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デジッタかぶルBSCS(2011.9.25)

 2011年7月24日、日本国内では東北地方の被災地を除いて、地上アナログ放送が終了し、地上デジタル放送が開始された。


 素人には、アナログ放送とデジタル放送の違いがまったくわからん。
 知人に電気関係の専門家がいないわたし。きっと全国的にはそんな「わたし」がたくさんいるはずだ。
 なのに、日本人は疑問を抱いても、怒らない。
「仕方がないよ。お上が決めたことには従わなきゃ」
 豊臣の昔から、ひとびとは武器を奪われ、言論を封殺され、信仰を排除されてきた。その歴史が遺伝子に組み込まれているので、放送スタイルの変更という生活革命が迫っても、粛々と指図に従ったのだ。
 しかし、この変更にはお金が動いている。デジタル放送対応のテレビやチューナー、ケーブルテレビの場合は契約の変更などで、庶民は出費しなきゃならなかった。あのお金はきっとテレビ会社や電気会社、その部品を作っているメーカーたちを潤したことだろう。こうなると、デジタル放送への変更は、日本の権力者の常套手段「産学官」一体のかたちを変えた年貢制度だったのかとはすに構えてしまう。
 ちくしょう。まんまとやられちまった。
 タバコを吸わないわたしには関係のなかった「タスポ」カード。あのときだって、自動販売機では買えなくなった連中が、結局は対面販売の店で買っているではないか。なかには、自動販売機にタスポをぶら下げて、「これを使ってください」というところもあるという。ああいう生活革命では、大きなお金が動く。その結果、一部の業種がぼろもうけをする。
 あのときは無関係だったのに、デジタル放送開始では我が家もアナログにさよならしてしまったのだ。


 このままでは引き下がらないぞ。
 かたくこころに誓って、しったかぶりせずにデジタル放送について調べてみた。
 だいたい、ビーエスだのシーエスだの、みなさん何のことだか知ってますか?どうして日本語で表現しないのだろう。


 まず世界各国も、日本みたいにアナログ放送からデジタル放送に変更しているのかどうかを調べた。


1998年
9月 - イギリスで、地上デジタル放送への移行開始(2012年完了予定)。
11月 - アメリカ合衆国で、地上デジタル放送への移行開始(2006年完了予定だったが、期限を2度の延長)。
1999年
4月 - スウェーデンで地上デジタル放送への移行開始(2007年10月15日完了)。
2000年
5月 - スペインで地上デジタル放送への移行開始(2010年4月3日完了)。
2001年
1月 - オーストラリアで地上デジタル放送への移行開始。
8月 - フィンランドで地上デジタル放送への移行開始。(2007年9月1日完了)。
10月 - 大韓民国で地上デジタル放送への移行開始。(2010年末完了予定だったが、2013年末に延長)。
2002年
11月 - ドイツで地上デジタル放送への移行開始(2008年11月25日完了)。
2003年
3月 - カナダで地上デジタル放送への移行開始(2011年8月31日完了)。
4月 - オランダで地上デジタル放送への移行開始(2006年12月11日完了)。
8月 - スイスで地上デジタル放送への移行開始(2008年2月25日完了)。
12月 - イタリアで地上デジタル放送への移行開始(2008年12月の予定だったが2012年末に完了予定)。
2004年
1月 - 台湾で地上デジタル放送への移行開始(2012年6月30日完了予定)。
2005年
3月 - フランスで地上デジタル放送への移行開始(2011年11月末完了予定)。
2006年
3月 - デンマークで地上デジタル放送への移行開始(2009年10月31日完了)。
6月 - 国際電気通信連合の地域無線通信会議にて、2015年までにデジタル放送への移行を推進する勧告を、ヨーロッパ・中東・アフリカ・日本等の約100カ国が採択。
2007年
9月 - ノルウェーで地上デジタル放送への移行開始(2009年11月30日完了)。
2008年
2月 - シンガポールで地上デジタル放送への移行開始。
1月 - 中華人民共和国で地上デジタル放送への移行開始(2015年完了予定)。
 

