7139.9/8/2014
トロムソー...7
大先生、久しぶり。
京都に行っていたよ。
宇治、平等院、あの辺、覚えたね。
あちこちのうどん屋に入って、どこでもカレーうどんを食べてきた。みんな味が違うんだねぇ。
わたし、この格好でお店に入るでしょ。そして、カレーうどんを頼む。店員さん、だいたい笑ってた。何もここまで来て、ふるさとの料理を食べなくてもって。
だから、いや違うんだって、日本語で言ってやるの。
わたし、鎌倉に住んでいるよ。ここみたいにお寺や神社がいっぱいあるよ。そこでカレーを売っているんだって。
そうそう、さすが大先生、よくわかる。
リサーチに行ったわけ。
そうしたら、いろんなお店のカレーうどん、どれもおいしかったね。カレーそばっていうのもあったけど、それもおいしかったよ。
あんまりうまいうまいってほめてると、店長が出てくるでしょ。
こんなおいしいカレーは本場でも食べたことがないって言うと、喜ぶね。
そこですかさず、はいってこれを出す。
そう、「シンのカレーがおいしくなるスパイス」。
反応がいいときは、さらに「カレーフレーク」も出す。
2つのお店で使ってみるっていうから、置いてきたよ。
うまくいけば、注文が入るね。
そうしたら、また京都に行ってくる。宅急便は使わない。そんなにたくさんじゃないから。お店のひとの顔を見て、はいどうぞって渡す。
これが大事。
そして、お客さんのなかでカレーうどんを食べているひとに感想を聞く。
ほら、こんなことを言っていたら、うどん屋さんからメールが届いたよ。
7138.9/7/2014
トロムソー...6
大先生、これはどう?
また、そういう顔をする。
いつも同じ味がするっていうんでしょ。これはちょっと工夫をしたよ。
シンじゃないよ、うちのかみさんがね。
かみさんでいいんでしょ。
コロンボが言っていたよ。奥さんのことを、うちのかみさんがねって。
平日にBSで、コロンボを見るのが楽しみ。あれはおもしろいねぇ。いまもやっているよ。最初に犯人がわかってしまうのに、最後まで見てしまう。どうして、途中で犯人は遠くに逃げないのかねぇ。
そんな話はいいんだ。
レンズ豆を水に浸して、よく煮込んで、水気をとって味付けをした。それをオリーブオイルで焼いただけ。どう、食べてみてよ。
いや、商品ではない。
シンの店が売っている豆をこういう食べ方ができますよって、レシピにして、豆といっしょに売りたいわけ。
じゃぁ、こっちはどう?
これ、全粒粉に水を入れてぐちゃぐちゃこねて焼いただけ。
イーストも塩もないから、固いよ。
そうわんちゃんのあれみたいだね。
あ、これはいけるかぁ。
何にもスパイスを入れてないのが、ちょっと悔しい。
おぅ、忘れていたって。
何を?
いつものオリーブオイル、はいはいありますよ。
次回会ったときに渡すね。それ大事な話、忘れちゃいけない。
お金はそのときでいいよ。
毎度ありがとうございます。
7137.9/6/2014
トロムソー...5
おっと、大先生。
いたの?
気づかなかったよ。シンに見つからないように隠れていたでしょ。
大丈夫、たましい抜かないよ。
そうそう、よく知っているね。
さっき、オオフネ駅の。え、違うの。オオフナっていうの。だって大きいっていう漢字に船っていう漢字でしょ。オオフネって読まないのは、不思議だねぇ。
漢字は難しいよ。
ニッポンのこどもたち、かわいそう。こんな難しい言葉を覚えなきゃいけないんんて。
で、そうそう、大船駅のルミネが改札口の前でショップを出していたの。
もともとはデパートに入っている店が、宣伝で売ったいたんだね。
おもしろいねぇ。
なんでわざわざお店がデパートにあるのに、出店みたいなことをするの。
だから、そこの隅っこに、シンの香辛料を置いたのよ。
大丈夫、シンはルミネの店長と知り合いなんだから。
後から店長が来たけど、値札の紙までくれて大丈夫だった。
もちろん、シンもそこにいて売ったよ。
そうしたら、あのお嬢さんに会ってしまったの。
何してるの?っていうから、
行商ですって答えたんだね。
なんか、日本語、間違っているかな?
