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迷惑なエイペック(2010.11.23)

11月7日から14日まで横浜でエイペックの会合が開かれている。
エイペックは、APECの読み方。
正確には「Asia-Pacific Economic Cooperatin」の略語だ。日本語にすると「アジア太平洋経済協力」のこと。

2010年APEC公式ホームページより
「APEC(Asia Pacific Economic Cooperationアジア太平洋経済協力)はアジア太平洋地域の21の国と地域が参加する経済協力の枠組みです。経済規模で世界全体のGDPの約5割,世界全体の貿易量及び世界人口の約4割を占める当該地域の持続可能な成長と繁栄に向けて,貿易・投資の自由化,ビジネスの円滑化,人間の安全保障,経済・技術協力等の活動を行っています」

2010年APEC公式ホームページより「設立の経緯」
「1980年代後半,外資導入政策等によるアジア域内の経済成長,欧州,北米における市場統合が進む中,アジア太平洋地域に,経済の相互依存関係を基礎とする新たな連携・協力の必要性が高まりました。1989年,日本からの働きかけもあり,ホーク・オーストラリア首相(当時)はアジア太平洋地域の持続的な経済発展及び地域協力のための会合の創設を提唱しました。これを受けた形で米国,ASEAN等においても次第にアジア太平洋経済協力構想の実現に向けた機運が高まり,同年第1回APEC閣僚会議がオーストラリア(キャンベラ)で開催されました」

2010年APEC公式ホームページより「特色」
「APECの活動は,「協調的自主的な行動」と「開かれた地域協力」を大きな特色としています。「協調的自主的な行動」とは,APECがメンバーを法的に拘束しない,緩やかな政府間の協力の枠組みであり,各メンバーの自発的な行動により取組を推進することを示しています。このため,他のフォーラムに比べてAPECではより先進的な取組を行うことが可能となっています。そして,APECの活動を通じて得られたより自由で開かれた貿易・投資といった成果を,域内に止まらず,域外の国・地域とも共有するというのが,「開かれた地域協力」です」

しかし、APECの開催については「いらない!APEC反対の会」「京都財務相会合対抗行動実行委員会」など反対しているひとたちもいる。

わたしは、政治的な立場でAPECの開催そのものにとくに意見はない。
それが、アジア太平洋地域のひとたちに平和と安定、雇用と自由をもたらす活動ならば「よいにこしたことはない」と単純に考えている。しかし、草の根で深い市民活動をしているひとからすれば「何を暢気なことを言っているんだ」と叱られるかもしれないが。

そういう本質的なことではなく、わたしにはエイペックが迷惑この上ないのだ。
週末に横浜に買い物に行くことが多い。
みなとみらい地区は、今回エイペックが開催されている国際会議場を抱える。神奈川県や横浜市にとっては、世紀のビッグイベントなのだろう。
9月頃から異変に気づいた。埋め立てた後にちっとも買い手の決まらない空き地に突然プレハブが何棟も建設された。やがて、そこには警察の護送車が全国各地のナンバーをぶら下げて常駐するようになった。
10月に入ってからは、こういう車両が警察にはあったのかと思うほど、ものものしい重厚な装備車両がランドマークタワーや赤レンガ倉庫周辺を、警戒運転し始めた。ウォーターフロントに、ちっとも似合わない光景だ。

11月に入ってからは、週末の横浜ショッピングを控えている。
自分が悪いことをしているわけではないのに、あの警察の威力は「会議が終わるまで一般人は近寄るな」と無言で宣言している。
加盟国から参加する多くの要人の警護。安全な会議の進行。無事に終了すること。警備を一手に引き受ける警察当局としては、メンツをかけたイベントなのだろう。
しかし、しろうとは「全国からこんなに集まって、それぞれの地元は手薄ではないのかな」と心配する。

