6719.2/11/2012
合法的独裁体制の樹立...3
(色つき文字がわたしの注釈及び意見)
前文
大阪府における教育行政は、選挙を通じて民意を代表する議会及び首長と、教育委員会及び同委員会の管理下におかれる学校組織(学校教職員を含む)が、法令に従ってともに役割を担い、協力し、補完し合うことによって初めて理想的に実現されうるものである。教育行政からあまりに政治が遠ざけられ、教育に民意が十分に反映されてこなかった結果生じた不均衡な役割分担を改善し、政治が適切に教育行政における役割を果たし、民の力が確実に教育行政に及ばなければならない。
学校教育から政治を遠ざけたのは、戦前の国民学校令に対する反省からである。こどもたちを戦場に送り込むことだけを目的にした政治教育が、若い命を国内外で奪った歴史があるからだ。「民の力」という名前を借りて、政治権力が刃を隠す手法が冒頭から登場。
教育の政治的中立性や教育委員会の独立性という概念は、従来、教育行政に政治は一切関与できないかのように認識され、その結果、教員組織と教育行政は聖域扱いされがちであった。しかし、教育の政治的中立性とは、本来、教育基本法第14 条に規定されているとおり、「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育」などを行ってはならないとの趣旨であって、教員組織と教育行政に政治が関与できない、すなわち住民が一切の影響力を行使できないということではない。
もしもここでいう「教員組織」が日本教職員組合という労働組合をさしているのであれば、すでに全国的な組織率が30%を切っているので、組織と言い切れるかどうかは疑問だ。また、教育行政が聖域なのは、とっくの昔に終焉している。ここでも「住民」という言葉を使って、刃を隠している。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律では、第23条及び第24条において、教育委員会と地方公共団体の長の職務権限の分担を規定し、教育委員会に広範な職務権限を与えている一方、第25条においては、教育委員会及び地方公共団体の長は、事務の管理・執行に当たって、「条例」に基づかなければならない旨を定めている。すなわち、議会が条例制定を通じて、教育行政に関与し、民意を反映することは、禁じられているどころか、法律上も明らかに予定されているのである。
この条例案の正当性を宣言したいのだろう。いかにも法律に長けたひとたちの筋読みだ。実際には地教行法が認めている条例作成は、国は大まかな法律を作るから、細かい取り決めは自治体レベルで実態に合わせて作りなさいという意味だ。しかし、そのようには記されてはいないから、解釈をかえてしまうことが可能になる。
6718.2/7/2012
合法的独裁体制の樹立...2
アドルフ・ヒトラーが首相になって、すべての政党を禁止し、ドイツ国会をナチスドイツの党員が独占した。これらは、すべて法律に従って行われた。クーデターや内戦によって、達成したものではない。
いわゆる「民意」がヒトラーに独裁体制を与えたことになる。
しかし、どんな時代にも少数意見をもつひとはいる。それらを排除する独裁体制は、たとえ合法的であったとしても、許してはいけないものだ。ナチスドイツは「ナショナリズム・国家社会主義・反ユダヤ主義」を掲げた。これによって、同じドイツ人でも考え方の異なるひとたちや、莫大な数のユダヤ人が殺された。
国家権力を握った者の意思が、民意を象徴すると民主主義が宣言するなら、民意によって殺されていったひとたちの恨みは末永く地表に漂うだろう。
国家権力を握った者たちが、民意を代表すると偽って、民主主義を利用するなら、権力者によって殺されていったひとたちは、後世になって再評価されるだろう。
橋下さんは弁護士なので、とても話がうまい。また法律を熟知しているので、願いを実現する道筋をわきまえている。
そのことを批判したり、非難することは、論理をすり替えることになる。
わたしは、大阪維新の会だけではなく、バブル崩壊後、リーマンショックや東日本大震災、原子力発電所事故など経済もインフラも落ち込んでいる日本社会で、多くのひとびとが生きる元気や勇気を失いかけているときに、威勢のいい声にだけ反応するのは危険だと信じているのだ。
それは東京都知事から国政に返り咲こうとする輩しかり。
