アウトポスト・タヴァーン
訳すと最先端の酒場。テキサスの砂漠に佇む酒場は、店が最先端なのではなかった。地球最後の乾杯に集まる宇宙飛行士の酒場だ。

フィルム
勝沼のワイン醸造所を舞台にした父母の記憶を手繰る物語。

スプーン
世田谷の経堂でケーキ教室の講師をする波多野。エスプレッソにスプーン山盛りの砂糖を入れる彼女と衝突する。彼女とケンカ別れした波多野は、経堂の住宅街のなかに「キャナル」というカレー専門店を見つける。メニューは「甘口・辛口・激辛」の三つだけ。波多野は激辛を注文する。「悪いけど、激辛は出せねぇ」主人に断られる。その理由とは。

タワシタ
軽井沢に住み、ウエブデザインの仕事をしながら、新幹線で東京に通う主人公。軽井沢の店がたくさん登場する。中軽井沢のスーパー「ツルヤ」(タラの芽を売っている)。「ちびきや酒店」では壱岐の焼酎「音波」が人気だ。「浅野屋」ではライ麦パン。「丸山珈琲」ではジャマイカ産の珈琲を飲む。「東間」の蕎麦。「一龍」のカルビ焼き。駅前の定食屋「和助」ではエビフライ。南原のピザ屋「エンボカ」のテラス席。東京で一番うまいウナギを出す店「野田岩」も登場する。茅場町の「みかわ」では天婦羅料理。銀座の「エノチカ」ではシャンパンを買う。
そして仲間と、東京タワー下に「タワシタ」というバーを開店する。

パイナップル・ラプソディ
一月の家賃が280万円もする六本木ヒルズのマンションで暮らす世良。日本初のピザチェーン店の創業者として成功した世良と、自宅で料理教室を開く母親と暮らす娘の物語だ。

あえか
新橋の雑居ビル、不動産会社に勤務する40前の独身男、島村。何をやってもゴール直前で力つく。あえか。古い日本語で「美しくかよわいさま」を表すという。

青山クロッシング
青山交差点が舞台。重ならないけど似たような生き方の男女2組が登場する。高級スーパー「紀伊国屋」で自分の料理教室の腕を確かめるために彼の誕生日ディナーを作りたい絵美。青山三丁目交差点から住宅街に入ったイタリアンレストラン「リストランテ濱崎」で、32歳の女性を前にもう一度人生のやり直しに期待をかける大工、村田。互いに不器用な生き方が、調理や料理を通して見えてくる。デュラムセモリナ粉で、男は女との別れを決意する。

鎌倉の午後三時
客に乗り逃げされたタクシー運転手、細山田。仕方がないから、由比ヶ浜の海を眺めながら、自販機でコーラを買う。壊れていたのか、自販機のコーラは炭酸の混ざらない原液のみのドロドロコーラだった。

セレンディップの奇跡
41歳の誕生日を迎えた堀井は、その日に彼女に別れを告げられる。自暴自棄になりながら、ふられた理由を知りたくて彼女の元に向かう。その途中で、老女や少女と出会い、人生が異なる方向に流れていく。たどり着いたのは、目黒のワイナリー「ビストロ・セレンディップ」。昔、セイロンに実在した王国「セレンディップ」。荒廃する王国を救うべく旅をした王子たちが出会ったもの。善意をもち、前向きに生きれば、より価値があるものを見つけられるという逸話がもとになる。18世紀にイギリスの作家ウォルポールが「セレンディピティ」という造語を発表。「探しても見つからない価値ある楽しいものを偶然に見つける能力」と規定した。

ラブ・イズ……
レストラン・プロデューサーの三枝。恋愛に飽きながら飯倉片町のイタリアンレストランで見かけた老女を相手に恋のゲームを開始する。