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湘南小学校の四季

2011年1月9日

湘南に新しい公立学校を創り出す会では、活動発足から3年を経た2000年ごろに、理想の学校「湘南小学校」のイメージを具体的にしていました。それらを文字としてまとめたのが「湘南小学校の四季」です。当時、実際にこのような学校が開校していたわけではありません。あくめでも、当時のメンバーの議論によって誕生した概念としての理想の学校です。約10年も昔に考えていた理想の学校像を、ふたたびここによみがえらせます。


 わたしたちは日本国内に特別に認可を受けた公立学校の設立を目指して、1997年10月に活動を始めた「湘南に新しい公立学校を創り出す会(略称:創る会)」です。
 さまざまな討議を経てまとめたわたしたちのイメージする公立学校についてここに紹介します。
 この「湘南小学校」テキストはやがてわたしたちが開校を目指す新しい公立学校の事前説明会などで情報を知りたい子どもやその保護者に配られることを目的としています。
 構想から14ヶ月。原案作成から8ヶ月。検討に4ヶ月。ほぼ一週間に一度の夜間に集まり、多彩で深みのある意見を出してくれた「創る会」のメンバーに心より感謝します。



新しい公立学校の名前:「湘南小学校」および「湘南中学校」



 公立なので冠に「○○立」がつきます。またこれらはあくまで仮名とし12月までに正式名称を決定します。アイデアを受け付けています。
 また制度として2つの学校にまたがる開校準備運動を一度に展開するのは困難なので当面は小学校の開校を念頭に活動を続けます。



コンセプト



 本来学びとは自分のためのものであるはずなのに、「つぎ、何やるの?」とセンセイの指示や許可がないと現在の公立学校の子どもたちは動く自由がありません。これに慣らされていくと、自分で考えるというもっともキツイ部分を素通りして「言われたままにやる」「期待されたとおりにやる」という適応型の子どもたちが成長し、思春期にさしかかるとき親や教員などそれまでの権威に反抗はしても建設的なこと・創造的なことをやり通す能力がほとんどないことに気づきます。面倒でも、納得がいかなくても、言われたとおりにすることの方がずっと無責任で気楽だからです。
 湘南小学校では子どもたちにあえて困難な選択を迫ります。
 自分の学びに対して「考えること」「選ぶこと」「決めること」「取り組むこと」「失敗すること」「修正すること」「結果を出すこと」「伝えること」「つなげること」という一連の活動を徹底的に個人に返していこうと思っています。
 だから「わたし、これをやりたい!」へ。そうやって子どもが計画することに親と教員が相談しながらかかわるのです。周囲に迷惑をかけることなど自分勝手・わがままとの区切りもしっかりと見極め、充実した「時間と道具と場所の3つの大きな学びのスタイル」をプレゼントします。
 また個人の学びは必ず成果を披露することによって社会的な評価にさらされます。そんなとき、自分と周囲との責めぎ合いを経験することも大事だと思っています。



湘南小学校で学ぶこと



責任ある生き方ができる力
 「なぜこの学校で学ぶのか」「自分は何をしたいのか」……学びの目的となかみを子どもたちが保護者と教員とともに創ってゆくことによって、物事を選ぶ力やどうして選んだのかを説明する力がついていくと思っています。

個人にあった学習内容のたちあげ
 同年齢同時間同場所という従来の学習スタイルを改め、ひとりひとりのペースにあわせた学習スタイルを確立します。そのことによって、比較や競争を意識しないで、自分のことをじっくり見つめる力がついていくと思っています。

自分と社会を結びつける生き方へ向けて
 一人一人の興味や関心から学びをスタートさせることにより、自分のやろうとしていることややっていることについて説明する責任を子どもたちが自覚したとき、はじめてそこから周囲と自分との意味のある関係が生じると考えます。自分の思いを周囲に伝えることや社会がかかえる問題や矛盾を自分の学びに結びつけることが湘南小学校での子どもたちの学びを生涯にわたる持続的なものへと発展させると考えます。



責任ある生き方ができる力へ向けて



学びの計画づくりから
 何をどれだけの期間をかけてどのように学ぶのか、子どもと保護者と教員で相談して決めます。



一連の流れとして
 計画づくり⇒必要なものの準備⇒具体的な取り組み⇒修正や追加など⇒成果の発表⇒次への課題発見



学習教材の準備ならびに整理分類
 実物・アイデア・インターネット情報などを含めて集積していきます。それらを子どもたちが「計画作り」や「取り組み」の中で参考にできる資料として用意します。



