6059.12/2/2008
創り出す会の足音...No.97
2004年度 新しい学びの創造へ
(2004.09.07 9月第1週)
9月1日。
夏休みが明け、子どもたちは、ちょっぴり大きくなり元気に登校して来た。
背が伸びた子、色が黒くなった子、夏休みの思い出を話してくれる子・・。
そんな久しぶりに会った子どもたちを見て、嬉しく思い、9月以降も一緒に楽しくやっていこう!と気持ちを新たにする。
体験入学の子を含めて、現在湘南憧には5人の子ども達が通っている。
湘南憧では、自分のやりたいことを自分でつきつめる時間もあるが子どもからの提案を受け、みんなで一つのことに取り組む時間もある。
いくつか案が出ていたので、5人揃った日に、9月以降にみんなでやってみたいことを話し合った。
みんなで取り組むこととして、畑で収穫、水族館へ行く、1月以降にバザーをする、鎌倉めぐりをするということが決まった。
これらはハーモニータイムとして、みんなで計画し準備をしていく予定。
きっとこれからも子どもたちといろんな時間を過ごすことになるだろう。
やっぱりそれはとてもわくわくすることで、これからも子ども達のいい顔が見たいし、スタッフも一緒にいい顔になりたいと思うのです。(H.H)
(2004.09.09プールに行きたい)
ジリジリ強い日差しだった7月、子どもから「プールに行きたい」という声があがりました。夏休み中に入場料など調べておくことになっていた本人は、開校して思い出したようです。そのため9月に入り藤沢駅周辺での活動があった日に、推進センター(登録団体が使える藤沢市立施設)でパソコンを借り、インターネットを使って「開園期間はいつまでか、入場料と交通費を含めていくらか」などを「一緒に行きたい」という子どもたちと調べました。
そして今週の9日(木)、辻堂海浜公園にあるプールに行きました。前日の天気予報で神奈川県の最高気温26℃。晴れてくれることを願いましたが、あいにくの曇り空です。子どもたちには「もし中止にするようだったら、朝電話するね」と伝えていたものの、判断に迷いました。あるスタッフが言いました。「〜ちゃんにとって、その場所に行くということが大切なのよ」。こうして予定どうり行くことに決めました。
プールに着いたのは午前10時。ほとんど貸切状態の中、準備体操をして、まずは「流れるプール」に入りました。
「きゃー、冷たーい!」子どもたちは背中を丸めながら、ゆっくり入ります。わざと子どもたちにパシャっと水をかけてみると、逆に全員から大量の水をかけ返されてしまいました。浮き輪で揺られたり、潜っているうちに、青空が広がりだんだん気温も温かくなってきました(最高気温31℃まで上がっていました)。流れるプール、波のプールそして噴水や大きな水てっぽうがある遊戯プールを何回もまわりながら、存分に満喫している様子です。子どもたちのとびきりの笑顔と「次はあっちに行こう!」と元気にはしゃぐ姿をみて、「この子のこの瞬間の表情を覚えておこう」と思いました。今は予想以上に真っ赤に焼けた肌を手入れしています・・・。(J.Y)
6058.12/1/2008
創り出す会の足音...No.96
2004年度 新しい学びの創造へ
(2004.07.08それぞれがそれぞれの学びを)
5月から計画を煮詰めてきた「映画を見に行く」ことを実行した。
一言で「映画」といっても、お金がかかり、時間に限りがあるので、「いつ」「何を」「どこで」と、計画から実行まで、長かったように思う。だからこそ、7月8日は、それぞれが待ち遠しい日だったのではないだろうか。
「それぞれ」というのは、字幕で見る子、日本語で見る子、映画は見ない子と、分かれてすごしたからだ。時間をみて、移動にどのくらいかかるのか、何時にこうどうすればいいのか、それぞれが違う。
朝の一時間は全員が行動できるので、来週の計画づくりをして過ごした。計画をたてて、実行することを学ぶ機会は小学生ではあまりないことだが、日常では多く使う。それぞれが、満足にすごせた一日だったように思う。(K.S)
(2004.07.10オプションタイム)
7月のオプションタイムのは、Tさんが担当してくれました。
教育課題、子どもの興味を引き付ける教材など…たくさんの引き出しと鋭い視点を持っているTさんの周りには、自然と子どもたちが集まってきます。
Tさんの「これ知ってる?」の声から始まったのは、マーブリング。水に専用のインクを1〜2滴たらし、棒でかき混ぜ、そっと紙を浮ばせます。すると、きれいな模様がついているのです。「うわぁ、すごーい!」。水道の周りを囲んでいた子どもたちが、気づけば1列に並んでいます。特に女の子たちは気に入ったようで、インクの色を変えながら何度も何度も繰り返しています。
