top .. today .. index
過去のウエイ

6869.12/22/2012
民主党の敗北

 もともとアンチ自民で終結していた民主党。
 思想信条でつながっていたわけではない。
 だからこそ、選挙前のマニュフェストという有権者との約束を確実に実行することが生き延びる唯一の道だった。
 それなのに、当選したら、有権者との約束を忘れ、現実対応に追われ、挙句の果てに、マニュフェストに書いていなかった愚行を実現し始めた。
 これでは、有権者は黙っていない。
 選挙を実施する前から、民主党の大敗北は多くの有権者が感じていた。国会議員にその危機感がなかったとしたら、まさに裸の王様だった。
 おまけに自民党が繰り返した代表のたらいまわしを同じように繰り返した。
 権力を握ると、ひとは感覚が麻痺して、周囲の目や声を意識しなくなるのかもしれない。

 選挙の敗因を聞かれて民主党の大物議員は、小選挙区制の怖さと述べた。まるで選挙制度に敗因があったかのような物言いだ。
 またほかの議員は、成果のあった項目もあったが、そうではないことばかりが目立ってしまったとも述べた。こどもの言い訳みたいだ。

 ここまで民主党が小勢力になると、今後の政権運営で民主党の役割はなくなるだろう。野党を束ねる力が期待できるとは思えない。しかし、ほかの野党があまりにも小規模すぎるので、勢力になりえない。その結果、一定の議席を確保した日本維新の会の発言力は、野党のなかでおおきなものになるだろう。与党と是々非々で連携するかもしれない。だとしたら、日本維新の会は、将来的に内部分裂の火種を解決しなければならない。もともと代表だったひとが選挙前に突然に副代表に降りてしまった。他党から合流したひとが党首になった。もともと日本維新の会にいたひとたちは、こころの底ではどう思っているのだろうか。

 民主党の敗北により、日本の政治には二大政党制はなじまないとう空気が漂っていくだろう。しかし、自民党は圧倒的な支持を得て多くの議席を確保したというよりも、勝手に民主党が沈没していったと分析した方が賢明だ。
 だから、これから3年なり4年なりの政権運営で、かつての派閥政治に色濃く染まった時代に戻ってしまったら、次の選挙ではまた下野するかもしれない。

6868.12/18/2012
衆議院議員選挙

 第46回衆議院議員選挙が終わった。
 3年半前の夏に劇的な政権交代を実行した民主党は惨敗した。
 反対にそのときに下野した自民党と公明党は大勝利だった。
 衆議院で自民党と公明党あわせて3分の2以上の議席を確保した。まだ参議院では3分の2の議席は確保していない。来夏の参議院選挙へ向けて、もう自民党と公明党は大量議席確保のための作戦を開始しているだろう。
 両方の議員で与党が3分の2以上の議席を確保すると、憲法を改正する発議を可決することができる。
 現在の憲法で禁止している「武力による国際問題の解決」を容認したい自民党や日本維新の会のひとたちは、何としても憲法を変えたいのだ。憲法第9条が書き換えられれば、自衛隊を国防軍に格上げする根拠ができる。国防軍が創設されれば、常備兵員として、徴兵制を復活させることが可能になる。
 尖閣諸島や竹島で韓国軍や中国軍と戦争をすることが可能になるのだ。
 日本はふたたびアジアのなかで覇権を争う軍事大国へと突き進むことが可能になる。それをアメリカが許すかどうかはわからない。しかし、軍隊が強くなれば、将校たちの中には、在日アメリカ軍を追放しようとする動きが出てくるだろう。それを政府が阻止すれば、軍事クーデターで実力行使すればいい。
 そんなに古くない過去に、日本では軍隊がクーデターを起こし、政府関係者を暗殺している。
 普通選挙は有権者に等しく与えられた権利の行使なので、その結果を批判すると、これにかわる民主的な方法を探さなければいけなくなる。残念ながら、まだ人類はこれ以上の民主的な方法を獲得していない。
 しかし、今回のように、風が大きく変わる可能性を普通選挙は有しているから、怖い。

 これで原子力発電所はどんどん再稼動するだろう。
 高校生までの授業料無料化は消えてなくなるだろう。
 市場にお金が出回り、大企業や大金持ちばかりが優遇される社会が復活するだろう。
 自衛隊は国防軍になり、若者が徴兵制により、数年間は軍隊生活を送ることになるだろう。