与党から下野したら、急に庶民の味方のようなコメントばかりするようになった輩しかり。
2011年9月に大阪府議会では、大阪維新の会に所属する議員が、維新の会メンバーでもある府議会議長に平成23年9月定例府議会議員提出第3号議案として「大阪府教育基本条例制定の件」を提出した。いわゆる「大阪府教育基本条例案」だ。
30年近く公立小学校で仕事をしてきた経験から、自治体によって、学校教育のなかみやひとのあり方が異なることは実感している。だから、大阪府や大阪市の教育情勢をまったく知らない自分が、問題が多いと言われる基本条例案に意見をするというのは、筋違いだ。しかし、もしも同じ基本条例案が、地元の自治体で提案されたらというときのために、大阪で始まろうとしている合法的独裁勢力による教育支配に切り込んでいく。
6717.2/5/2012
合法的独裁体制の樹立...1
大阪市長の橋下さんは、大阪府知事を辞職して、市長選挙にのぞみ、当選した。
ものすごい有権者の支持があるのだろう。
彼が代表を務める「大阪維新の会」(http://oneosaka.jp/)は、大阪を府から都へレベルアップし、全国を都道府県制から道州制へ移行することを目指している。
2月10日を締め切りとして「維新政治塾」の塾生を募集している。3月から月に2回の開講を予定している。いつまで受講すれば卒業できるのかは要項を見る限り、説明されていない。
費用は12万円。かなり高額だ。
そこに集まるひとたちのことを「志士」と呼ぶ。
維新の会という名称やメンバーを志士と呼ぶことからも、橋下さんらはかなり幕末の薩長連合による戊辰戦争を意識しているようだ。
この維新政治塾の名誉塾長は堺屋太一。わたしはあまり彼の考え方には賛同しない。
塾長は、橋下徹ご本人。副塾長は、松井 一郎大阪府知事。
この政治塾の目的は、ホームページから完全引用すると次になる。
「大阪維新の会の目指す「大阪都構想」は、明治以来の日本の統治機構を変える最初の具体的な提案を大阪から始めようとするものであり、「日本の改革」の第一歩であります。今回新たに「維新政治塾」を開催し大阪都構想や道州制の実現に向けて塾生を募集します。」
大阪維新の会のメンバーで大阪府議会、大阪市議会、堺市議会の議員は数多い。そして、なぜか男性が圧倒的に多く、若い世代がさらに多いことが特徴的だ。
維新とか、志士というイメージが先行するコピーによって、若い男性が多く賛同を示しているのだろうか。
少し、かつてのナチスドイツ(国家社会主義ドイツ労働者党)の青少年組織を思い出してしまう。ナチスは政権獲得後、全国の18歳以下の青少年をヒトラーユーゲント(よきナチ党員になるための教育組織)など青少年全国指導者が支配する組織への入隊を義務付けた。
1928年の最初の国政選挙ではわずかに12人の当選。しかし1930年の選挙では一気に107人の当選。これにより第二党になる。1932年の選挙では230人が当選し、第一党になった。首相になったヒトラーは1933年に全権委任法を成立させた。これにより、すべての法律は国会ではなく政府が決められるようになった。ナチスドイツ以外の政党を禁止する法律が制定され、11月の国政選挙では、すべての国会議員がナチス党員になった。彼らが目指した元首制的共和国が成立した。
6716.2/4/2012
忘れていないか...2
多くの地震の専門家が、阪神淡路大震災以降、日本列島周辺の断層は、ふたたび大きな地震を発生させる「時期」に入ったと語った。
地球規模の時間の流れを考えると、ひとが生きる100年以内の時間など「あっという間」の短さだ。阪神淡路大震災から16年後の東日本大震災は、地球規模の時間軸では、「次から次へ」段階に入ったと言ってもいいのだろう。
なのに、わたしの周辺では「あのとき」をもう忘れてしまっているひとたちがいる。
2012年1月28日。土曜日の朝。7時39分に震度4、7時43分に震度5弱、8時4分に震度3の地震が同じ地域で続けて発生した。
山梨県東部・富士五湖周辺がもっとも揺れたらしい。わたしの家でも、長い時間揺れが続いた。
その前日の27日の13時22分には北関東で震度3の地震が発生している。
ふたたび、あのときのような大きな地震が発生する可能性は高いのだ。
なのに3月の行われる卒業式の提案を見たら、例年通りの内容ばかり。