学校と家庭
 学校は子どもたちが過ごす日常生活の一部分です。そこで家庭と学校とで異なる価値観で子どもたちに学びをとらえさせることはなるべく避けたいと思っています。そのため理解と納得のために教員と保護者の話し合いは十分に行うつもりです。
 同時に転学の自由も認め、湘南小学校の考え方にあわない場合は学区の学校に移ることができます。



個人にあった学習内容のたちあげへ向けて



他との差異でみない
 多くの子どもたちが一律に同じことを同じ時間にやらされているとき、そこに際立ってくるのは「時間」と「正確さ」と「態度」の差です。早ければ良いわけでも、正しければ良いわけでも、まじめそうに見えれば良いわけでもないのに、同じ条件に放りこまれるとそういった基準で優劣が判断されてしまうのです。個人にあった学習内容とは周囲との比較を徹底的に排していくところから始まります。


その子どもの基礎になる力を
 ある年齢の子どもたちが必ずつけていく識字や計算の能力があたかも存在するかのように思えてくる「基礎学力」という考え方を見なおします。この考え方は医学的に立証されていません。湘南小学校では一人一人の子どもたちのそれまでの成長と現在を見つめ、そこから明日につながっていく力を基礎とよびたいと思います。だから当然のこととして一人一人によって基礎になるものは異なり、これらを身につけるために学ぶ年齢も異なってくるのです。



はばひろくよりよい教材・ひらかれたスタッフを用意
 子どもたちが自らの学びを計画するとき、あるいは計画した学びに移っていくとき、湘南小学校では従来の学校ではなかなか手に入りにくいはばひろくよりよい教材や人材を子どもたちに提供していくつもりです。たとえば料理を勉強したいという子どもがいたときにその道の達人に協力をあおぐなど。それは開校を目指す「創る会」にかかわった多くの人たちの協力によって可能になります。



定員は100名
 一人一人の気持ちに応じた学びを大切にする湘南小学校では当然のこととして学習場面における「学年」や「学級」は必要ありません。そこで学校全体の子どもたちの総数を定員として明記します。6歳から12歳までの子どもたちを100名定員として受け付けます。もしも募集段階でこれをこえた場合には抽選を行います。



学区を設けません
 特別認可を与える自治体が藤沢市ならば藤沢市内のどこからでも通うことができる学校を目指しています。就学指定通知書に子どもや保護者の気持ちと関係なく子どもが通うべき学校が一方的に決まっているやり方から、子どもや保護者が選んで入学できる公立小学校を目指しています。それは「個人にあった学び」に共感してもらえる人たちに集まってほしいからです。



自分と社会を結びつける生き方へ向けて



成果の発表を繰り返しながら
 自分が興味をもったことから始まる自分の学びが周囲の子どもや大人にどのように受け止められているのかを知るために、学びの区切りに成果の発表としてプレゼンテーションを行います。そこで試される伝達の技量や学びの深さは質疑の応答やディスカッションを通して自分をとらえなおすことになるでしょう。



学びの場を拡げて
学びの場所は学校に限定しません。



湘南小学校の教育課程



 湘南小学校では学びや日常生活のあらゆる場面で子どもたちの自主性と個別化を推進します。そのため指導者側が多くの子どもたちに適用できるような一律の学習内容や時間割などを作成することはありません。ただし個人がそれぞれどのようなことに興味をもちそのためにどんな学びを展開し成果として何をつかんだのかという学びの記録は統計的に整理していきます。それは時間の経過とともに多くの子どもたちが学びを計画するときの参考資料になるからです。



☆基礎となる力☆



 自分が学ぼうとすることに必要な技術や知識、能力のすべてを湘南小学校では「基礎となる力」ととらえます。そのためはじめに五十音とかはじめに数字という知識の提供はせず、個人の学びに必要な力を教員スタッフは最大限に提供していくつもりです。



☆学びの評価☆



 学びの評価とはこれを指導・支援した教員の評価と表裏一体のものです。そのため教員が一方的に子どもたちの学びを評価する方法はとらず一定の学びの期間の終了期にプレゼンテーション期間をとり、そこで子どもとともにこれを指導・支援した教員スタッフのプレゼンテーションも行います。
 その際、質問をしたり意見を述べたりする「評価者」はほかの子どもたち・保護者などを想定しています。