売れたかって?
そういうことは聞いてはいけない。
7136.8/31/2014
トロムソー...4
や、大先生。
どうよ、きょうも、何かいいことあった?
こどもたち、また、うちに連れておいでよ。
え、あの子たちはもう卒業してしまったの。早いねぇ。
これ、どう、そうラスク。
またぁ、安心してよ。いつものスパイスは使ってないって。みんなシンの顔を見ると、あーまた、あのスパイスだぁって顔するんだから。
西の鎌倉で買ってきたよ。ん、違うの。
あー、西鎌倉ね。そうそうそこのスズキヤで買ってきた。
ガーリックラスク。
いつものはまなみのラスクは、パンが売れ残ったときしか作らないから、いつもあるわけじゃない。
けど、これはいつもある。
おかしいねぇ。
だから店長呼んで聞いたよ。
え、またやっちゃったって。いいのいいの、困ったときは店長に聞くのが一番いい。
教えてくれたよ。
これ、もともと細長いフランスパン。お客さんの数よりもたくさん作るから、必ずあまるね。そのうちに賞味期限が近づく。
そういうのをスライスしてどんどんラスクにする。
だから、いつもある。
なんで、お客さんの数よりもたくさん作るんだろうね。
ニッポンは、もったいないの国じゃないの?
じゃぁプール行ってきます。
行かないと、あそこのカウンターのひとが寂しがるんだよ。
プールのなかをちょっと歩いて、あとはジャグジーで横になる。
気持ちいいよ、いっしょに行く?
7135.8/30/2014
トロムソー...3
たしか最初にシンさんに気づいたのは、若女将だったと思う。
「あ、きょうも通り過ぎた」
関所の前を通りすぎるとき、シンさんは店内の若女将に会釈でもしたのだろうか。
この辺に住んでいるのだろうか。仕事をしているのかもしれない。国際的な徘徊者かも。
みんなで勝手な想像をめぐらせていた。
そんなある日、ひょっこりシンさんが関所を訪ねた。
プールの帰りだったか。
そのときから、こんにちまでずっとシンさんは、プールの行き帰りに二度も関所に寄っていく。
わたしがシンさんと会うのは、これからプールに行く前の段階だ。
最初に会ったときは、いっさいアルコールを飲まなかった。宗教上の理由か、民族的な理由か、健康上の問題かはわからなかった。肉も鶏肉以外は食べなかった。
それがいまでは、ワイルドターキー(とうもろこしのウイスキー)を炭酸で割って飲んでからプールへ行く不良になってしまった。肉はいまも鶏肉以外は食べたところを見たことがない。
先日、テレビ東京のアドマチック天国という番組に出演した。
鎌倉の極楽寺周辺を特集した番組だったのかもしれない。
わたしはテレビをあまり見ないので、出演することがどういうことなのかはわからなかったが、関所の立ち飲み仲間によると、番組のなかでランキングされて、シンさんの店は上位の方だったそうだ。
まぁ、本人はテレビに出演する前もした後も大した違いはない。
きょうもそろそろインドの民族衣装を着て、シンさんが関所に来る頃だ。
7134.8/27/2014
トロムソー...2
関所に立ち寄るひとたちがずいぶん変わったと同時に、同じひとでも、最初の頃と今とでは大きく態度に変化があったひともいる。
シンさん(仮名)はその一人だ。
インドの方だが、日本に長く住み、とても流ちょうな日本語を話す。息子のことを「せがれ」と呼び、妻のことを「家内」と呼ぶ。
おもにインドの香辛料や豆を輸入して、国内で販売している。香辛料の中心はカレーだが、チャイやオリーブオイルも扱っている。わたしはシンさんからいつもオリーブオイルを買っている。800円と高価だが、イタリア産のとてもフルーティなオイルで、ドレッシングに使いやすいのだ。
おそらくシンさんは60歳を超えている。
