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知念実希人
mikihito chinen

天久鷹央の推理カルテ
18
呪いのシンプトム

ただ今読書準備中(2024.12.11)実業之日本社770202412

死神シリーズ

3死神と天使の円舞曲

ただ今読書準備中(2024.11.13)光文社760202411

死神シリーズ

2黒猫の小夜曲

ただ今読書準備中(2024.11.13)光文社68020181

死神シリーズ

1優しい死神の飼い方

ただ今読書準備中(2024.11.13)光文社68020165

屋上のテロリスト

ただ今読書準備中(2024.11.13)光文社62020174

神のダイスを見上げて

ただ今読書準備中(2024.11.13)光文社68020217

天久鷹央の推理カルテ
17
猛毒のプリズン

完璧だ。その人物は心の中でつぶやく。これは完璧な殺人計画だ。誰にも解くことのできない完全犯罪。いや、解くことができないどころではない。誰もこれが犯罪であることにすら、気づけないだろう。それほど完璧な計画を私は構築したのだ。その人物の胸が、温かい満足感で満たされていく。ただ、少し残念な点があるとしたら、この完璧な犯罪が誰にも知られることなく行われ、そして誰にも知られることなく完遂されることだ(2025.2.6)実業之日本社740202410

傷痕のメッセージ

ラテックス製の処置用手袋を嵌めた手で、内視鏡のプローブを掴みながら、堀寛太は荒い息をつく。医師となって30年以上、多くの大手術を執刀してきた。しかし、いまだかつてこれほどまでの緊張を覚えたことはなかった。「本当に…いいんだな?」マスクで覆われた堀の口から、震える声が漏れる。「さっきから何度同じ質問をするんだ、いいからさっさとやれ」処置用のベッドに横たわった老齢の男が苛立たしげに吐き捨てた。「けれど…うまくできるかどうかも分からない。こんな常識外れの処置…」(2024.12.26)角川文庫86020249

となりのナースエイド

闇の中、延々と続く階段を駆け上がっていく。肺が痛い、鉛のように足が重い、腰から下の感覚がなくなっていく。それでも、ただひたすらに足を動かし続けた。ここはどこなのだろう?私はなんで必死に階段をのぼっているのだろう?ようやく、階段の先に扉が見えてきた。赤錆に覆われた巨大の鉄製の扉。階段をのぼりきると、渾身の力を込めて扉を押す。悲鳴のような軋みを上げながら開いた扉の隙間から、氷のように冷たい風が吹き込んできた。外に出ると、そこには見覚えがある空間が広がってきた。外に出ると、そこには見覚えがある空間が広がっていた。「屋上」乱れた息とともに、かすれ声が口から洩れる。足は止めているというのに、なぜか脈拍が上がっていくのが分かる。心臓を鷲掴みにされているかのように胸が苦しい。ここにいてはダメだ。すぐにここから逃げないと

(2024.12.27)角川文庫800202311

祈りのカルテ

冷たい水が食道をとおり胃へと落ちていく。山野瑠香は大きく息を吐くと、リビングテーブルに散乱する空になった薬のPTP包装シートを一枚、指ではじいた。硬いフローリングに座る瑠香はのろのろと首を回し、タンスの上に置かれた写真立てに視線を移す。写真の中で、瑠香は若い男と手を繋いで立っていた。男のどこか頼りなげな、それでいて優しそうな笑顔に、水で冷やされた胸骨の奥がほんのりと温かくなっていく。3年前、幸せだった頃の記憶で頭がはじけた。恍惚感を味わいながら、右手首の腕時計に視線を落とす。時計の日付は「3」を示している。もう113日になったのか。それじゃあ明後日だ。明後日まで「あそこ」にいれば、きっとまた優しい彼と会える。優しい彼に会える?本当にそうだろうか?唐突に湧き上がってきた強い不安が、胸を締め付ける。息苦しさに襲われ、呼吸が荒くなっていく。瑠香は慌てて腕時計の上から手首を撫でた。何重にも紐が巻き付いているかのように白い筋が刻まれている手首を。高校時代からくり返してきたリストカットの痕。それに触れると、乱れていた心が少しずつ凪いでくる