 有権者の一票が決めたことだ。
 まして、投票しなかったひとは、権利を放棄したので、何も文句は言えない。

6867.12/16/2012
衆議院議員選挙

 2012年12月16日、日曜日。
 第46回衆議院議員選挙の投票日だ。
 戦前に23回実施されているので、戦後になってからちょうど同数の23回目になった。それまでの高額納税者による選挙と違って、戦後は20才以上の男女に選挙権が与えられた。自民党や右派勢力が嫌悪する現在の日本国憲法が、普通選挙の実施を保障している。
 
 これまでのメディアによる調査では、3年前に下野した自民党と公明党が単独過半数を獲得する勢いだ。実際の結果も、きっとそれとは大きく変わらないのだろう。政権交代は、国民の選択によって行われる限り、健全だ。
 それだけ、3年間の民主党政権は有権者を失望させてしまった。成果を主張するひともいるが、期待を裏切られた気持ちは、信用という光をも消失させた。

 それでは、以前の保守政権の復活でいいのかという疑問がわく。
 今回は、多くの政党が名乗りを上げた。そのなかでも日本維新の会、日本未来の党の2つは突出してひとびとの関心を集めている。まだ国政でじゅうぶんな活動をしていないのに、あたかも既成政党のようなメディアの取り上げぶりだ。

 わたしはすでに先週期日前投票を済ませた。
 だから、これからの政治に自らの意思を表明した。
 残念だったのは、完全にわたしの考えと一致する立候補者や政党がなかったことだ。だから、最大公約数で投票した。

 原発。どんどん廃炉にして、危険な放射性物質の化学的処理のための研究をただちに始めるべきだ。処分場建設に苦心するのではなく、どうすれば安全で無毒の化学処理ができるかの研究をしなければ、永遠に処分場建設は住民の反対運動で実現しない。一時的に電気料金が値上がりするかもしれないが、ふたたびコストのかからない安全な発電システムを構築すればいい。

 領土問題。時間がかかることを苦にしてはならない。中国も韓国も外交問題として話し合いのテーブルに乗るように、互いに協力し合う必要がある。軍艦や戦闘機などの示威行動によって挑発を受け、引き金を引くようなことが起こらないように、冷静な対応だ必要だ。

 憲法の改悪。まったく必要性がない。自衛隊と軍隊にしたい右派勢力が衆議院の多数を占めることは危険なことだ。どこの国にも軍国主義的思想のひとはいるが、戦争は物事の解決にはつながらない。

 地位協定。ただちに廃止して、日本中のアメリカ軍基地や施設を撤収し、他国の軍隊が常駐しない独立体制を創設する必要がある。国防は自衛隊が担う。現在の自衛隊は装備的には世界のトップレベルなのだ。

 経済格差。貧富の拡大を防ぐために、教育と福祉、就労の分野で若者の成長を保障する制度を創設すべきだ。せめて大学まではあまり家庭の経済的負担がなくても進学できる支援体制を国が率先して行う。原資は何らかの税金があてられると思うが、自動車を買っただけでかかる重量税なんて税金よりも説得力があるはずだ。

 諸分野について自分の考えを整理した。そして、わたしと同じ主張をしている立候補者に投票したかったが、そういうひとはいなかった。

6866.12/15/2012
神奈川県教育委員会処分者

 2012年12月14日の毎日新聞朝刊湘南版に神奈川県教育委員会発表の教員処分記事が掲載された。
 3件掲載されていた。どれも個人名は隠されていたが、懲戒処分という重いものだった。

 県立高校の男性教諭は生徒と性的な関係を作って懲戒免職になった。
 恋愛感情があったのなら、どうして生徒の卒業まで待てなかったのか。教員としてというよりも、人間としての未熟さを感じる。

 鎌倉市立中学校の男性教諭は生徒に性的な関係を迫るメールを送り続け、自宅で性的な関係を作った。強姦とも受け取れる内容だが実際はどうだったのだろうか。この男性も懲戒免職。

 懲戒免職とは退職金のでない退職だ。解雇と同じ扱いになる。
 ただし退職した自治体以外の場所では、処分を隠せば非常勤採用になることは可能だ。いま学校現場は、正規教員がどんどん病気療養に入っている。だから臨時教員が喉から手が出るほどほしい。懲戒免職になっても別の町で教壇に立つ可能性がないとは言えない。
 教員免許状の失効ではない。