新年度になったら、現在の仮設校舎から、2年間かけて建設した耐震構造ばっちりの新校舎へ引っ越す。その新校舎での安全対策の提案を見たら、仮設校舎へ引っ越す前の旧校舎の安全対策をほぼ同じ内容。
呆れてしまって、あほあほあほとこころのなかで叫んでしまった。
卒業式の最中に大地震が発生したときの避難誘導の手順と指揮系統。停電が発生した場合の拡声器の準備。大津波警報発令時の退避の手順。
あの大地震が起こって最初に迎える卒業式なのに、こんな安全対策すら練られていなかった。
俺は、自分の頭で考えて、自分が担当しているこどもたちを責任をもって退避させるから、そのときになって邪魔だけはするなよ。やっぱりこころのなかで決意した。
新校舎での安全対策。大地震や津波に耐えられる設計で建設したのに、地震の際は校舎の外に避難することになっていた。
なぜ?なぜ?安全地帯の歌が流れる。
また、火災と地震の避難方法がまったく同じだった。まだ余震が続く廊下をこどもたちを誘導することなど困難だろう。
6715.1/31/2012
忘れていないか...1
1995年1月17日。火曜日だった。
午前5時46分。まだ未明の兵庫県南部で大地震が発生(兵庫県南部地震)した。その後の大被害を含めて、阪神・淡路大震災と呼ばれる大災害だった。
死者は6434名、行方不明者は3名、負傷者は43792名と報告されているが、実際には正確には数え切れなかったとも言われている。
それから多くの地震が列島を襲った。
そして、16年後の2011年3月11日。金曜日だった。
午後2時46分。雪が舞う東北地方太平洋沿岸で、大地震が発生した。日本における観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した。
くしくも二つの巨大地震は、同じ46分に発生した。
当日のわたしの日記。
「晴れた金曜日。通常日課。放課後、年休で帰ろうと思った14:45頃床が大きく揺れた。マグニチュード8.4。宮城県沖地震発生。在校生を一斉に下校。電話の対応と下校指導で年休キャンセル。藤沢市に大津波警報発令。海沿いの道路は通行止め。テレビで津波に飲まれる仙台の名取川河口の映像が流れた」
週があけた14日の日記。
「あゆみ提出。学年会。晴れた月曜日。通常日課。計画停電が予定されていた。東海道線が不通。自宅から学校まで歩く。5時に出発して6時に着いた。やんわり汗をかいた。通常通りの日課だったが、あわただしく臨時校長会が開催された。計画停電は理由は不明だが中止になった。ちょうど携帯電話の電源がなくなっていたのであきらめていたけど、充電できた。自力登校のこどもの家まで迎えに行く。小田急線も不通。こどもの迎えのときに神奈中バスを見たら200%ぐらいの混雑だった。校内の安全部会が散発的に開かれ今後の日程が決まる。きょうで給食は急遽終了。あした以降は11:30下校。計画停電の時間帯によっては休校の措置もありうるとのこと。養護学校の休校が決まる。18日の特学懇親会を中止した。店にいるときに停電になるかもしれないし、小田急や東海道線が止まっていたら、帰れなくなるので中止にした」
日本は地震が多い国だ。そういう地形なのだから仕方がない。
だから昔からレンガ造りの家は好まれなかった。台風や大波、地震などの自然災害が多かったので、被害を受けても、すぐに復旧できる木製の建築が好まれたのだ。
6714.1/29/2012
books 2011...3
No.3 of 2011 my hit books
伊坂幸太郎「終末のフール」(シュウマツノフール)
集英社文庫 629円 Jun-09第一刷
11月26日読了
仙台市のニュータウンが舞台。
3年後に地球に小惑星が衝突することがわかっている。
その後には恐竜が絶滅したように、人類の絶滅が予測された。小惑星の衝突が明らかになった当時は、安全な場所に逃げ惑うひとや略奪や強姦、殺人を繰り返すひとなどで、よのなかは混乱した。
しかし、どこにも安全な場所がないことが判明し、あらかた混乱したひとは死んだり逮捕されたりした頃合が、物語の時代になる。
フールとは、「まぬけ」「アホ」などのフールのことだ。
人類の終末を前に、登場人物たちのフールぶりが描かれる。
短編集の形式を取りながら、物語はディテールで見事につながっている。
ある物語の主人公が、別の物語の脇役という具合に。
多くのひとたちが悲しみにくれたり、生きることをあきらめていく。