次はスライム作り。色水とのりなど材料を加え、よく混ぜるとあっと言う間にスライムのできあがり。湿布のように体にくっ付ける子、「こんなに伸びたよー!見て見て!」と言う子、赤・青・緑の色水の量を変えて紫やコバルトブルーのスライムを作り始める子。部屋は笑い声と歓声で溢れています。
朝、少し緊張ぎみだった1日体験の子も昼ごろになると憧学校の子どもたちと遊んでいます。「う〜ん、少し騒ぎすぎだな」と感じた時、Tさんは広告でササッと紙デッポウを作り、パーン!!と鳴らしました。すると子どもたちの動きが一瞬止まり、「何それ、作り方教えて〜」と集まってきました。紙デッポウやその後作ったシュート棒でひとしきり遊ぶと、憧の子どもが作った双六を始めました。もりだくさんの1日に、子どもたちは楽しく過ごしたようです。
4月3日から始まった憧学校もあと2回で夏休みに入ります。とっても早かったな〜!(J.Y)
6057.11/30/2008
創り出す会の足音...No.95
2004年度 新しい学びの創造へ
(2004.07.04 3ヶ月経過)
3ヶ月が経ちました。
早いもので、湘南憧学校が開校して3ヶ月が経ちました。
これまでの一日の流れは、大体次のようなものです。
朝の会
計画作り、振りかえり、モノ作りなど室内で活動
おやつタイム
買い物
公園でお昼ごはん&運動
自由時間
帰りの会
雨の日が少なかったので、ほぼ毎日お昼ごはんを近所の公園でシートをひいて食べています。
青空の下で食べるのは、また格別です!
自由時間には、子どももスタッフもそれぞれ好きなことをしています。
始めの頃は、スタッフと一緒に何かをすることが多かったのですが、この頃は、少し変化が出てきました。
・自分で何をやるかじっくり考える
・自分でやってみる
・熱中する
こんな姿が見られるようになりました。
今週は、自由時間に、自分でやりたいことを考え計画を立てた子どもがその計画を実行します。
また、どんな姿がみられるか、楽しみです。(H.H)
6056.11/29/2008
創り出す会の足音...No.94
2004年度 新しい学びの創造へ
(2004.06.24誕生日パーティ)
今月は「何を作りたいか」を子どもが考え、調べるところからスタートしました。ただし「ホットプレートを使ってできるもの」という条件付きです。家で作ったことのある料理の手順を絵に描いた子、好物を作りたい子もいれば、まだ食べたことのない料理をどんどん候補に書いていく子もいます。1人ひとり食べたいものが違うのは当然で、結局、調べたものを発表し、それぞれ投票することにしました。「材料は何が入ってるの?」「予算内で作れそうかな?」なにより「食べたい!」という直感。そして、ようやくメニューが決まりました。スクランブルエッグとパエリアです。正直、パエリアと聞いたとき驚きました。「ホットプレートでできるの?」という驚きと「もし私がメニューを決めていたらパエリアは浮かばないな〜」という子どもの発想のおもしろさへの驚きです。
こうしてメニューが決まり、24日は材料を買いにいきました。部屋にもどるとム〜ンという蒸し暑さ。その場にいるだけで汗が出てきます。額に汗をかきながら野菜を切っている子どもたち、そして横でその汗を拭くスタッフ。まるで医療ドラマのワンシーンのようです。次にホットプレートでお米が透明になるまで炒め、肉、野菜、パエリアのもとを加え20分ほど蒸し焼きです。部屋中にいい香りが広がっています。そしてできあがり!口に入れた時「おいし〜い」という声がでました。初めてパエリアを食べる子もスタッフもおかわりをしました。
春夏秋冬を感じる日々で、今は扇風機とうちわが欠かせません。「暑いねー」と子ども達といいながら、来週もはじまります。(J.Y)
6055.11/27/2008
創り出す会の足音...No.93
2004年度 新しい学びの創造へ
(2004.06.16畑へ行こう)
今日は善行にある畑で活動するため、朝から藤沢駅に集合。
5月下旬に初めて畑を訪れた時はどんな畑で何を育てているのか、自分達が植えられる場所はあるのかを確認しできている野菜を収穫させてもらう。
2回目の今日は畑に湘南憧用の場所を用意してもらえたので
@畑に何を植えるのか決める(→青しそ・オクラ・枝豆に決定)
A種を買いに行く
B植え方や育て方を調べる
C持ち物や当日の活動内容を考える
D畑に置く湘南憧の看板を作る
という活動を経て、いざ出発!