 藤沢市立第一中学校の男性総括教諭は、顧問をしていたバレー部の女子生徒を判明しただけで2010年から繰り返し殴ったり蹴ったりしていた。この教諭は3ヶ月の停職処分。おそらく今年度末に書類上は異動になって、別の中学校でふだん通りの仕事に戻るのだろう。
 総括教諭とは一般職(わたしのようなヒラ)と教頭との中間に位置づけられる職階だ。給料は一般職よりも高い。管理職を目指すひとたちがまずは目指す職階だが、校長の推薦によってなることができるので、能力の有無というよりも、校長の受けが良いか悪いかが登用に際して影響している。
 だから、この男性教諭を総括に推薦した当時の校長は、体罰教諭の裏の姿を見抜けていなかったことになる。あるいは知ってはいたけど、許容していたのかもしれない。推薦した校長には、処分は下らない。

 どれも呆れるものばかりだ。
 こういう情報を受け取った一般のひとたちは「教員のモラルが低下している」「学校は信じられない」と憤るのだろう。しかし、こういう非常識な教員はとっても少数だ。多くの教員は、まじめを絵に描いたような、それはそれであまりおもしろくないタイプのひとたちなのだ。とても、こういう性犯罪者や暴力的なタイプのひとたちではない。

 ただし、これらの教員のような非常識な行為を、同じ学校に勤務するひとたちがまったく知らなかったのかという疑問がわく。何となく噂があったり、陰でこそこそ話されていたり、保護者からの訴えがあったりしていてもおかしくない。それに気づいていて、知らないふりを教職員が一丸となってしていたとしたら、事件の温床が「学校」という職場環境にあったと指摘されても反論できないだろう。

6865.12/11/2012
衆議院選挙

 衆議院選挙まで残り一週間になった。
 新聞社や通信社が独自に有権者の支持政党を調査した結果を報道している。それによると、圧倒的に自民党と公明党が有利だ。二つの政党で単独過半数はおろか、衆議院の3分の2を確保する勢いである。
 憲法の規定で衆議院で3分の2以上の賛成があった法律案は、たとえ参議院で否決されても衆議院の決定に従うと決められている。いわゆる衆議院優位の法則だ。
 つまり、与党が衆議院で3分の2以上の議席を確保すれば、参議院をまったく無視した法律の作成が可能になるのだ。
 3年以上前の自民党と公明党は、このやり方を何度も実践した。
 民主党は衆議院で単独過半数は確保したが、3分の2の確保は無理だった。だから、参議院で自民党と公明党が多数を占めると、法律案が衆議院から参議院へ送られても否決されてしまう結果を招いた。
 かつて参議院は「良識の府」と呼ばれた。しかし、いまや完全に衆議院の下請け機関になっている。圧倒的な与党を前にしたら、参議院の存在は無に等しいのだ。
 それにしても、世論調査の結果は驚いた。
 なぜ、多くのひとたちはふたたび自民党と公明党の政権時代復活を願うのだろう。
 そんなにあの頃が恵まれていて、幸せだったのだろうか。
 わたしは、長く続いた保守勢力による権力維持が、バブル経済を招き、やがて深刻な崩壊現象へと導いたと確信している。その結果、失業者があふれ、外資系の企業が進出し、まちのお店がどんどん消えた。
 そういう因果関係に、多くのひとは気付いていないのだろう。
 第三極のうち、国防軍の創設や原発維持を掲げる超保守勢力は人気を集めている。
 第一次世界大戦で破れ、多額の補償金を担ったドイツが、どんどん右傾化し、やがて国粋主義者による完全独裁体制へと移行していった歴史と同じ道をたどろうとしている。
 怖いことだ。
 北朝鮮、中国、韓国の挑発に乗って、軍事力を使って、各国との国境問題を一気に解決できると勘違いしてはいけない。殺し合いは、必ず負の連鎖を発生させる。
 戦争になったら、多くの兵隊が徴兵される。軍人だけでは絶対数が不足しているので、必ず徴兵制が復活する。
 しかし、日本の化石エネルギーは輸入に頼らざるを得ない。軍艦や戦闘機を動かすのに、もしも日本が輸入している各国が「禁輸措置」を発令したら、たちまち敗戦へと道は傾く。
 兵士も石油も不足した状態で戦争などできるものではない。
 平和ボケを嘆く政治家は多いが、平和ボケを是正する具体策を示す政治家はいない。