そのなかで、「俺は生きる目標ができた」と意欲をみなぎらせる彼が登場する。
彼には妻との間に男子がいる。その男子は、生まれながらの障がいを負っている。
自分たちが生きている間は最大限の愛を男子に注ぐつもりでいた。しかし、自分たちが死んでしまったら、男子の行く末が心配だった。そんなとき、3年後の人類滅亡が伝えられた。「いっしょに死ねる」という事実が、彼と彼の妻を勇気づけた。肉体は滅んでも、男子の魂とともにいっしょに昇天できるという希望が、残りの日々を大切に生きる勇気にかえた。
これは、短編の一つに過ぎないが、このような物語が紹介されていく。
奥深い。
No.4 of 2011 my hit books
逢坂剛「鎖された海峡」(トザサレタカイキョウ)
講談社文庫 943円 Apr-11第一刷 スペインシリーズ5
11月12日読了
第二次世界大戦中のスペインを舞台にした情報部員シリーズの5冊目だ。
スペインは当時、中立国だったので、ヒトラーによるヨーロッパ戦争の被害を受けることはなかった。しかし、中立国だったので、連合国や枢軸国の情報部員(スパイ)が暗躍する場所でもあった。
陸軍の情報部員、北都は日系ペルー人としてスペインで活動する。表向きは宝石商人だ。イギリス情報部員、バージニアは旅券管理事務所の所員としてスペインで活動する。ふたりは、敵国同士の情報部員。しかし、互いの絆は敵国人という意識から、愛する存在へと変化していく。
シリーズを通じて、戦争とひとを問い続ける逢坂。
5冊目になった本著では、ふたりの絆は確かな愛で結ばれる。当然、ふたりは生活も行動もともにすることができない。それでも、互いを思い、互いを尊重し、早期戦争終結を祈り続ける。
バージニアを亡き者にしたいイギリス情報部の上司の画策によって、彼女は落下傘でドイツに侵入する作戦の当事者になった。いのちがけでベルリン郊外に侵入した彼女を待ち受けていたのは、与えられた任務とは異なる暗殺計画だった。
スペインにいて、バージニアがドイツへ侵入した話を聞いた北都は、彼女の無事を祈りつつ、どうすれば救助できるかを模索する。
第二次世界大戦は、太平洋だけではなく、それ以前からヨーロッパで始まっていた。日本では多くのひとが知らないヨーロッパ戦争を逢坂はわかりやすく時代背景として描く。北都やバージニアのハラハラする恋愛物語は、まだ完結していない。
6713.1/28/2012
books 2011...2
ことし読んだ本のなかから、お勧めの本を紹介する。
わたし個人の感想なので、なんら根拠のあるものではない。
No.1 of 2011 my hit books
百田尚樹「永遠の0」(エイエインノゼロ)
講談社文庫 876円 Jul-09第一刷
1月12日読了
飲み屋の仲間に紹介されて買った。とても分厚い文庫本だった。
恥ずかしながら著者を知らなかった。
泣いた泣いた。
読み進みながら、どんどん涙がこみあげた。
出勤の車内で泣けてしまって、どうしようもなかった。
太平洋戦争当時、敵艦に体当たりする自爆攻撃の搭乗員は、形式的に全員自ら志願したことになっている。しかし、上官からの依願に対して「ノー」と言える部下は存在しない。
主人公は優秀なゼロ戦パイロットだった。
その技術によって、若いパイロットを育てる教官になった。しかし、次々と有能な若者を育てても、軍部はそのパイロットを特攻させてしまう。
彼は、次第に、戦争への無力感と自らへの虚無感を広げていく。そして、最後に自ら特攻へと志願していく。
戦争を美化する保守系の政治家たちは、自らが生き残っている現実を見直すために、この本を座右に置き続けるべきだ。
戦争を正当化する企業の経営者たちは、武器という商品がひとびとを悲劇に追い立て続けていることを自覚するために、この本を社是にすべきだ。
戦争を知らないすべてのひとに、読んでほしい。
もしもあなたが「彼」だったら、もしもあなたの大切なひとが「彼」だったら、あなたは生きている時代をどうやって乗り切りますか。
No.2 of 2011 my hit books
奥田英朗「オリンピックの身代金」(オリンピックノミノシロキン)
角川文庫 (上下巻ともに)705円 Sep-11第一刷
12月11日読了
スーパーいい加減な精神科医「伊良部」を主人公にしたシリーズでとりこになった奥田。