もしかしたら70歳に近いかもしれない。
しかし、いつも意欲的で、しょっちゅう全国各地を旅している。
各地のデパートやスーパーに行って、自分の扱う商品を店頭に並べてもらえるように交渉しているのだ。
シンさんはわたしが出会った頃と、いまとでは大きく態度が変わった一人だ。
出会った頃の控え目な様子からは想像もできないほど、いまは関所のメンバーとして同化している。
わたしの自宅近くに鎌倉市が作った「こもれび」という体育施設がある。温水プールとスポーツジムが併設されている。市民でも有料だが、民間のジムに通うよりもずっと値段は安い。
シンさんは、極楽寺に住んでいる。そこからわざわざ「こもれび」まで通ってプールで運動をしているのだ。泳ぐのではなく歩いて、膝の負担を軽くするそうだ。
7133.8/26/2014
トロムソー...1
ここに来る顔ぶれもすっかり変わったわねぇ
若女将がつぶやく。
休日の夕刻。
近所の銭湯で汗を流した後で、わたしは酒屋に立ち寄る。
自宅が酒屋の近くなので、仕事帰りや買い物帰りに立ち寄って、ビールや日本酒、焼酎を飲んで帰る。椅子はないので、立ち飲みだ。
坂の下の関所。
わたしは酒屋のことを、そう呼んでいる。
緩やかな坂が酒屋の前から伸びている。わたしの家は、そこを登りきる途中にある。
立ち飲みの後は、その坂をふらふらになりながら登ることは珍しくない。
わたしが関所で立ち飲みを始めてからどれぐらいになるだろうか。
藤沢の西の外れまで仕事に行っていた頃は、自転車通勤をしていて、関所には寄らなかった。その次の職場に異動してから、自宅との往復を歩くようにした。その頃から立ち寄っているので、かれこれ10年近くなるだろうか。
確かに、その10年間を思い出してみても、常連だった多くのひとたちの顔がいまはない。
残念ながら亡くなってしまったひと。病気になって遠くに転居したひと。
アルコールが原因になっているひとが多いので、他人事ではない。
ここで長く楽しい立ち飲みライフを堪能するには、健康的にアルコールと付き合わなければいけない。
その最善の方法が、食べながら飲むことだ。
それも油を使った菓子ではなくて、できれば野菜を食べたい。漬け物でもサラダでも、野菜を食べながら飲む。
そんなに健康に留意するなら、飲まなければいいと言われる。その通りだが、やめられないのだから仕方がない。
7132.8/25/2014
大菩薩リベンジ...8
毎回、ランチを楽しみにしている。
山行の準備段階、お店で品物を選ぶとき、山頂で食べるイメージをもつ。
茅の舎の「温素麺」。
生卵を持ち歩けるグッズをゲット。
まずは油揚げとねぎのシンプルな麺。
アツアツです。
2回目は生卵を浮かべた。
山歩きで卵を割らずに運べる時代が来るなんて、驚き。
猫舌のわたしは汁が麺にしみこむぐらいにならないと食べきれない。
下山後のお風呂は「天目山温泉」。
青空を見ながらの露天風呂でした。
(大菩薩リベンジ・おわり)
7131.8/24/2014
大菩薩リベンジ...7
大菩薩峠。
8:55到着。
奥多摩からも多くの登山者が訪れていた。
やっぱりこういう空をバックに写真を撮りたいよ。
1897m。
汗がどんどん乾いていく。
7130.8/23/2014
大菩薩リベンジ...6
賽の河原は風が強く吹き抜けるので、天候によってはとても危険な場所だった。
そこで風を防げる現在の場所に峠を移したと言われている。
賽の河原。
8:42。
風が強すぎて植物が育たない。
現在の大菩薩峠と介山荘。
左が奥多摩、右が上日川。
奥多摩山塊。
どこかに雲取山があるはずだ。
奥多摩山塊の向こうには埼玉県の飯能の町が広がっているらしい。