6864.12/9/2012
電力会社

 東京電力は2011年3月11日以降、福島第一原子力発電所で作業したひとたちの被曝線量を発表した。年代別に公表された数字は悲惨なものだった。

 各年代で平均的な被曝線量は15oシーベルト。これは、健康被害の目安となる年間1oシーベルトの15倍だ。さらにもっとも被曝線量の多かった10代の作業員の場合は、65oシーベルトに達していた。
 原子力機関で働くひとたちは、年間の限度被爆をこえるとそれ以上は勤務してはいけなくなる。東京電力としては、現場に派遣する作業員がどんどん安全基準をこえていくので、次から次へと新しい作業員を確保しなければならない。

 しかし、将来的に発がんの可能性のある危険な作業を、積極的に担当する作業員の確保は期待できない。人体への安全確保を最優先にした技術開発や研究が急務だろう。
 
 それなのに2012年末の総選挙では、原子力発電の必要性を公約に掲げる立候補者や政党が保守勢力に多い。明らかなに原子力関連企業の献金によって、政治活動を支援してもらっているサイドだ。利益誘導によって、政治家が権力を手中にし、原子力企業やその経営者が利潤を得る構図は、いまに始まったことではない。
 それを根底から揺るがすほどの、福島第一原子力発電所の核燃料漏出、放射能拡散事故だったはずだ。事故からもうすぐ2年になるのに、いまも原子炉を包んでいた建物の解体作業すら終了していない。漏出した核燃料の状態をモニターできないので、あまりにも高い放射線が大気中に放出され続けているため、作業員が近づけないのだ。

 原子力発電は、事故がなく、安全に運転されていれば、コストが低く、効率のよい発電方法だと説明されていた。
 今回はその前提が崩れたのだ。事故が発生し、二度と使い物にならないくらい破壊された原子炉は、無用の長物以上に、害悪の権化になってしまった。
 世界中の原子炉をもつ国家がだれも経験したことのない悲惨な原子炉解体と撤去と土壌浄化作業が、これから数百年の単位で始まるのだ。完全に海岸線から原子炉が消え、砂浜や岩礁から放射線の放出が消えるまでかかる費用は莫大な金額だ。それはすべて使用者の電気料金に上乗せされるか、税金が投入されるのだろう。

 原子力に頼った電力の供給システムを社会に構築したのはだれか。
 電気会社の単独意思によってのみ、そういう大構想は完結しないだろう。
 国会議員や国家公務員が関与しない限り、国の大きな原子力政策は方向付けられるとは思えない。
 再生可能エネルギーやこれまでエネルギーと無関係と思われていた新しいエネルギーなど、将来にわたって多くのひとが安全で安心な生活を営めるようなエネルギーの創出へと、社会システムが向かっていけるように願っている。

6863.12/8/2012
電力会社

 東日本大震災による津波被害で東京電力福島第一原子力発電所が被害を受けた。
 原子炉の中の核燃料を冷却できなくなり、各連鎖反応が起こる臨界へと向かい、核爆発の危険性があった。しかし、現場にいた多くの作業員の死を覚悟した冷却作業により、最悪の事態は免れた。
 それでも原子炉から核燃料が溶け出した。メルトダウンだ。
 原子炉の下部から溶け出した核燃料が、建物の中でどんな状態になっているのかは、まだ放射線量が高すぎて確認できないという。つまり、高濃度の放射線が周辺環境に拡散し続けているのだ。

 二酸化炭素を減らすことによって、地球に優しい発電システムとして原発がもてはやされそうになっていた。

 しかし、大震災以降は、むしろ原発の稼動を止めて、ほかの発電方法へと移行しようという動きが加速した。
 その過程で2012年の秋に、東京電力や関西電力がこぞって家庭向け電力料金の値上げを申請したり、実施したりした。
 火力発電や水力発電は、原発よりもコストがかかるので、電気料金を値上げしないと利益が得られないそうだ。
 競合する他社がいない状態で、コストがかかると言われても、本気でコスト削減に努力しているのか疑問に思う。

