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初鳴き(2016.9.1)

 毎日、9時ごろから校庭で朝の運動をします。
 雨でない限り、朝の運動はなくなりません。
 衣服の着脱と服のたたみ方なども指導対象です。
 決まった内容を毎日繰り返すことで、活動に見通しをもつ力が育ちます。
 いまは7歳の男の子がリーダーになって
 「これから朝の運動を始めます」と進行しています。

 朝の運動の最後のメニューは、フリータイム。
 時間になるまで各自が体を動かすなかみを決めます。

 わたしは男の子6人とフットベース(キックベース)に付き合いました。
 やりたい気持ちはあっても、チーム分けやボールやベースの準備はおとながいた方がスムーズなのです。
 「先生、よっちゃん(仮名)、やなんだよ」
 フットベースやる気満々のよっちゃんを見ながら不平が聞こえてきます。
 「なんで?」
 「だって、よっちゃん、負けると『お前のせいだ』とか言ったり、わんわん泣いたりすんだもん」
 確かに何度もそういう前歴がある、よっちゃんです。

 3人対3人でホームベースを挟みます。
 わたしは審判。
 「これから試合を始めます。でも、終わったときに負けたひとが『お前のせいだ』とか言ったり、わんわん泣いたりしたら、もう100年間やりません。気をつけてください」
 「はーい」
 よっちゃん、返事してました。

 ゲームは互いに点を取り合い、合計していないもんだから、勝敗は不明のまま終了。
 ふたたびホームベースを挟みます。
 「点数はわかりませんが、これで試合を終わります。だれか『お前のせいだ』と言いましたか?」
 みんな口を真一文字に結んでいます。

 「だれか、わんわん泣いていますか?」
 ちょうど、そのとき、近くの大きな桜の木からミンミンゼミの初鳴き。
 「先生、蝉が泣いてます。やべー、100年できないよー」
 「大丈夫、蝉は許しましょう」
 「じゃぁ、またフットベースできるね」

 よっちゃん、うきうきで「みーんみーん」と言いながら教室に戻って行きました。

 7月12日。9時半。藤沢は長後の蒸し暑い朝にあった実話です。 

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