(2025.1.1)角川文庫64020182

天久鷹央の推理カルテ
16
絶対零度のテロル

寒い、暑い、冷たい、熱い、痛い。男は深い森をおぼつかない足取りで歩く。はらわたが凍っていくような感覚が体の内側に広がっていく。遠くから猛獣の咆哮のような低い音が響き渡り、氷結しかけている男の内臓を揺らした。(あそこから、あの場所から少しでも離れなければ)霞がかかる思考の中、男は自らに言い聞かせ、前へと足を動かし続ける。やがて男の歩みは止まる。再び歩き出そうと歯を食いしばるが、脳からの命令を伝える神経が凍り付いてしまったかのように、足はもはやピクリとも動かない。白く濁った視界がゆっくりと傾き始める。肩と側頭部に激しい衝撃と痛み。倒れたことに気づく。見開いた男の目に、生い茂った葉の向こうで淡く輝く満月。「きれいだ」

(2024.10.31)実業之日本社74020244

天久鷹央の推理カルテ
15
羅針盤の殺意

鷹央は振り返ると床に落ちている大量の診療記録に目を注いだ。「あ、ああ、あああああ」。獣じみた声が漏れ出す。「ど、どうしました」。驚いた小鳥遊が声をかける。鷹央は両手で頭を抱える。「犯人に当てはまる人物がもう一人だけいた。私の目は節穴だ。なんて馬鹿なんだ。こんな簡単なことに気づかないなんて」。髪を乱暴に掻き乱す鷹央。小鳥遊は落ち着くように声をかけ、華奢な背中に手を添えた。「私は探偵失格。いや医師失格だ。先入観に目が曇り、目の前にある真実に気づかなかった」「いや私の脳は真実に気づいていて、私の心がそれに気づかないふりをしていたのかもしれない」。自らを鷹央は責め続けた。「私は神から与えられてきたギフトから目を背けてしまった」。通路の出口に向かって鷹央はゆっくりと歩き出す。小鳥遊がどこへ行くのかと問う。鷹央は静かに告げた。「この密室殺人事件の真相をあばきに行くんだ」

(2024.10.28)実業之日本社70020242

天久鷹央の推理カルテ
14
吸血鬼の原罪

権田鉄平は唇をかんだ。日付が変わった3時間前に彼は生業のつり銭拾いへと出かけた。住処としている久留米池公園の周りを深夜に歩き、飲料の自動販売機などのつり銭受けを確認する。そこに忘れられているつり銭を探すのだ。今日も仕事に出かけたのだが、突然、大粒の雨が降ってきた。6月だが夜はまだ寒い。夜風が濡れた体から容赦なく体温を奪っていく。段ボールとビニールで作った自らの家に帰ろうと小走りしていた。前夜にコンビニで買った菓子パン1個。それ以来何も口にしていない。ホームレスになって20年以上、つり銭拾いを主な収入源としてきた。昔は一晩で2000円以上も入手できた。最近は現金ではなくICカードを使う者が増え、自然とつり銭が少なくなっていた。ホームレスへの福祉事業を行っている団体からは「もうすぐ還暦なんだから生活保護を受けましょう」と言われている。ふざけるなと思う。生活保護は住所がないと受けられない。連中が勧める安アパートに住まなければならなくなる。それに耐えられなかった。久留米池公園には十数人のホームレスが棲みつく。権田はその中で最古参だ。ホームレス同士の小競り合いが起きるが権田の近辺を侵そうとする者はいない。彼はここにいる限り王なのだ