 2012年11月下旬。電気を送る送電線や電柱などを全国に設置している専門業者が入札前に料金の確定を決めていたことが判明した。これらの業者はほぼすべて電力会社の下請けだ。
 各地の入札でもっとも安い料金を示すために、わざと地域ごとの区分けを行っていたというのだ。
 これをやられてしまうと、各業者は平等に仕事が得られるという特典にあずかることができ、実際にはもっと安くできるはずなのに、不当に高い料金でも落札が可能になる。
 電力会社が不当に高い料金で落札業者を選べば、割高な料金はすべて電気料金からの負担になる。
 こういう実態が隠されているなかで、電気料金の値上げを申請する電力会社幹部の経営センスが情けない。
 そんなことは下請けが勝手にやったことと、きっと知らぬ存ぜぬを決め込むのだろう。

6862.12/4/2012
衆議院議員選挙

 もしも国防軍もしくは国軍が創設されたら、徴兵制が復活する。
 これは法律が整備されれば当然条項に組み込まれる。
 軍隊を保有している国は、人口に対する軍事力の割合を規定している。それが兵員定数だ。一定の兵員を確保しなければ軍事力は確保できない。
 ほぼすべての兵員を志願兵で補っているアメリカのような国は少ない。多くの国は徴兵制を採用して、一定の兵員を確保している。
 徴兵制によって確保された兵員は時期が来れば兵役が終了するので、幹部にはならない。だから、戦争や紛争の最前線に送られ、もっとも危険な任務を担当する。もちろん殉職は避けられない。

 軍人を専門に養成する学校を卒業し、国防軍に入るひとたちは職業軍人と呼ばれ、作戦を立案したり、戦場でも最後方で指揮を出したりして、かんたんには死なない。

 国防軍の創設には、こういう将来が待っていることを石原氏や安部氏は言わない。
 言ったら反発が多く、当選しないだろうと考えているのだろう。
 しかし、軍隊の保有を掲げる気持ちがあるならば、選挙活動のなかで堂々と徴兵制や殉職についても語るべきだ。それを受けて多くの有権者が判断すればいい。

 戦前の大日本帝国憲法では普通選挙が認められていなかった。
 投票権はある一定の税金を納入しているひとにのみ認められていた。だから、貧しいひとは政治に参加することすらできなかったのだ。
 こういう社会は珍しくはない。いまも世界中のどこかには似たような不平等選挙がまかり通っているクニやムラがあるはずだ。アラブの春で崩壊したリビアにはそもそも憲法すらなかった。
 権力を握る一部のひとたちが、労働力のみを提供する多くの国民を支配し、そこから労働力と生産物と税金を搾取する。この構造を変えたのが普通選挙の実施だった。納税の金額に関係なくある年齢を迎えたすべての国民に投票権を授与する。
 石原氏が「アメリカの押しつけだ」と批判する現在の日本国憲法が保障している。
 すべての国民に投票権があるのに、実際の選挙では投票権を行使しないひとがとても多い。これは政治への無関心と「どうせどこもだめだろう」という諦めが背景にある。しかし、その無関心さと諦めムードを演出したのが、自民党と公明党政権だったことはあまり知られていない。自民党支持者と創価学会員は選挙ではほぼ間違いなく投票する。このひとたちが考えた生き残り策は、ほかの政党を支持するひとを少なくするのではなく、有権者全体の関心を政治から遠ざけることだったのだ。そうすれば、自分たちの一人勝ちになる。

6861.12/04/2012
衆議院議員選挙

 11月27日。滋賀県の嘉田知事が衆議院選挙に向けて新党を結成すると発表した。
 脱原発を旗頭にした政党だ。
 日本維新の会が、石原太陽の党と合流したとたんに引っ込めた脱原発政策だ。
 嘉田知事は、自らは知事職を退かないで、同志を募り、立候補者を確定するという。その筆頭が消費税の導入で退去して離党した「国民の生活が第一」の面々だ。言わずと知れた小沢元民主党代表たちの一派だ。
 さらに国民新党から離党した亀井氏や名古屋市長の河村氏などが合流する。加えて、みどりの風からも複数の議員が選挙では合流することになった。

 いわゆる第三極。
 自民党と公明党という巨大保守勢力。アンチ自民党で結集した民主党などの第二極。
 これに対して、どちらでもないスタンスを貫こうとする新興勢力が第三極だった。