☆学びの環境☆



 個人の学びにもっとも適した場所がそれぞれの学びの環境になります。そのため教室の机といすではない子どももいるでしょう。また天候によって予定していた場所を変更しなくてはいけない子どももいるでしょう。公共施設としての文化会館や図書館なども学びの環境に入ってくる可能性があります。またたくさんの教科書もあります。



☆協力・共同の場面☆



 個人が学びの必要性から複数の同調者や協力者をあおぎたくなったときのために、掲示板や集会を用意します。そこで自分の思いを広く伝え賛同者を得る方法で欲求から生じた協力と共同を経験してもらいたいと思っています。
 それは校内の子どもたちばかりが対象ではなく広く学校外へ向けて発信される可能性も含んでいます。



☆共有の時間☆



 湘南小学校の子どもたちならびにすべての教職員が一堂に会する時間をもうけます。
 事務的な連絡やプレゼンテーションならびに全校集会などがこれにあてられます。定期的に週の中に設けますが、臨時に設けられるときもあります。



☆一日の流れ☆



 子どもたちの1日の始まりは原則として午前9時とします。1日の終わりは原則として午後3時とします。その間に約1時間の昼食休憩時間があります。子ども1人あたりの1日の学習時間は5時間です。これは45分単位時間にすると6と2

3単位時間になります。
 なお各人の学習内容によっては例外的な時間の組み方も考えられます。
 清掃や食事の配膳などは全校集会を通じて合意に達した方法を採用します。
 教職員の勤務は開校する自治体のやり方にゆだねます。
 湘南小学校の開門は原則として午前8時とし閉門は原則として午後5時とします。



☆一年の流れ☆



春期………4月1日から4月30日まで(春休み含む)
初夏期……5月1日から6月30日まで
夏期………7月1日から9月7日まで(夏休み含む)
秋期………9月8日から10月31日まで
冬期………11月1日から2月28日まで(冬休み含む)
準備期……3月1日から3月31日まで(春休み含む)



☆一週間の流れ☆


9:00 12:00 1:00 3:00
月曜 共有の時間
・ 事務連絡
・ その他
週間予定記述 昼食 各人のプログラム学習 終了
火曜 各人のプログラム学習 各人のプログラム学習
水曜 各人のプログラム学習 共有の時間
・ 外部講師を招いて
・ その他
木曜 各人のプログラム学習 各人のプログラム学習
金曜 各人のプログラム学習 共有の時間
・ 全校集会
・ その他
☆その他☆



 湘南小学校は特別認可を受けた公立小学校なので学習指導要領と指導要録については従来の公立学校のものとのかかわりを保ちつつも独自の扱いを特別認可の中に含むようにします。


湘南小学校の組織分担



 湘南小学校は原則として次の組織によって構成されます。なお保護者の中で意欲があって都合のつく方にはそれぞれの組織に加入してもらいます。



☆全校集会☆



 すべての子どもと保護者と教職員によって構成されます。
 湘南小学校で行われることの意思確認ならびに決定機関です。
 討議の場であり、連絡の場あり、表現の場であり、宣伝の場でもあります。集会の進行ならびに記録は当面は教職員が担当しますが子どもたちにやがて移行していけるよう計画します。
 全校集会は対外的に全面公開の対象とします。ただし発言については構成メンバーに限ります。
 議題としてとりあげてほしいことや問題を解決してほしいことなどは個人が提案できる仕組みを築きます。



☆学校運営委員会☆



 子どもの代表2名と教職員の代表2名と保護者の代表2名と行政担当者1名と外部有識者1名によって構成されます。
 月に一度の定例会をもち、湘南小学校の教育課程に関する意見交換を行います。
 学校運営委員会は運営組織として機能し湘南小学校の今と未来をたえず検証する場となります。
 ただし議決機関ではないため、全体の合意を必要とする事項については全校集会に提案する必要があります。



☆プログラム管理委員会☆



 教職員と保護者によって構成されることを原則とします。人数は不確定です。
 プログラム管理委員会は子どもたちの学びを総合的に把握し、必要な人材や物資の調達ならびに学習者と支援者のタイムスケジュールの調整などを行います。さらにプレゼンテーションによって蓄積された学びをデジタル化して湘南小学校固有の財産として保有します。
 また「創る会」学習教材の整理保管委員会の資料をすべて引き継ぎます。学校図書に関するすべての事務も行います。



☆湘南小学校予算委員会☆



 教職員と保護者によって構成されることを原則とします。人数は不確定です。
 湘南小学校で購入もしくはリースするさまざまな消耗品や備品について学校配当予算を執行する原案を作成します。
 年度始めに学校配当予算をもとにした湘南小学校予算計画を作成し全校集会に提案します。