(2024.10.22)実業之日本社770202310

天久鷹央の推理カルテ
13
生命の略奪者

斉藤幸正は品川を発車した新幹線に乗っていた。目的の新横浜にはすぐに着く。膝の上に乗せているクーラーボックスには移植用の心臓が入っていた。ドナーから取り出した心臓をレシピエントがいる病院まで届ける。日本臓器移植ネットワークの移植コーディネーターになって15年。斉藤はまだ心臓の搬送を数回しか経験していない。欧米に比べて日本では脳死臓器移植が極めて少ない。脳死患者からしか提供できない心臓の移植はごく稀にしか行われなかった。責任の大きさが斉藤にのしかかる。ドナーは23歳の大学院生の女性だった。キャンプ場の川で溺れ救出されたが脳死状態になった。免許証に臓器提供の意思が表明されていたため遺族の許可を得て脳死臓器移植が決まった。緊張で強い尿意を覚えた斉藤は、車内のトイレへ向かった。クーラーボックスを肩にかけて多機能トイレの自動ドアを開けた。扉が閉まりかける瞬間、男が体をねじ込んできた。個室に入った男はスタンガンで斉藤の身動きを封じた。男はスタンガンで斉藤を殴りつけた。血まみれで意識を戻した時、クーラーボックスから心臓が消えていた (2024.7.3)実業之日本社76020244

天久鷹央の推理カルテ
12
久遠の檻

松本誠二は巨大なショベルカーを巧みに操る。オペレーターになって12年。巨大な重機は自分の体の一部になっていた。古びた6階建てのコンクリート造りのビル。作業員たちがせわしなく出入りして廃材を運び出している。西武新宿線田無駅から徒歩で10分。この解体現場に誠二は派遣されていた。誠二は敷地内にある桜の大木を処理していた。幹の大部分が枯れている樹木を引き抜く。周囲の土を掘って根を処理する必要がある。大きな太さの根が何本も走っているのを見て誠二は小さく舌を鳴らした。誠二はレバーを動かして地面にショベルを突き刺して土をすくいあげようとした。その瞬間、金属同士がこすれあう不快な音が響いた。あわててレバーから手を離した誠二。「何だよ、今の音?」同僚の作業員が近づいてくる。地面に突き刺さったショベルに近づく。金属製の巨大な箱を掘り出していた。横2メートル、縦3メートル。中央部はショベルの先端に貫かれ大きくひしゃげ蓋が浮いていた。表面の土を払う。そこには「コスモポリタン芸能 タイムカプセル」と記されていた

(2024.9.27)実業之日本社82020244

天久鷹央の推理カルテ
11
神話の密室

小鳥遊は救急部の日直を鴻ノ池と組んで担当していた。内線電話が着信した。西東京救急隊からの通報だ。救急隊員の声はどこか気怠そうだった。50代男性でバイタル安定、意識レベル低下。小鳥遊は脳卒中を疑う。しかし、救急隊員は泥酔だと教えてくれた。天医会総合病院の患者で入院予定患者だった。診療記録を素早く調べる。精神科にかかっている宇治川心吾、アルコール依存症だ。本人が有名な小説家だと繰り返していた。西東京市の蕎麦屋から午後2時頃に客が倒れて意識がないと通報があり救急隊が到着。従業員の話では正午前に来店して蕎麦を食べたあと、酒と焼酎を飲み続け、突然嘔吐して動かなくなったそうだ。小鳥遊は看護師に家族への連絡を任せた。小鳥遊は若いときに宇治川心吾の小説をたくさん読んでいた。学生時代に好きだった作者がアルコール依存症で酔いつぶれていた。思い出が汚された気分になった。そこに細身の女性とスーツ姿の中年男性がやってきた(2024.9.19)実業之日本社68020243

天久鷹央の推理カルテ
10
魔弾の射手

小鳥遊と鴻ノ池は救急の当直だった。見習いの鴻ノ池が小鳥遊とペアになる確率は少ないはずだが、なぜか多い。それは鴻ノ池が小鳥遊の当直当番表を見て意識的に当直希望を出しているからだった。その夜、小鳥遊の院内携帯が鳴る。院内携帯は、救急隊からの直通回線。最重症レベルの搬送で使われていた。患者は時山恵子。40代の女性。十階建ての建物から転落して心肺停止状態。右大腿と右上腕に開放骨折。かなり、厳しい状態だ。天医会総合病院の患者だったので鴻ノ池がカルテを調べると、膵臓癌ステージ4だった。救急隊員が恵子が転落した病院について語っていたのを小鳥遊は聞いた。10年以上前に潰れた廃病院で、呪われていると噂があった(2024.9.11)実業之日本社80020243