畑へ着くとまず、創り出す会&湘南レッツのHさんから、土づくりの仕方を教えてもらった。
雑草を抜き鍬で土を耕し、腐葉土と鶏糞をまく。そしてまた鍬で土をかぶせる。
二畝もあったので、時間がかかるかと思ったが子ども達は
「へぇ、こうやって作るんだ〜」
「鍬って重たいね。」
と言いながらどんどん作業し、種植え、水やりまで、1時間ちょっとで完成した。
その後、Hさんからお楽しみタイムのプレゼント。
Hさんが育てたきゅうり・ミニトマト・人参を収穫させてもらう。
みんな少しでも大きいものをとろうと必死な顔!そしてとれると嬉しそうな顔!
「今日は美味しいサラダが作れるね。」
「今度はいつ畑に来ようか。」
「今日植えた種はあと5日くらいで発芽するよ。」
月2回の土曜テストスクールでは、なかなかできなかった継続性のある活動。
週三日の湘南憧学校では、それができるんだなと実感する今日この頃です。(H.H)
6054.11/26/2008
創り出す会の足音...No.92
2004年度 新しい学びの創造へ
(ハーモニータイム)
各自からの提案を受けて、複数の子どもたちで取り組みを展開していくハーモニータイム。だいたい月の初めにプランを立てた。年間を通じて企画・実施された内容は以下の通り。
……
お誕生日祝いで料理を作ろう・2回
新江ノ島水族館へ行こう・4回
畑へ行こう・5回
茅ヶ崎へ行こう
七夕をやろう
藤沢で買い物をしよう・4回
辻堂海浜公園へ行こう
湘南憧鎌倉祭りをやろう
カラオケに行こう2回
鍋料理をやろう
お好み焼きを作ろう
笛田公園で運動をしよう
図書館へ行こう・7回
バザーをやろう
ちんやさんでご飯を食べよう
……
スタッフは、こどもたちの様子をインターネット上に発信した。
(2004.06.12初めての土曜開校)
6月12日(土)、初めて憧学校は土曜日に開校しました。今日はオプションタイムの日です。創り出す会のIさんがドライアイスを使って実験をします。朝、バスの中で「今日、なにするの?」と何度も尋ねる子どもに、思わず言ってしまいたくなる気持ちをおさえながら「何かいいことするらしいよ」と答える私。
いつもに比べ多い人数に少し緊張と嬉しさの交じり合う空気のなか、マジックは始まります。Iさんがコップをろうそくに近づけると火が消えます。「なんで?」という表情の子どもの前で、次はコップに水を注ぎます。するとモコモコと冷たいけむりがでてきたので、ドライアイスだとわかりました。机の上でドライアイスをゆっくりと滑らせると子どもの方へ向っていきました。
「うわぁ〜!」と驚きの声があがります。その次は炭酸入りジュースに変わり、最後にはみんなでアイスクリームを作りました。
公園へ行き、青空のしたでお昼ごはんを食べました。午後の自由時間には、子どもが作った双六とカルタをしたり、将棋や囲碁をして過ごしました。部屋の中から笑い声が溢れて聞こえてきます。その声でほっとしました。開校して28日目、1日1日が初めての憧学校です。(J.Y)
6053.11/25/2008
創り出す会の足音...No.91
2004年度 新しい学びの創造へ
(保護者との関係作り)
6月の面談を皮切りに10月にはベーシックタイム導入に関する説明会を開催した。
また同月には昼食会を実施し、保護者の方々に参加していただいた。加えて学区の公立学校で開催された運動会をスタッフが見学に行く。また、11月から開催した2005年度の学校説明会に向けて、現役の保護者として説明会でのコメントもお願いした。実際に説明会に参加した方々へ、こころのこもった感想を述べていただいた。年末には懇親会を催し、2月に授業参観、3月に最後の面談を行った。
(公立学校との関係)
毎月の活動報告を保護者と学校に提出しながら子どもの活動を継続して発信した。
4月当初には藤沢市の小学校で湘南憧学校に登校した日を公立学校での出席扱いにする了解を得て、6月に藤沢市教育委員会の方が湘南憧学校を見学している。