 日本維新の会は、その第三極の中心的な役割を果たすつもりだっただろう。
 しかし、誤算だったのは、石原前東京都知事を中心とした超保守勢力を吸収し、それまでの主張を変化させたことによって、有権者の関心が薄れてしまったことだ。有権者は橋下代表の新鮮さや若さに期待していた。しかし、古豪登場でその期待が吹っ飛んだ。
 これに対して、滋賀県の嘉田知事の登場は新鮮だった。おそらく水面下では小沢一郎氏との接触があり、この日に向けて着々と準備してきたことだろう。

 第三極が分離していく。
 それも、新第三極には多くの文化人が賛同を示している。あせった旧第三極は、東国丸前宮城県知事や中田前横浜市長を担ぎ出して、知名度頼みの票集めへと舵を切った。

 選挙前からこの有様では、国会が召集されたら、しっちゃかめっちゃかになってしまうのではないかと心配している。

 今回の争点で重要なことを見落とさない必要がある。
 それは日本維新の会代表になった石原氏や自民党総裁の安部氏が提唱している「憲法改正」「国防軍創設」「専守防衛」の実現だ。
 もちろん両氏の訴えは、日本政府が軍隊を使って周辺国に戦争を仕掛けられる仕組みを作ろうというものだ。いまの憲法ではそれを認めていないので、憲法を変えようとしている。
 憲法を変えた後に、軍隊を保有する。
 でも実際には、世界第三位の軍事力を誇る自衛隊が日本には存在する。この自衛隊は憲法の規定によって、自ら外国で武力を行使することが許されていない。つまり「攻められるまで発砲してはいけない」軍隊だ。
 専守防衛とは、攻められる前にやっつけることを認めなさいという考え方だ。宣戦布告を可能にする考え方だ。本国を脅かす勢力に対して、先に攻撃を仕掛けて相手を駆逐しようとしているのだ。もちろん仮想敵国は北朝鮮・中国・韓国・ロシアだろう。

6860.12/03/2012
衆議院議員選挙

 11月23日、愛知県で信用金庫に男が立てこもった。従業員らを人質にした。
 翌日に愛知県警の特殊部隊が突入し、男を逮捕した。人質は全員、無事に救出された。
 逮捕された男は、警察に向けて「野田内閣は辞職しろ」と訴えた。金品の要求はしていない。

 すでに衆議院は解散している。
 内閣は次の内閣が決まるまでの形式的なものとして存続している。男が要求した「内閣の辞職」と実質的にはほぼ同じ状態になっている。なのに、なぜこの男は信金で人質立てこもり事件を起こしたのか。
 精神に問題があったケースなのかもしれない。

 かつて民主党で代表になり、後に首相をつとめた北海道の鳩山由紀夫議員が立候補しない表明をした。野田代表に立候補しないことを伝えに行ったとき、慰留されることはなかった。
 野田民主党代表は、次の民主党公認候補には、民主党の政策に合意することが条件であると誓約書を提出させている。われわれ有権者にはわかりにくい。そもそも政党のメンバーというのは、同じ考え方のひとが集まってできるのではないか。考え方は違うけど、同じ政党に入ると、必ず内部で論争になる。

 日本維新の会は、結党からわずか4日間で解散した太陽の党代表の石原慎太郎前東京都知事を代表に据えた。橋下大阪市長は代表代行になった。
 こちらも考え方が異なるひとたちの集団だ。もっとも考え方が異なる石原氏を代表にしたので、選挙後は維新の会党員との衝突が想像できる。
 名古屋の「減税日本」は維新との合流を回避した。石原色を強める維新の会に危機感を募らせたのだろう。

 報道各社が調べる事前調査では、支持政党で自民党がトップ。次いで、なんと維新の会。どうして、有権者はまだ実績も何もない維新の会を支持するのか。この国の怖いところだ。メディアが率先して、維新の会の広告塔になっているので、有権者に維新の会が刷り込まれているのだ。

 聖域なき構造改革で、小泉純一郎首相とブレーンの竹中慶應大学教授が、日本社会を未曾有のボーダーレス社会へと混迷させた。得をしたのは、外国資本と国内有数の大手金融機関と大企業経営者のみだ。それを安倍政権が加速させ、いま野田政権がTPP加盟によって完結させようとしている。