☆事務部☆



 市費採用もしくは県費採用の事務職員によって構成されます。
 湘南小学校予算委員会によって作成され全校集会によって承認された予算計画を執行します。 
 また教職員の給与・旅費などの実務を担当します。
 年度の終わりに予算執行報告を作成し予算委員会の監査を受け全校集会に提出します。



☆教育実習生研修委員会☆



 教職員の中から教育実習生担当者を決めます。
 湘南小学校では教員免許を取得するために小学校での教育実習を必要とする学生を期間を限定しないで年中受け入れる予定です。これはやがて学校現場に学生たちが赴任していくときに湘南小学校での経験を生かしてもらい、多くの公立学校が子どもたちの興味や関心に根ざした学習を展開できるようになってほしいからです。



☆湘南小学校評価機関☆



 学校運営委員会によって委嘱されたメンバーによって構成されます。人数は不確定です。
 湘南小学校が掲げる学びの柱立てや具体的な運営方法が適切に実施されているかどうかを審査します。毎年秋の総会に評価報告を提出し成果と課題を分析します。特別認可期間終了の前年には行政による特別認可審査に情報を提供し湘南小学校の社会的評価を明らかにします。



☆広報宣伝部☆



 教職員と保護者によって構成されることを原則とします。人数は不確定です。
 「創る会」のときの情報広告委員会が発展した組織です。湘南小学校の過去・現在・未来についてたえず発信し続けます。また外部からの取材などについての受付窓口となります。
 さらに開校以降は毎年秋の総会前後に新年度の入学・転入者のための宣伝企画を実施します。



☆学籍部☆



 教職員の中から担当者を決めます。
 湘南小学校に入学する子どもたち、転入する子どもたちの学籍を記録保管します。さらに湘南小学校から転学する子どもたち、卒業する子どもたちの学籍の写しを作成し送ります。
 毎月ごとの出席状況を把握し長期欠席者については従来の公立学校のやり方と同様に報告します。



☆総務部☆



 教職員と保護者によって構成されることを原則とします。人数は不確定です。
 湘南小学校各組織の連絡調整を行います。全体としてのスケジュール管理も行います。総会やさまざまなイベントにおいて具体的な準備や人の手配、片づけなど実務面を担当します。
 他のどの組織にもあてはまらない種類の仕事も担当します。



☆総会☆



 毎年秋のプレゼンテーションの最後に行います。
 議事運営は総務部が担当し議案提出は各組織が行います。
 総会の参加資格は在籍している子どもたちとその保護者ならびに教職員、各組織の構成メンバー、NPO法人湘南に新しい公立学校を創り出した会会員(仮称:湘南に新しい公立学校を創り出す会を発展的に解消し内容を引き継いだ会)にあります。
 その他の人たちはマスコミも含め傍聴とします。
 総会は完全に公開します。



☆湘南小学校教職員☆



 湘南小学校は研究開発指定校として特別に認可された内容が一定の期間内において保証される学校です。やがては特別認可公立学校が一般化していくことを目指しています。どちらにしても公立学校の新しい可能性を目指しているためそこに配属され勤務する教職員は従来の公立学校に勤務していたときと原則的には変わらない身分と処遇が保証されます。
 そのことを考慮し湘南小学校には次の教職員を配置します。
 校長、養護教員、栄養士、調理員、事務員、技能員、教員10人



開校の場所



 行政機関と検討の上決定します。



入学・転入に関する規定



 開校前年度の11月までに湘南小学校説明会を開催し入学を希望する保護者たちに学校の説明と入学までの方法を伝えます。
 入学・転入を希望する子どもは開校前年度の12月までに公報などを通じて開校準備室(仮称)に申し込みます。募集期間を過ぎて定員をこえた場合は抽選を行います。
 開校以降は秋の総会で年度末の卒業生と転学者の試算から翌年度の入学・転入募集を湘南小学校が行います。
 入学・転入の対象者は年齢が6歳に達した者から13歳未満の者でそれ以外の条件は設けません。



転学に関する規定



 在籍している子どもが何らかの理由で地元の学区にある公立小学校や海外の小学校、もしくは私立学校へ転学する場合は事務手続き上事前に申し出てもらう以外はまったく無条件で転学が可能です。その際、転学の理由などは公開する必要はありません。