天久鷹央の推理カルテ
9
火焔の凶器

鷹央と小鳥遊は清瀬市のとある家を訪ねた。翠明大学日本史学科の室田教授の依頼を受けて出向いてきた。陰陽師の呪いを解いてほしいというのが依頼内容だった。鷹央の好奇心を大いにくすぐる内容だったが、小鳥遊には眉唾にしか思えない。室田はキャリーカートに乗った装置からチューブが鼻まで続く。在宅酸素療法。慢性の呼吸不全を患う患者に日常的に携帯可能なボンベから酸素を供給する。室田は肺気腫だった。おそらくはたばこの吸い過ぎだろうと鷹央は判断した。蘆屋炎蔵という陰陽師の研究をしていた。安倍晴明を騙して殺した蘆屋道満と何らかの関係があるらしい。道満自身もこれまで存在は認められていたがどんな人物だったのかはよくわかっていない。そこで室田は炎蔵を研究することで道満のこともわかってくるのではないかと推測していた。室田の家系はずっと古文書や骨とう品を集めていた。その中に炎蔵に関する古文書を見つけたというのだ。検非違使に追われ関東に逃げたことが判明し、鎌倉に炎蔵の墓があることまでつかんだ。室田は共同研究者とともに墓の調査をした。するとその後、次々と体調を崩し始めたというのだ

(2024.8.22)実業之日本社79020242

天久鷹央の推理カルテ
8
甦る殺人者

天医会総合病院統括診断部外来診察室に警視庁捜査一課の刑事、桜井公康が来ていた。「何の用だ」鷹央は彼に問う。すでに午後5時半を過ぎて外来は終了していた。先週深夜に大泉学園の工事現場で女子高生が絞殺された事件について桜井は尋ねた。「真夜中の絞殺魔事件」。鷹央の助手の小鳥遊は思わず声を上げた。正式には23区内連続女性絞殺事件。3ヶ月の間に女性ばかり3人も絞殺されている。同じ手口で無差別に女性ばかり殺されているので、警視庁は同一犯による連続殺人事件と考え捜査にあたっている。小鳥遊の記憶には4年前にも似たような手口で3人の女性が殺された事件が思い出された。桜井はその事件でも捜査にあたったが犯人はいまも捕まっていない。4年前の事件と今回の事件、被害者の爪の間から犯人の腕の皮膚が発見された。今回の事件で見つかった犯人の血痕。どちらも科捜研で調べた結果、DNAが同じだったのだ。その結果、警察は同じDNAを持つ男を特定した。ならばその男を逮捕してDNAを採取すればいいと鷹央は突き放す。しかし桜井は首を振った。すでにその男は死んでいるのだと。そしてその男の死亡診断書を書いたのは研修医時代の鷹央だったのだ。そこで桜井たちは本当にその男が当時死亡していたのかを鷹央に確認しに来たのだ

(2024.8.21)実業之日本社7420241

天久鷹央の推理カルテ
7
神秘のセラピスト

宮城辰馬は新宿駅前のスクランブル交差点に立ち尽くす。地元では見たことのない人の波、群れ、無関心な動き。羽田空港からここまでくる間にも息苦しさを感じていた。姉が住むマンションが渋谷駅から近い所にある。専門学校で学び、東京でミュージシャンを目指すという夢をかなえるための上京だった。信号が青に変わった。人の奔流に押し流されながら辰馬も歩き出す。交差点の中央で人と人がぶつかり合う。複雑に交差しながらそれぞれが目指す方向に歩いて行く。目まいを覚えた辰馬は、右手の指先に痛みを覚えた。よく見ると、右手の指先がどす黒く変色していく。視線を変えると左手の指先も黒ずんでいた。自分の体がどんどん腐っていく。悲鳴を上げた辰馬。その声は雑踏にかき消された。天医会総合病院の統括診断部で小鳥遊が若い女性と向かい合っていた。宮城椿という女性は弟の身に起こった不思議な変化について相談に訪れていた。弟が人ごみに出ると体が腐ってしまうという。天久鷹央はその話に食らいついた