しかし、彼は「邪魔」「最悪」「サウスバウンドなど、読み応えのあるハードな物語もつむぐ。
久しぶりに奥田の本を手にして「あー、やっぱりこのひとはものすごいひとだ」と再認識した。
オリンピックの身代金。
1964年の東京オリンピックを舞台セットにしてしまった。
戦後の東京が大きく変わっていく装置として政治家たちは、オリンピックの開催を誘致した。反対にこのときを境界にして、東京と地方の文化的経済的格差は大きく広がっていった。
秋田出身の島崎を主人公にした物語は、オリンピックのために多くの地方出身者が建設現場で非人間的な扱いを受け続けながら労働を強要された事実を浮かび上がらせる。
日雇い労働者は、雇い主の人間とは口を聞くことさえ許されていない。
また、60年安保闘争など学生運動が盛んだった時代に、若者たちの狂騒は学芸会的だったと斬り捨てる奥田の視点がおもしろい。島崎の単独オリンピック阻止計画に、運動を続けている学生たちはびびって乗ってこないのだ。
生真面目な東大大学院生の島崎が、兄の死によって、テロリストへと変貌していく過程は読み応えがある。
まだ戦後の昭和は、歴史として確定していない部分が多い。
教科書に頼る前に、奥田の本で当時の日本社会を想像してみよう。
6712.1/22/2012
books 2011...1
(本文中のことしとは2011年、去年とは2010年のこと)
ホームページで自分が読んだ本を紹介するようになって、3年になった。
自分が読み終わった本を、知人に紹介する。その知人からわたしが読んだことのない小説家の本を紹介される。地域貸し本コミュニティが機能してきた。
先日は、佐々木譲、堂場瞬一が好きだという知人から、佐伯泰英の「居眠り磐音」シリーズ全巻を譲り受けた。
ことし、わたしは46冊の小説を読んだ。
ほとんどが文庫本だ。
持ち歩きに便利だし、値段が安い。
発表してすぐという新鮮味には欠けるが、しばらく我慢する。刊行された本がすべて文庫化されるわけではない。だから、文庫になる本は読者の支持を集めた内容だとも言える。
去年は60冊の本を読んだ。
なのに、ことしは14冊も少なかった。
これははっきりとした理由がある。
わたしは毎月4冊から5冊を読むが、3月は2冊しか読み終えられなかった。
読書をする気持ちになれなかったのだ。
ことしの著者別読書トップ5
1位:逢坂剛が20冊(新登場)
2位:堂場瞬一が10冊(去年5冊)
3位:柴田よしきが4冊(新登場)
4位:佐々木譲が3冊(去年14冊)
5位:東野圭吾(去年13冊)と伊坂幸太郎(新登場)が2冊
気に入った物語に出会うと、その著者の本を手当たり次第に買ってしまう衝動傾向は、ことしも健在。逢坂剛の一年だった。
ひとりの著者の本をたくさん読むからといって、それ以外の著者の本は読まないのかというと、そうでもない。
ことしは、百田尚樹(永遠の0)、雫井脩介(クローズド・ノート)がこころに強く残った。
6711.1/21/2012
さらば2011年...12月
way No.6686
way series 輝く星にならんことを連載
essay vol.120 NK細胞と睡眠 2011.12.10 毎日、がんが生まれている
books
45-12/20/勇士は還らず/佐々木譲/文春文庫/848円/May-11/
44-12/11/オリンピックの身代金/奥田英朗/角川文庫/705円/Sep-11/上下ともに705円
12月19日。金正日死亡が報じられる。
2011年の12月は「さらば」と呼ぶにはまだ直近の月なので、確定した事件や事故を網羅することに意味を感じない。いまは確定しているように見えていることでも、時間が経過すると、異なる事実が見えてくることが多いからだ。
それよりも、2011年末を送り、2012年を迎えたとき、未曾有の大震災はまだ復興とか復旧と呼ぶには程遠い段階だと痛感している。
福島の原子力発電所事故では「終息宣言」を首相が出して、国民を驚かせた。臭いものにふたをするにも限度があろう。
閉じ込めた核燃料の状態もわからないのに、終息とはいかがなものか。
わたしは、年末年始のテレビや新聞を見聞きしていた。
そのなかに、いまも被災地で必死に生活を続けるひとたちの生の声、生の顔がいくつもあった。涙腺の奥が痛くなった。知らないうちに、頬を涙がつたっていた。