7月には藤沢市立の公立小学校長と担任が見学に来られた。
10月には鎌倉市の公立小学校長が見学に来られ、その後、鎌倉市でも湘南憧学校に登校した日を出席扱いにする了解を得られた。
3月には鎌倉市教育委員会の方が見学に来られた。
(活動の記録)
スタッフは子どもの活動の様子を、湘南憧学校日記として毎日記録した。
また写真やビデオを使った記録も残しCD-ROMやビデオテープに保存した。インターネット上では、スタッフレポートとして活動の様子を発信した。
子ども自身は「きょうのふりかえり」を毎日記録し、ポートフォリオに似た方法で、各自のファイルに保存した。
(オプションタイム)
スタッフや専門分野の方をお招きして、子どもの興味や関心を広げる目的で開催したオプションタイムは年間に8回実施した。内容は以下の通り。
【ものづくり】
自分の場所を表すポスター・ダンボール物入れ・名札プレート・ブックカバー・周辺ポスター・おやつ作り(ポップコーン、アップルパイ、ポテト&ソーセージ、ココナッツクッキー)・絵手紙・ポシェット・マフラー・プラトンボ
【言葉遊び・数遊び】
カタカナしりとり・漢字カルタ・漢字の成り立ち・漢字クイズ・かけざんクイズ・ごんたカード・UNO・トランプ・花札・かけざんビンゴ・かけざんバトル・カラオケ受付表・百人一首・本の読み聞かせ
【興味・関心】
ドライアイス実験・マーブリング・スライム・シュート棒・紙鉄砲・犬棒カルタ・都道府県探し・握り寿司・水の生き物・畑の作り方・英語
6052.11/23/2008
創り出す会の足音...No.90
2004年度 新しい学びの創造へ
初年度の湘南憧学校の決算は以下の通りだった。
(収入)
授業料 \800,000-
体験入学 \69,500-
合計 \869,500-
(支出)
経費 \81,286-
傷害保険 \60,776-
労働保険 \46,260-
家賃 \340,000-
灯油代 \1,830-
給与 \2,103,673-
合計 \2,633,825-
途方もなく台所は火の車状態の船出になった。
不足分は、創り出す会が発足から積み立ててきた開校準備金を充当した。
行政や民間からのサポートが受けられないフリースクールでは、人件費が突出して財政を圧迫する現実が如実になった。
年間に、120日間開校した。
(こどもたちの出席状況)
児童A:118日間出席(98.3%)
児童B:117日間出席(97.5%)
児童C:81日間出席(67.5%)
児童D:44日間出席(110%)……週に1日なので年間40日が登校基準
おおむね子どもたちは湘南憧学校にほぼ毎日通ったことがわかる。児童Cは7月から本格的に湘南憧学校に通うようになったため、ほかの児童に比べて日数が少ないが、9月以降の開校日には全部出席した。児童Dは週に3日の開校のうち年間を通して州に日の割合で出席し、ほかの日は学区の公立学校に通っていた。土曜日に開校した日にも出席したので結果的に40日以上出席することになった。
6051.11/20/2008
創り出す会の足音...No.89
2004年度 新しい学びの創造へ
これまでの公立小学校や公立中学校で採用されている教育についての基本的な考え方とは対極の考え方が、湘南憧学校の基本的な考え方だ。
学習指導要領を貫いている考え方の基本は、教授である。教えて授ける。
こどもは、何も教えなければ何も学ばない。もしくは何も学べない。この考え方を基本にしているので、年齢ごとに細かい学習内容を決めて、指導の手順を示し、やさしい内容から複雑な内容へと学習を発展させている。
これに対して、湘南憧学校では、こどもは自らの好奇心をエネルギーにして、身近なものへの興味や関心を抱き、なぜだろう、どうしてだろうと考えている。それを学びの出発点にして、学習を展開していけば、より多くのことを深い段階まで獲得すると考えた。
