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2007年10月湘南憧学校レポート
しょうなんしょうがっこう

6月頃にお便りして以来、2度目の報告です。
皆さん、お元気でしょうか。
ところでどうでしょう、
この間の世間の変化は。すべては、7月の参議院議員選挙に始まったといっていいのでしょうか。当初強引に続投を表明した安倍さんですが、もう首相の席にはおりません。代わって、ひょうひょうとした福田さんが総理大臣に就任。福田さんも次の総選挙までの暫定政権とよばれ、いつ辞めてもおかしくはありませんね。ところで、安倍さんが鳴り物入りで設置した「教育再生会議」ですが、なんとか継続するらしいですね。しかし、内閣あるいは文部科学大臣が変わるたびに、ころころ教育行政方針も変わり、その度に振り回されるのは、現場の子どもや教員です。最近では、「ゆとり教育」を改め授業数を増やすことが決まりました。また自治体によっては、土曜日も補習のようなかたちで授業数を確保しようとするところがあるようです。この日本で、せっかく10年以上かけて審議し決定された方針が、また10年ほどで180度変わってしまうことがあったという事態はなにを物語っているのでしょうか。

もちろん冷戦以後の世界の変化は、人間社会の未来を予測することを困難にさせています。官僚や政治家の方からすれば、こんなはずではなかった、と。例えば日本経済の長期低落をよそにインドや中国などの東アジアの国々の経済発展をみれば、それが彼らに日本の足元を根本から見直すという発想を抱かせるに十分な威力をもったことは想像に難くありません。すなわち、日本にはエネルギーなどの資源がない、日本における唯一の資源とは「人間」である、と。

おっと、ここは「時事問題」を論じるところではありませんでした。湘南憧学校でしたね。あこがれも半年が過ぎ、日本政界の激変を経ても、なんとか踏ん張って活動しています。ただ、子どもの数が少ないなか、やりかたとして、今後どのような方法があるのかを検討する必要があるのではないかと痛切に感じております。開校以来の課題といえばそうなのですが、すこし身軽になったところでいままでとは異なるアプローチを試みたいと思案しているところです。

さて、抽象的な議論はここまでにして、すこし具体的な報告をいたしましょう。年長のAさんは、今年、2つの目標を立てています。最初は、4月当初からのもので、野球好きのAさんとしては、どうしても野球場で正式な野球をやってみたいという願いがあります。これをどう実現するかは大変難しいところですが、当然外部に人を求めるほかに方法はないのですから、積極的に外にでてまずは同士を見つけたいと考えています。

日々の運動としては、体操からはじまり、基礎的なランニング、キャッチボール、Aさんのピッチング、たまにバッティング、守備練習というかたちでやっています。Aさんの球は結構速くなかなかなものだと思うのですが、コントロールがままならないことがあります。本人もそこを気にしていて、「増田さん、どうすればいいですかね」とアドバイスを求められます。しかし素人の私としては口ごもってしまうことが殆どです。なにか良いアドバイスができればと考えるのですが、ここらあたりも今後のこちらの課題となっています。

もう一つは7月頃、映画好きの彼は、映画を撮ってみたいという希望を表明、それをどう実現するかということです。まずシナリオを書いてみることを提案し、彼は夏休み期間中にすでにそれを完成させたようです。(実際にはまだ読んではいません)カメラなどの道具、人員をどうするかなどこちらの課題も多いのですが、現在は、Aさんや私所有の古典的な映画DVDを一緒に見たりして、どこか見習うべき(盗むべき)ところがないか、勉強?している最中です。(ちなみに、最近見た映画は、チャップリン、マルクス兄弟の喜劇、ヒッチコックのサスペンスなどです)もちろん最初から大がかりな準備をして撮影することは難しいので、携帯のムービー機能を使った簡単なところから始めることが現実的だと思っています。(すでに携帯で横溝映画を模した予告編をつくっています)

もともと映画をつくる学校にいっていた人間としては、願ってもない展開なのですが、こんなにど真ん中でいいものかどうか、少々気が引けてしまうことも確かにあります。言うまでもなく古典的な映画には、人生へのヒントが一杯つまっていますので、それを感じ取ってもらい(私自身も再発見する)、一緒に人生?を考えることができればいいかなと思い直している今日この頃です。

ところで、今年は、この創り出す会が始まって10年になると思います。私が関わったのは確か1999年からで、その創生期は知らないのですが、もう古参?の部類になると思われます。最初にも述べましたが、この10年間、まさに教育界は改革に揺れた年月でした。そのなかで当会もある程度の役割を果たしたという思いと、やり遂げられなかったという思いが交錯している心境です。(もちろん私自身の関与はほとんどありませんが)

ただ一ついえることは、このような学校改革(創設)運動の火を灯し続けることではないかと思っています。それにはどうしても若い方々にこのような運動の必要性を感じてもらい、興味を持ってもらうことが重要です。どうしたらいいのでしょうか。見えやすい解決策はないのですが、先ほど述べた唯一の資源である「人間」という考え方が妥当すると仮定して、ではそれを逆手に「人間」とは何なのかという哲学をどう若い人たちと深めていくのか、人間観、世界観をどう鍛えていくのか、という教育の原初の問いに戻っていくしかないのかなと思っているところです。あこがれは日々私にとってそのことを気づかせてくれる場所に違いありません。

(今回の報告は会報114号に記載した文章を転載しています)

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