 いやはやびっくり。
 とても多くの国々がとっくにデジタル放送に変更していたではないか。
 こんなにたくさんの国々がこぞってデジタル放送に変更しているので、きっとアナログよりもデジタルの方が「いい」ということにしておこう。何がいいのかはわからないが、ともかく「いい」らしい。でなきゃ、こんなにあっちもこっちも変更はしないだろう。


 それでは、デジタル放送のリモコンについている「BS」「CS」って一体何のことだろう。これについても調べてみた。


 まずビーエスは、当然英語の頭文字だ。ブロードキャスティング・サテライト。「放送衛星」。地上から3万キロ以上の空に打ち上げられた放送を専門にする人工衛星を使った放送のことを、ビーエスというらしい。


「テレビカメラで写した人やモノは、525本の横線(これを走査線といいます)に切られ、その色や形を電波にのせて、テレビ塔などから各家庭のテレビに送り出しています。各家庭のテレビは、この電波に乗った525本の横線を再びくっつけて、人やモノを画面に映し出しているのです。

「衛星放送」はこのテレビ塔を人工衛星にチェンジしたもので、まずは地上から3万6000キロの高さに打ち上げた人工衛星にテレビ局が電波を送信。人工衛星はその電波を受けるや否や、各家庭やビルに取り付けてあるパラボラアンテナに送ります。
衛星放送はこのように高い空の上にある人工衛星を使うので、テレビ局から遠く離れた島の人でも、都会の人と同じ番組を見ることができます」


 インターネットで説明しているひとがいた。
 いったん電波が宇宙へ運ばれ、そこから人工衛星を経由して、ふたたび地上に電波が戻ってくる仕組みらしい。こうすれば途中の障害物に邪魔されることなく電波を遠くの目的地に確実に飛ばせるのだ。


 ではシーエスは何なのだ。これはコミュニケーション・サテライト。「通信衛星」。同じ人工衛星でも、放送専門ではなく、ほかにも様々な情報のやりとりを行っている通信衛星を使った放送が、シーエスらしい。


 なぜ、放送衛星と通信衛星という異なった役割の人工衛星を使い分けているのかはまだわからない。
 というよりもちゃんと調べればわかるのだろうが、そんなことは知らなくても何とかなる。
 実感としては、シーエスはとてもチャンネルが多いが、ビーエスはまだあんまりチャンネルが多くない。ビーエスの改良によって、今後はチャンネルが増えるのかもしれない。


 何とか日本語を充当できないか。
 ビーエスは、放送専門の人工衛星。一途な役割を担っているので「いちず」。シーエスは、多用途の通信衛星の一部を使っているので「いちぶ」。
「今夜のいちず放送では、プロ野球の後半戦をお送りいたします。なおいちぶ放送では、囲碁の時間をお送りいたします」


 ケーブルテレビは、放送センターから家庭の一軒一軒のテレビまで直接ケーブルを引き、放送センターで受信した一般のテレビ放送(VHF,UHF)や衛星放送(BS・CS)などを配信するシステム。各ケーブル局によって配信内容が変っている。
 もともとは受信状態の悪い地域の解消に向けて考案されたシステムだ。ちなみに、ケーブルテレビはCATVと表記されるが、これも頭文字。正しくは、コミュニティー・アンテナ・テレビジョン(Community Antennna TV)。


 何でもかんでもカタカナ言葉や、省略語にしないで、その性質や役割を代弁するような名前を考案する「ちから」が言語のしなやかさだ。中国では、外来語には必ず「漢字」をあてるという。読み方は外来語のままだが、文字は漢字になる。
 デジタルを「出字樽」。ビーエスを「美衣絵巣」。シーエスを「私意絵巣」。こんなふうに表記を変えても、わたしには意味はまったくわからないままだ。


この考察は書き下ろしです。

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