教育目標は、責任ある生き方ができるこどもを育てる。
責任ある生き方の具体的な姿として、6つの姿をイメージした。
1.自分に自信を持ち自分が好きになる子ども
2.自分のやりたいことをつきつめることができる子ども
3.自分の得意なことを見つけることができる子ども
4.チャレンジをして失敗しても乗り越える力を持つ子ども
5.コミュニケーションを大切にすることができる子ども
6.どんな生き方をしたいか考えることができる子ども
これを実現させるための手立ては、3つ用意した。
1.教師とこどもがともに学びを築く
2.従来の学校のように、一律に学習する内容があらかじめ決めない
3.興味や関心をもっとも大切にしてひとりひとりに応じた学習内容・学習スタイルを実践する
一日の流れ。
・ベーシックタイム 9:45-10:30
言葉や数など、その子が必要な基礎学力をその子のペースで学ぶ時間。
・オプションタイム 10:45-12:00
教師や専門分野を持った大人が、学習内容を子どもに提示し活動する時間。
・ハーモニータイム 13:00-13:30
子どもからの学習提案を受け、みんなで一つのことに取り組み、活動していく時間。
・レインボータイム 13:30-14:30
自分の興味や関心のあることを、自分で進めて活動する時間。
このほかに、9:30-朝の会、10:30-おやつ、12:00-ランチタイム、14:30-掃除、14:45-帰りの会、そして15:00終了とした。
6050.11/19/2008
いつか来た道...8
国民学校の目的は、「国民学校ハ皇国ノ道ニ則リテ初等普通教育ヲ施シ国民ノ基礎的錬成ヲ為ス」ことであった(国民学校令第1条)。
「皇国ノ道」とは、愛国者として国にすべてを捧げるという意味だ。すべてには、もちろん命も財産も家族も含まれる。愛国心と言い換えてもいい。昨今の学習指導要領で、さかんに保守的勢力が強調する「国を愛する心」の起源だ。
「国民ノ基礎的錬成ヲ為ス」とは、もはや学校という装置を、学習の場から鍛錬の場へと変容させることを意味している。
つまり、国民学校令によって創設された国民学校は、教育という目的を放棄し、政治権力の意のままに思考し行動する人材を造り上げる目的を鮮明にした。
初等科と高等科の教科は4つしかない。
国民科、理数科、体錬科、そして芸能科だ。
生活科や総合的な学習の時間、特別活動などない。目的に照合すれば、そのような活動は必要ないのだろう。
国民科は、修身・国語・国史および地理の4つの科目で構成される。
理数科は、算数および理科の2つの科目で構成される。
体錬科は、体操および武道の2つの科目で構成される。なお、女児については、武道を欠くことができた。
芸能科は、音楽・習字・図画および工作の4つの科目で構成される。なお、初等科の女児については、裁縫の科目が、高等科の女児については、家事および裁縫の科目が加えられた。
あえて補足する必要はないかもしれないが、戦後の教育基本法や学校教育法によって、これらの教科は改編された。しかし、その後の学習指導要領の改訂で、道徳という名前に変えて、修身が復活した。厳密には、修身の目標と道徳の目標は異なる。しかし、度重なる学習指導要領の改訂で、愛国心(国を愛するこころ)が復活を遂げ、個人の尊重よりも連帯感や協調性が強化された印象は否めない。
明治以降の公教育の歴史の中で、わずか6年間しか機能しなかった国民学校は、太平洋戦争にひとびとを駆り立てる重要な役割を果たした。明治・大正・昭和と元号が3つも変わった期間に機能した学校令は、50年間も続いた。戦後の学習指導要領の改訂が、学校令によって築かれた歴史を参考にするのではなく、戦争への準備として機能した国民学校への回帰を画策しているのはなぜだろう。
それは、ふたたび日本の政治や経済の中枢にいる権力を握っているひとたちが、隠密裏に戦争への布石を打とうとしているからだと考えるのは無理があるだろうか。(いつか来た道・了)