(2024.7.31)実業之日本社76020242

天久鷹央の推理カルテ
6
幻影の手術室

清和総合病院。鴻ノ池舞は虫垂炎で入院して手術を受けたばかりだった。まだ麻酔から完全に覚めきらない状態で手術台にいた。麻酔を担当した湯浅医師。舞と同じ大学の先輩だった。個人的に付き合ったこともあった。他の医師が退室し、湯浅が術後の対応をしていた。すると何者かが湯浅を襲い、激しくやり合った末に湯浅はメスで気管を切り裂かれ大量に出血して倒れた。薄れた意識からゆっくり覚醒した舞の手には血に濡れたメスが握られていた。防犯カメラをチェックした限り、手術室には湯浅と舞以外は誰もいなかった。その第8手術室は清和総合病院では有名な幽霊が出る手術室だった。湯浅はまるで透明人間と争うかのような動きの後に倒れた。警察は舞を容疑者として捜査した。天医会総合病院の天久鷹央と小鳥遊は毎日の無実を証明するために独自の調査を開始する。そのために小鳥遊はいったん天医会総合病院を解雇され清和総合病院に着任して情報を集めた(2024.7.30)実業之日本社760202312

天久鷹央の推理カルテ
5
悲恋のシンドローム

緩慢な動きで立ち上がった鷹央がゆっくり小鳥遊に近づく。「先週の時点で事件を解決した気になっていたが、それは間違いだった。この事件を解決できるのはお前しかいない」。いつも明快な推理で多くの謎を解決してきた鷹央が弱音を吐く姿を小鳥遊は見たことがなかった。看護師の関原桜子が何者かに部屋で殺され、10キロ以上も離れた岸壁で死体が発見されるという不思議な事件だった。桜子の看護学校時代の友人、相馬若菜が鷹央の病院に勤務していた。友人の死について鷹央に解決してほしいと依頼してきたのだ。警察でも遺体が瞬間移動したのではないかと思われる不思議な事件として未解決で困っていたのだ。それを鷹央が解決した。桜子は何者かに自分の部屋で頭部を打たれた。あるいは揉み合っているうちに倒れて頭部を打ちつけた。そのはずみで昏睡。その後、大出血をした。それを鷹央は頭部を強く打ったことによる胃潰瘍と解き明かした。自分でそのことに気づいた桜子がマンションから歩いてすぐの自分が勤務する病院まで行く途中で改造車を暴走させて遊んでいた大学生たちに轢かれてしまったのだ(2024.7.28)実業之日本社76020241

天久鷹央の推理カルテ
4
スフィアの死天使

小鳥遊優は東京都東久留米市の住宅街に立つ10階建ての総合病院、天医会総合病院の前に立った。総合受付で統括診断部への紹介を頼んだ。しかし、受付嬢は「少々、お待ちください」と困惑すると隣の受付嬢と小声で話し始めた。「そんなのあったっけ?」「あれだよ、屋上にある座敷童子みたいなドクターの」。5年間、外科医として勤務してきた小鳥遊はある理由によって外科医の道を捨て内科医を志した。その医局からこの天医会総合病院への出向を言い渡された。その時、はっと息を飲んでしまうような魅力ある女性が近づいてきた。女性はこの病院の事務長の天久真鶴だった。自分が医局に案内するという。胸躍らせながら小鳥遊は真鶴の後を追った。10階の屋上に行くと、そこには家があった。それは副院長室だった。驚く小鳥遊に真鶴がいう。「副院長はここに住んでいて、ほとんど外出しません」。そして副院長こと天久鷹央について説明した。真鶴の妹が鷹央だった。これまで多くのドクターがここに来たが、みんな鷹央とそりが合わずにすぐに大学病院へ帰ってしまったという。それについては小鳥遊が所属していた大学病院の教授が、かなり変わった人が上司になると教えてくれていたので驚かなかった。そして、無理をする必要はないが、あの先生と一緒に仕事をすれば、きっと小鳥遊の今後の貴重な経験になると太鼓判を押してくれた(2024.5.26) 実業之日本社790202311

