしようと現政権は企んでいる。

私は年金は税金の二重搾取とずっと思ってきたのだが、ついにその本当の姿をさらけ出し始めたようだ。

1963年に老人福祉法ができて、年齢別人口の全国調査をした。
その時、100歳以上の方は153人だった。
2017年の100歳越えは、443倍の6万7824人になった。
日本型食生活や医療技術の発達など、理由は複数考えられる。
しかし、6万7824人の100歳以上の方々がみなさん元気はつらつとは考えにくい。

2017年の平均寿命。こちらは厚生労働省発表(もはや信じがたいのかもしれない)によると、男性が81.0歳、女性が87.1歳。
これに対して介護が不要で自立した生活ができる健康寿命は、男性が72.1歳で女性が74.8歳。
いくら平均寿命が伸びても、100歳以上の方が増えても、その社会が元気な長寿者ばかりの社会とは言えない現実が見えてくる。
男性はおよそ9年間、女性はおよそ13年間も、医療や福祉の助けを得ながら、人生の最後を送っているのだ。

これらを講義で教わりながら、私は佐々木食堂(仮名)の開発目的を考えた。
65歳を過ぎて、無職。夫婦か一人暮らし。大きな病気はないが慢性的な運動不足で関節や思考の老化が進む。友人たちとは少しずつ縁が遠くなっていく。子どもたちは都市部で生活し、たまにしか実家には来ない。退職金、預貯金、年金があり、経済的にはそこそこ恵まれている。

こういった高齢者が私の住む地域にはとても多い。
超高齢社会の典型的な方々だ。
この方々が、飲食を通して、認知症や骨粗しょう症予防を体験できれば健康寿命の更新に貢献できる。また定期的に自宅から店まで歩くことにより、適度な運動にもなる。さらに来店しているお客様どうしで会話が進めば、地域コミュニティの結束が強くなる。そこに地域で子育てをしている保護者が加われば異年齢空間を創出し、結(ゆい)空間が誕生する。

食を通じた心身の健康作りと、地域コミュニティの創造を開発の目的にした。

===2019年2月18日===



拙宅の庭端地にレモンの木がある。妹が現在の地に家を建てたときに記念樹としてプレゼントしてくれた。何年も花しか咲かなかったが、ある時から急に結実し、ここ数年、毎年多くの収穫を与えてくれる。無施肥、無農薬なのに、ちゃんとレモンの味がする。もちろん食堂でも活用する予定だ。写真ははちみつレモン浸漬中。 2018年1月7日。