家族や友人、恋人や世話になったひとなど、「自分」にとって大事なひとたちがみんな死んでしまった。その苦しさや寂しさ、自分だけが生き残った申し訳なさや悔しさ、その複雑な気持ちは、当人にしかわからない。その当人たちが口を閉ざさないで、あのときを語り始めているのだ。そして、あのときから、少しでもあのとき以前の状態に戻ろうと、立ち上がり始めているのだ。
それは、政治の力でも、経済の力でもない。
被災した地域で生きるひとどうしのつながりや、多くのボランティアのひとたちの献身的な支援のおかげなのだ。
わたしは、震源地から遠く離れた神奈川県藤沢市で2011年3月11日午後2時46分を過ごしていた。
プレハブ校舎の一階で、廊下が波打ち、立っていられない状態だった。
ついに東海沖地震が始まったと覚悟を決め、一目散に屋外に出た。眼前には、緊急停車した小田急線が車体を左右に揺らしていた。
いつ、自分の身の上にきのうと違うきょうが訪れるかわからないということを、大震災は宣言した。
将来につながることや、未来を考えることも重要だ。しかし、いまの自分が実現したいことを大事にすることは、もっと大事なことだと痛感した。いまの自分が充実していなければ、大震災などの非常事態に直面したとき、後悔ばかりが目白押しになってしまう。
年末を迎えても、あの日のことをまざまざと思い出す。
特別は一年だった。
6710.1/16/2012
さらば2011年...11月
way No.6674NK細胞と睡眠...1 - No.6685
way series NK細胞と睡眠連載
books
43-11/26/終末のフール/伊坂幸太郎/集英社文庫/629円/Jun-09/
42-11/19/オーデュポンの祈り/伊坂幸太郎/新潮文庫/629円/Dec-03/
41-11/12/鎖された海峡/逢坂剛/講談社文庫/943円/Apr-11/スペイン
気象庁が発表している11月の天候概要。
全国的に高温
この時期としては暖かい空気に覆われやすかったため、気温が平年を上回った日が多く、月平均気温は東・西日本、沖縄・奄美ではかなり高く、北日本で高かった。沖縄・奄美の月平均気温は、統計を開始した1946年以降最も高い値を更新した(平年差:+1.5℃)。松江(島根県)、福岡、徳島、西表島(沖縄県)など19地点で11月の月平均気温の最も高い値を更新した。
西日本と沖縄・奄美を中心に曇りや雨の日が多かった
上・中旬を中心に低気圧や南からの湿った気流の影響を受けやすかったため、西日本と沖縄・奄美を中心に曇りや雨の日が多かった。特に沖縄・奄美では月降水量がかなり多く、月間日照時間はかなり少なかった。
北日本では平年に比べて晴れた日が多かった
北日本では月の前半、高気圧に覆われて晴れた日が平年に比べて多かったため、月降水量が北日本太平洋側でかなり少なく、月間日照時間が北日本日本海側でかなり多かった。
11月5日。西岡武夫参議院議長が、肺癌のため死去。享年75歳。
財政危機に悩むギリシャで、パパンドレウ政権が国会で153対145の僅差で信任された。
11月10日。ギリシャで、辞意を表明したパパンドレウ首相の後任として、ギリシャ銀行前総裁・パパデモスの就任が決定。
11月13日 。イタリアのベルルスコーニ首相は、同国議会による財政安定法案の可決を受け、ナポリターノ大統領に辞表を提出し受理された。
11月17日。裁判員制度が憲法に違反しないとの判断が、最高裁大法廷で初めて示された。
11月21日。スペインで20日に総選挙が実施され、マリアーノ・ラホイ率いる国民党が、サパテロ首相率いる社会労働党に圧勝し、政権交代が決まった。
一連のオウム真理教事件で、地下鉄・松本両サリン事件で殺人罪などに問われ死刑判決を受けていた遠藤誠一元幹部について、最高裁は上告を棄却し、全員の刑が確定、オウム裁判は終結した。
11月24日 。イエメンのサレハ大統領が、湾岸協力会議が示した、ハーディー副大統領への権力移譲案に署名し、サレハは退陣へ。
ご冥福をお祈りします。
11月5日 - 西岡武夫、日本の政治家、国会議員、参議院議長(1936年)
11月7日 - 隆の里俊英、日本の元大相撲力士【第59代横綱】、年寄:鳴戸(1952年)
11月9日 - 黒沢良、日本の声優、ナレーター(1930年)
11月21日 - 立川談志、日本の落語家、自由民主党元参議院議員(1936年)
11月25日 - 西本幸雄、日本の元プロ野球監督・野球評論家(1920年)