わたしは、通勤に大船駅から東海道線を使っている。
風邪を引いたのでポケットティッシュで洟をかむ。そのポケットティッシュを駅のゴミ箱に捨てようとした。あれれ、黄色いシールがゴミ受けの穴に貼ってある。
「エイペック開催中はゴミの収集を中止します」
どういうことよ。ゴミを捨てるなってことかい。
ゴミ箱に爆弾などの不審物が混入しないように配慮しているのか。それにしたら、あのシールにかかった費用はいくらだ。
駅のコインロッカーも、まったく使えないようになっていた。
ふと改札口を抜けて見上げる位置に、警戒中の警察官が目を光らせている。

14日にエイペックは終わってくれる。
とっても迷惑なので、もう横浜では、いや神奈川県内では開催してほしくない。

11月14日。なんと鎌倉にエイペック関係者が訪れた。
13日は各国の代表者の夫人たちが建長寺と高徳院(大仏)を訪ねたそうだ。鎌倉市内は厳重な車両規制が行われた。わたしは、そんなやばい町にいるのがいやで、茅ケ崎にのんびりくつろぎに出かけていた。
そして、14日。かつてから陶芸教室を予定していた。
わたしの師匠は、葉山町に窯を構えている。数ヶ月に一度ずつ、ろくろ引きの陶芸を伝授していただいている。師匠は、年度始めに体調を崩し、ことしはあまり無理をしないように陶器を製作している。だから、素人相手の教室で迷惑をかけないように、体調の回復をずっと待っていたのだ。今回、ようやく「教えることができる」ようになったというので、泥にまみれに行こうと思っていたのだ。
それなのに、アメリカ大統領が
「わしゃ、もう一度、鎌倉で抹茶アイスをタベテェなぁ」
とでも言ったみたいで、鎌倉訪問になったそうだ。

ちなみに、多くのひとが知っていると思うが、鎌倉ではお茶はとれない。当然、抹茶も産地ではない。また、抹茶アイスが、鎌倉オリジナルのスイーツというのは聞いたことがない。
きっと、滞在先の横浜にも抹茶アイスはあるはずだ。わざわざ、アイス一つで観光地を厳戒態勢に変身させる必要はないだろう。
わたしは、鎌倉から逗子を抜けて葉山へ行かなければならなかった。それなのに、数日前から鎌倉市内のあちこちに車両規制の表示が目立つようになった。仕方なく、陶芸教室はキャンセルした。

14日、早朝。自宅を出て市内をジョギングした。
楽しみにしていた陶芸教室をキャンセルさせられた腹いせに「厳戒態勢」とやらを拝みに走った。市内の辻辻には、制服警察官が不審者を発見するべく目を吊り上げていた。背中には「大阪府警」とか「北海道警察」など、県外の警察表示が目立った。たしか、わたしの知識では警察は自治体管轄のはずだから、県外の警察官は神奈川県に来たら、たとえ制服を来ていても職務権限はないはずなのだが。その辺の事情はどうなっているのだろう。エイペックは、そういう法律面を超えるイベントなのか。
由比ヶ浜の海岸近くに、京浜急行バスの駐車場がある。バスの駐車場だから広い。その駐車場が、青と白の警察バスで占拠されていた。ナンバーも「下関」とか「なにわ」など県外のものばかりだ。みなさん、きのうはどこに宿泊したのだろう。鎌倉にはまともなホテルはあまりないはずなのに。海岸線にも警備のための警察官が大またで通行車両を睨んでいた。
高徳院は午前8時過ぎだというのに、わたしが確認しただけで3人も制服警察官が警備をしていた。いままで何度も早朝に散歩をしたが、高徳院だけがこんなに特別扱いを受けているのは初めてだ。大仏坂のトンネルを抜けて、常盤口へ向けて走る。なんと、鎌倉の入口にあたる八雲神社の交差点で検問が始まろうとしていた。明らかに、藤沢方面から鎌倉市内に入ろうとする車を鎌倉山方向に誘導しようとする作戦だ。

オバマさんは、こんなことを地元に強要してまで、抹茶アイスを食べたかったのだろうか。


この考察はウエイ6494-6496で紹介しました。

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