天久鷹央の推理カルテ
3
密室のパラノイア

70才になった桑田隆一郎。きょうは自身が理事長を務める桑田総合病院開業35周年を祝う日だった。そこにとっくに親子の縁を切ったはずの長男、大樹が侵入してきて騒ぎまくった。おまけに次期理事長として病院で未来をたくす次男の清司を殴って怪我をさせた。屋敷から追い出したら、いつの間にか理事長室から内線電話を隆一郎にかけてきた。あわてて駆けつけると、鍵は内側からかかり、開けられない。隆一郎と清司しか鍵を持っていない。隆一郎の手で鍵を開けると大丈夫が仰向けに倒れていた。意識障害にあり、心停止状態。すぐに心肺蘇生法が試みられた。すると大樹の口からは大量の水が溢れ出した。洗面所などの水気がない理事長室で大樹は溺死していたのだ。完全な密室での殺人事件。鷹央は嬉々として捜査に乗り出した。これを解決しなければ部下の小鳥遊がもとの大学病院に帰らなければならない。それを防ぐために鷹央は桑田隆一郎にアポをとり、話を聞くために桑田病院に赴いた(2024.5.24) 実業之日本社780202312

天久鷹央の推理カルテ
2
ファントムの病棟

鷹央が研修医だった頃、健太は急性白血病で入院した。鼻血が出やすいとの主訴から鷹央が白血病を見抜いたのだ。研修医でありながら、指導医を上回る医療知識を持ち、相手の気持ちを読めない特徴のある鷹央は周囲から冷たく扱われひどく辛い時間を送っていた。そんなときに入院した健太は、鷹央を子どもの先生と呼び、二人は意気投合した。研修が終われば健太の病室に行き二人の時間を楽しんだ。そのときに鷹央が読み書かせた「てんしのよる」という絵本を健太は大切にしていた。一度は寛解したが、数年後に再発。再び寛解したが、また再発。今回は肺炎を併発した危険な状態での入院だった。同じ頃、健太の隣室に入院していた3人の中学生に不思議な症状が出ていた。退院が近づくと意味不明の身体症状が出て、退院が延期されるというものだった。統括診断部に問題解明の依頼が届いた。しかし、いつもなら不可思議な出来事に乗り気な鷹央がまったく興味を示さなかった。そこには健太と鷹央の深いつながりが隠されていた(2024.5.22) 実業之日本社740202311

天久鷹央の推理カルテ
1

東京都東久留米市全域の地域医療を担う総合病院、天医会総合病院。理事長の娘、次女の天久鷹央は天才的な医療知識と診断技術を持つが、人の気持ちを察することが苦手で日光に対してアレルギー反応を示す。病院の屋上にある自宅兼診断室で1日のほとんどを過ごしていた。そこは統括診断部、彼女の肩書は統括診断部長。他の大学病院で外科医部局に5年間勤めた小鳥遊優はたった一人の部下だった。救急外来を手伝いながら、鷹央の診断補助をしている。たくさんの診断依頼の中から興味あるものしか鷹央は受け付けない。その日は小学生から送られてきた「カッパを見た」というものだった。遠藤幸太という少年は拳を握り、うっすらと目に涙を浮かべて一昨日の夜にカッパを見たことを訴えた。しかし、同級生たちは信じてくれなかった。礼儀正しい幸太の様子から、嘘をついているとは思えなかった。小鳥と呼ばれている小鳥遊に鷹央は「行くぞ」と誘った。幸太がカッパを見たという久留米公園に行ってカッパを見つけてくると言うのだ。鷹央は釣竿を手に公園に向かった。ポケットからキュウリを取り出した。「カッパといえばキュウリ。捕まえたらすごいぞ」。竿を小鳥遊に渡して鷹央は周辺散策に向かった(2024.5.22)実業之日本社730202310