卒業に関する規定



 湘南小学校に在籍した子どものうち12歳の3月31日を迎えた子どもは学校教育法で定める小学校の課程を修了したことになります。地元の学区にある公立中学校や私立中学校へ進学することになります。



教職員の配置に関する規定



 教職員の配置は開校初年度は異動年限規定にとらわれない希望制度を優先してもらえるように行政に求めます。開校以降も原則的に希望と納得を優先し、退職もしくは異動者の補完は湘南小学校内教育委員会が広く人材を求められるようにします。



湘南小学校での基本的な学びの考え方



 湘南小学校では学習者の側から学校教育をとらえなおしていこうと考えています。従来の公立学校では多くの子どもたちが学齢によって学年に分けられ定数によってクラスに固定されています。これは子どもの都合とはまったく関係ありません。そこで出会う担任とも偶然の出会いです。これらは大勢の子どもたちが学校施設と決められた時間を機能的に利用するには必要かもしれません。あるクラスだけ延々と体育館で体育をやり続けたり、図工室で粘土をこね続けたりしたら、別のクラスに迷惑がかかります。これはクラスの中でも言えることです。ある子どもだけ理解や習得が早いからといって教員がどんどん授業のペースをあげていったら周囲の子どもたちはたまったものではありません。逆に理解や習得に時間のかかる子どもにペースをあわせたら退屈な子どもたちが増えてしまいます。
 しかし湘南小学校ではこういった個人よりも集団を優先し、学習者よりも指導者の都合を優先した学びのあり方では必ず子どもたちの中につらい思いをする子どもが生まれてしまうと考えています。



 そこで湘南小学校では子どもの学びについて次の3つの学びのスタイルを保証します。
 「時間のスタイル」・自らの興味や関心から発した学びに没頭する力を育む
 「道具のスタイル」・自らの学びに必要で最適な道具を選択したり設定したりする力を育む
 「場所のスタイル」・自らの学びの環境を選択したり設定したりする力を育む



 他者との協力・共同・協調は個人がこのようなスタイルが完全に保証されそこから学びを成立させる3つの性質を自分のものとし少しずつ自らの中に生きる力として蓄えていきながら獲得することだと思っています。はじめにこれらが優先・保証されないと他者との協力・共同・協調はとても形式的なものになってしまう危険性があります。



湘南小学校の子どもたちに求められること



 湘南小学校では子どもたちにたくさんの学習内容を一方的に教える授業は行いません。だから子どもたちは学びの計画作りから行うのです。
 そこで子どもたちに求められることは他との比較ではないのびゆく自分自身を大切にすることです。そういう気持ちは同時に周囲でそれぞれに学びを展開する子どもたちへも向けてほしいと思います。
 重要なのは、自分は何をしたらいいのか、どうすればいいのか、それらのことをじっくり考え行動していくことです。



湘南小学校の保護者に求められること



 湘南小学校では子どもの興味や関心から発した学びをプログラムとして学びの中心にすえていきます。そのため従来の小学校で行われている学年ごとの系統的な学習内容は必ずしも子どもが選択しないかもしれません。そんなとき保護者としてそれを補完する意味で家庭で一方的な学習を展開すると子どもはいつしか「やらされる学び」に慣れていってしまいます。
 湘南小学校に子どもを通わせる保護者に求められることは自分の子どもも含めた湘南小学校の子どもたち、教職員、その保護者たちとともにたえず学びの新しい方向性を築いていく気持ちと行動力です。



湘南小学校の教職員に求められること



 これまで決まった内容をいかに分かりやすく子どもたちに教えるかに没頭してきた多くの教職員にとって湘南小学校の試みは発想を転換する必要があるでしょう。
 子どもたちそれぞれの思いを受け止め、各人の歩みを待つことは、一定の時間内に成果を要求されてきたこれまでの指導とは異なった接し方が要求されるはずです。
 多様な子どもたちの興味や関心、そこから生み出されるプログラムに柔軟に応じるにはさまざまな情報に日頃から接し人的資源も豊富に蓄積しておくことが必要でしょう。また、たえず自らの取り組みや支援のあり方が子どもたちや保護者から評価を受ける立場になるという意識改革も重要です。これまでのようにクラスに学習理解の乏しい子どもがいたとき、その子どもの責任に追いやっていた指導者としての責任が個別な対応が中心となる湘南小学校では通用しなくなるからです。
 湘南小学校の教職員に求められることは限りなく柔軟に子どもの学びに寄り添う気持ちと行動力です。